「失敗できない研究」と「挑戦できる研究」
李白さんがまず挙げるのは研究規模の違いだ。
日本では科研費や日本学術振興会(学振)の研究支援制度が整備されている。だが、博士課程学生の研究は多くの場合、指導教員が獲得した科研費や共同研究費の範囲内で行われる。そのため研究室ごとの差も大きく、欧州の大型研究プロジェクトと比べると小規模な予算の中で研究を進めなければならないケースも少なくないという。
「限られた予算の中で成果を求められるため、どうしても失敗できない空気があります。おのずと挑戦的なテーマを選びにくくなる印象があります。」
一方、欧州では企業が大学の研究室に積極的に資金を提供するケースが多い。
ドイツのシーメンスやフランスのアルストムなどをはじめ、多くの大企業が大学との共同研究を行い、3年から5年といった長期スパンで予算を投入する。研究者は短期的な成果だけを求められるのではなく、より大きなテーマに挑戦できる環境が整えられているという。
李白さん自身も企業と連携した研究プロジェクトに参加している。
「人件費だけではなく、必要な部品加工設備の利用支援や部品提供、シミュレーションに必要な情報提供も受けています。研究に必要なものを総合的に支援してもらえるんです」
教授が「それでは後進は育たない」と驚いた背景には、こうした研究投資に対する考え方の違いがある。
「政府だけでなく企業が研究にお金を出さなければ人材は育ちません。高度な技術を持つ人材を育成し続けなければ先進国として生き残れない、という考え方が根付いているのです」