「弱気な人は嫌い」黒人差別問題旋風吹き荒れる中、「不思議の海のナディア」はストレートパーマをかけた
2019年01月20日
なんか最近ナディアの初期案を引用した記事のアクセス数が上がっているので、ちょっと再構成して記事にしてみる。
不思議の海のナディアは1990年に放送されたNHKの連続TVアニメーション。庵野秀明がエヴァンゲリオンの前に監督した作品である。ジュール・ベルヌの「海底二万マイル」を元にしている。ヒロインは故郷がアフリカのどこかという褐色肌の少女。彼女の故郷を探す旅が物語の骨子である。
貞本義行による初期案では髪にウェーブがかかっており、唇も強調して描かれている。これが放送版では単に褐色のオカッパの女の子になった。放送版も良いのだが、初期版でも見てみたかった。なぜ変わってしまったのか。
「ふしぎの海のナディアロマンアルバム」ではそのことについて言及されていない(と思う)。ただ、劇中で登場する別のアフリカ人の女性も放送版と違う初期案が掲載されている。
YAWARA!のジョディーのような大柄な女性から、女子バレーボール選手のような運動神経高そうなデザインに変更されている。欄外の解説で
「貞本さんがデザインしたムラムラは左上のもので、この設定を使って作画が進められていたが、諸々の事情でグループタックがデザインした右上のデザインに変更されてしまった。視聴者が考える以上にアフリカを舞台にするのは困難なことなのだ。」
と説明されている。
本文の方では
「32話、33話はアフリカが舞台なんですが、人種差別の問題などあって結局、何もできなかったですね。何もできないならアフリカを舞台にしなければいいのにというくらい何もできませんでした。」
と庵野秀明が解説している。
ナディア初期案に対するネットの反応を見ると、黒人問題差別旋風について、あまり今の人は知らないのかなという印象を受けた。まあ、俺もボンヤリとしか知らないんだけどさ。
「黒人差別をなくす会」は1988年に大阪在住の親子三人が始めた運動で、大人気絵本「ちびくろサンボ」を絶版に追い込んだことでその名を轟かせた。その後、手塚治虫や藤子不二雄作品の一部を出版の一時停止、絶版に追い込み、タカラやカルピスなどの大企業のヒット商品にもダメージを与えた。出版社が恐怖し、加速度的に行き過ぎた自主規制へと発展したのも分かる気がする。
小林よしのりはゴーマニズム宣言の中で、「髪がちぢれていたらいかんとか唇が厚かったら差別とか…ギャグなのにデフォルメはできんとか…もう黒人はすべてマイケル・ジャクソンで描くしかないっ」と描いている。なので、ナディアの初期案がボツになった理由もこれにまんま該当する。
これで抗議がきたら言いがかりに決まってる、戦えば良かったのにという意見の人もいるだろうが、ナディア放送開始の90年は、先ほど述べた手塚治虫、藤子不二雄、カルピス、タカラの他に加え、少年ジャンプ作家の鳥山明、秋本治、ゆでたまご、えんどコイチ、佐藤正らが無双され、討ち取られている渦中の年だったのである。放送が3年早ければ、ナディアの初期案が通っていたかもしれないと思うと惜しい。
6年後の追記
この記事はめちゃくちゃヒットした。
日本の漫画アニメは黒人を主人公にしないので差別的みたいなことを言って注目を集めた人が時々でてきまして、反論のソースとしてたびたび引用されたのだった。ちなみに漫画アニメは黒人を主役にしないから差別だ派の人は「ナディアは黒人じゃない。ヒスパニックだ!」とか言い出す始末。アニメ見てないだろ!ジャンのおばさんに「黒人じゃないか!なにされるか分かったもんじゃ無いよ!」って差別されるシーンがあるんだよ!


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