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落手/Novel by 呻吟パセリ

落手

2,412 character(s)4 mins

Blueskyで開催されている存記トリオ布教月間に伴った、Blueskyからの移植です。 

年齢操作さしす+存記トリオ同学年別クラスパロ 
栄養不足で背が十分に伸びなかった(この後急速に伸びる)甚概念があります。夏が信じられないくらいノンデリです。

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5限目、体育の授業。整備されていたグラウンドは砂ぼこりでめちゃくちゃになり、綺麗に引かれていた白線は既に消えかけ。
今日は生徒同士での模擬戦の授業だ。家入硝子は救護班で、他5人はバトルロワイヤル方式の戦闘訓練だった。
現在、術式制御をミスった髙羽が真っ先に脱落。その後五条は日車に術式を没収され、便乗した夏油の卑劣な一撃で昏倒。夏油はその上で領域展開後の疲労した日車を襲い、現在グラウンドに立っているのは、漁夫の利を極めた夏油と、ただ小さくて目に留まりづらくたまたま残ってしまった甚爾の二人のみとなった。ドッジボールならば時間切れによる引き分け確定の構図。現に、あと10分もしないうちに授業終了のチャイムが鳴る時間だ。
脱落者にヤジを飛ばされながら、二人はじっと睨み合っていた。

「甚爾ー!ケガすんなよー!」
「姿勢が悪いぞ!もっと重心を落とせ!」
「私が治療すんだからねー、怪我しないでよめんどくさいから」
「(昏倒中の五条)」

甚爾は木刀を構えてはいるが、幼い身体に太く長い獲物は合わず、切っ先が常にふらついている。それを見て、夏油はファインティングポーズを構えた。

「悪いけど、容赦しないからね」
「は、舐めんなよ」

甚爾の視点は夏油に固定されている。夏油に呪霊が還っていき、周囲を取り囲みカウンター用の盾となる。それを注意深く観察しながら、甚爾は呪霊に邪魔されない角度を計算していた。周囲のヤジが止む。限界まで研ぎ澄ました五覚を頼りに、突破口を探し求めた。

が、それは無駄な足掻きだった。
夏油は自身の限界を正しく認識しているため、五条や髙羽のように力押しを選択することは少ない。甚爾に対して呪霊での物量攻撃は悪手と知っているため、夏油は当たり前のように闇討ちを選択した。
夏油は呪霊を回収するフリをして、甚爾の死角に少数を配置していたのだ。呪霊を感知できない甚爾には最良の選択ではあった。
かくして、甚爾はいとも容易く地に伏せることになった。
死角からの不可避の一撃。体重の軽い甚爾は軽々吹き飛ばされ、数m吹っ飛ぶ。慌てて夏油が粘性の呪霊を着地位置に張り巡らせたため、致命的な打撲は避けられた。派手にふっ飛んだが、そこは頑丈なフィジカルギフテッド。かすり傷のみで意識もはっきりとしている。

「あー……いや、作戦としては正しいんだけど……」
「正々堂々という文字は無いのか?」
「前々から思ってたがやっぱクズだよね~」
「(昏倒中の五条)」

脱落者からは批難轟々。それもそのはず、180㎝越えでガタイの良い糸目の男が、まるで小学生のような体格の少年に対し勝利だけを追求した戦法をとったのだから、それはそれは絵面が最悪なのである。容赦はしないと宣言してあるものの、それでもこれは無いだろう、というレベル。
その上で、普段からデリカシーを欠いた発言の目立つ夏油は、子供のような無邪気さで最悪の一手を指した。

「甚爾さあ、ちゃんと呪力強化してる?基礎中の基礎なんだからそこができないと……、……あっ」

甚爾のフィジカルギフテッド体質は、周囲はデリケートに扱っていた。腫れ物に触るような扱いにならないように、かといってずけずけと踏み込まないようになるべく話題に上げない、上がるとしてもそれが異常だという態度を取らないように。実際甚爾の気質にはそれが合っているようで、これまでに目立った諍いは無かったのだ。
夏油傑を除いて。
夏油は、まるで意図的かのように無意識に甚爾の地雷を踏み抜いていく。彼に悪気はない。悪意もない。そして思慮深さもないと言っていい。
夏油は元来気配りができ、責任感が強く、そして思慮深い。ただしかし、甚爾の前でだけはそれらすべてが機能しなくなる。だからタチが悪いのだ。

「侮辱罪だ」
「待てっ待て寛見、ガベルを取り出さないの。多分わかってると思うけどさっきの発言を裁くことは難しいから。だから法廷外乱闘にしようぜ」
「怪我人増やさないでくれるー?」
「(昏倒中の五条)」

夏油は自身が失言した自覚はあるらしく、冷汗を滝のように吹き出しながら言葉をサルベージしている。そしてひねり出した言葉はただの追撃だった。

「いや、ごめん。失言だった。甚爾にはできないんだもんね、呪力強化。ごめんね、無理なこと言って」
「おいなんで煽りにいくんだよ!ホントそういうとこだよ!」
「……それ以上口を開き続けるなら俺にも考えがある」
「アッハイ、また失言したっぽいね」

空気が一瞬にして重くなる。髙羽と日車は夏油を睨んではいるが、攻撃態勢はとらない。
夏油は甚爾に対しては狂うが、それを一方的に糾弾するには人徳がありすぎるのだ。髙羽と日車も夏油には何度も助けられたし、失言に暴力で返すには信頼関係が強固すぎる。
当の甚爾は吹き飛ばされた衝撃でクラクラしていたのか、夏油の言葉の半分も聞き取れていなかったようで、同級生二人の眼光に目を白黒させている。ただ、夏油には前科がいくつもあるので大体の状況は把握したようだ。

「寛見、史彦、ストップ。俺は今回は大して傷ついていない。だからそのハリセンとガベルをしまってくれ」
「被害者本人が示談を望むなら、俺はそれに従う」
「夏油!お前示談金として甚爾になんか奢れよ!」
「ハハ、すみませんでした……」

夏油はヘラヘラ笑って、甚爾をカフェにでも連れていく約束をする。
これだから、ダメなのだ。
夏油は持ち前の上っ面と人徳で全部なあなあにしてしまう事が多い。このどうしようもないノンデリ加減も、誰かが一度徹底的に叱らないと直らない。本人に悪意が無いからこそ、大きなきっかけが必要なのに、本人が悪人ではないことを周囲が熟知しているせいで叱るに𠮟れない。
結局、放課後に寄ったカフェでも甚爾の地雷を踏み抜いた結果、夏油は左頬に大きな青あざを拵えることとなる。

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