スコップを持つジュエ氏、筆を握る学生たち…北朝鮮「ロシア派兵英雄化」の異様
北朝鮮で、芸術大学の卒業制作にまで「ロシア派兵軍人の英雄化」が持ち込まれている。平壌の音楽・演劇系大学では、ロシア・ウクライナ戦争に参戦した兵士の「犠牲精神」や「忠誠心」を題材にした作品制作が卒業課題として課されたという。
問題なのは、単なる政治宣伝が教育現場に入り込んだことではない。若者の感性や創造性を利用し、戦争を肯定する価値観を内面化させようとしている点にある。
本来、芸術教育とは自由な発想や多様な表現を育む場である。しかし北朝鮮では、卒業制作が思想検証の手段へと変質している。学生たちは作品の内容が卒業後の配属や評価に影響することを恐れ、自らの考えではなく、当局が求める「正解」を表現せざるを得ない。
さらに、その動きは学生だけにとどまらない。後継者候補とされる金正恩総書記の実娘・ジュエ氏も、ロシア派兵兵士を称える記念館の建設現場に同行し、植樹作業に参加するなど、その象徴的な役割を担わされている。次世代の指導者像と戦争の英雄化を結びつける演出は、ロ朝軍事協力を「国家の正義」として世代を超えて定着させようとする意図の表れともいえる。
北朝鮮当局は派兵兵士を「反帝自主の英雄」と位置づけ、ロ朝軍事協力を正当化している。しかし、戦争によって失われる命や家族の悲しみは意図的に排除され、犠牲だけが美化されている。