[篤寛]君が良い。・番外編・2[Dom/Subユニバース]
誤字脱字訂正済。
日車術師IF謎時空本誌ガン無視捏造話。本編完結済みです。尚、完結後の時系列はバラバラです。
寛がカラー欲しがるお話。
書きたいとこだけ書きました。
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日車は任務後遅くなった帰り道の途中、ふと公園でDomとSubらしき人間を見かけた。
応急処置などの例外を覗き、基本的に公の場でプレイをすることは法律で禁じられているが、散歩などの軽度のプレイであれば許されている。
彼らはその軽度のプレイの最中なのだろう。一人はリードを持ち、もう一人はリードの先にカラーと呼ばれるそのDomのパートナーである証を付けていた。
その人たちは仲睦まじく、特にSubの人間はとても幸せそうに見えた。
日車はなんとなくぼんやりとその二人を時間を忘れて見つめて、視線があってしまいサッと逸らしてから早足で歩き出し、なぜこんなにも心臓が煩いのかと自分に問いただしたが、その問いには明確な答えが見つからない。
ただ、彼らがこの上なく幸せそうだったその姿だけが、いつまでも日車の脳裏に張り付いて仕方ないのだった、
日車が日下部との任務で前後不覚に陥り、日下部が咄嗟のシン・影流の術式により日車と自分を守り、日下部一人でなんとか二級呪霊二体を日車を守りながら祓った。
その後日下部は日車を運び込んだ医務室にて、どういうことだと日車に問い詰めたが、ベッドに横になりまだぼんやりとしている日車はすまないと答えるだけで、何も答えてはくれない。
日下部は苛立ち紛れに舌打ちし、それに日車は怯え、結果家入により日下部は医務室から追い出された。
日下部が悪いわけではないが、Subとして調子の悪い人間の前でDomが取る態度ではない。
だから一度距離を置く方が良いとの家入の判断だった。
それが日車と日下部の調子を更に悪化させる羽目になるとは、この時予想もしていなかったのだ。
日に日にやつれていく日車を、補助監督でありSwitchの伊地知とneutralの七海は心配していた。
同時に、日下部の機嫌も日に日に悪くなり、遂には生徒や担当した補助監督から苦情が来るまでになり、家入は二人にカウンセリングの場を設けることにする。
二人は始め嫌がった。
特に日車の怯えぶりが酷かった。
日下部は日下部でそんな日車の様子に自分が近づくのはまだ早いのではと遠慮したが、家入の「いつまで大の大人が逃げているんです? いい加減周りの影響も考えて欲しいのですが」の言により二人のカウンセリングが決まる。
日下部を前に日車は目を合わせられなかった。
(あれは完全に自分のミスだ)
だから日車は謝罪しようとしたのだが、日下部は一言、「そんな言葉が聞きたいんじゃねえよ」と怒りの、ついでにグレアの籠った声で日車に言い返す。
(ならばどうすれば納得するんだ)
日車はため息を吐く。
すると日下部は頭をガリガリとかき、「あんた、俺に言いたいことあんでしょう」と顔を俯かせたまま言った。
日車にはなんのことか分からなかったが、日下部には心当たりがあるようである。
家入の方を見れば、彼女は苦笑いを浮かべていた。
(一体全体何なんなんだ)
そう思った日車は、首を傾げながら「プレイが足りていない、或いは満足できていなくてぼーっとしてしまったのだろうか?」と二人に問いかける。
((当たらずも遠からず))
それが家入と日下部が同時に思ったことだった。
日車はあの日あの夜カラーを付けて散歩をするSubの幸せそうな顔を見てから、ことあるごと自身の首元や手首を摩ってはため息を吐き出し寂しげな顔をしていたのだ。
日車の何か物欲しげな様子に、いつも側にいて様子を観察している日下部だけが気づいたことだったが、家入だけには何かあった時の為に相談していた。
そして、その時が来た。
ただそれだけだ。
日下部自身がクレームとしてカラーを与えてやる手もあったが、そうしなかったのには訳がある。
日車は案外頑固だ。
そして、日下部の家に毎日のように転がりこむ癖に、妙なところで甘え下手である。
だから、日下部は日車にカラーが欲しいと強請って欲しくて、実のところ自分がさっさとパートナーとしてカラーを与えたかったのを我慢していた。
それがまさか命取り寸前にまで陥り、ここまで拗れるとは夢にも思わずに。
詰まるところ、家入に言わせれば二人とも迷惑な阿呆なおっさんであった。
だからこそ、家入は先ほど苦笑したのである。
その苦笑の意味は呆れと怒りである。
(おっさん二人が何してやがる)
その思いに尽きる。
だが、家入自身はneutralな為今の今まで場を設けこそすれ口出しすることはなかった。
しかし、である。
日車と日下部がここまでダメな意味で粘るとは思いもよらなかったのだ。
しかし、その思いもよらなかったものが起こり、まさかの最悪の事態になりそうなことを引き起こした。
これで万が一日車が死んでいたら、もしくは日下部さえ巻き込んで死んでいたらと考えると、もはやこのおっさんたち放っては置けないとなった訳である。
日車がカラーを欲しがっていたことに家入が気づいたのは、日下部が日車の様子を教えてくれていたこともあったが、苛立たしげな舌打ちと裏腹に日下部が気まずそうな、どこか決まる悪げな顔をしていたからもあった。
加えて、日車が首元にやたらの手をやっていたことに気づき、これはもしやと思って二人のカウンセリングの場を設けたところ、日下部が決定打を聞かせてくれたのである。
(呆れたおっさんたちだ、全く)
今は日車も日下部も落ち着きを取り戻し、日車が日下部に怯えることも、日下部が日車と自身に対して苛立ちを見せることもない。
それどころか、今すぐここを出てカラーを買いに行きたいという双方のくすぐったい雰囲気が見え隠れしていて、こんなところを生徒始め知り合いたちに見られたらどうするのかと言わんばかりの甘酸っぱい空気を二人は纏っていた。
それに、堪忍袋の尾が高専時代と今までの積み重ねにより大分図太くなったさしもの家入も、ブチ切れる。
「さっさとカラー買って付けてプレイして人気のないところで存分にいちゃつけ!!!」
このおっさんどもともこのバカ者どもとも言わなかったのは、やはり今までの積み重ねか。
そうして医務室を追い出された二人は、家入から受け取った書類をちょうど二人の具合を見にきた哀れな伊地知に渡し、「これ、頼むわ! 悪りぃな!」とついでにプレイ休暇を何日か分ぶん取って、いそいそと二人して帰ったのだった。
数日後の夜、日下部と日車はいつかの公園で散歩をしていた。
日車の首には日下部から贈られたカラーがある。
表が艶のある赤い皮で、内側は柔らかい素材で傷がついたりしないよう最大限に注意が払われている。術師の日下部の給料三ヶ月分の逸品なので、もう一つ購入したものと含めると中々のお値段だった。
そして、その首元のカラーには散歩をする為のリードが繋がれており、その先は日下部がしっかりと握っていて離さない。
日車が自分を見る幸せそうな格別な笑顔を見て、日下部もご満悦である。出費の元は取れたとばかりに、日車との散歩を楽しむ。
その二人の姿は、誰から見ても幸せな恋人兼パートナーであったという。
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