ゼータ
存記軸経由オメガバ五髙
α寛、Ω甚の示唆あり
オリジナル設定を含みます、概要は以下の通り
ゼータ種
後天的な性別変化であり、オメガからしか転化しない。フェロモンを持たず、バースの枠の外側に居る性別。
ゼータには運命のつがいという概念が存在せず、オメガだった頃の運命の相手はリセットされ無かったことになる。
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キャプション一読推奨
春先、桜の花弁が舞い込む廊下。風に混じった甘い匂い。ふわりふわり、舞い込む光。五条悟は、ただ見ていた。
「……違う」
対峙するのは、この学校の非常勤講師。呪術高専出身、等級は特。アルファとオメガの香りを惑わす、髙羽史彦。
――懐かしい匂い。
けれど、決してアルファの性を煽るものではない。
「髙羽先生」
気づけば、その名を呼んでいた。十数年前、五条の魂を深く焼き付けた『運命』。
だが今は、オメガ特有の甘い匂いはどこにもなく、ただ凪いだデルタの気配だけがある。
「ああ……新入生の子か。どうした?迷子か?」
忘れたことなどなかった。幼い頃に五条家の庭で出会ったあの人。見知らぬアルファと禪院のオメガに連れられて、老いぼれたちとの食事会に参加していた。俺はまだ幼かったから参加できなかったけれど、こっそり部屋を抜けだして、見に行った。そこで、『運命』と、出会った。
雷が落ちたような感覚があって、慌てて部屋に逃げ帰ってしまった。その晩、興奮が収まらなくて何度も顔を思い返した。名前を知りたかった。この十数年、一度たりとも忘れたことはなかった。
「……迷子じゃない」
言いながら、違和感が拭えなかった。
あの時、眼にいれただけで理性が飛びかけたほどの衝動が、今はどこにも無い。
顔を見ても、息が詰まらない。
視線を合わせても、胸が苦しくならない。
「そうか、そろそろ入学式始まるから体育館行きなよ」
本能はただ沈黙している。アルファの性が「この人は運命なんかじゃない」とわめいている。
――運命は、もう切れている。
「いや……道に迷っちまって」
だから、なんだ。
「そうか、じゃあ案内してあげよう」
喩え、運命じゃなくなったとしても。本能がこの人を求めないとしても。
髙羽を想い続けた数十年は嘘じゃない。今、理性が髙羽を激しく求めている。
運命ではなく、自分の意志で――髙羽を、手に入れたい。
「体育館はこっちだよ」
案内する髙羽の背を追う。ふわりと香る乾いた匂いに、心臓が跳ねた。