観光に価値を見出さない日本人の増加
さらに観光庁による別の調査によれば、同じ2024年に観光目的で海外へ渡航した日本人は、およそ4.8%だったという(下図 1-8)。
同年に有効なパスポートを所有する日本人のうち、4人に1人しか海外旅行へ出かけていない計算になる。そして観光だけでなく出張や業務を加えても、9割ちかくの日本人が同年に海外へ渡航していないことがわかる。
もはや日本の観光は、お金がないから、時間がないから「したいけど、できない」ものではなく、積極的に「したくない」ものになりつつある。これが21世紀の日本社会における、観光の現在地である。
こうして観光することの意義も価値も見出さない日本人が、21世紀に増え続けている。この傾向は、コロナ禍以前からすでに始まっていたこと、さらに旅券発行数と出国者数から推測すれば、1996年ごろから30年ちかく続いてきた、長期的で継続的な社会の傾向であることを、ここで改めて確認しておきたい。
この先には、どのような日本社会が待っているのだろうか。観光することの価値を認めず、むしろ積極的に観光したくない人が増えていき、観光することの想像力を持たない人びとが多数派を占めていく社会には、何が待っているのだろうか。
ここで観光の意義を論じ、観光の復興を急ぐ道もあるはずだが、それとは異なる道筋を本書は進みたい。なぜなら「観光とは何か」を考えずに、あるいは観光の本質をしっかり理解せずに、観光の復活を焦って求めるばかりでは、この長く続いてきた日本社会の傾向の、根本的な解決には至らないと考えるためである。いま必要なのは、「観光とは何か」とその根元からしっかり問い、深く理解したうえで、21世紀の日本社会に適した一手を考えることだろう。
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つづけて 「旅行したいけど、できない」ではない…日本人の過半数が海外旅行を「したくない」理由 を読む
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話題の新刊 山口誠著『観光を忘れた日本』(6月18日発売)では、日本で起きている深刻な「観光離れ」を、観光の源流から歴史を解き明かしていくことで考察します。ぜひお読みください!