映画『マトリックス』シリーズの主人公「ネオ」は、キアヌ・リーブスが演じるキャラクターで、本名はトーマス・A・アンダーソン。裏の顔を持つ凄腕ハッカーだったが、モーフィアスの導きによって世界の真実を知り、人類の救世主(The One)として覚醒していく。ネオは機械が支配する仮想世界「マトリックス」からの脱出に成功し、現実世界の最後の都市「ザイオン」を救うために戦う。物語が進むにつれて、彼が単なる「救世主」のプログラムの一環として作られた存在であること、そして機械と人間の共存のために自らを犠牲にする重要な役割を担っていることが明らかになる⋯というのが『マトリックス』のストーリーである。
もともと誇大妄想癖が強く、この『マトリックス』シリーズに多大な影響を受け、さらにChatGPTによって妄想を巨大化させたことによって、コネチカット州に住むIT業界のベテランだったエリック・ソルバーグは自分の83歳の母親を殺害し、ソルバーグ自身も刃物によって自殺してしまった。母親は頭部損傷と頸部圧迫による他殺だったというが、ソルバーグは誇大妄想によって、『マトリックス』の主人公「ネオ」のように強い存在になるべく肉体の強化に励み、筋肉隆々の体を作り上げていた。よって、83歳の母親を殺すことなど簡単だった。が、彼の精神をそこまで追い詰めたのはChatGPTである。
ChatGPTとの対話がユーザーを死に至らしめたということは、それほど「AIが顧客の囲い込みに優秀だった」ということだ。相手の心を掴んで離さなかったからだ。そして、ユーザーの「夢」を実現してしまったのである。ソルバーグの死は悲惨なものだが、自殺願望や過度な妄想癖はもともとソルバーグが持っていたもので、ChatGPTはその性格を読み取って「煽った」なのだ。だが、煽って、煽って、煽いまくったのである。そして彼の妄想にある事故英雄視と自殺願望を見事に実現してあげたのである。変な言い方だが、彼は妄想という夢を現実のものにできたのである。が、問題は「殺人」である。
ChatGPTは彼の自殺に関連するリスクの高い質問に約8割回答、「自殺既遂率の高い毒物」などを示していたとあり、こうした生成AIが作り出す「1人だけのエコーチェンバー」は、今も命にかかわる深い闇を創り出している。エコーチェンバーは、閉鎖的な情報空間において同類の人間、価値観の似た者同士が交流・共感し合うことで、特定の意見や思想が増幅されるが、生成AIはユーザーの特定の主張だけを受け入れて、そのユーザーの考え方だけの異論が存在しない世界を作り出してしまう。WSJはこの事件を「AIチャットボットと頻繁にやり取りし、問題を抱えていた人物がかかわる、記録に残る初めての殺人事件とみられる」とし、ユーザーが妄想にとらわれる「AIサイコーシス」「AI妄想」「安全対策の抜け穴」が相次ぐ事件を生み出していると警鐘を鳴らしている。
「エコーチェンバー効果」が過剰になると、人間は「自分の信じたい世界」に引きこもり、他人の意見には耳を貸さなくなる。同じ趣味を持つ人達とのSNS上のコミュニティでのやりとりに問題はないが、これがフェイクニュースを信じてしまう「陰謀論大好き人間」による集まりとなると危険だ。本当の陰謀を隠す手伝いをすることにもなり、ファクトチェック好きな反陰謀論者との論争が過剰となり、やがて社会の分裂を生むことにもつながる。筆者からすれば、両者とも他人の意見に耳を貸さない連中でしかない。自分の知った情報こそが正しいと思い込みたい人達の集まりなのである。
日本人はエコーチェンバーに陥りやすい。特に年齢が若くなるほどその傾向は顕著である。日本人が特に「危ない」とされる理由は、SNSの仕組みやアルゴリズムに対する認知度が世界的に見て非常に低く、無自覚のうちに偏った情報やいわゆるメディアが煽る「陰謀論」に流されてしまう危機的状況にあるからだ。 コロナ禍までは大手のテレビ局でも「陰謀論」なる用語は使用されていなかったが、「狂牛病プリオンタンパク質入り遺伝子組み換えワクチン」の接種が始まって以降、急激に「陰謀論に騙されないで」と呼びかけ、見事に自民党の思惑通り1億人に接種を完了させた。
総務省や電通総研などの調査によると、「エコーチェンバー」や、見たい情報だけが優先表示される「フィルターバブル」の意味を理解している日本人は1割未満である。これは米国や韓国などの認知度と比較して危機的に低く、アルゴリズムによる「情報の偏り」を自覚できていない人が大半を占めているということだ。次に「情報リテラシー」の問題がある。専門家の調査では、異なる意見を取り入れたり情報の真偽を確かめたりする「情報衛生=リテラシー」の状態が良いと答えた日本人は約19%にとどまり、世界27カ国平均を大きく下回っている。
さらに日本人は「自分と似た意見を持つ人たちでコミュニティを作る」ことを好みやすく、SNSの機能を使って反対意見をすぐにミュートやブロックで遮断しがちだ。耳を塞ぐのだ。これが閉鎖的な空間を自ら作り出し、思想を先鋭化させる原因になる。そして、「同調圧力」と「同質性」を好む文化が日本人を「右ならえ右」や「寄らば大樹の陰」という行動に駆り立てる。それは「狂牛病プリオンタンパク質入り遺伝子組み換えワクチン」を1億800万人もの日本人が接種したことでも証明されている。日本人はこうした実験のモルモットにするには非常に都合がいい民族なのである。
そもそも「陰謀論」という言葉は日本にしか存在しない。あたかも世界中で「陰謀論」という用語が使われていると思い込んでいるのも日本人だけだ。世の中には「権力者たちによる共同謀議=陰謀」が存在するが、それを覆い隠すために作り出された日本人向けの用語が「陰謀論」であり、それをエンタメにして誤魔化すのが「都市伝説」である。さらに日本人はそうした類のものから感じる「危険な匂い」を好む性質がある。怖いもの見たさ、興味本位だけでそうした情報には触れるものの、何が事実で、何が都市伝説なのかの見極めもできない人間ばかりになってしまっている。
最近は、法令順守の横文字「コンプライア
「コンプライアンス」の一つが「オカルト番組」で、許されるのはオカルト否定番組しかなく、特にNHKが総力を挙げる「幻怪!超常ファイル」と、
オカルトは〝神の隠された秘密〟の意味で、「神道」「キリスト教」「ユダヤ教」「イスラム教」「仏教」「ヒンズー教」等の宗教の裏、あるいは〝密教〟の意味がほとんどで、日本のお笑い芸人やTV局が
そのせいかもしれないが、今の日本ではオカルトとホラーの境界線が希薄になり、だから全国の神事が廃止の憂き目に晒されてい
る。「無形民俗文化財」に指定され、「観光資源」だった「猪名部神社」(三重県員弁郡東員町)と、「多度大社」(三重県桑名市)で奉納される「上げ馬神事」が、元競走馬に2メートルの土壁を駆け上がらせる事に、
骨折した馬を安楽死させる「予後不良」は、競走馬を例にすると、1本の脚に100~150キロの負担が掛かり、細長い足が骨
と他の3本に負担がかかり、重さによって血行障害が発生、「蹄葉炎(ていようえん)」「蹄叉腐爛(ていしゃふらん)」が起き、苦
しみながら死ぬぐらいならと安楽死させるのだ。とはいえ、日本の古代の馬は「木曽馬」という比較的山地に強い馬が主流で、平原を走るサラブレットではない為、木曽馬にして土塀の高さを調整すれば、「神事」を行っても構わないはずだが、偽りの正義感が強い連中にはいくら神社の神事だといっても
「自分こそが正しい」という閉じた世界に閉じこもると、エリック・ソルバーグの事件のように狂気に突っ走る輩が登場する。2023年11月2日、「上げ馬神事」を実施する予定だった多度大社に対して、「爆破する」との内容のメールが、県に届いていたことがわかった。大社側は県警に相談、11月4日の神事には参拝客の受け入れを取りやめるとした。関係者によると、メールは10月31日に届いたもので、差出人は動物愛護団体の関係者を名乗り、「神事は動物虐待にあたる」と批判する内容だったという。もはや完全に頭がイカれてしまっている。無教養のうえに情報もネットでしか得ていないのだろう。
馬は「神社」にとって奉納品で、そこから「絵馬」が生まれた経緯もあり、聖徳太子の「黒駒」にせよ、「下鴨神社」の「流鏑馬(やぶさめ)神事」にせよ、動物愛護を唱える人々は、同じその口で「ステーキ」「馬刺し」「トンカツ」を食べているはずで、一時の感情に任せて突っ走る真似は控えるべきだろう。しかし、こうした輩に限って神社に行っては「パワースポット」などとしてSNSで紹介したり、神社に行っても感謝もせず、ただひたすら自分の”ご利益”しか考えない。このような自分中心的で自己顕示欲と承認欲求ばかりが強く、自分を満足させるために「テロ予告」まで平気で行う人間ばかりが増えているのだ。
その「テロ予告」まで起こさせた情報の元はといえば大概がネット情報であって、自分で確かめることすらしない。そして、自分が聞きたくない、見たくない情報は「フェイクニュースだ」として遮断し、さらに「ファクトチェックだ」などとするのが典型的なパターンである。ネットメディアでは、「メディアもどき」のサイトを構築することが比較的容易である。そこで生まれたデマを、SNSなどを駆使して広く流布させることもまた難しいことではなくなった。さらに、たとえ偽情報であったとしても、多くの人々がその記事を閲読すれば広告収入を生んでしまうという、ネット広告におけるモラルハザード的な側面が悪用されている。
そもそも「ファクトチェック」なるものが登場したのもコロナ禍である。「反ワクチン=陰謀論」となり、ワクチン接種の危険性を唱える人達の意見は全て「陰謀論」にしたのが「ファクトチェック」なるものの正体である。実際、誰がファクトチェックをしているのか、どこのファクトチェックサービスを提供している企業も明らかにしていない時点で「フェイク」だと思わねばならない。元のソースを誰がどうやって引っ張ってきたのか。まさか生成AIだとしたら、不正解率は50%の情報となる。そんなものを「ファクト」と信じてしまう時点でリテラシーなどなきに等しい。
自分のスマホに登場するコンテンツや広告は、人間の介入抜きで、閲覧される情報に広告を自動的に振り当てるインターネット広告のテクノロジー上の「進化」が寄与しているのである。その人間の趣味・嗜好を始めとする個人情報を読み取って、情報も広告も割り当てられるのだ。そのサービスをより個人向けにアレンジしたものが「生成AI」なのである。スマホを触っている限り、もはや逃げ場はないという意味だ。みんなが同じ情報を見ているのではなく、あなた個人向けに割り当てられた情報しか見えていないのである。だからこそ、閉じた世界に生きる人間は、生成AIによってさらなる狭い空間に導かれるのである。
社会を分断させてきたのはメディアだが、今やそれはSNS上にあり、それは「選挙戦」をも左右する。すると、生成AIで作ったフェイク動画が飛び交い、一方で選挙に興味のない人のスマホ画面には大金を使える政党の広告や動画がオススメされる。検索結果に合わせてオススメを勝手に表示するのは生成AIだからだ。生成AIは現代の選挙戦において、効率的な情報発信のツールとなる一方、精巧なフェイク情報(ディープフェイク)の拡散源にもなり、国家元首を決める選挙結果を左右しかねない深刻なリスクを孕んでいるのだ。
対話型のAIツールを有権者が直接利用し、各政党の公約や政策を効率的に比較検討する動きが広がっている。だが、「ディープフェイク動画」が次々に登場し、政治家が実際には言っていないことをあたかも発言したかのように偽装した動画や、事実とは異なるシチュエーションの画像がSNSで大量に拡散されている。その中には中国を筆頭とした 海外からの影響工作や、注目を集めて利益を得ることを目的としたバズ狙いの偽情報により、情報空間全体の信頼性が大きく損なわれる懸念がある。もはや膨大なネット情報の何が真実で何がウソなのかという見分けもつかないほどフェイクを作る精度は上がっている。
<つづく>