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[篤寛]居酒屋あつや・5[現パロ]/Novel by narrプロフ必読1\1加筆。

[篤寛]居酒屋あつや・5[現パロ]

3,608 character(s)7 mins

暑いですね。今回は七と伊地がゲストでしみずさんもちょろっと出てます。七が伊地と寛に少しだけイタズラします(性的な意味ではない)。

基本篤寛と篤総愛され以外一応仄めかしでもこの人には恋人いるよー程度にしか描写しない予定なので(喧嘩してても仲良しでも訳あり(立場とか)でも)カプなりなんなり自由に想像して読んでください。

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 梅雨も開けていないというのに、まだまだ暑い。その上、年々東京の夏は茹だるような暑さを増している。
 地方の極地から来れば来るほど、東京の暑さ寒さに堪えるものだ。
 冬は空っ風が吹いて乾燥していて寒いし、夏はエアコンやコンクリートやスモッグなどによりより一層暑くなる。
 上京したての頃は忍耐強い日車とてこの暑さ寒さには辟易したものだ。
 しかし、周りを見れば特に女性などは冬でも短いスカートなどを履いていたりするので、よくこんなに寒いのにその格好をと驚きつつ感心するのだった。
 便利だが、どこか欠けている。
 どこか欠けているが、地方にはないどうとは言えない活気がある。
 どうしたって人が集まるところに金も仕事も集まるもので、そこからまた金と仕事が生まれる為、人の犯罪も弁護士の割り振りもそれ相応になっている。
 ただ、日車の場合は国選弁護人の仕事を多くしていた為、その金勘定や損得関係からはかなり遠い位置にいたが。
 いや、実を言えば日車は難しい事件、特に無罪を勝ち取ることが難しい事件ばかりを拾ってくる為、経営的には中々に火の車だった。
 しかし、取り敢えず今のところ贅沢さえ言わなければ普通に食べていけるほど稼いではいるが。
 流石にタダ働きはないからだ。
 弁護士に休日はあってないようで、休日を取ろうと思うのならば仕事を先ず持ち込まないという大前提の元に生まれる。
 だから、実直真面目堅物の日車としては、休日はなるだけ取りたくない。
 しかし部下を巻き込むわけにはいかないため、せめてお盆や正月くらいはと国民の休日とも言える日には流石に仕事は持ち込まなかった。
 そんなこんなで今回の裁判も検事側が優位だったが、取り敢えず目処がつき落ち着いたところで、またあの店に寄るかと日車は書類をまとめながら思う。
 部下の清水がしめじがお買い得だのなんだの朝から言っていたが、自身の部下が自炊するだけの暇と家事力があったことは今知ったので素直に驚く。
 今夜日下部にしめじを上手く保存できる方法をダメ元で聞いてみるかと、「お疲れさまです」と部下が急いで帰っていくのを見守りつつ、日車は書類を整理し終え、この間直ったばかりのエアコンの、二十八度設定でも外に比べれば充分に涼しい事務所の始末をしてから鍵をかけて熱帯夜の中外へ繰り出したのだった。


 今夜は何か腹に溜まるものが食べたい。
 揚げ物を食べたい気分である。
 しかし蕎麦も捨てがたい。
 どちらがあの店で食べられるだろうか。
 いや確か蕎麦はやけに出てくるのが早かったが夏油という男が頼んでいたなどと、日車はまた今夜も狭い路地裏を通って店へと辿り着いた。
 暖簾をくぐり引き戸を開ければ、いつもの掛け声である。

「日車さん! こっちこっち!」

 手招きされて腰を落ち着ければ、店主の日下部が日車に愛想良く笑いかける。
 それだけで疲れが一気に楽になるのだから重症だと、日車はそろそろ仕舞うのが難しくなってきた感情を見ないふりしつつ「今夜は……」とぐるりと辺りを見回した。
 しかし、今夜は参考になりそうな食べ物が並んでいない。
 日車が今夜食べたいのはがっつり系だが、他の客は大体が素麺と何かつまみのような唐揚げやら餃子やらを食べている。
 この暑さで腹が空かないのか仕方ないと、自分も何か惣菜を頼もうと口を開いた時、新たな客が二人入ってきた。
 一人は長身のガタイのいい、金髪に翠の目をした男で、もう一人は金髪の後ろに隠れて分かりづらかったがどこか幸薄そうな雰囲気の小柄な男だった。
 どちらもスーツ姿だ。
 日車と同じく仕事帰りに寄ったのかもしれない。
 二人は日下部を見るなり笑顔になり、日下部も「よく来たな」と笑い返している。
 それがチクリと日車の胸の辺りを刺激した。
 日下部と縁のあるとはっきりと分かるその態度がなんだか腹が立った。
 その男二人は互いを知っているらしく、その上そこそこ仲が良さそうな雰囲気を醸し出している。
 思わずじっと見てしまったが、チラリとこちらに視線が来て慌てて視線を日下部に戻したがもう遅い。

「あなたが五条さんが言っていた日車さんですか?」
「そうだが、君は?」
「失礼しました。私は七海建人と申します」
「わ、私は伊地知潔高です。今夜はたまたま七海さんと時間が合ったので」
「なるほど。改めて、私は日車寛見という。ところで七海さんは以前コンビーフ◯ッシュを日下部さんに土産として持ってきたあの七海さんで良かったか?」
「ああ、アレを食べたんですか。中々美味しいでしょう?」
「ああ、美味かった。あの後自分でも買ってみてな。野菜が食べたいが火を使うのが面倒な時にパック一人分のサラダ野菜を買ってきてアレをマヨネーズでといてかけて混ぜて食べるのがいっとき自分の中で流行っていたな」
「あまりずっと食べるものではないですからね」
「私は、アレは職業柄中々食べられません。何せニンニクが入っているので……」
「「確かに」」

 などと雑談しながら、七海は天ぷらの盛り合わせとご飯、伊地知はぶっかけうどんを頼んだ。
 日車も七海に追従する訳ではないが、ひとしきり悩んだ末日下部に「天ぷらの盛り合わせと蕎麦は……」と伺いを立てる。
 上目遣いが残念ながらただ怖いだけになっているのが少し悲しい。
 日車が自覚していないから余計に気にする伊地知は無駄にハラハラしてしまった。
 七海は七海で自分で持ち込んだ日本酒を手酌で飲んでいる。
 そしてそれらを無視して日下部が「蕎麦はその辺で売ってる乾麺だが良いか?」と日車へ問いかけた。

「構わない」
「なら、良いけどよ。ツケだよな?」
「あ、ああ」

 なんとなく機嫌を損ねたかと日車は思うも、取り繕う間も無く日下部は奥へと消えてしまう。
 隣に座った七海が楽しそうに伊地知と何か話しているのが気に食わないなと、八つ当たり気味に突き出しとしていつも出されるポテトサラダを突いた。
 ゴロゴロの芋と薄く切った林檎ときゅうり、それに家庭では中々入れるのが面倒なゆで卵が黄身と白身とに分かれてちょうどよく混ぜ込まれている。
 相変わらず美味いなと日車が食べていると、横で七海が含み笑いをして伊地知は得心顔を浮かべていた。
 日下部の知り合いは何故こうも曲者揃いなのかと、日車は怒りや呆れを通り越して達観の域に辿り着く。
 そして今夜は天ぷらと共にビールがやってきた。
 暑い日にはやはりビールが飲みたいなどと、日車がとうもろこしと玉ねぎとじゃがいものかき揚げを一口食べてビールを飲んでいると、七海がその横でチェイサーのごとくにビールをごくごくと喉を鳴らしながら流し込んでいる。
 恐らくあの家入とも知り合いだなと検討を勝手につけつつ、さてこの二人は一体どういう関係かと疑問を浮かべていたら、いつの間にか伊地知が七海に酌をされて日本酒を飲んでやや顔を赤らめていた。
 大丈夫かこの二人と日車は心配しつつも、まあ日下部がいざとなったら何か対処をするだろうと、伊地知がいつ酔っ払うのか、七海は酔っ払うのかと、勝手に妄想しながら椎茸の肉詰めの天ぷらを食べる。
 きのこの旨みが生きていて歯応えも良く、相変わらずここの店のものは美味いなと満足する。
 その内に日下部がすっ飛んできて、蕎麦を日車の前に出したかと思うと、伊地知が飲んでいた日本酒のグラスを奪って残りを自分で飲んでしまった。
 日車に戦慄が走る。
 だってそれ間接キス。
 思わずポロリとさつまいもの天ぷらを床に落としてしまい、ああまだ食べかけだったのにと残念がっていると、日下部が慌てて「これは違うんですよ日車さん!」などと言い訳をしてくるが日車の耳には届いていない。
 七海が日車のグラスの水を日本酒に切り替えていたからだ。

「今夜この三人で日下部さんの家へ泊まって行って良いですか?」

 その有無を言わせぬにっこり顔と口調と日車の早眠そうな様子を見て、ため息を吐き吐き「好きにしろっ」と会計は明日に回すことにして、他の客には帰って貰って、この際だと自分も七海の酌で飲み始めたのだった。


 翌朝、いつの間に寝てしまったかとグルリ見渡しまた迷惑をかけたと反省しつつ、スーツがきちんと吊るしてあることに安堵もして、日車は日下部に謝罪してからシャワーを借りて、朝ご飯もご馳走になりコンビニで買ってきたという携帯用の歯ブラシと歯磨き粉をありがたく使わせていただき、仕事場へと急いだ。
 七海と伊地知は休みということで、まだ寝ている。
 その日日車は部下の清水に「キノコ類は冷凍すると旨みが増すらしい」と話すのに対して、上司の悪人にしか見えないドヤ顔を生ぬるい目で見つつも、清水はありがたくその話を傾聴するのだった。

Comments

  • 小夜双☆スカィWeb
    August 10, 2023
  • なべ
    July 19, 2023
  • shida
    July 18, 2023
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