[篤寛]聖夜の贈り物。・居酒屋あつや。・12[現パロ]
2023/12/26:すみません! 寛が頼んだものと食べたものが違っていたので手直ししました(>人<;)!!!
取り敢えず、ひと段落。
思い切り篤寛してます。恋愛要素濃いぃです。苦手な方は回避して下さいm(_ _)m
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日下部から渡すものがあるからそれまでに腹を括れと言われてから直ぐに、日車は元上司の伝手で知ったある店で割合と大きな買い物を済ますと、あるものと一緒に小さな箱へしまった。
後はこれを日下部へ渡すだけである。
渡すだけなのだが、日下部へ顔を見せるのがまだやはり怖くて、何より拒否されるのが怖くて、及び腰になり彼に会いに行けていない。
それを、外の冷たい空気の中、部下の清水が見通してみせた。
挙句、「とっととしないと良い人は直ぐにとられちゃいますよ!」などと発破をかけられてしまう。
日車はその一言でまたいつかのようにぐぅぅと唸り、暫く俯いていたかと思うとパッと顔を上げて、「今夜行ってくる」と観念した。
「その調子です! 日車さん!」と清水の声を背に、日車は彼女と反対方向にある自宅とあの店がある方へと歩き出す。
今夜こそ、日下部との関係に決着を付ける。
ダメで元々。いや、最後に会った時の様子だと、日下部さんも自分のことをなどと考えつつ首を振り、ポケットに入れたものが箱の中でチャリと音を立てたのを日車は確かに聞いた。
心臓がありえないほどバクバクいうし、正直息をするのも苦しいが、これが不整脈や動悸息切れの類ではないと、実のところ日車は最初から感じ取っていた。
しかし、認めなかった、認めたくなかったのだ。
この年で弁護士をやりながら色恋沙汰にかまけるのはと、心の奥でブレーキをかけている。
だがもうそんなことは言っていられない。
冷たく澄んだ冬空は雲一つなく星が瞬いていて、月も冴え冴えと光っていた。
何やら応援されているようで、日車は余計に肩に力が入ってしまうが、なんとか深呼吸で気を落ち着かせる。
そして日下部に以前教えてもらった目印通りに裏路地を進んでいくと、もう見慣れた、美味くて温かいご飯と笑顔が眩しい店主が在る店へと辿り着いたのだった。
暖簾をくぐりドアを開けると、「お! 日車さん! こっちこっち!」といつものように日下部へ定位置へと案内される。
このやりとりも慣れたものだが、なんとなく自分は最初から特別が許されていたのでは? と日車は思った。
いやいやそんなことは気のせいだと頭をふり、ポケットに入った小さな箱に怖気付きつつ、取り敢えず腹ごしらえすることにする。
何か頼む前にいつものようにかぼちゃサラダとビールが出てきて、「決まったら言ってくれ」と言って日下部は奥へ引っ込んだ。
(私に渡すものがあるのでは?)
思ったが、人の見ている前では憚られるものを渡されるのかもしれないと胸が何やら高鳴りつつ、自分もその時に渡せば良いかとポケットから手を抜きかぼちゃサラダをつつく。
さて、と今夜の夕食を決めるために周りを見渡すと、チラホラ魚も見かけるが、肉の固まりのようなものとと唐揚げ、それにグラタンやシチューも見かけた。
今夜はやけに手の込んだ料理が多いなと思い巡らし、そういえば昨日部下の清水が「クリスマスイヴも仕事なんて最悪ですよ」とぶつぶつ文句を言っていた事を思い出す。
ということは、今日はクリスマスということだ。
今夜ことがうまく行っても行かなくても、帰りにコンビニのケーキでも買って帰るかと思いながら、今夜は以前餃子パーティで食べて美味しかったナポリタンと、せっかくだから塊肉を食べることにしようとしたら、ことん、と生牡蠣にレモンを添えたガラス皿を置かれた。
「この時期の牡蠣は小ぶりですが生で食べると美味いんですよ。因みにこの牡蠣は商店街で買いました」
「ほう。いただこう」
「あと、閉店後まで悪りぃが残っててくんねぇですかね」
「ああ。明日は休みだから構わないが……」
「良かった。この間渡したいもんがあるって言ったろ? んで、またあんたが来たってことは、腹括って来たって受け取って良いんだよな? ん?」
「あ、ああ。…その、私も君に渡したいものがある」
「ハハ! ならプレゼント交換ってやつだな!」
「ま、あ……」
そう言って日下部が厨房へ行くその背中を見送り、日車は酒はほどほどにしておこうとビールを端へ寄せ生牡蠣にレモンを絞って一口で食べた。
つるりとした食感に噛めば、流石海のミルクというのか栄養満点の旨みがトロッと口の中に溢れる。
レモンを絞ってあるから一層食べやすく、何個でも行けそうだ。
もしかしたらあのグラタンにも牡蠣が入っているのかもしれないと、頭の中の後で聞いてみる事リストに書いてしまっておく。
生牡蠣をちょうど食べ終えた頃に日下部が現れ、ことん、と玉ねぎととうもろこしの炒め物が入った小鉢を置いた。
「ちょっと食べてみてくれねぇかな」
「いただこう。日下部さん、聞きたいことがあるんだが、あのグラタンにも牡蠣が入ってるのか?」
「ああいや、それも考えたんだがなぁ。仕入れが少なくて回せなくていつも通り鶏もも。エビも良いんだが、俺の家では鶏ももかなぁ」
「そうか。なるほど。ではシチューは?」
「鶏ももだな。うちは冬の寒い日はシチューかグラタン、もしくは豚汁か鍋で凌ぐんでね」
「この間食べた豚汁は美味かった」
「そりゃ良かった。あと、あの塊肉はクリスマス特別メニュー数量限定のローストビーフだ。さぁて、何食べるか決まったかぃ?」
「甲乙つけ難いな……。グラタンも良いが、ローストビーフか……」
「ローストビーフは塩塗りこんで胡椒たくさん振ったから、冷蔵庫に入れときゃ二日くらい持ちますよ?」
そこで耳元へ唇を寄せられて、日下部がコソッと、「お土産に包みます?」と聞いてきたので、日車は変な声を出しそうになった。
しかし耐えて、「買った」と押さえた声で応える。
日下部はそれに「お買い上げありがとうございま〜す!」と言ってのけ、満面の笑みを浮かべて見せた。
「んで、今夜はどうする?」
「そうだな。…寒いから、シチューが食べたい。
「はいよ!」
そう言って日下部が奥に消えるのを見届けると、日車は目の前に置かれたものを食べ始めた。
一口食べると、よく炒められた玉ねぎは舌で噛みきれるほどで、その反面とうもろこしはプチっと歯で弾けて食感が面白い。
それほど塩辛くもないが、どこかシチューに似た甘さがあるのは何故か。
聞こうとすると日下部が戻ってきて、ことん、ことんとシチューの皿とパンの載った素皿を置いて口を開いた。
「これね、実は砂糖でしか味付けしてないんですわ」
「ほう、そうなのか? それにしてはやけに味がしっかりしているが……」
「面白いよなぁ……。いやぁ、試しにこの間作ってみたらこの味になってね? あんたが食ったらどんな反応するかなぁって思って今夜出して見たんですよ」
「なるほど。試食させてもらった訳か。得をしたな」
「ハハハッ! あんたのそういうところ嫌いじゃないねぇ」
「そこは……」
「んん〜?」
「い、いや、なんでもない」
「ふぅん?」
そう言い残し、日下部はまた行ってしまう。
この微妙な空気感も、今夜無事上手くいけば良い塩梅になってなんでも話せるようになるのかと思いながら、「相変わらずここの店のものは美味いな」と言いながら、日車は無心で食べ進める。
シチューはホワイトソースのシチューで、先ほどの玉ねぎととうもろこしの炒め物によく似た味をしていて、ほっくりとしたジャガイモやよく煮込まれたにんじんや玉ねぎ、それにインゲンやらマッシュルームなどが入っている具沢山シチューだった。
全て食べ終えると、日下部が目ざとく見つけ、出ていく客のおあいその合間に話し相手になってくれる。
日車は日下部のそんなところが好ましく、安心した。ずっと側にいたいくらいだ。そるこそ、一緒に寝食を共にするくらいに。
そんなこんなでぼうっとしていたら、店には自分と日下部だけになっていて、他に誰もいない。
いや、気配は感じる。主に店の外に。
日下部は気づいているのかいないのか、日車に向けてにこにこ笑って「ちょっと待っててね〜」と言って店仕舞いを始める。
日車も手伝おうと思ったが、いや邪魔になるだけだろうと口出しも手出しもせず、やはり日下部の言葉を待ってその場で待機した。
そうこうするうちに日下部の方もあらかた終えたのだろう、手を洗って腰にかけたタオルで拭い、日車の方へ行ってポケットから何かを取り出し日車に握らせた。
「これ、渡しとくわ」
「! これは……」
手のひらを開けて出てきたのは鍵だった。
驚きも束の間、また小さな箱を渡される。
包装を解いて良いかと問い、それの答えを聞くなりリボンを解いて包装紙を捲って箱を開けると、安くはない、ちょうど日車のスーツに合うタイピンが現れた。
それらを交互に見て日下部を見ると、「もう見ないふりはできないんですわ」と苦笑いを隠さない。
タイピンの贈り物が意味するのは、「あなたを支えたい」「見守ります」だと部下の清水から聞いていた。
日車はぼっと顔に火がついたように熱が集まるのを自覚する。
そして、数秒固まってから、ハッと我に帰ってポケットの中に入っていた小さな箱を急いで渡した。
日下部が「なんだろうなぁ」と今から喜ぶのを、日車は戦々恐々固唾を飲んで見ることもできずに俯く。
「おぉ……」
「では失礼する!」
「え? え?! ちょ、待て待て待て日車さん!!!」
敵前逃亡した日車を、店の前でことの成り行きを盗み聞きしていた野次馬たちが通せんぼしたことで、日下部に腕を掴まれ逃げ損ねる。
日下部のもう片方の手に握られているのは日車の家の合鍵とプラチナのリングだ。
意味は明白だろう。
日車は贈られた日下部よりも気が動転してしまって、早まったことをしたと腕の中でもがいてなんとか逃げようとしたが日下部が許さない。
「どういうことだこれ」
低く掠れた声にびくりと怯えて肩を揺らし、日車は日下部を恐る恐る見る。
嫌われた。
もうダメだ。
この安寧の場所も来れなくなる。
あの安心する笑顔も二度と見れない。
ああ、全く早まったことをした!!!
「すまない……」
「いや、すまないじゃなくて、どう言う意味だっつってんですよ」
「すまない。もう、来ないから……だから、手を離してくれないか……?」
「だ! ああもう! 違う! 怒ってんじゃないんですよ?! あんた、こんなん贈られたら勘違いするってんですよ。こちとら精一杯我慢して少しずつ距離縮めようって思ってたのにあんたって人はもう……!!!」
「? すまない?」
「ッハァー……!!! だからね? …やぶさかじゃないっつってんですよ、このプレゼントを気持ちごと受けとんのも、今後お互いそういった仲になることも」
「つまり……、次は養子縁組の書類を持ってくれば良いんだな?」
「ちげえ!!!」
「? 何がだ?」
「あんたねえ! もうそういうとこだよ日車さん!!!」
「よく分からないな。きちんと言葉で教えてくれ、日下部さん」
「ま、ちょくちょく互いの家行き来して、たまにはお手手繋いで散歩なんかして、んでま、極たまになら小旅行くらいなら行きましょうかねぇ? …どうです?」
「悪くない」
日車がはにかみながら近づき日下部の指をそっと握ると、日下部は握った日車の指を親指の腹で撫でる。
細やかなソレに、日車の顔が再び熱くなり、日下部も年甲斐もなく照れながら日車を引き寄せ抱きしめた。
「もう俺のもんだ」
「君も私のだ」
ドッと外で歓声が上がる。
やんやとはやす常連客は、深夜だというのにかまいやしない。
本日はクリスマス。
晴天の澄んだ夜空の下、まあ店の中だが、二人は今後、店の店主と客という垣根を超えたより深い間柄としてやっていくことで、決着を付けたのだった。
漸くここまで来れました!
それもこれもコメントやスタンプやいいねやブクマくださって読んでくださった方々のおかげです!ありがとうございますm(_ _)m!!!
今後は関係変わるだけで、また昼夜分けてまた食べたり飲んだり喋ったりします。ちょっずつ遠慮がなくなっていく二人が書けたら良いな。良いな。どこかデート行くのも良いけど、お家でゆっくり過ごすのも良いな、とか。まあそろそろ四十だから行ける内に行っとこみたいな感じはあるかもしれませんが……。
ついにふたりが落ち着くところに落ち着いてほっとしました^^野次馬たちの通せんぼのくだりがコメディで楽しいです。篤のタイピンが心がこもってナイスなのと寛がおくったプラチナリングも彼らしさを感じてほんわかしました。お疲れ様です!
