本来は「5キロ1300円台」まで下がる…物価高で家計が苦しいのに史上最高値のコメを買わせたJA・農水省の大罪
物価高対策には何が有効か。元農水官僚で武蔵野大学国際総合研究所研究主幹の山下一仁さんは「主食のコメ価格を下げられれば、非常に有効な物価高対策になる。コメ価格の決定に大きな影響力を持つJAは在庫を増やすなどして価格を吊り上げており、独占禁止法に反するのではないか。物価高対策のためにも、公正取引委員会は厳正に対処すべきだ」という――。 【図表でみる】明らかに異常なコメ価格の動き ■主食の危機が放置される異常性 精米5キログラムのコメの値段は今年1月の4416円から3644円(6月1日の週)まで下がった。しかし、2年前は2000円を切っていたので、今でも非常に高い水準だ。 異常な高値が続いたため、5kg3000円台後半でも「安くなった」と感じるほどだが、現在の生産能力で減反(生産調整)をしなければ、本来コメは5kg約1359円となる。算出の根拠は後述するが、3倍に吊り上げられているのだ。なぜ、こんなことが可能なのか。本稿では、その背景に何があるのか解説していく。 そもそも、コメは主食である。日本の食文化に深く根差しており、国民のだれもが毎日口にして、生きていくための主要なエネルギーを賄うものだ。ケーキなどの嗜好品と異なり、高くなったから食べるのを控えるということはしにくい。国会では「消費税の逆進性(編集部注:所得が低い人ほど、税負担が大きくなる現象。所得が高い人ほど税負担が高くなる「累進性」の対義語)」が議論されているが、主食の価格を上げることは逆進的の極みだ。 物価対策が議論されているなかで、高市政権はガソリン対策はしても主食であるコメの値段を下げる政策を講じようとはしない。 なぜ、コメだけはスルーするのか。それは、自身の政治生命を維持するために、市場を歪めるほどの巨大な力を持つ既得権者に媚びることを選んでいるからだ。
■「JAが在庫を増やして、米価を上げた」 2024年の夏にスーパーの棚からコメが消えたのは、前年に収穫された23年産米が40万トンほど猛暑などの影響を受けたからである。その分を24年産新米から先食いしたため、農家がJA農協を通じて販売する24年産米の価格(60kg当たり玄米)は、前年の1万5000円から2万5000円に70%上昇した。供給が減ったので価格が上がった。経済原則の通りだ。これは天災だった。 ところが、25年産米はさらに上昇して3万6000円となっている。しかし、これは猛暑などの天災による影響ではない。25年産米の生産量は前年産に比べて1割、70万トンも増加しているのに、圧倒的な市場支配力を持つJA農協が、在庫を増やして市場への流通量を制限し、米価を上げたのだ。今年4月のJA農協を含む民間在庫は249万トン、過去10年間で最高の水準だ。これによってJA農協は卸売業者に販売するコメの価格(相対価格と言う)を3万6000円に引き上げたのである。 ■公正な市場がないコメ取引 JA農協がこのような価格決定を行うことができるのは、コメについては、野菜や果物などの卸売市場のように自由で公正な市場がないからである。 かつては、公正なコメの価格形成の場として入札制度による全国米穀取引・価格形成センター(前身を含めると1990年から活動)が存在し、1997年産米では落札量が103万トンにも達していた。セリで値段が決められる卸売市場では、JA農協も独占的な力を発揮しようがない。コメのセンターも同じような役割を果たしていた。 しかし、2004年の食糧法改正によってJA全農の上場義務が廃止された(編集部注:米流通の原則自由化を目指して、これまで上場義務が課せられていたことを廃止した。この改正には批判的な意見がある)ことを利用し、米価を高く維持したいJA農協は、同センターへの上場をやめ、卸売業者との相対取引に移行した。 このため、同センターの利用が激減し、センターは2011年3月廃止となった。JA農協が5割を超える市場占有力を持って、規模の小さい卸売業者と相対で取引すれば、米価に強い影響力を行使できるのは当然だった。それがJA農協の狙いだったのだろう。 コメが市場になじまないのではない。世界の穀物価格はアメリカ・シカゴの商品取引所で決められる。これは先物取引である。今では、穀物だけでなく、原油、金、通貨なども先物取引で価格が形成されている。 しかも、世界で初めての先物市場は、大阪堂島のコメ市場だった。先物取引は日本人が発明したのだ。先物市場があれば、独占的な価格形成はできない。穀物大商社のカーギルでも先物市場の価格形成に影響を与えたり操作したりすることはできない。穀物価格が大きく変動するのは、その証左である。
【関連記事】
- 腸の壁に穴が空き、全身がボロボロに…内科医が「毎日食べてはダメ」と警告する"みんな大好きな朝食の定番"【2026年4月BEST】
- 「日本の新幹線」を売らずに済んでよかった…「走るほど大赤字」インドネシア新幹線を勝ち取った習近平の大誤算【2025年9月BEST】
- 地方衰退の一番の原因は「人口減少」ではない…山口の超富裕層が「住民税43億円」をまるっと抱えて移住した理由
- 新大阪駅から15分なのに巨大廃墟がそびえる…「消えた終着駅」が映し出す昭和のニュータウンの栄枯盛衰【2025年8月BEST】
- 「年金だけで暮らす人」は早々に手放している…50代までに捨てておくべき「老後のお金を食い潰すもの」8選【2025年10月BEST】