「スカウト全員で帰ろう」西武・髙橋光成の獲得舞台裏。試合途中に“あえて”視察をやめた理由
埼玉西武ライオンズの髙橋光成投手が12日、本拠地で行われる読売ジャイアンツ戦に先発登板する。髙橋はここまで9試合に登板し、防御率はリーグ2位の1.19。同1位の平良海馬投手とともに圧倒的な存在感を放っている。12球団随一のライオンズ先発陣はどのようにして築き上げられたのか。中心選手獲得の舞台裏を渡辺久信氏の著書『獅子回顧録』(カンゼン刊)よりお届けする。(髙橋光成編)
試合途中にあえて視察をやめた前橋育英高・髙橋光成
2014年のドラフト1位は、前橋育英高・髙橋光成。シニアディレクターとして初めて関わったドラフトなので、よく覚えている。光成は2年生の夏に甲子園で優勝し、どの球団もマークしていたピッチャーだった。まだまだ体は細いが、ボールに力があり、変化球もいい。プロで体ができれば、さらに良くなるのは間違いなかった。 3年夏の県大会3回戦、健大高崎高との大一番を7〜8人のスカウトで視察に行った。担当スカウトだけでなく、他地区のスカウトも呼んで、いわゆる「クロスチェック」の目的があった。複数の目で見ることで、できる限り客観的な評価をする。担当だけがチェックすると、どうしても思い入れが強くなり、情が動いてしまうことがある。正確な情報かはわからないが、このクロスチェックは西武のスカウト陣から始まり、他球団に広まったと聞いたことがある。 この日の光成は序盤こそ無失点に抑えるも、中盤から少しずつボールが荒れ始めて、イヤな予感がしていた。私はそれまでに何度か見ていたが、クロスチェックで初めて見るスカウトもいた。そこで私が考えた作戦は「光成が打たれる前に、スカウト全員で帰ろう」ということだ。1位クラスのピッチャーだと思っていたので、ほかのスカウト陣に打たれる光成を見せたくなかったのだ。それによって、評価が下がることも考えられる。「もうある程度見たので、ここで帰りましょう」と声をかけて、終盤を迎える前に席を立った。 その後、結果を確認すると、2対0の7回裏に一挙6点を取られて、逆転負けを喫していた。最後まで見なくて正解だったかな……と、ホッとしたことを覚えている。 最終的には、私を含めて3人のスカウトで、9月にタイのバンコクで行われたU-18アジア選手権大会を視察して、この時点で「今年の1位は髙橋光成で行く」と方向性がほぼ決定した。 (後略)
ベースボールチャンネル編集部