SNSで拡散、抗議のターゲットに
寺には役場から、「土葬」の2文字を消してほしいとの要請もあった。だが崔さんは、「何ら間違っていない文言を消せば反対派の“勝利宣言”になる」として拒否している。
土葬反対の声が起きる背景について崔さんは、論理的な理由ではなく、「単純に土葬が生理的に嫌いという感情がある」と話す。
「水質環境が悪化すると言われますが、お寺の周辺の山には鹿やイノシシなどの野生動物の死骸が多数あり、それ自体が自然な土葬状態です。しかし、周辺環境への影響は確認されていません」
崔さんは、一部のインフルエンサーがSNSで火をつけ、それにあおられた人々が、付和雷同的に同調しているのだろうと話す。
「どのように葬送されるかは、死者や遺族の尊厳に関わる問題。宗教や文化の違いがあっても、信教の自由は保障されていて、静かに弔われる権利は尊重されるべきです。一人一人が、よく考えながら発信してほしいと思います」(崔さん)
国内のイスラム教徒の増加に伴い、土葬を受け入れる墓地の不足は今後ますます深刻化するとみられている。
政府、129自治体に実態調査
政府は、国内のイスラム教徒の急増に伴う土葬墓地の需要拡大を受け、今年1月以降、全国の主要な129自治体を対象に実態調査に乗り出した。各自治体が定める墓地管理に関する条例の内容や、土葬を含む埋葬方式の現状について尋ね、26年度中に自治体側に必要な周知を行うとしている。
先の森氏は、「国は土葬用墓地を整備するための明確な指針を出すことが重要」と指摘する。墓地の認可権は地方自治体にあるが、国は土葬墓地をどう整備・運営するかについて具体的な「指針」を示していない。その結果、各自治体が個別対応を迫られ、住民との摩擦や混乱が生じてきたという。
「国は自治体任せにするのではなく、都道府県に1カ所か広域圏に1カ所といった大きな枠組みで、土葬用墓地を整備していく必要があります」(森氏)
死者をどう弔うか。その問いは、多様な人々が共に生きる社会のあり方を映し出している。
(AERA編集部・野村昌二)
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