「もしかして、うちの子は……?」
子どもの成長を見守るなかで、ふと周囲との違いに気づく瞬間があります。言葉の発達やコミュニケーションの取り方、強いこだわりなど、そのサインはさまざまです。しかし、それが発達特性によるものなのか、個性の範囲なのか、親にはなかなか判断できません。『3000人の発達障害の子を診察してきた医師が教える ASD(自閉スペクトラム症)・グレーゾーンの子どもをありのまま育てる方法』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)の著者であり、3000人以上の発達障害の子どもたちを診てきた医師・星野歩さんもまた、ASD(自閉スペクトラム症)の息子を育てる親の一人です。医師でありながら、自身の子どもの特性に気づくまでには戸惑いがあったといいます。
前編【追い詰められ手を上げたことも…医師が語る、自閉スペクトラム症の息子の幼少期】では、後にASDと診断される息子さんの幼少期を振り返り、星野さんが感じていた戸惑いや葛藤についてお伝えしました。「どうしてほかの子と同じようにできないんだろう」と悩み、余裕がないなかで手を上げてしまい、反省する日々。後編では本書から、星野さんが息子さんのASDという特性に気づき、その後どのように関わっていったのかを抜粋してお届けします。
小学校でもトラブル続き……
その期待もむなしく、小学生になるとさらにトラブルは増えました。
まず、入学式当日から、じっと座っているたくさんの新入生たちを尻目に、息子は一人うろうろと歩きまわっていました。やっぱりみんなと同じことができないんだなと痛感したことを思い出します。小学校までは片道わずか徒歩5分の道のりでしたが、あちこち寄り道することで毎日30分以上かかりました。
また、保育園や幼稚園のお遊戯レベルとは異なり、小学校に入るとじっと座って静かに先生の話を聞く45分間の授業が何コマもあります。ほかの子はすぐに慣れてできるようになることですが、やはりタロウには難しいことでした。授業中に座っていられず立ち歩いてしまう、静かにできずに隣の席の子にちょっかいを出して勉強の邪魔をしてしまう、お友達とすぐに大げんかして暴力を振るってしまうなど、ほかのお子さんに迷惑をかけるシーンも大幅に増えました。鉢植えのプチトマトを栽培する理科の授業では、自分の鉢だけ芽が出ないことに納得がいかず、クラスメートたちのプチトマトの芽を全部切ってしまったこともありました。
こだわりの強さも目に見えて明らかになってきました。ほかのお子さんのように「遊戯王」のカードを集めることにもハマりましたが、それよりもこだわったのは、ルールや自分なりのやり方を守ることでした。体育のリレーの際、内側から抜かれたときは「ルール違反だ」と怒り狂い、ゴール後にその子を追いかけて殴りつけたこともありました。自分なりのルールもはっきりしていて、たとえば毎朝家を出発する時間を7時50分と決めると、トイレや天候などの事情で出発が1分でもずれたらもう学校に行かないと言い、私が登校させようとすると暴れ出すのです。また、人の心を推測することができず、冗談やたとえ話もうまく通じません。融通がきかず、お友達の冗談に激怒することは日常茶飯事でした。
すぐに殴ったり暴れたりするのは、言語化が不得意なため、ほかの子が自然とできている説明や交渉、言い訳ができなかったのでしょう。言葉の裏を読み取ることが苦手なので会話がうまく成り立たないうえ、相手の欠点を攻撃しすぎて、人間関係でも頻繁にトラブルが生じていました。
本人には悪気はないのですが、クラスメートの親御さんはもちろんそんな事情は知らないので、しょっちゅう苦情の電話がかかってきました。タロウに言い聞かせたところで事態が改善するわけもなく、私はひたすら心苦しく、多方面に謝ってばかりの日々でした。
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