[篤寛]君が良い。・番外編・1[Dom/Subユニバース]
誤字脱字訂正済。
日車術師IF謎時空本誌ガン無視捏造話。本編完結済みです。尚、完結後の時系列はバラバラです。
めでたく二人が恋人となるお話。
今回プレイ描写が無きに等しいです。本能からくる欲求の発散はありますが、プレイではないです。Rコマンド抜きのプレイは私には難しすぎた。。
それでもよろしければお付き合いくださいm(_ _)m
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(プレイパートナーは恋人とは違うのだろうか……)
日車は日下部から贈られたカラーと首の間の皮膚を無意識に撫でながらそう思った。
けれども、実のところ日下部は仮のパートナーとなる前の出会った初めの方から大分アピールしている。
日車だけが気づいていないのだ。
補助監督たちと術師たちの、例外を除いてほぼ全員が知っていて焦ったく思っていると言うのに、肝心の日車が全く気付いていない。
日車は今日も今日とて悩まなくて良い悩みを抱えつつ、そういえば今日だったなと日下部とのプレイの日にちについて考えを即シフトして、先ほどまでのことはすっかり忘れたように止まっていた足を再び動かし始めたのだった。
さて、Domは支配したいし守りたいし面倒を見てやりたい本能があるが、Subにもパートナーに尽くしたいという本能があったりする。
そんな訳で日車は目の前に置かれた二つの弁当を見て、頭を抱えていた。
まさか自分が手作り弁当なんぞを作る日が来るとは思わなかったからだ。
しかも、やけに手がこんでいる。
なにせレシピサイトを方々チェックしてこれと言ったものをチョイスしてこの小さいと言えない弁当箱にぎっしり詰め込んだのだから、これを見た人は十中八九恋に浮かれた人間が作ったのだなとわかる代物になっていた。
(参った……)
これを、どうするか。
これを日下部に渡すのか。
なんと言って?
ちょうど暇つぶしに……にしては出来上がり過ぎているし手が込んでいる。
自分も作ったからついでに……にしても同様だ。昼間からこんな重い弁当食うやつがあるか。
しかもタコさんウィンナーや唐揚げなどの、何故か子ども向けのものまで入っていた。
どういったコンセプトのもと作られたのか、さっぱり皆目、作った当人でさえ分からない。
兎に角日下部に食べて欲しくて作ったそれを、日車は取り敢えず持っていくかとカバンに崩れないよう自分のと一緒に入れて、あわよくば一緒に食べられたら良いなどと思いながら少し、いや大分浮かれ気味で高専へと赴いたのだった。
高専についた日車はこの季節だから腐らないだろうがと思ったものの、一応袋に入った弁当を高専の大型冷蔵庫に名前を書いたメモ付きで入れておき、補助監督室へ向かって廊下を歩き出した。
途中で一年生たちに、即ち虎杖たちに遭遇して、体調はどうかと聞かれて大丈夫だと答えると、三者三様ほっとした顔をしている。
何故私はこんなにも心配されるのかと思いつつも、その心はありがたいので受け取っておき、三人を見送りちょうど歩いてきた伊地知に止められまた体調を聞かれた。
(私はどれだけ信用がないのか……)
まああんな事件もあったし日下部と仮初でもパートナーとなるまで散々な状態だったから致し方なしと観念し、大丈夫だと伝えると、neutralかと思いきやSwitchだった彼は「日下部さんならもう直ぐ任務から帰ってこられますよ」とにこにこ言ってくる。
それに日車は眉尻を下げてなんとも言えない顔をして、「私はそんなに顔に出ていただろうか」と聞くと、伊地知は、「いえ、勘です」などと小憎たらしいことを言ってきた。
人を揶揄うなと思ったが、伊地知は伊地知で自分と日下部双方を立場は違えど心配してくれているし、実際助けられたこともあるからと、日車もそう強くは言えない。
眉間にできそうになった皺を伸ばすように指を当てて、「今日の私の任務は?」と聞けば、「ああ、すみませんが日車さん、補助監督室で法律のことで勉強会を開こうと思っていまして、あ、もちろん手当は出ます!」などと意気込んで言われたので、やや気圧されつつも承諾する。
伊地知は普段控えめだが流石Domの資質もあるというか、ここぞという時に強気に出る。
そこで五条などは生意気などと揶揄い半分で手を出し口を出しをするのだが、五条のことはこと伊地知に関してはいつものことと家入から無視するよう言われているので、手も口も出したことはない。
触らぬナニかに祟りなしである。
下手をすればこちらが標的になるのでそっと目を逸らし、見えていないフリをして去るのが好ましい。
それは兎も角、日車は勉強会をするという高専のミーティングルームと言えば聞こえはいい、空き教室の一室を使ったところで呪いや術式で起きた損害や保険や、ついでに労働基準法などの問題点などを分かりやすく丁寧に受講する者に教えて行ったのだった。
そんなこんなで昼前になり、日車はそわそわし始めた。
大型冷蔵庫を開けて二つ並んだ弁当箱を見つめてひとしきり悩む。
冷気がどんどこ漏れていく。
体の熱もどんどこ奪われていく。
寒いなと思った頃には、後ろから誰かの気配がして、日車は反射で飛び退いた。
「君は……」
「なになに日車さ〜ん! この冷蔵庫になんか用? あ、因みにこのデパ地下限定二十個のプリンは僕のだからね〜」
「君はまた伊地知さんを脅したのか」
「違うよ? 頼んだの。それに、僕優しいから伊地知の分もあるし〜」
「それも彼が買ったのだろうに……」
などと会話をしているうちに、日車は弁当に気づかれやしないかとひやひやしていた。
そして案の定五条の目に留まる。
「あれ? これ日車さんの? え? 二つ? な〜に〜隅におけないなぁ〜誰々誰々?」
「君には関係ない」
「まあまあそんなこと言わずに〜」
「返してくれないか」
「教えてくれたら返してあげる」
日車は思わずカッとなって気づいたらガベルを具現化して握っていた。
高専中に警報がなり響く。
五条は慌てたそぶりで日車に弁当を返して形だけの謝罪をすると、「じゃあね〜」と言い残してそのまま去っていった。
やれやれと日車が安堵していると、のそりと背後から両腕が伸びてきてちょうど覆い被さる形になる。
なんだ? と思って日車が振り返れば日下部だった。
じっと日車の持つ弁当箱を注視している。
逃げたい、とこれ以上思ったことは日車にはない。
大して花のある弁当とは言えない、重たい感情、持て余した感情しか入っていない弁当。
これをよく今朝の自分は渡す気になって浮かれていたなと、日車は後悔するがもう遅い。
もう既に見られてしまった。
日車が固まっていると、日下部が弁当箱を見つめたまま、「これは誰宛ですかね?」と聞いてくる。
君だと素直に答えられないほどには重い想いを込めた弁当。
(これを、君にどうかと思ってと言って手渡す。…無理だ)
「腹が……減ってい……」
「俺以外の誰かに渡すんですかい?」
「ちが……!」
「なら、これは、俺のもんだ」
そう言って日下部は日車からやけに大きい弁当箱を奪い、テーブルに二つの弁当を向かい合わせになるように置き、椅子を引いて座り、「あんたも座んな」と対面に座るよう促してくる。
それをSubとしてコマンドと取った日車は、すとんと言う通りに日下部の向かいに座った。
微笑まれる。
それだけで日車は嬉しい。
もう食べてくれなくて良いしそんな弁当は捨てて良いからと思ったが、日下部は弁当の蓋を開けて「おっ」と感嘆の声を上げた。
目を合わせられなくて、日車も弁当の蓋を開ける。
「手作り弁当なんて嬉しいねぇ」
「勝手に……勝手に作っていたんだ……気づいたら……」
「そりゃ本能だよ日車さん。嬉しい嬉しい。美味そうだな。日車さん普段から料理やんのか?」
「いや、殆どやらないな」
「それでこれかよ……」
(呆れられた……)
日車がそう思い飼い主に叱られた犬みたいにシュンとしていると、日下部はその丸い頭に手を伸ばしてくしゃくしゃとかき混ぜ、髪の毛を下ろすと途端幼くなる日車にニカっと笑ってみせた。
「よく出来てるなぁ。美味そうだ。ありがとうなぁ、日車さん」
「…食べられそうか?」
「いただきますとも」
「人の作ったものだ。気持ち悪くないか?」
「あんたが作ったもんは別」
日車は嬉しくなってこれはこういうものでこっちはなどと説明しながら世話を焼いた。
日下部は終始それを好ましく愛らしく可愛らしいと思いつつ、プレイをもう少し増やしても良いか? と考えた。
(いっそ一緒に住んじまいたいんだよなぁ)
そんなことを思った日下部だったが、口には流石に出さなかった。
いくらカラーを送って俺のものだと周囲に牽制しても、当の日車がこんなに愛らしい本能の発散をするのでは、これはまだ先は長いだろう。
(押したらいけるか?)
日下部の悩みは尽きない。
そんなこんなで食べ終わって日下部が日車を椅子に座らせたまま弁当箱を洗っていると、背中に日車の視線を感じる。
(可愛いなおい)
今日は二人とも残業がない予定だと伊地知に聞いたから、飲みすぎない程度に行きつけの居酒屋あたりに行くかと日下部は日車へのデートと言えないデートを思い巡らした。
その後レンタルプレイルームに行って本能の赴くまま二人で発散したら、もう少し先のことを話し合っても良いのではなどとも考える。
何か背後に圧を感じるなと思い、洗い終えた弁当箱を洗カゴに入れて振り返ると、ごく至近距離で日車がじっと見上げてきていて日下部は本気でびっくりした。
「なっ、んですかっ。驚かさないでくださいよもう」
「すまない。なんとなく、日下部さんの近くにいると落ち着くんだ」
(なんなら一緒に暮らしますぅ?!)
日下部はそう言いたいのを堪えながら、「ま、そういう日車さんはかわいーですけどね」と笑った。
「そんなことを言われたのは極幼い記憶もまばらな時代だけだが……?」
「日車さんはかわいーですが?」
お互いの頭にはてなマークを浮かべそうになった時、日下部の脳裏にある噂が思い出される。
何でも、手作りのお菓子をバレンタインデーに日車に渡したら、日下部、つまり自分だ、にその手作りお菓子を食べられてしまったと言う話である。
そういえばあれは店のやつにしてはどうにもだっだが……と日下部は思い出しながら、その後その補助監督が京都高へ転勤を願い出たことがまざまざと記憶として掘り起こされた。
(自分のこととなると鈍いのか?)
「まあ、俺だけで良いよな?」
「何がだ」
「あんたに可愛いって言う権利のある人間ですよ」
「ッ」
それに日車は鋭く息を飲み込み、瞬時に耳と頬を朱に染める。
「あらかわいい」
「…君は、いけずだ」
「はは、あんたに言われるのはなんだか良いねぇ」
「君は意地悪でもある」
「あんた少し痛いのといじめられるの好きなMなんだから、観念して……恋人も俺にしときなさいよ」
言葉はぶっきらぼうで押し付けがましいのに、声音と顔つきは穏やかで日車は悪い気がしない。
それどころか口元が緩んでさえくる。
そんな日下部だから日車は好きになったのだろうと、徐にツンと日下部のスーツの袖を引っ張り、「離さないでくれ」と日車は聞こえるか聞こえないくらいの声でつぶやいた。
それがまるで迷子の子どものようで、日下部のDomとしての本能と心とが刺激されて今直ぐに蕩けさせいた気持ちになる。
しかしそれはまた今度と、日下部は日車のその手をそっと掴み、「んじゃま、手でも握っときましょうかね」と柄にもないことと自分でも思いつつ日下部はタオルで拭いた手を差し出して笑った。
日車はそれに耳を赤らめこくんと頷くと、きゅっと日下部の手を握り返す。
そうして、周囲の心配を払拭するように日車と日下部はDomとSubのプレイパートナーというだけでなく、お互いに恋人同士という気持ちを生まれさせ成就させたのだった。