東大・学校推薦 合格者インタビュー
湘南白百合学園から東大工学部に推薦合格(上)――数学か医学か悩んで行き着いた「計算論的精神医学」
2026.06.17
中学で数学の美しさにひかれ、高校ではすでに大学数学の難問に取り組んでいたという坂間琴さん。湘南白百合学園高校3年の夏、「人の役に立ちたい」と取り組んだ研究テーマで東京大学の学校推薦型選抜に臨み、合格しました。現在は同大教養学部前期課程理科一類で学び、同時に研究も進めています。そんな坂間さんに、選んだ研究テーマや、東大の学校推薦型選抜試験、また学校生活などについて聞きました。
アルツハイマー型認知症の患者さんの役に立ちたい
――東京大学工学部に学校推薦型選抜で合格しました。どのような点が評価されたのですか。
提出したのは「計算論的精神医学」に関する論文です。これは、脳を高度な情報処理システムとして捉えて、脳神経に関わる病を「脳の計算プログラムのエラー」として数理モデルで解き明かそうとする研究領域です。具体的には「空間認知機能の計算論的解釈 アルツハイマー型認知症の行動解析」という論文をまとめて提出しました。
――難解です。どのような研究でしょうか。
AIで使われる「機械学習」という技術の一つである「強化学習」を用いて、アルツハイマー型認知症における空間認知機能の異常をコンピューター上でシミュレーションするというものです。
アルツハイマー型認知症では、患者さんが道に迷ってしまうという症状があります。そこに焦点をあて、患者さんの空間認知機能異常を、強化学習を使ってシミュレーションするという研究に取り組みました。
――強化学習をどのようにアルツハイマー型認知症の研究に応用するのでしょうか。
AIは通常、より高い精度を目指して学習しますが、私は逆に強化学習のアルゴリズムを「劣化」させることで、人間の脳内の機能低下をシミュレーションしようと試みました。
近年の研究で、強化学習の学習を調節するパラメーターが脳の機能と対応関係にある可能性が示唆されています。例えば、脳内の神経伝達物質であるアセチルコリンの濃度は、強化学習における「学習率」というパラメーターと関連があるのではないか、という研究が進められています。
アルツハイマー型認知症の患者さんの脳内では、このアセチルコリンの濃度が減少することが知られています。そこで私は、コンピューター上の強化学習モデルの学習率を時間経過とともに意図的に低下させました。こうすることで、脳内のアセチルコリン濃度が減少する様子を擬似的に再現することを試みたのです。このようにして、患者さんの脳内に近い状態をシミュレーションし、患者さんがどのように空間認知をして、空間ナビゲーションを行っているのか、ひとり歩きなどの行動にどのような異常が表れるのかを明らかにしようとしています。
将来的には、患者さんのひとり歩きの傾向をある程度予測して、事故や行方不明になるのを防ぐことが期待されます。