もう大丈夫
日車さん出頭後高専戻りif小説です。
最終話までの内容を含みます。未読の方はご注意ください。
虎日っぽくなるまでのシーンまでが長いのでお時間のある時にお読みください。
本文内に描写のある法律に関してはネットの海で探しただけですので軽くスルーして頂けると幸いです。
すけべは無いですが戦闘や負傷描写、災害被害やシ体の描写等がありますのでご注意ください。
pixiv限定
以下本文と関係ないオタクが語るおまけがありますので読む前の方はキャプションは開かずこのままお読みください。
本編をお読み頂きありがとうございます。
ここから下はオタクが深夜テンションでぽちぽち打ち込んでいるオマケですのでキャプションを開いて「うわっ…!(引)」っと思った方はブラウザバック、または戻るボタンをお願い致します。
今までその2人がくっ付いていれば逆カプすら美味しい美味しいと咀嚼していた人間がその組み合わせだと逆カプすら食べられなくなってしまう。
そんな事になってしまったのが虎日でした。
別ジャンルを読んでいる時にファンタの海に流されてから読み始めたので履修は遅めだったのですがいつの間にか全巻を持っている人間になっていました。
日車さんは手を出さない!と同じく虎日好きの方と語らった時は頭を高速ヘドバンし、熱く握手を交わしたくなりました。
2ページブチ抜き着衣風呂のシーンが衝撃的で忘れられず、虎杖君が来るまで眩しいだろうにステージのライトに照らされ彼は何を考えていたのでしょう。
お風呂は水だったのでしょうか、寒くなかったのでしょうか、虎杖君との戦闘後どういう道のりを経て合流したんでしょうか、どうして合流を選んだのでしょうか。謎は尽きず、想像力の敗北を感じております。
虎杖君の方に関しては戦いや呪霊や生き死にと関係無く、お爺さんと平和に暮らしていた虎杖君、巻を追うごとに「何でだよぉ!!!もうやめたげてよぉ!!!」となる描写もありましたが、
「無実だ」ときちんとその理由も含め言ってくれる大人の日車さんがいてくれた事に「良かったねぇ!!!!」とその台詞だけで号泣していました。良かったねぇ!!!!
虎杖君と別れ、描写されていない彼の動向が気になり、合流してからの彼の活躍、そして命のやりとりをする中での輝きに惹かれ、遂には最推しとなってしまいました。
私事ですが人生の中で推しの半分くらいが死んでいるのですが、個人的には本当に生きていてくれて良かったと思っています。
1話目で死ぬ推しもいたので最後まで生きていてくれて本当に有難い事です。先生に感謝を。
ただもう1人の推しに関しては号泣しましたがその推しにとっては綺麗に終わらせてくれたのかな、いや先生も苦渋の決断だったろうなと勝手に思っております。
推しの死は何回経験しても慣れないものです。
自分まだまだ語れますが、このキャプションのおまけだけで30分ちょっと書き込んでおり、今年の2月10日から書き始めて最近悲鳴を上げ始めていたメモアプリが遅延し始めたのでこの辺りにしようかと思います。
こんなオタク語りの長文にもし目を通してくださっている方がいらっしゃいましたらとてつもないドデカ感謝を申し上げます。
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日車寛見は非常に困っていた。
それは21歳年下の元気な彼に目を合わせられない事。
「日車〜一瞬!一瞬こっち向いて!」
「無理だ」
「だぁ〜〜ちょっとだけ!」
そしてその21歳年下の彼が執拗と言って良い程自分と目を合わせようとしてくる事だ。
呪いの王、両面宿儺との戦いが終わった。
途中戦線離脱した俺は戦闘中に使用が可能になった反転術式と、その後の治療班の手腕によって何とか一命を取り留めた。…生き残ってしまったとも言える。
色々あったが、今は呪術高専に身を置いている。
五条悟や力のある呪術師が亡くなり、上級の呪術師も深手を負ったことで、呪術界は猫の手も借りたい状況のようだった。
更には渋谷事変や死滅回遊での日本全体のダメージも大きく、都市部の復興は時間を要しているようだ。
元々一般人、…いや犯罪者だった俺も警察に出頭し、裁判を受けたが上層部に止められた。
始めは裁判で証拠不十分として不起訴となり、その上で呪術師になる事は断固として拒否していた。清水にも被害者遺族側の弁護士としてついて貰いこちらとしても出来る限りの抵抗をしていた。
しかし、日下部曰く「上層部は一新されたが、五条悟という後ろ盾の無い中で虎杖の死刑が確定される事態は0では無いこと」
また、冥々曰く「新宿での決戦を中継していたので特殊な体質である元宿儺の器として虎杖が狙われる可能性があること」
そして伊地知曰く「補助監督も被害を最小限に任務を終える為や、事後処理に必要に駆られた際の為に知識として法律を学びはするが、法律のエキスパートがいる事で業務や事後処理の面で大変助かる」…等々
大多数が虎杖に関してだったが、俺が虎杖を気にかけている事が関係者に薄く勘づかれているからだろう。
法で彼を守る事ができると諭され、一年は抵抗していたが自分でも信じられない事に不起訴を受け入れ上層部が寄越した契約書に判を捺していた。
「ほら見ろ冥々、虎杖関係なら絶対残ると思ったんだよ俺は」
「全く、どちらとも残る方に賭けたら意味が無いよ」
「日下部、冥々、聞き捨てならないのでその賭けとやらに乗った者は全員とりあえずそこに並んでくれるか、1人ずつどちらに賭けたのか聞きたい」
そんなこともあったが、今は呪術高専に呪術師として身を置いている。更に弁護士としての意見を求められることもしばしばあるので、法律に関しての助言もしている。
先の通り、渋谷事変をはじめ死滅回遊での日本全国各地の呪霊による被害は甚大なものとなっており、一年経った今でもそれは変わらず、任務は1日に何件もこなさなければならなかった。
元々人数の少なかった呪術師は渋谷事変や死滅回遊で幾多も命を落とし、宿儺との戦闘で深い傷を負った者もいる。
死滅回遊での経験や、高専関係者に話を聞いて回り、更には深く眠りに着いていそうな書庫から文献を借りたので右も左もわからないという事は無かった。
ただ文献は持ち出し厳禁だったようで、後々怒られた。
しかし実戦では呪術師にサポートに付いて貰うことはほんの1・2回のみで、その後は単身で挑んだり、稀に呪術師とペアを組んだがその数も多くは無かった。
伊地知には「元々一般の方で、呪霊を祓う力があるからとお手をお借りしてしまい…大変申し訳ありません。」と深々と謝られてしまった。
単独任務以外には、日下部や冥々憂々姉弟、更には芸人の髙羽史彦とペアで行動した。
日下部は高専での教職も兼任している上に冥々には…借りは極力作りたく無い為、必然的にペアでの任務は髙羽と組む事になる。
髙羽は一般人に戻ったはずだったが、死滅回遊で発現した術式の制御が難しいのかよく高専に呼び出され、何故か芸人と呪術師の2つの草鞋を履いている。
…これに関して契約等気になる事が多々あるので後々本人と高専側両方から話を聞こうと思う。
新宿決戦前に初めて対面した際にはどうしてそんな格好が出来るのかと疑問に思ったが、
「よろしくな日車センセ!」
「…先生はやめてくれ」
元気が良く、こんな状況下でも一般人としての感覚を忘れない芯の強さがある事や、明朗快活な男だと知ってからは、半裸であることや突然繰り出されるギャグも然程気にならなくなった。
が、
「危なーーーい!!!!!」
と叫びながら突如現れた大型トラックを運転して大型の呪霊を何体も轢き潰していた時は軽く目眩がした。
他にも、自分でも気づかぬ内に髙羽の術式に巻き込まれる事も多々あった。
「呪霊さーーーんいるんでしょ〜!?開けてくださーーーーい!!!!どんどんどーん!!!!!」
「その擬音は口で言うものなのか?」
髙羽のその大きい声と共にいつものスーツから警察官の格好になっていた、なんて事もあった。
髙羽の術式は周囲の人間にも干渉する為こんなことが多々ある。
これで俺と同じ元一般人だと思うと凄まじい術式だが、いかんせん理解の範疇を超えており、脳が考えることを拒否するものを見た気がした。
せめてこちらが惑わない、互いにサポートが出来るような人間と組ませて欲しいとも思ったが、人手の足らない呪術師の世界ではしのごの言っていられないのだろう。
悪い男では無いので髙羽と組めと言われたらそれに従った。
ただ3回連続で髙羽と組ませられた時には流石にこちらの正気が失せてしまうと半ば防衛本能のようなものが働き、本気で考えた。
本気で考え伊地知に相談した結果、
「日車さん、お疲れ様です。」
「…伊地知、これは…」
「よろしく!日車!」
虎杖と組むことになった。
二の句が告げずにいるとおずおずと伊地知が口を開いた。
「「適切な人選でのペアをお願いしたい」との事でしたので…」
「俺が立候補したんよ!日車とは一度正面から戦ってるし一緒に戦ったし、どういう戦法なのかわかってるしさ」
頭が痛くなってきた。よりにもよって彼か、と頭を抱えたくなる。
「日車〜?」
「…」
「あの、日車さん…」
「あ、伊地知さん!俺と日車仲悪いとかじゃ無いから安心してよ!」
「…あぁ」
そう、仲が悪いというわけでは無い。
ただ俺が虎杖と目が合わせられないだけなのだ。
あの日、死滅回遊の只中、劇場で正面から対峙した時、彼は宿儺の罪を自分の罪と認識し、「自分が殺した」と語った。
そのような境遇にありながらも、それでもなお拳を握り、真っ直ぐにこちらを見据える目を、俺は見られなかった。
弱い自分のせいだと、語る彼から決して目を逸らしたく無かった。
無かったが、ただ目を合わせて見ることすら出来なかった。
己の弱さをまざまざと見せつけられているようで、無力な自分が益々嫌いになりそうだった。
しかしあの日、俺は自分から虎杖の前から消えた。血で汚れた点を分けて。
決戦の際に、「処刑人の剣」を渡した時初めて真っ直ぐ目を見る事が出来た。
体を切り刻まれ、激しい激痛に見舞われながらも、こちらの意図を読み取り意志を継いでくれた。決定打にはならなかったが繋げられた。
それきり、虎杖に目を合わせる事が出来ない。
だがこれは俺の問題でしか無いが、いかんせん虎杖が俺に興味を持ちすぎている。
「今日の任務、目合わせられそう?」
「………何度も言うようだが君は俺が目を合わせない事に気を遣わなくていい、そのままでいてくれ」
「いや〜そういうわけにもいかんでしょ」
「覗き込んで見ようとしないでくれ」
「すげぇ!!もうほぼ白目じゃん!!」
「い、虎杖君!もうその辺に…!」
しかし「目を合わせられないので虎杖とは組めない」等と言えば、彼には失礼に当たる、それにただでさえ少ない人員から何とか采配を考えてくれた伊地知にも申し訳ない。
「……わかった…」
「だいぶ溜めたね」
「伊地知申し訳ない、仕事に忙殺されて乱心したのかと」
「流石にそこまででは…ありますが…」
「あるんだ」
「まぁまぁ私のことは良いですから…予定より早いですがお送りします、資料や説明は移動中に行います」
ーG県某所
今回の任務は現代まで土地神信仰のあった廃村での呪霊討伐。日本全国の呪霊の活発化による影響により活性化。更に運の悪いことに廃村の手入れに来た人間を追い詰めて十数人取り込んでいる。資料のコピーには2級相当との記載があるが状況を鑑みるに1級でもおかしく無い筈だ。
「…かなり悪い状況だな」
「これよく凶暴化して無いね?伊地知さん」
「それが廃村を縄張りにしているらしく、その内部からは動いていないようなんです」
「なるほど、動かない事で緊急性が薄れて等級も2級なのか」
「それと、なんか今日の資料少ないね?被害状況と呪霊の特徴くらいしか無いし」
「えぇ…現場が山間にある事と呪霊の攻撃対象と思われる範囲が広く詳細に調べる事が出来ず…申し訳ありません」
「いや伊地知さん謝らんで!それ全然伊地知さん達悪くねーし!」
「そうだ、攻撃範囲が広域となると事前に調査をする人間や君達補助監督にもリスクが高く最悪の場合被害が出る、虎杖の言う通り悪い所など無い」
「(お二人共…!!優しい…!!!!)」
「それで何故攻撃範囲が広いとわかったんだ?」
「は!はい、生還した方からは「村の入り口を超えたら追ってこなくなった」との証言がありました」
「…念の為確認したい、その村が廃村になった原因はわかるか」
「1年前に大雨の影響で地滑りが起きてその影響による土砂崩れです、生き残った方々が定期的に入れる範囲を手入れをしていたらしく、襲われたのはその方達だそうです」
「では何人も土砂崩れに巻き込まれたと?」
「はい、住民が150人程いたのですが半分以上被害に遭われたそうです、行方が未だ不明の方もいます」
「…そうか」
「…なぁ日車」
「あぁ、呪霊が土砂崩れに巻き込まれた人間の恨みなどが残っていた場合、…取り込んで強化されている可能性がある」
「更に言えば、…まだ推測の域ではあるが『土地神が呪霊となってしまっている』可能性もある」
とちがみさま、とちがみさま
むらをおまもりください
われらをおまもりください
ムらヲおマもリくだサィ
峨r縺翫∪繧ゅj縺上□縺輔>
繧?繧峨r縺翫∪繧ゅj縺上□縺輔>
縺ェ縺懊◆縺吶¢縺ヲ縺上l縺ェ縺??
あぁ、あぁ
村を護りましょう
あなた達を護りましょう
わたしはこの村の土地神なのだから
「どうして守ってくれなかったの」
「イタイイタイイタイイタイ!!!」
「私の足が!!!!足が!!!!!」
「じいさん、じいさんがどこにもいない」
「おとうさん?おかあさん?どこ?」
「お前だけでも逃げてくれ」
「助けて!!!!誰か!!!!」
「この中に娘がいるんだ!!!」
「つちが、つちが」
「たすけて、だれか」
「かみさま」
「とちがみさま」
あぁ、あぁ、不甲斐ない、不甲斐ない
ごめんなさい、ごめんなさい
わたしが、土地神が守れなくてごめんなさい
あなた達を、守ります
我が身に代えても、守ります
はらのなかで、守りましょう
わたしのはらで、守りましょう
だからどうか
そんなくるしそうなかおをしないで
「車で行ける地点まではあと3分程で到着します」
車道が鋪装されておらず、車全体がガタガタと揺れている。
忙しない揺れの中、先程のやり取りを思い出していた。
「向かう前に村の人間に話を聞けて正解だったな」
「…はい、高専に提出されていない村の逸話があるとは…まさか土地神が村から生贄を立てて信仰する「生贄信仰」だったなんて…」
廃村の人間に「元々強力な呪霊がいて土砂崩れの被害で強化された可能性がある」と呪霊が発生しそうな原因は無いかと聞いてみれば、明らかに狼狽し、そこをつつけばアッサリと話した。
「…不思議な力を持った子ぉは、土地神様として村の外れにある大きな祠に入れられて、一生をそこで過ごすんじゃ」
「もう何百年とやってることじゃ、土地神様、…アンタらの言う呪霊というもんが強くなっている可能性もある」
「今の代は、…タツさんのとこのお孫さんじゃったかの」
「…アンタら呪術師からしたら、ワシらはいけない事をしておるのかもしれん、でもな、ワシらのこの信仰は、村を守る大事な大事なものなんじゃ」
「廃村の人間が定期的に手入れに来るのは土地神、もとい生贄の死体だけでも掘り出して信仰を守る、…または生贄信仰を外部に漏らさないためか」
「…」
「…平気か、虎杖」
「…うん」
「すまない、あまり気持ちの良い話では無かったな」
「いや、いいよ、俺らが祓うんだから事情はちゃんと聞いとかねーと」
「…そうか」
まだ15歳の少年とはいえ呪術師だが、要らぬ心配だったようだ。
…いや、この少年を俺は少年として見ていただろうか。
初めて出会った時から、呪術師として、「虎杖悠仁」という人間として見ていた気がする。
「間も無く到着します」
伊地知のその一声で、その思考も霧散した。
「…そういえば」
虎杖と共に戦うのは、両面宿儺との戦闘以来だった。任務では初めてではないだろうか。
「何?日車」
「…いや、何でも無い」
言う程の事でもないので口を閉ざそうとした。
「そういや俺と日車が一緒に戦うのって宿儺ん時以来じゃね?一緒に任務すんの初めてじゃん」
「……ああ、…正に今その事を考えていた」
俺の思考を覗かれたかと思う程、全く同じ事を虎杖も考えていたようだ。
「へへっ改めてよろしくな、日車!」
元気そうに笑うその姿は酷く眩しい。
今まで辛うじて眉間を見ていたが流石に眩しすぎる。
「…誰かサングラスは持っていないか」
「何で????今日曇りよ???」
「五条さんの予備用に取っておいた物ならありますがそちらで良ければ、それか運転用の私の物になりますが」
「あるんだ!?!?」
その後は亡き五条のサングラスと伊地知のサングラスを着け比べる等、任務前とは思えぬ程和やかに進んだ。
「車で入れるのはここまでです」
荒れた道を進み着いた先は山の入り口と思われる石造りの階段だった。事前情報によればこの先に集落があるはずだ。
廃村の土砂崩れの被害は思っていたよりも深刻なものだったらしく、山の中腹にあるという廃村を遠目から見ても、木造家屋だった瓦礫と荒れた耕作放棄地が見受けられた。
「今回は入山入口であるこちらから帳を降ろしますので、村から少々離れています、くれぐれもお気を付けください」
「りょーかい、伊地知さんも帳降ろしたらいつもより少し離れててね、今回何が起きるかわかんねーし」
「了解しました、ありがとうございます虎杖君」
伊地知は帳が解除され、任務を終えた我々の姿を確認するまでは恐らくこの場所を離れない。
恐らく、というのは帳が降りている時は我々は外の様子を見る事が出来ないので確かめた事が無いので不明だからだ。
そして場所を離れないのは補助監督だから、という理由もあるだろうが。
以前かなり長期戦に持ち込まれた際、呪霊を祓った後に帳を解いた後目に映ったのは。
真っ直ぐにこちらを見据える伊地知だった。
しかも帳を降ろされた時に見た地点からほとんど離れていない。
「日車さん!ご無事でしたか」
「…あぁ、少し負傷したが建物内の損傷は無い」
「そうですか、負傷というのは如何程ですか?」
「自分で治すので問題無い、…報告書には必要だろうか?」
「お願いします、必要でしたら家入さんの所に行きましょう」
…そんなやりとりをした記憶もあるが、帳を降ろした先の景色に居た伊地知が妙に記憶に残っている。
虎杖とのこのやりとりを見るに彼は本当にこの場を離れず、我々が戻るのを待っているようだ。
「んじゃ!行ってきます伊地知さん!」
「行ってくる」
「お気を付けて」
帳が降り切るその時まで、彼はこちらをまっすぐ見据えていた。
廃村までの道すがら、ある可能性を虎杖と共有した。
「罪状が無い…?ってどういう事だよ」
「幼い頃から祠に幽閉されていたとして、俺の誅伏賜死を使用しても犯した罪が何も無ければペナルティが何も課されない可能性がある」
「…確かに」
「あくまで『人間の土地神が呪霊化していた場合』だ、呪霊が人を襲って取り込んでいる時点で罪として立証出来る」
「でも俺の時みたいに「『人間の罪』か『呪霊の罪』どっちを取るかわからない」って事か」
「そういう事だ、二審に持ち込もうとも相手が呪霊の方だった場合、今回俺の領域展開は一度きりだと思ってくれ」
「わかった」
階段を登り切ると、呪霊は案外すぐに見つかった。
村の中心部、家屋だった物が建ち並んでいる場所に呪霊はいた。
「日車、いる」
「あぁ」
全身が大きな布で覆われており、布から出た腕で村人を山と積んで抱えている。
多腕で全身の至る所から腕が生えており、長さを変えられるのか腕を自在に操っている。
抱えているのは、
土砂崩れの被害に遭い数年見つかっていなかった状態であろう損傷の激しい遺体。
つい最近捕まったのであろう遺体。
「虎杖、我々から見て右手側にいる眼鏡をかけた年配の男性、…恐らく報告にあった呪霊に捕まった村人だ」
事前に資料で見た男性の顔面は、眼鏡ごと何かに局所的に押されたように潰れていた。
「あぁ…ちゃんと祓ったら伊地知さんに確認取ろうな」
「…そうしよう」
あぁ、あぁ、ここなら大丈夫
わたしのはらなら大丈夫
よわむしの『体』はどこかへ行ったけど
『私』がいるから大丈夫
「…なんか鳴いてるけどよくわかんねぇな」
集落の人間の死体を抱き寄せ、無数にある手は慈しみや愛しさを持つ者のように死体を撫で回している。
「僅かに『はら』『大丈夫』『私』などが聞こえた、人語を理解しているようだな」
「人語にしてももうちょっと何か話してくんねぇと、来る前に言ってたどっちのパターンかもわからんし」
「あぁもう少し情報が欲しい所だ、領域展開をするにしてもまず村の人間から引き離して対峙する必要があるな」
「それにあのまま戦ったりして遺体に何かあったら持って帰れなくなる」
「それにあの呪霊がどんな変化を遂げるかまだ未知数だ、見てくれ」
「ん?…え〜〜〜と、どれ?」
「腕が増えている、事前資料の特徴事項ではおよそ22本、今は48本だ」
「26本も増えてんじゃん」
「…余り結びつけたく無いが、あの呪霊に捕まった最新の被害者は13人、その全員が村人だ」
「…集めた村人を取り込んで」
「かもしれないな、ただそうなると被害を受けた村人全員を取り込んでいるわけでは無さそうだ。行方不明者に対して腕の数が少なすぎる」
「アイツも探してたんかな、自分のとこの村人」
「…その詮索は今は止そう」
『ナにしテるノォ?』
気づかれたようだ。
考える間も無くガベルを出し、構えた。
虎杖も瞬時に戦闘態勢に入る。
『ねェ?だァレぇ?』
「俺声デカかったかな」
「いや普通の声量だった、村に入った時点で感知するタイプかもしれないぞ」
『よソもノ、ヨソもノぉ』
その鳴き声を出した瞬間、呪霊の布の下から無数の腕が伸びて来た。
「ッ虎杖!」
「応!!」
無数の手を払うようにガベルを振り回す。
「ーーッコイツ!!滅茶苦茶腕が多い!!」
「あの外に出ていた腕は外に出していただけで、実際にはそれ以上の腕があったようだな」
「じゃあホントは何本あるかわかんねぇな!」
虎杖は素手で殴り返しているが無数の腕と2本の腕では分が悪い。
一度虎杖の前に立とうと意識が逸れた瞬間、振り回したガベルに弾かれた腕が虎杖目掛け伸びていた。
「虎杖!!」
ガベルをそちらに伸ばして虎杖に伸びていた腕を払ったのも束の間、残りの捌き切れなかった腕が無数に飛び込んできた。
「ーーーッ日車!!!!!」
「ぐぅッーーー!」
無数の腕に殴りかかられ、みしみしと体が悲鳴を上げる。口内に血の味が滲んできた。
「日車!!ちょっとごめん!!」
虎杖に抱えられながら一時撤退を余儀なくされ、2人で近場にあった辛うじて形を保っていた家屋に入り込んだ。
「すまない虎杖、怪我は無いか」
「俺は無いから、…二度とやらんで、あれ」
「…君に嫌な思いをさせたな、すまない」
「ごめん、言い過ぎた…ってか口から血!血ィ出てっから…」
彼は仲間の死を何度も見ている、そんな彼にまた人の死を目の前で見せるところだった。
しかし、先程の戦闘である仮説が浮かび、口に出した。
「虎杖、聞いてくれ」
『よそモの、キたァ』
「領域展開、ーーー誅伏賜死」
やはりというべきか、資料には予想通りの事が記されていた。
あの家屋で虎杖に話した仮説の通り、
この呪霊は、『人間の土地神では無い』方の呪霊だった。
「虎杖、聞いてくれ」
「いや血ィ出てっから…無理せんで…!」
「共有したい仮説がある」
「ちょ、ちょい待って!」
俺の負傷に狼狽える虎杖のパーカーの襟首部分を勢いよく手繰り寄せた。
「問題無い、それよりも聞いてくれないか」
緊急時なので乱暴にしてしまったが話し始める前に、
本当に偶然にも目が合った。
瞬く茶の瞳に吸い込まれそうになる。
すぐに目だけ逸らしたが、虎杖も驚いたのか何も反応が無い。
だが先程慌てていた彼を黙らせるには好都合だったようで、目を合わさず話を進める。
「死体の中に押し潰したような跡があったにも関わらず、今回村人では無い俺達には『よそもの』と言って殴りかかってきた、恐らく村人は手で掴んで取り込んだと思われる」
「……」
「呪霊の発言と村人以外に対する行いが機械的過ぎる気が、…虎杖?」
「…あ、ごめん!聞いてた!…聞いてたけどさ、…え〜…とつまり、どゆこと?」
「すまない長過ぎた、簡潔に言うとあの呪霊は行きがけに言った『人間の土地神では無い方の呪霊』である可能性がある」
「ん?それにしては村人だけ襲ってるよな」
「取り込んだ村人の「保護」をしていると考えたらどうだろうか、そしてそれを判別できるだけの知能がある」
「確かに集めた村人には優しい手つきだった、…てか知能とあの腕の数あんの、厄介過ぎん…?」
「そこは俺が領域展開をして判決を出して無力化しよう、保護目的とはいえ何人も殺しているから没収から死刑までは確定だろうな」
戦略をもう少し練りたかったが、そう悠々とこの家屋に居られるわけでは無い。
「これから俺が領域を展開をする、君は判決が終わって無力になった隙を狙ってくれ」
「わかった、…頼むから、無茶せんでね」
「善処しよう」
この呪術師という職に安全や確実というものは通用しない。現に今だってそうだ。
善処することなど不確実だ。
ただ
無茶をしないでくれ、という彼の悲しそうな様子には、何故か抗えなかった。
「村の外れの祠ってコレ?」
「見たところどこも崩れていないな、伊地知に連絡を取るから少し待ってくれ」
帳を解除し、伊地知に呪霊を倒した詳細と祠の確認をする旨を簡潔に話して携帯を切った。
呪霊は俺の予想通りジャッジマンに没収と死刑を言い渡され、領域を解除した後虎杖の拳によって倒された。
反転術式を使って回復し、周辺にも呪霊や被害者がいないか捜索していた所、事前に聞いていた土地神の居たとされる祠を発見した。
洞窟の中にあり、想定していたよりかなり大きい物だった。洞窟の奥には木造で平屋の一軒家程の大きさの社が建てられており、この中で生活をしていたのだろう。村の外れにあるからか、殆ど被害は無い様子だった。
「土地神の遺体は回収できていない筈だが…」
「なぁ日車、ちょっと思ったんだけどさ」
「何だ」
「土地神の人、…生きてたんじゃねーかな」
「…続けてくれ」
「だって祠は村の外れにあって殆ど土砂の被害に遭ってない状態だろ、逃げて村の人と合流も出来た筈じゃん。でも生き残った人は誰も土地神を見てない」
虎杖は少し言葉を考える素振りをしながらも言葉を繋いでいく。
「土地神の人は逃げたかったんじゃねーかな、と、思う」
この歪な考え溢れる集落から
陽の光が入口にしか入り込まず湿度の高く暗い祠から
忌まわしく不自由なこの土地神という立場から
もしくはその全てから
「土砂崩れであちこち大騒ぎになって、自分の命が危険な時にこんな離れた場所にいる土地神に構ってられないだろ。行ったとしても祠が無事な保証も無い。」
「…ここは山々の丁度中腹辺りだ、実際村の人間は土砂のせいでここには近づけなかったらしいな」
「そう!…もし自分の立場やこの環境に嫌気がさしてたらこんなチャンス逃さず絶対逃げてる」
「やけにハッキリと言うな」
「仲間にいるんだ、田舎が嫌で東京の高専に来たのが」
虎杖の発言に対して「そうか」と返すことしか出来なかった。
しかし土地神とされていた人間が生存している可能性があるならば幾つかやる事が出来る。
「本人の要望で村から出たい、かつ村と極力関わらず生活したいのであれば法的な手続きと社会的支援を受けて貰う事も視野に入れて行動しなければな」
「…この場にいないのに?」
「この場にいなくてもだ、事実確認はしていないが、もし戻って来た際に村人からまた神として祀られ、隔離されるのは本人にとって嫌なら先に行動しなければな」
それと村人の監禁の罪の証人だ、仮に警察に動いてもらい裁判をするとなると実際に被害を受けた土地神の証言が必要になる。
そんな思考を巡らせていると、虎杖がぽつりと溢した。
「…見つかったら、その先楽しく生きて欲しいな」
「……」
「そう思わん?」
「……あぁ」
「日車?」
「いや…何でも無い」
人を思うその顔が、
相変わらず、眩しいと思っただけだ。
「いやもう完全に目どころか頭の方向がこっち向いてないんだけど、てか傷もう大丈夫なん?」
「本当に何でも無い、負傷した箇所はもう治療してある、…君は気にしなくて良い」
「気にする、……俺日車好きだし」
…………ん?
「聞こえてた?俺日車のこと好きだよ」
「帰ろう。暫く働き過ぎたな、幻聴が聞こえて来た。」
「ゴリ押しすぎん!?!?聞こえてたじゃん絶対!!!!」
「ホントは日車の意識が戻ったら伝えようと思ってたんだけどさ、こっちもそっちも忙しかったし。」
「…確かにここ最近は君と顔を合わせる事も無かったな。」
新宿での決戦の途中で戦線離脱し、目覚めてからは少し高専に滞在した後に出頭して裁判を起こし、1年後に戻ってきてからはずっと学びと訓練の日々で、ただ呪霊を祓って生きてきた。
思えば、自分が戻る理由の1つになった筈の虎杖に、戻った時に挨拶を交わしただけできちんと顔を合わせてもいなかった。
「…傷が」
つい眉間の傷に手が伸びそうになる。
あの決戦を生き残り勝利した労り、では無い何かに衝動的に腕が動いた気がした。
「いいよ」
腕を取られる。
虎杖に、眉間の傷に、手が、触れる。
それは無遠慮なようだが、こちらを伺うような、優しく触れるような取り方だった。
指にじんわりと虎杖の体温を感じたが、歪に刻まれた傷に指を掠めた。
「俺の顔にもあった」
「うん、お揃いだった」
「もう治された」
「家入先生いたかんね」
「残ったままが良かったか?」
「…日車が痛いのはやだよ」
傷に触れているのは自分の方だ。
しかし先程よりどこか悲しげな顔でこちらを見る虎杖に、何故かわからないが痛みのようなものを感じる。
「腕まだ痛む?」
「…時たま」
「俺口元のは塞がるまで結構痛かったな」
「…待て、自然治癒させようとしたのか」
「や〜〜…そん時ちょっと高専に戻れんくて…」
「…痛み止めなどは飲んでるのか」
「いや今は平気、でも飯食う時大口開けるとたまにつっぱる」
「生活に支障が出ているなら治療すべきだ」
「や、これもう塞がってるし出来ねぇって、支障あんの大口開ける時だけよ??」
目すら合わないのに、初めて対峙した時からついていたこの傷1つ1つに話す事が山程出てくるこの状況は、1年前の自分からしたら信じ難い光景だろう。
今でも自分は罪を裁かれるべき人間だと、罰を受けるべき人間だと思っている。
しかし彼と、虎杖と話していると
入っている筈の無い牢に眩い光が差しているような気持ちになるのは
何故だろうか。
「日車はさ、俺のことどう思ってんの?」
「…」
伊地知の元へ戻りつつ、虎杖からの視線を受けつつ返答に困っていると、焦れたのか虎杖から口を開いた。
「何回でも言うけどさ、俺は日車のことす」「虎杖」
「…」
思わず遮ってしまったが、その先を再びきちんと聞くのが怖かった。
「…嫌なん、俺が日車のこと好きだってこと聞くの」
「…それは」
じっと、続きを聞かせろと視線を寄越され、観念する。
「…嫌とは、違うんだが」
「…うん」
「…君が俺を好きだと思ってくれていることが、嬉しく思ってしまう自分がいるんだ」
「…………ん?」
歩を進める足が止まってしまった。
急に止まったからか虎杖は少し先で止まった。
「君から好意を向けられて、こんな自分にそのような感情を向けられていることに疑問もあるが」
ぴた、と言葉が止まると同時にどう続けて良いのかわからず、視線が彷徨う。
しかしそれもほんの少しの静寂、口から紡いだ言葉は止められない。
「何より、好ましい感情があって接してくれていると思うと、嬉しくもある」
「………おん」
「……すまない、上手く表現が出来ないな」
自分を初心に帰らせてくれた存在、虎杖悠仁という存在から好意を貰えることに、何故自分のような存在がと疑問を感じるし、好ましい感情を向けられて嬉しくもある。
それを細切れに、わかりやすく、自分に言い聞かせるようにも話した。
「日車さ」
「…何だ」
「それ両想いって事でいいん?」
「……………何?」
「いや!それさ、俺は日車のこと好きで、日車はそれが嬉しいってことじゃん!」
「…」
思考の処理が追いつかない。
何だ?両想いと言われたか?
「俺の好きは友達とか知り合いでもなく、恋人になって欲しいって好き!って気持ち、恋人がする事もしたい好き」
目が合わなくてもわかる、熱いエネルギーを滾らせた視線を感じる。
「日車はさ、難しく考えすぎなんじゃねぇかな、こういう感情向けられてさ、嬉しかった?嫌だった?」
「…嬉、しかった」
「んじゃあ俺のこと好き?嫌い?」
「……その質問は些か狡い」
「いーじゃん、俺と同じじゃ無くても良いからさ、教えてよ」
「…」
「…ダメ?」
「……」
「日車?」
いけない、よせ
「俺、も」
止めろ
やめろ
「君と、同じだ、虎杖」
君のことが好きで、すまない
君を呪って、すまない
年若い、未来ある君を縛りつけたくは無いのに
これまでの学び、法律、己の考え
これら全てが瓦解して
自らの弱い部分全て
それらが顔を出しているのに
その砕けた場所に光が差すような
酷く温かな光に包まれているようで
心地良く感じている
頭が混乱している、全身が酷く熱い。
俺は今、どんな顔をしている?
「ははっ…そんな顔で言わんでよ」
目どころかもう虎杖のどこも見ていられなかったが、その声はひどく嬉しそうだった。
虎杖は俺の手を取り、手の甲を親指の腹で優しく撫ぜた。
ぴくりと反射的に震えるがそれも一瞬だけ。
酷く心地が良い、離れがたくなる。
生きた心地がしない、心臓の音が煩い。
「………すまない」
「いーよ、俺今すんげえ嬉しいから」
そう言うと虎杖は俺の手を引いて力一杯抱きしめた。
「なんか、日車真っ赤で、可愛い」
「か、」
「ちなみに日車的に付き合うのってどう?」
「つ……」
「…恋人らしいこともしたいけど」
「君はまだ未成年だからそういうことは君が成人してからだ」
「急に正気に戻るじゃん」
「先の発言で返答しないのはまずいと思ったんだろう、多分」
「多分かい!じゃあ大人になったらそういうことしていいんだ」
「…大人になっても好きだったらな」
ちなみに祠に向かう途中で帳を解除したことを失念していたため、一連のやり取りを伊地知に全て見られていた。ひどく心配された為事情を話さざるを得なかった。
「お二人とも、おめでとうございます」
と祝福を受けてしまった。
虎杖が「ありがと!伊地知さん!」と礼を返していた時はどこかむず痒い気分になった。
「虎杖と何があったんだ?日車センセ」
G県での任務から幾らか日が経ち、任務帰りに日下部に捕まり連れ込まれた談話室。
互いに向かい合うようにして半ば無理矢理座らされ、虎杖との現在の関係を突然聞かれた。
顰めた顔で自分の名称に「先生」を付けられ、嗚呼これは何か言われるな、と察しがつき一気に苦虫を噛み潰したような顔になった。
「先生はやめてくれ日下部」
「今俺はアンタに嫌がらせしてぇんだ、いくらでも呼んでやるよ日車先生」
虎杖と、と言われてしまえば恐らく虎杖との交際についてだ。
だが虎杖は無闇矢鱈に口外するような人間では無いし、俺も虎杖との話し合いがまだ済んでいないので誰にも言っていない。
…高専の彼の仲間に相談などしていただろうか?
そしてもう1人、伊地知も知っているが彼も本人達の預かり知らぬ所で口外するような人間では無いので除外する。
日下部が気づいたか、もしくは
「…虎杖に何か言われたか」
「その通りだよ、別にアンタとは同僚のつもりだってのによ、…ツレの手綱くらい握っててくれ」
「俺は虎杖の手綱を持っているわけでは無い。…そうだな、彼が俺に関連する事で何かしてしまったのなら申し訳ない。無闇矢鱈に知り合いに噛みつくなとは注意しておく。」
「そうしてくれや」
「話はそれだけか?」
「いやアンタそれだけなワケ無いだろ、オイ席立つな!待て、待て!」
「日車〜!!」
「「あ」」
これ以上深く聞かれる前に退散しようと無理矢理切り上げようとしたら事態が余計に悪化してしまった。
「あれ日下部先生もいんじゃん!さっきぶり!何してんの?」
「……話に上がっていた人物がこうもタイミング良く出てくると何か謀られているような気がするな」
「俺は謀ってねぇぞ」
「虎杖、丁度良かった」
「どゆこと??全然わかんねぇんだけど?」
「俺は今から君を叱る、そこに座れ」
「何で!?!?俺怒られるようなこ、……としたかもだけど何で!?!?」
「…余罪もありそうだな、パチンコか?先週秤にも説教したばっかだぞ、…俺も聞くか」
「秤先輩とのパチは無関係じゃね!!!???日下部先生もどうしたん!?」
「秤もお前も懲りずに何してんの???」
結局虎杖は後で秤と共に別で説教を受けることになった。
「けんせい…牽制???俺した??」
「日下部、先程の話を詳しく」
「あ"〜〜…まぁ、アンタらの雰囲気が何か変わった気がしてよ、虎杖、さっき「日車と何かあったか?」って聞いたよな」
「ハイ」
「それになんて答えたか覚えてるか?」
「え〜…?「何で?」って聞いたのは覚えてっけど…」
「マジかお前ほんの十分くらい前だぞ」
「いや、日車任務から戻ってきたって聞いたから早く会いたくて」
「……」
「良かったな日車、彼氏に愛されててよ」
「…茶化すな日下部、会話の内容を詳しく」
俺は虎杖が日車に懸想してんのは前から知ってたんだが、
「ちょい!!!!何で知ってんの!?!?」
「見りゃわかる、あと他の面子も気づいてるはずだ」
「………日下部、そこは後で詳しく聞かせて欲しい、話を続けてくれ」
「あぁ」
…前から知ってたんだが、ここ最近虎杖は日車見かける度嬉しそーに尻尾振って駆け寄ってんの何度も見て「あぁこりゃ進展でもあったか」と思ったワケだ。
ただ俺も一応教師だからな、未成年の教え子が俺と同じくらいの歳食った男と付き合ってるとなりゃ「清いお付き合い」ってヤツなのか判断しなけりゃならん。
「オイ虎杖」
「日下部せんせー!こんちゃす!」
「おい待て駆けるな!話がある」
「何すか?」
「日車についてなんだが」
「…日車が何?」
そこでやっと駆け足が止まって俺に向き直ったよ。
「虎杖、日下部も歳上の教師だ。敬語はキチンと使うべきだと思うぞ。」
「ハイ!」
「続けて良いんだよな?」
「「どうぞ」!」
「ハァ〜…」
まぁ虎杖引き止めて話したわけだ。
「あ〜…日車となんかあったか?」
「んまぁ…あったけど、何で?」
「何でって、一応教師として聞いとかなきゃいけねぇだろ」
「…ホントに教師として?」
「は?」
「日下部先生は日車どう思ってんの」
「…あ?」
「悪ぃけど俺日車誰にも渡さねーから」
「いや違ぇけど…」
「そ?じゃいいや!俺マジで行くね!」
「オイコラ待て!!!!!!」
「……………俺マジでそんな事言った?」
「言ってたから先に日車呼び出してカレシに言っとけって注意したんだよ」
虎杖は顔を赤くしたり青くしたり忙しない動作で頭を抱えている。俺も頭を抱えたい。
まさか俺に対してそこまで執着心を抱いているとは思ってもいなかった。
「…本当に言ったのか虎杖…」
「言〜〜〜った覚え無ぇけど日下部先生が嘘つく理由無いから多分言った!」
「いや覚えてないのかよ」
「だって急いでたんだよ!!!」
「日車に会うのに?」
「そう!!!!!!」
日下部は自棄になって答える虎杖との問答がツボに入ったのか、笑いを堪えきれず肩を震わせている。
いい気分ではなかったので悪戯心で日下部のちょうど真上の位置にジャッジマンを出現させてみた。
「ッッッッでぇ!!!!」
「ふむ、ジャッジマンの秤は人間にも効くのか」
「いってぇ…何だよ彼氏揶揄うのがそんなに嫌か」
「ただの気分だ」
「アンタ気分でそんな事する人じゃ無ぇだろ…」
「日車俺気にしてねぇしジャッジマン困ってっから戻してくんね…」
「まぁごちゃごちゃ言い合ってもしょうがねぇ、ぶっちゃけ聞くがお前ら付き合ってんのか?」
「はい!!」「あぁ」
「マジかよ…」
日下部は面倒だと体で表すようにがっくりと項垂れた。
「日下部先生のこの反応ってなんか関係あるん?」
「あぁ、自身の受け持ちで無いとはいえ日下部も教師だ。成人男性と未成年の男子が交際している事に不安要素もあるだろう。」
「そっか、確かに」
「そういうことだ、お前らセックスしてたらぶん殴るぞ」
「ストレートすぎん??てかぶん殴るだけで済むんだ」
「…日下部や伊地知の相談を経てからにしようと思っていたが、未成年の虎杖と交際するに当たっての誓約書を作る予定だ、勿論虎杖とも話し合いをしてからになるが」
「伊地知もってことは伊地知は知ってんのか」
「寧ろ交際を知っているのはこの場の3人と伊地知だけだ、…恐らく」
日下部は明らかに「他の人間にも絶対バレてるぞ」という視線を寄越してくるが無視した。
「てか書類作るのって俺と日車の相談の上で作るだけで良いんじゃねぇの?伊地知さんとか日下部先生もいないと駄目?」
「君は未成年で交際の同意を得るべき父母や祖父は他界している。民法737条の未成年の子どもが婚姻をするには、父母の同意を得る必要があるが、俺達は同性なのでパートナーシップ制度がこれに当たるな。後見人であった五条は亡くなっているが君の身元を預かっている高専の関係者に話をしないわけにはいかない。君に手を出さない、出させないという『縛り』を結ぶ事も込みで作成しようと思ってな、俺は縛りについてはまだ勉強不足だ、日下部や伊地知にも聞く必要がある。」
「セックスしたらぶん殴るとは言ったけどすんげぇ真面目だな…そんで虎杖は顔押さえてどうした、見える所全部赤いぞお前」
「や…………付き合う事とか今後を前向きに考えてくれてると思ってすんげぇ嬉しくなってる」
「未成年と付き合うんだ、これくらいするのは大人の義務だ、…ただきちんとした大人は歳の離れた子どもに恋愛感情を抱かないが」
「アンタ…それ世のちゃんとしてねぇ大人に聞かせてぇわ」
その後は話が脱線し過ぎた事で大幅に時間を取ったため、後日改めて伊地知も含めた4人で話し合いの場を作る事で解散となった。
「まぁなんだ、アンタがまともで良かったよ」
「…まともだったら未来ある若者と交際はしないぞ日下部」
「いやまともだ、互いがいつ死ぬかわからねぇこんな所にいたとしても、相手のことを真剣に考えて、本気で先を見据えて真剣交際しようってんだ、これでまともじゃ無いってんなら何なんだよ」
それだけ言うと日下部はもう用は無しと立ち上がった。
「話し合いの日程は追って連絡する、伊地知今死ぬ程忙しいからだいぶ先になる事は覚悟しとけよ…その間セックスしてたら」
「ぶん殴るんだろ?わかってるよ、日下部先生。心配してくれてありがと」
「心配ってかよぉ…」
「あと俺手出すのいつまでも待てるから大丈ッッッッだぁ!!!!!!!」
「え、お前がそっちなッッッッでぇ!!!!!」
問答無用でガベルを出した。後で術式使用で怒られるだろうがそんな事よりただ彼らの会話がそれ以上続くのを止めたかった。
しかし遅過ぎたので「ただガベルで2人を殴打した人間」になってしまった。
「すまないな2人とも、ただ先程の会話はデリカシーに欠けるぞ、今後は気を付けてくれ」
「……下世話だったとは思うがガベル出すか普通…?」
「日車俺頭割れてない??すっっげぇ痛ぇんだけど……」
「日車こいつ反省して無いよな????」
「頭は割れていないぞ、安心してくれ」
「扱いの差、…いや、お前ら付き合ってんだもんな、そっち優先するか……」
今度こそ解散となった。
「虎杖」
先を向く虎杖はその一言だけでこちらを向いた。
「先程の話の最中に言っていた俺と会う前に日下部としたやりとりは、本当に覚えてないのか?」
「うん、全然何にも覚えてないって訳じゃねぇけど」
「そうか…」
何か理由があって覚えていない、というわけでは無いようだった。
虎杖は少し気恥ずかしそうに続けて口を開いた。
「日下部先生と日車、最近見る度一緒にいる気がしてさ、無意識に警戒してたんかも」
意外な返答に少し驚いてしまう。
「意外だな、君が他者に嫉妬するとは」
「するよ、余裕無いみたいでちょっと恥ずいけどさ」
確かに日下部には稽古や呪術についての知識共有、様々な呪霊や戦闘時においてのシュミレーションに付き合って貰っている。
その為共にいる時間が多いのは仕方がないとはいえ、嫉妬されているとわかると、どこかむず痒かった。
「え、日車笑ってる?」
「…笑っていないが」
「嘘、なんか笑ってる」
「嘘など君相手につかない…ただ、そうだな」
きちんと相向かいで話したい。
そんな時でも、虎杖の目が見れやしない。
ただ
「君の、その嫉妬が心地良く、嬉しいと思ってしまったんだ」
この何とも言えない、胸を擽るようなこの気持ちだけは、君に伝えたいと思った。
「…我ながら良い大人では無いな」
未来ある若者、そして自分に初心を思い出させてくれた存在。
一個人に対して少々度が過ぎる、神を信じるかのような感情を持ってしまっているのは確かだ。
それでも、崇めるのでは無く、慕うのでも無く、ただ純粋に人間として、
そんな虎杖が、
「…好きだな」
ほう、と息でも吐くように言葉が出た。
呼吸のように、普通の事のように、出てしまった。
自分でもよくわからず、ふっと顔を上げると
目が合った。
喜色満面のその顔は赤らみ、一目で自分に対して好意、愛しさを持ち合わせている、と丸わかりの顔をしていて。
思わず目を奪われている間に、虎杖の顔がすぐ目の前にあった。
「いたど、」
がばり、と
自分の口が単語を紡ぐ前に無言で力一杯抱きしめられた。
「………限られた人間しか入らない高専内とはいえ公共の場で抱きつくのはよろしくは無いぞ」
「ごめん!!!!ちょっとだけこうさせて!!!!」
「いや、俺は構わないが…一体何が君をそうさせる?」
そういえば先の戦闘後の帰路でも抱きついてきていたな。抱擁が好きなのだろうか。
ただ虎杖の高めの体温と、少し早く強めに脈打つ心拍を体で感じられる事に、少々浮ついた気分になった。
「…何やってんのよアイツは」
「とうとう日車さんと付き合いだしたんじゃないか」
「この間恋愛相談されたばっかじゃない、伏黒なんか聞いてる?」
「聞いてないな、まぁ良いんじゃ無いか、今幸せそうだしこの後聞いても良いだろ」
「水くっさいわね〜…ま、そうね!ただ視界の範囲でいちゃつかれるのはご免ね、ご祝儀に釘でも持ってってやろうかしら!」
「おい釘崎水刺すな」
日車寛見は以前非常に困っていた。
それは21歳年下の彼にのみ目を合わせられない事。
「日車、お待たせ!」
「いや、あまり待っていないが」
「最近時間合って無かったからさ、俺が待たせたく無いんよ」
「……」
「もう無言でサングラス出すの慣れてきたわ、今日どこ行く?」
「君の好きな店で今季節のキャンペーンがやっているらしいぞ」
「マジ!?早く行こ!!」
今はもう、あまり困ってはいない。
翻訳機を使うからぎこちないところはご了解お願いします。 本当に涙が出るほどいい。