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易 (占い)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
易者(1914年、日本)

(えき)は、中国で発祥した占いの形式のひとつである。おおむね『易経』にもとづいて行われる。易の手法はもろもろ存在するが、おおまかには筮竹などをもちいてを割り出し、これをもとに六十四卦をつくることで占う。

基本概念と筮具

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易の最小単位は、陰爻(⚋)と陽爻(⚊)の2種類からなるである。易においては、陰爻と陽爻を3本組み合わせて八卦をつくり、さらにそれを2つ組み合わせて六十四卦をつくる[1]。易において八卦は万物を象徴し、また六十四卦は万物の変化を象徴するものとして解釈される[2]

易占においては、50本の蓍(棒)を用いて卦を導く。古くは植物のの茎が用いられたが、その後はもっぱら筮竹を用いる[3]。1本の長さはおおむね9寸 (27 cm)であるが、『説文解字』には「天子は蓍九尺、諸侯は七尺、大夫は五尺、士は三尺」とあり、現代よりも長いものが使われていたようである。また、易筮によって得た爻を記録するために、算木も用いる。これは長さ 9 cm、幅 1.2 cm程度の角材6本で、2面に陰爻をあらわすための切込みを入れている。これは後世に卦を記録するための道具としてつくられたもので、『儀礼』には「筮を卒ふれば乃ち卦を木に書く」とある。また、後漢鄭玄はこれに注して「一爻ごとに地に画して以て之を識し、六爻備はりて板に書す」としている[4]。また、唐の賈公彦によれば、唐代には硬貨を用いて卦が記録されていた[5]。ほかに、易者が使う道具として筮竹を建てる筮筒、筮竹を置くための台である扐・掛などが用いられることもあるが、これは必ずしも必要というわけではない[4]

手法

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本筮法

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易占の具体的手法については、『易経』繫辞伝の記述が文献上知りうる最古のものである[6]。しかし、その記述は以下の通り、短く曖昧なものであるため、後世の解釈には揺れがある[7]。繫辞伝にもとづく手法をそうでない手法と特に区別する場合、本筮法と称する[8]

一般的手順は以下のとおりである[6][3]

  1. 50本の蓍から1本を取り除く
  2. 49本の蓍を両手に分け、1本を抜き出して小指の指間にかける
  3. それぞれの手に握った蓍を4本ずつ、残るものが4以内になるまで数え、余った蓍を薬指の指間にかける(一変、余らない場合は4本を残す)
  4. 残りの蓍を用いて2. から 3. の操作を再び繰り返し、余った蓍を中指の指間にかける(二変)
  5. 残りの蓍を用いて2. から 3. の操作を再び繰り返し、余った蓍を人差し指の指間にかける(三変)

この筮法は『易経』原文の解釈に若干の揺れがあるとはいえ、漢代以来多くの易学者が共有するものである[5]。詳細な作法には若干の揺れがあり、たとえば孔頴達は2. で左手にとった蓍から、南宋朱熹は右手にとった蓍から1本を抜く[9]。三変を終えた時点で残った蓍ないし余った蓍の本数により、一爻が決定する[3]。上記の手順を採用する場合、一変で除く蓍は5ないし9本、二変・三変で除く蓍はそれぞれ8ないし4本となる[10]。指に挟んだ蓍を除いた本数[3]、あるいは指に挟んだ蓍の本数を用いて、爻の老陽・老陰・少陽・少陰を定めることができる。この操作を6回繰り返すことにより卦が定まる[10]

爻の四象[10]
爻の種類 引かれる本数 残りの本数(過揲) 概説
老陽 13(5・4・4) 36 陰に変ずる陽爻
老陰 25(9・8・8) 24 陽に変ずる陰爻
少陽 21(9・8・4、9・4・8、5・8・8) 28 不変の陽爻
少陰 17(9・4・4、5・8・4、5・4・8) 32 不変の陰爻

なお、孔頴達・朱熹などの採る手法では三変すべてで1本を抜き出すが、南宋の郭雍中国語版など、一変のみでこの操作をする手法もあり、この場合爻の定め方も若干変化する[11]。また、秦九韶のようにこれとは全く異なる手法を提唱した学者もおり、この手法では49本の蓍を二分したのち左手にとったものの本数を各1、2、3、4ずつ数えて余りを得て、それぞれに固有の定数を掛けたのち12で数えて得た余りを3で割り、その結果から爻を定める[12]

その他の手法

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略筮法・中筮法における残数と卦の対応[13]
残数 八卦 四象
1 ☰(乾) 少陽
2 ☱(兌) 少陰
3 ☲(離) 少陰
4 ☳(震) 少陽
5 ☴(巽) 少陽
6 ☵(坎) 少陰
7 ☶(艮) 少陽
8 ☷(坤) 老陰

日本においては、近世以来、本筮法を省略した略筮法・中筮法も行われている。略筮法は日本でもっとも普及している手法のひとつであり、梗概は以下のとおりである[8]。この手法は平沢随貞新井白蛾などが用い、のちに高島呑象が採用したことにより広く普及した[14]

  1. 50本の蓍から1本を取り除く
  2. 49本の蓍を両手に分け、右手に握るものから1本を抜き出して小指の指間にかける
  3. 左手に持った蓍から8の倍数本を引く
  4. 2. で指間にかけた1本を足し、この本数から1から8に割り当てられた八卦を求める
  5. 2. から 4. までの操作をもう1度繰り返し、八卦2つをあわせて六十四卦をつくる
  6. 2. を繰り返したのち左手に持った蓍から6の倍数本を引く
  7. 5. で得た六十四卦を下から数え、6. の操作で残った本数に1を足したものと同じ数字番目を変爻とする

中筮法も江戸期より日本国内で実践される手法であり、その梗概は以下のとおりである[15]

  1. 50本の蓍から1本を取り除く
  2. 49本の蓍を両手に分け、右手に握るものから1本を抜き出して小指の指間にかける
  3. 左手に持った蓍から8の倍数本を引く
  4. 2. で指間にかけた1本を足し、この本数から1から8に割り当てられた八卦を求める
  5. 4.で得た八卦を四象に変換し、それを一爻と定める
  6. 2. から 5. の操作を6回繰り返し、六十四卦をつくる

また、蓍を用いない易の手法も存在する。硬貨を投げて易を定める手法を擲銭法という。孔頴達の『儀礼正義』によれば、3枚の硬貨を投げ、2枚表で1枚裏のとき少陽、2枚裏で1枚表のとき少陰、3枚とも裏のとき老陽、3枚とも表のとき老陰と定める[16]。さらに簡便な方法として、単に硬貨を6回投げて裏表で爻の陰陽を定め、さいころを振って変爻を決めるというものもある[8]。また、平沢随貞は算木6本を3本ずつ手中でもみ、出た卦を並べて六十四卦をつくる「按卦の伝」を発案した[17]

易断

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易においては、上記の手順を経て定めた本卦から、老陽・老陰の爻を反転させた変卦(之卦)をつくり、これをもとに卦辞およびそれぞれの爻辞を読んで結果の解釈を行う。孔頴達の『左伝正義』によれば、変爻が複数現れる場合には卦辞のみを読む。また、朱熹は『易学啓蒙』にてより詳細な規則を定めており、いわく2爻が変ずるときは本卦から変爻の爻辞2つを見て、上の爻辞を重視する。3爻が変ずるときは本卦・之卦両者の卦辞を見る。4爻が変ずる時は之卦の不変爻の爻辞2つを見て、下の爻辞を主とする。5爻が変ずるときは、之卦の不変爻の爻辞を見る。6爻とも変ずるときは、その卦が乾坤のばあいはその用九・用六の爻辞を、それ以外の場合は本卦の卦辞を読む[18]

脚注

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注釈

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出典

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  1. 藤田 2026, p. 3.
  2. 宇野 & 平岡 1974, pp. 6–9.
  3. 以下の位置に戻る: 1 2 3 4 藤田 2026, pp. 8–9.
  4. 以下の位置に戻る: 1 2 宇野 & 平岡 1974, pp. 42–43.
  5. 以下の位置に戻る: 1 2 藤田 2026, p. 161.
  6. 以下の位置に戻る: 1 2 本田 2021, p. 226.
  7. 川原 2018, p. 89.
  8. 以下の位置に戻る: 1 2 3 三浦国雄「」『改訂新版 世界大百科事典』コトバンクより2026年6月14日閲覧
  9. 川原 2018, p. 95.
  10. 以下の位置に戻る: 1 2 3 本田 2021, pp. 227–229.
  11. 川原 2018, p. 90.
  12. 川原 2018, pp. 90–91.
  13. 宇野 & 平岡 1974, p. 50.
  14. 宇野 & 平岡 1974, p. 45.
  15. 宇野 & 平岡 1974, p. 49.
  16. 安居香山「」『日本大百科全書(ニッポニカ)』コトバンクより2026年6月15日閲覧
  17. 宇野 & 平岡 1974, p. 48.
  18. 本田 2021, pp. 230–231.

参考文献

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