好きな人と結ばれるまでの七つのステップ
『好きな人と結ばれるまでの七つのステップ』を日下部さんに実践した日車さんと、それにブチ切れした日下部さんの話。
※胃切除に関する描写が出ます。苦手な方は自衛をお願いします。
日車さん呪術師IF。
前半は会話形式。後半で小説形式になります。
このふたりはこういう恋愛をしそう、というのが固まっているので過去作と似た馴れ初め話なのですが、楽しんでいただけると嬉しいです。
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やってはいけないと思い込んでいたこと。
同性の同僚に想いを告げること。
せっかくなのでやっておくかと、日車の頭にふと天啓のように降って湧いたのは待機室に置き去りにされていた十代向けの雑誌を見た時だ。
タイトルは『好きな人と結ばれるまでの七つのステップ』というもので、数字が半端だな、とか、こういう特集は令和でも平成でも変わらないものだな、とか、そんな感想が過った。平成の時分でもこういう雑誌は読んだ事がなかったけれど。
パラパラとページをめくって特集内容を頭に叩き込む。——なるほど、把握した。
把握したら実践だ。
【ステップ1】あなたの事を知ってもらおう!
「日車寛見三十八歳、呪術師だ。特技は六法全書の暗唱で趣味は読書。好きな食べ物は特にないが納豆はあまり得意じゃない。家事は苦手だが車の運転はわりと得意だと思うのでだいたいの所は連れていける。散財癖もないので貯金もそこそこある」
「なになに急に何が始まった?つか六法全書暗唱できんの?すごくね?あと納豆は得意じゃないって、この間水戸出身の窓が土産で持ってきた藁納豆うまそうに食ってなかった?」
「あれはなぜかおいしかった」
「じゃあ量産タイプの納豆が口に合わねぇんだろ。運転できんなら今度一緒に新潟行くか?」
「新潟?」
「鑑評会で一位取った納豆が食える。行きがお前、帰りが俺の運転交代制でどうよ」
「乗った。——なんで納豆の話をしているんだ」
「お前が急になんか始めたんでしょうが」
【ステップ2】連絡先を交換しよう!
「日下部、連絡先を教えてほしい」
「誰の」
「君のだ」
「——俺とお前、社用もプライベート用ももう繋がってるよな?」
「——エックスやインスタはやってないのか」
「え、お前エックスとかインスタとかやってんの!?」
「やってないが」
「じゃあ俺のアカウント聞いても意味ねぇだろ」
「やってるのか?」
「やってると思うか?」
「やってないと思う」
「じゃあ何で聞いた?つーか今度はなんの奇行だよ。連絡先、なんでもいいなら住所でもいいか?」
「住所」
「ん、ラインに送っといた。休みの日はたいてい家にいるけど、来るなら一時間前までに連絡しろ」
「……わかった。——なんで俺は日下部の家の住所を入手したんだ」
「お前が急になんか始めたんでしょうが」
【ステップ3】彼の事を知ろう!
「日下部、君の事を教えてほしい」
「何を?」
「——なんだろう。好きなもの、はトロたくだったな。嫌いなものも知ってる。生年月日身長体重家族構成住所電話番号、も知ってるな。あとはなんだ、職歴か?」
「職質?呪専卒業してから今までずっと呪術師だよ」
「——ご趣味は」
「見合いになった。ご趣味は釣りだよ。つかお前このあいだ俺と一緒に行ったの忘れた?」
「覚えてる。今度はまぐろを釣りたい」
「あーマグロは船の伝手はあるけど時期的にむずい。早くて三ヶ月後からだからちっと待て」
「……わかった。——なんで釣りの話になってるんだ」
「お前がなんか急に始めたんでしょうが」
【ステップ4】共通点を見つけて会話を盛り上げよう!
「……共通点?」
「ん、なに、どうした」
「いや、俺と君に共通点があるかどうかを考えていた」
「——誰かに何か言われたか?」
「?、いや、誰にも何も言われてないが」
「じゃあいつもの奇行か。共通点ねぇ……、呪術師とか?」
「それは高専にいる者全員の共通点だな」
「そもそも俺とお前の共通点見つけて何がしてぇの」
「会話を盛り上げたい」
「——お前、俺との会話に何か困ってんの?」
「?、困ってないが」
「なるほどいつもの奇行な。あ~、洋食より和食派とか」
「ああ、このあいだ連れて行ってもらった居酒屋はおいしかった」
「あそこ、来週からキンメダイの七味煮が始まるらしいぞ」
「七味煮?」
「店のオリジナルらしい。気になんなら七味煮始まったらまた行くか?」
「行く。——どうして食事の話になってるんだ」
「お前がなんか急に始めたんでしょうが」
【ステップ5】二人きりの時間を作ってグループから一歩前進しよう!
「……すでにわりとあるな」
「ん、なに、どうした」
「いや、君とふたりでいる時間が意外とあるなと思っただけだ。任務も、日下部との合同が多い気がする」
「ハイスペックなのいい事にオートで無茶するどっかの誰かさんのストッパー出来るのが俺だけだからセット扱いされてんだろうが。不満があるなら反転ありきで戦うのマジでやめろ。虎杖だって最近怪我してねぇんだぞ」
「虎杖は実力があるからだ。あと不満はないが君が大変だろう、教職もあるのに。他の術師に任せられないのか?」
「なんで他人事みたいになってんの?術師でお前に強く言えるのが俺だけって話でしょうが」
「——そうか」
「なに、反省した?」
「いや反省はしてないが」
「してねぇのかよ」
「近いうちにその辺りは解決できると思う」
「だからなんで他人事みたいになってんの?」
【ステップ6】秘密を共有して二人の仲を親密にしよう!
「日下部、俺に隠してる事はないか」
「——なんの話?」
「なんでもいいから君が秘密にしているものがあれば知りたい」
「……あーよく分かんねぇけどそんな感じな。ちゅーかなんでもいいって逆に困んだろ。銀行の暗証番号とか教えりゃいいのか?」
「それは他人に教えてはいけない個人情報だ」
「細けぇなぁ。逆に日車はなんかねぇの、俺に秘密にしてること」
「——あるな。今度言う」
「え、なんかあんの!?今度はなにやらかした!?」
「どうして何かやらかしてる前提だ。別に損害も損傷も出してない」
「じゃあ秘密ってなんだよ」
「秘密は『第三者に知られないように隠してるもの』だぞ。おいそれと言う訳ないだろう」
「お前が先に聞いてきたんでしょうが。今度言うっていつだよ」
「来週には開示する」
「怖ぇな、なんで秘密の開示がスケジュール化されてんの」
【ステップ7】『もしも』の話をして脈アリかどうかを確認をしよう!
「これは相手との関係性によったら逆にリスクにならないか?」
「なんの話?」
「告白をする前に脈があるかどうかの確認が必要らしい」
「ふうん?誰かに告白すんの?」
「雑誌に掲載されていた内容だ」
「どんな雑誌見てんのお前」
「若者向けの雑誌もなかなか面白い」
「告る前に脈があるかどうか確認って、脈ねぇなら告白しねぇってこと?軟弱すぎんだろ」
「日下部は当たって砕けるタイプか」
「なんで砕けんの前提なんだよ。俺は相手にその気がないうちは告白しない」
「十分軟弱なのでは」
「臆病なもんで。なに、日車先生は当たって砕けるタイプ?イメージじゃねぇけど」
「当たって砕けるような恋愛をした事がないから分からないが、保険があれば思い切れるタイプだったらしい」
「保険?」
「日下部、『もしも俺が君に好きだと言ったらどうする?』」
「————は?」
「冗談だ。七味煮、おいしかった。明日早いから先に失礼する。——じゃあな」
かわいいトンチキ弁護士からの自分を勘定に入れなすぎて人の心…!となる落差に引き込まれました!かわいいお二人をありがとうございます😭😭😭