(2026/6/17 05:00)
日銀が政策金利を1%程度に引き上げた。1%となるのは1995年以来31年ぶり。行き過ぎた金融緩和からの脱却が進み、「金利のある世界」への回帰が鮮明になった。この歴史的転換期に正念場を迎えるのが中小企業だ。大手と比べ借入金依存度の大きい中小企業にとって、利上げは利払い負担増に直結する。これを単なる逆風と捉えるのではなく、抜本的な生産性向上に着手し、「攻めの経営」へかじを切る転機としたい。
長らく続いた超低金利は、収益力の低い企業や将来性の乏しい事業を延命させやすいとの指摘もあった。しかし、金利のある世界は否(いや)応なく企業の選別を促す。独自技術を持つ企業や生産性の高い企業と、旧態依然とした経営から抜け出せない企業との格差は拡大するだろう。安易な延命が許されない時代を迎えた今こそ、経営のあり方をあらためて問い直す必要がある。
特に警戒すべきは借入金の負担増が財務を直撃する点だ。中小企業の資金調達は間接金融が主軸で、金利上昇は収益や資金繰りに直接影響する。東京商工リサーチが2月にまとめた調査では、利上げのデメリットとして中小企業の約57%が「借入金利上昇に伴う損益悪化」を挙げたほか、資金繰り悪化や設備投資の抑制を懸念する声も根強い。今回の利上げによって収益力や成長力の差がこれまで以上に鮮明となり、企業の淘汰(とうた)圧力が一段と強まる可能性がある。
一方で、この局面は産業構造の抜本改革に乗り出す好機でもある。市場の健全な新陳代謝を促し、高付加価値化を進める時だ。単なるコスト削減ではなくIT化やロボット導入、AI(人工知能)の有効活用など、省力化投資による生産性向上を本格化させる必要がある。それによって初めて金利のある世界でも十分に勝ち残れる強靱(きょうじん)な経営基盤が構築されるはずだ。
中小企業にとって“重い1%”である。しかし、金利のある世界は避けて通れない現実だ。変化を恐れず、生産性向上と高付加価値化に挑戦する企業だけが次の成長をつかめる。その真価が今、問われている。
(2026/6/17 05:00)
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