阪神の一発攻勢で分かった“新バンテリン”の現実 中軸の破壊力とホームランウイングが試合の景色を変えた
バンテリンドームナゴヤの景色が変わった。その事実を、これ以上ないほど分かりやすく示した試合だった。阪神は4月11日の中日戦で森下翔太、大山悠輔、佐藤輝明の中軸がそろって本塁打を放ち、9得点で快勝。チーム4本のアーチのうち、森下の先制弾、大山の1号、佐藤の7回の3ランと、実に3本が今季から新設されたホームランウイングに飛び込んだ。中日側から見れば、自軍の本拠地に新しく設けた“追い風”を、まず相手に使いこなされた格好だ。
中日は先発・大野雄大が4回4失点で今季初黒星。仲地も佐藤にバックスクリーンに特大の一発を浴びた。これはこれで文句なしのホームランだが、昨年まではそれ以外の4本は外野フライか二塁打になっていた可能性がある。一つ一つを振り返ると、ああもう、ややこしいとなりそうなのだが、中日の本拠地でありながら、阪神の中軸の破壊力ばかりが際立つバンテリンという展開になったのは、どんなめんどくさがりの虎党にもわかる。
中日もドラ6・花田旭のプロ初本塁打やサノーの2ランで応戦した。両軍合計6本塁打はバンテリンドームでは歴代最多タイ。そのうち5本がホームランウイングへの打球だったという事実は、この球場がもはや昨年までの“広いだけのバンテリン”ではないことを実証していた。
ここで大事なのは、単に「狭くなったから本塁打が出た」と片づけないことだろう。打球を運ぶ力がある打者は、その変化をすぐに結果へ変える。逆に言えば、そういう打者をそろえているチームほど恩恵を受けやすい。阪神の森下、大山、佐藤はまさにそこを証明した。特に佐藤は7回に右翼テラスへ3ラン、9回にはバックスクリーンへ2打席連発。後者は昨年までのバンテリンドームでも文句なしの一撃であり、単なる“テラス頼み”ではないことも示した。
数字以上に大きかったのは、中軸3人がそろって本塁打で得点に絡んだことだろう。阪神は今季ここまで、どこか“つながりながら仕上げていく”ような勝ち方が多かった。
だが、この日は違った。球場の新しい形を、力でねじ伏せるように使った。こういう勝ち方が増えてくると、相手バッテリーの配球も変わる。これまでなら外野フライで済んでいた打球が、一転して失点に変わる可能性があるからだ。
バンテリンドームが投手優位の球場であるという既成概念は、少しずつ崩れていくのかもしれない。
これはホームの中日にとって、なかなかに重い現実でもある。投手力を軸に接戦へ持ち込むのが本来の形だが、その土台となる本拠地の特性が少し変わってしまった。右中間、左中間までの距離が6メートル縮まり、フェンスも1・2メートル低くなった。
これまでなら助かっていた打球が助からなくなる。しかもその変化を、まず阪神のような長打力のある相手に突かれた。開幕から5カード連続で勝ち越しなし、借金は今季ワーストの7。両リーグ最速10敗という数字以上に、試合の負け方がじわりと重く響く。
もっとも、球場の変化を嘆いていても状況は変わらない。中日にも花田のプロ初本塁打という希望はあった。自軍の若い打者が新しい球場の特性を生かして結果を残したことは、数少ない明るい材料と言っていい。結局のところ、この新しいバンテリンドームを味方にできるかどうかは、球場そのものではなく、そこにどう対応するかにかかっている。
かつて甲子園にラッキーゾーンがあり、時代が変わってまたテラス設置がトレンドになる。野球は、こうして少しずつ景色を変えていく。私ごとだが、自分軸で話すと高校を卒業したタイミングで甲子園のラッキーゾーンが撤廃となり、めちゃくちゃ弱かった虎が92年に変身した。
先発では仲田、中込、湯舟の3本柱が球場の恩恵もあり好投を連発。抑えには左腕の田村が台頭した。打線は新庄、亀山ブームに加えてオマリー、パチョレックが高確率な打撃をみせて僅差を勝ち抜く野球が甲子園にフィットした。
され、現代に戻って11日のバンテリンドームである。この試合で起きたことは、単なる乱打戦では論じきれない。阪神の中軸の力強さと、中日が向き合わなければいけない新しい現実が、同時に浮かび上がった一戦だった。
今後、この球場で最初に“新しい追い風”を本当の武器にするのはどちらか。そこにも今季の見どころが一つ増えた気がする。
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