プラセボ効果[後編]
いつも、いいねや反応ありがとうございます
(๑¯人¯๑)
【注意書き】
■某掲示板の甚爾/髙羽/日車が高専の同期だった世界線を参考にしたIFストーリー
真面目にこの御三方が好きだったので、神スレありがとうございました
■掲示板の内容を参考にしたり、自分の解釈を突っ込んで居います
■腐界隈の人間が書いて居るため、苦手な方はご注意いを
■術式などしっかりと理解していない点がある為、ツッコミ所が多々あるかと思います。ノリで凌いでください。
■髙羽さんにギャグ要素ありません。
□オリキャラがでております
□存記トリオの過去捏造
□相変わらずな、ご都合設定ありです
□誤字は見つけ次第修正しております┏○┓
→なんでも許せる方向け( .. )
本誌完結おめでとうございます!
素敵な作品をリアタイ出来て感謝です。
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4.side甚爾
夕食を終え、部屋に戻ると外からは雨が屋根や水たまりに落ちる音が聞こえる。庭に面している部屋の為か、その音が妙に大きく聞こえた。
「あのさ!」
「諦めろ。」
「まだ何も言ってないじゃん!!」
最後に部屋に入った髙羽が襖を閉めると、眉を潜めながらこちらに向かって声を掛けて来るが、間を空けずに言葉を返す。
「どうせ爺さんの為に何とか居なくなった女を探すだとか、もう一度会わせたいとか言うつもりだろ。」
「そうだよ!」
「お前、考えてからモノを言えよ。彼女だか女房だか知らねぇけど、居なくなったの5年前だぞ。この村に居るかも分からねぇし、そもそも生きてるのかって前提もある。」
「でも…。」
「でもも、だってもねぇ。爺さん問い詰めて、相手の特徴吐かせて、生死不明で何処に居るかも分からねぇ人間を探すつもりか?」
「それを…それを、どうにか出来ないか相談しようとしてるんじゃんかー!!」
「だから、無理だっつってんだよ。こちとら慈善事業してる訳じゃねぇ。あくまで任務で来てる事を忘れるな、明日には帰るんだぞ。」
そこまで言うと、髙羽は言い返して来なかった。正確には言い返す言葉が見つからないのだろう、何か言いたげな顔をして、こっちを不満な目で見てくる。
「お前もだ日車。」
髙羽はまだ良い。その場で思ったことは言葉に出して伝えてくる。今みたいに、自分の中でどうしたいか話が纏まっていなくてもだ。
日車は逆に結論が出ないと話して来ない。爺さんの話の時からずっと黙りで、何かを紐付けようとしている気がする。
「さっきから何か考えてやがる。それに未だ俺に報告して無い事あるだろ、全部話せ。」
「何だ、髙羽には無理だと言ってるのに気になるんじゃないか。」
「お前らが勝手な真似をしない様にだ。巻き込まれるのは御免だからな。」
そう言うと、髙羽はキョトンとしながら俺と日車を交互に見た。
あくまで想定でしか話せないから、それで良ければと日車は前置きして、とりあえず俺と髙羽は布団の上に座った。
「そもそも、長谷川さんの想いの方は人では無いんじゃないか。」
「人じゃ無いって、どう言う事?」
「髙羽、とりあえず聞こうぜ。」
髙羽を制して続きを促す。さっき髙羽には人間と言ったが、俺もその可能性を考えていたからだ。
「理由は幾つかあるのだが、長谷川さんは元々術式を持って居ないそうだ。」
「おい、聞いてねぇぞ。」
「今、初めて言ったからな。2人が社へ行っている最中に術式について聞かれたので、返しに聞いてみた。どの様に戦っていたか迄は聞けなかったけどな。因みに自分の術式も正確には話していない。」
聞いてみたじゃねぇ、風呂の時に話せと言おうとしたが、話しが進まないのでとりあえず我慢した。
「それでも呪術師をやっていたと言う点と、札を用いている点から、式神を使役して祓っていたのではないかと思う。」
「式神使いねぇ。」
「そして、理由の2つ目に長谷川さんが呪霊が見えなくなってきたのが5年前で、想い人に会えなくなったのも5年前と言っていた点。
3つ目に、消えてしまった。会えなくなったと言う表現は使っているが、居なくなった、出ていったとは言っていないこと。ここは民宿だが、客が時折来る点を除いても誰かと一緒に暮らしている形跡は無いし、仏壇の様な物も置いて無かった。」
「5年も経ってれば、そんな形跡無くなるんじゃないの?」
「夕飯の時にあんな台詞言ってた人間が、そんな簡単に身辺整理出来ねぇだろ。」
「そっか。」
「この2点を踏まえると使役していたのは式神、もしくは呪霊になる。」
「え、呪霊って使役できるの?」
「例えば呪霊操術つって、呪霊を取り込んで手懐ける超レアな術式もある。それと似た様に呪符で呪霊を使役することは出来なくはねぇ。」
但し、術式由来でなければどちらを使役していても、使役する体数は限られるだろうし、術者の器量にもよるが呪霊操術の様に上位の呪霊はそう簡単に使役できない。
「え…いや、でもさ。呪霊が恋愛対象だった可能性もあるってこと?」
「正直、呪霊の可能性の方が高いと思う。普通ならそんなことはあり得ないと除外する話だけどな。」
「呪術師なんてイカれて奴の集まりだぞ。」
「後は、家に貼っている札は呪霊の侵入を警戒して貼っているのではなく、自信の使役していた呪霊が来たことを知る為に貼っているんじゃないか。」
「仮に札で侵入が分かったとしても、家に入った呪霊がお目当てとは限ねぇぞ。」
「札は呪霊の階級によって、反応の仕方が異なる仕様だと思う。2箇所変化があった内、1枚は軽く紙が変色していた程度だったが、1枚は焼き切れた状態だった。」
それを聞いて、正直ため息をつく他無かった。さすがにこれ以上、首を突っ込むのは厄介だと思ったからだ。
人間が恋愛対象に出来る精度の外見で且つ、札を焼き切る程の力を持つ呪霊と言うことだ。
「札が焼き切れた跡があると言う事は、まだこの家には居なくても、近くに居る可能性が高い。」
「本当に!」
「あくまで憶測の話しだがな。」
その日車の言葉に、髙羽は目を輝かせた。本当にこいつは話を聞いていたんだろうか。
「髙羽、お前分かってんだろうな。」
「何がよ?」
「この件に首を突っ込むって事は、特級呪霊を相手にするって事だぞ。」
「ファッ!!?」
「おい。」
正直な所、任務だからと言って今日会ったばかりの爺さんの為に命をかける必要はない。
「甚爾の言う通り、どんな特徴の呪霊かも分からない。外見も能力も含めてだ。それに今は夜で雨も降ってるし、危険な事には変わり無い。」
「それでも、可能性があるなら探したい!」
「見つけたところでどうすんだよ。爺さんは見えないんだぞ。」
「見えなくても、その場で会えるってのが大事だと思う。それに、声が届かなかったら伝えるのは俺がする。」
「どうしてそんなに肩入れするんだ。」
「理由なんて知らないけど、呪術師を辞めてまで一緒に居たい存在だったんでしょ?ずっと一緒に居たのに、突然見えなくなっちゃって、感謝とかお別れの言葉も伝えられないまま何て寂しいだろ!」
「余計なお世話かも知れねぇぞ。」
「これは俺の我儘だから、もしお爺さんからも、呪霊から恨まれても、それは俺が請け負うよ。」
「……。」
「だから、自分が少しでもその力に慣れる可能性があるなら動きたい!それがお爺ちゃんの為でも、呪霊の為でも、人として!!」
髙羽はそう言い終わると、真っ直ぐに俺と日車の方を見つめてくる。
その目線を外し、左手が自然と頭部を撫でる。おまけにまた溜息も出た。これは確実にそう言う方向に成ることがほぼ確定したからだ。俺はともかくとして、日車には刺さっただろ。そもそも、日車も元から髙羽寄りの意見だったかも知れないが。
「呪霊の為は駄目だろ。」
「良いんだよ!階級持ちじゃないから呪術師じゃないし!!」
「人としてと言われたら、動かない訳には行かないな。」
「ヒロミちゃん!!」
髙羽が日車の手を取って上下に振ると、今度は俺の方を見てきた。
「とーじ君。」
「……。」
「とーじさーん。」
「……あー。ハイハイ、分かりましたよ。」
「俺はそう言ってくれると信じてた!!」
「馬鹿、引っ付くな暑苦しい!」
「とーじとヒロミちゃんが居れば大丈夫!」
「何かあってもテメーで何とかしやがれ。」
こうして、こんな時間からわざわざ正体不明の特級呪霊探しをする羽目になったのだ。
そうと決まってしまったので、仕方なく制服に着替える。せっかく後は寝るだけだったのに。
「そもそも何処から探すんだよ。しらみつぶしに片っ端から村中を見て回るつもりか。」
「長谷川さんは、退院したら社の紫陽花を見に行くと言っていた。先ずはそこからだな。昼間社まで行ったときに紫陽花なんて咲いてたか?一応時期ではあるのだが。」
「とーじ見た?」
「いんや。」
「社の周辺は見て回ったか?」
「見てないよ。供え物の場所に行っただけ。」
「そうか。なら、行って確認する価値はあるな。」
着替えが終わり、目的の場所も決まった。正直今から探すとなると時間が無い。
「そういえば、あれは呪霊の名だったのか。」
「何だよ名前って。」
部屋から出ようとした時、何やらボソボソと日車が独り言を呟いた為、思わず拾ってしまった。
「風呂から出た後、先に厨房の方に手伝いに行っただろ。その時に長谷川さんが言ってたんだ。確か”カグラ”とな。何のことか直ぐに分からなかったが、今思えば名前の可能性もあるなと思っただけだ。」
「あ!!」
「どうした?」
「昼間に社で綺麗な女の人に会ったんだけど、名前聞いたら神楽って言ってた!!」
「……。」
髙羽の言葉を聞くと、スッと俺の方を見て来る。
「甚爾こそ報告不足じゃないか。」
「あー、忘れてたわ。」
本当に忘れてたのだから仕方がない。爺さんに気付かれない様に外へ出ると、昼間に会った女の話をしながら社に向かったのだった。
5.
雨の中、地蔵と祠のある場所まで辿り付き、不揃いの石段を上がり社へ到着した。石畳に足を掛けて周囲を見渡すが、紫陽花なんて咲いていない。
とりあえず手分けをして紫陽花を探すことにし、俺は社の裏手の方を確認しに行く。
少し奥まで入ったところで覚えのある視線を感じた。
「おい!」
その呼び掛けだけを髙羽と日車が居る方に発し、その視線を感じる方へと足を向けた。
「あら、また会えたわね。」
「あんたから会いに来たの間違いじゃねぇのか。」
社の裏手、木々の中を少し進んだ所に、下に降りる為の獣道があった。そこを下りると、小さな池とその周りを囲う紫陽花が咲いていた。
そして、その一角に昼間会った女が紫陽花を見ながら佇んでいる。そして、此方に気付くと声を掛けてきたのだ。
おそらく視線に覚えがあったのは、昼間に供え物をした際に感じたからだ。と言う事は、バス停で感じた視線もコイツに見られていたからで間違いなさそうだ。
「そうね。そう捉えれるかも。」
「あんた、呪霊だったんだな。俺が正体を見抜けないとか相当強いだろ。」
「自分の感覚に自信があるのね。」
まさかこんな早く、ピンポイントでお目当てを見つけられるとは思っていなかった。
会話を続けていると、髙羽と日車が追いついてきた。それに気づいた神楽も2人の方に視線を向ける。
「羽鳥君と…もう一人の子も来たのね。日車君。で、本当は髙羽君と禪院君でしょ。」
「偽名にしたの意味は余り無かったな。」
「うっせ。」
今は敵意は無い様子で普通に会話をしているが、相手は人と意思疎通ができる呪霊だ。気の抜ける状況ではない。
「私の事を祓いに来たんでしょ。」
もちろん、相手も同じ状況ということでもある。
「違う、探しにきました!」
「どうして探しに?」
「神楽さん、長谷川のお爺ちゃんと会ってもらう為です!」
「綺麗な目をして、とても残酷な事を云うのね。会ったところで私の声はあの人には聞こえないわ。」
予想通り、爺さんは見えなくなったどころか声も聞こえない状態の様だ。まぁ、声だけでも聞こえていたらわざわざ俺等がでしゃばる必要もない。
「お爺さんから、何の前触れもなく会えなくなったって聞いて。直接感謝の言葉も伝えられないって言ってた。それって、神楽さんも伝えたいことがあるんじゃないですか?」
「呪霊である私の言葉を素直に聞くつもり?」
「そうです!」
女の疑問に対して、高羽が素直に答えていく。言葉を返すにつれて女が眉をしかめていくの が分かったが、それが通常の反応だろう。
「変な子ね。」
「変!?」
「違いねぇな。」
「それは否定しない。」
「ちょっと2人も酷くない!!?」
その通りだから仕方がない。特級呪霊に対して警戒心もなく素で関わっている人間だ、相手からしてもオカシイ判定されるのは仕方がない事だろう。 その代わり、俺と日車が警戒しているのは相手に伝わっている筈だ。
「……そうね。彼が生きている内に、君みたいな稀有な人間に会える事もないでしょうし、言伝だけでもお願いしようかしら。」
「はい!!」
髙羽の熱意とやらが伝わったのか、少し考えた様子を見せて神楽はそう答える。その言葉に、高羽も嬉しそうに返事した。
「私はこの場所で産まれた呪霊なの。」
神楽は言伝の前にと、目の前に咲いている白い紫陽花を見ながら経緯を話し出した。
神楽はこの村で産まれた呪霊で、爺さんもこの村で代々続く術師の家系だそうだ。出会いはこの社で、爺さんが幼少の頃であり、神楽も産まれたばかりのため爺さんと同じ年頃の姿だったと言う。
それから毎日この社で会うのが日課となり、成長する過程でお互いの立場を認識した。そして、爺さんが術式が無い為、術師として自身が使役する為の呪霊が必要だと話した時に、神楽からその役を名乗り出たとのことだ。
爺さんの家系は術式を持たない者の何人か居た為、式神か呪霊を使役して呪術師となるそうだ。大抵は式神の方を採用するのだと言っていた。
そして、爺さんと神楽が主従関係を成立させた後、周囲には呪霊ではなく式神として認知させ、呪術師をしていたとのことだ。
「気配を消すことが得意だし、お面で顔を隠していたから呪霊だと気付かれなかったわね。」
碌な術師が関わって無かったのは、そのセリフで明確である。
「私の場合は姿や話し方が人間並みに振れている為か、呪霊なのに強い術式では無くてね。どちらかと言えば体術の方が得意だから、呪具を使った戦闘がやり易かったわ。」
そう言うと神楽は一瞬だけ俺の方に目を向けて、また視線を下げて話しだした。
「そして、彼が術師として、私は彼の武器として任務を重ねていく急に言って来たのよ。『僕は、君を道具として使えない。』って。」
「……。」
「それから周囲を説得しだしたの、呪術師を辞めたいって…でも、実家の事もあるから完全には辞めれなくて、窓をすることで何とかこの村に戻ることができた。主従関係の契約は残したままだったけどね。」
「何で残したままにしたんだよ。」
「確かに最初は彼が呪術師に成る為の契約だったけれど…そうね、きっと君にもいつか分かる時が来るわよ。」
今、何か馬鹿にされた気がした。あからさまに不機嫌が出てしまったが、ここは譲歩することにした。
それからこの2人はこの村で、社と民宿を管理しながら一緒に過ごして行ったのだろう。ある意味呪術師を辞めたのは正解かも知れない。きっと、術師を続けていたらあの年齢まで生きていられなかったのではないか。誰がいつ死んでもおかしくない、そう言う世界だ。
ただ、爺さんは年を重ね見目は変化していくが、呪霊である神楽はこの姿のままだったのだろうけれど。
「それから5年前に、彼が脳梗塞と診断されて手術することになった。手術は成功したけれど、それ以降彼は私を見る事も、声を聞くことも出来なくなってしまった。」
「その話は聞いた。」
「そう……。本当は、万が一の場合を考えて彼が居なくなる覚悟はできていた筈なのに、手術の後に彼が目を覚ました時、また一緒に居れると安心してしまった。その瞬間に覚悟が無くなってしまったの。」
彼女はそう話すと、人間の様に困った顔をして微笑んだのだ。
全く相手の姿や声が聞こえなくなるのと、自身は相手の存在は感じられるのに、相手から見られる事は無く、声も届かない状態なのはどちらがマシなのだろうか。
「それで、言伝の件だけれど…。」
神楽が話を続けようとした瞬間だった。
「おーい。こんな所でなにしてるのー!」
上の方から聞き覚えのある声がした。獣道がある、社の方向を確認すると傘をさして懐中電灯を此方に向けている爺さんの姿があった。
「えっ、なんでお爺ちゃん来てるの?」
髙羽は少し困惑した反応を見せるが、部屋に居ないとか、靴も無いなど気付く手段は幾らでもある。それでもこの場所に来たと言う事は、夕飯の時に話したことを気にしているかも知れない。
ただ、タイミング的には好都合だ。そもそも姿が確認できなくても気持ちを伝えることが目的だったのだし、そうと決まって居ればやることは一つだ。
上まで爺さんを迎えに行き、驚く爺さんを無視して元の場所に戻った。その途中に、爺さんが何か言っていたが、説明するよりも実行する方が早いと特に何も返さなかった。
「髙羽、お前が言い始めたことだ。テメーで責任持て。」
「うん!ありがと!!」
髙羽にそういうと、爺さんを髙羽に託した。髙羽は、夕飯の時の話を聞いてどうしても想い人を探したかったとこ、そして爺さんと神楽の想いを言葉だけでも伝えたいと説明をしていた。
だが、爺さんは髙羽の説明など聞こえていないかの様に、一点だけを見つめていた。
「長谷川のお爺ちゃん?」
「……。」
正確には、神楽を見ていたと言った方が正しいかもしれない。神楽も爺さんを確認して完全に目が合っていたのだ。その事を髙羽も気付いた様で、2人の顔を交互に見ている。
「どうして…。」
「お久し振りね義明さん。私のこと、もしかして見えているの?」
そして、その台詞で見えていることが確信へと変わった。それが分かると俺は困惑している髙羽をその場から引きずり、日車と目くばせしてその場から少し離れる事にした。
一応あちらからある程度、俺等の姿が見え難いところまで移動した。今まで散々、見えないから伝えたい言葉を代弁するだとか、双方から恨まれてでも実行すると言い張っていた髙羽は表示抜けな顔をしている。
「ん~~~。何故だ??」
このような絶対あり得ない状況を可能にしてしまう能力に心当たりがある為、俺も日車も何も言わずにその場を離れた訳だが、本人は自分の仕業だと全く気付いていない。
髙羽の術式は、とにかく無茶苦茶な出来事も実現してしまう能力だ。以前は笑いに紐づくものだと思っていたが、今回の様な事も適用するらしい。
「(ますます、訳が分からねぇ奴だ。)」
そもそも呪術師は自身の術式を他人に話したりしないモノだが、髙羽に関してはこれから同期として過ごして行く上である程度把握する必要がある。以前の夜蛾の報告を聞いてしまっては尚更だ。
「でも、今回はこれでいいのか!!」
一人で思案し、今更ながら結論にたどり着いたらしい。髙羽の言う通り、一番最適な形で再会できたのだから良しとすればいい。
「髙羽は凄いな。」
俺の少し後ろに立っていた日車が、爺さん達の方向を見ながら言葉を続ける。
「術式とは本来、負の感情をエネルギーとして呪力を流して発動させる力の筈なのに、あの様に正のモノを誰かに与える事ができるんだな。」
「んなもん、髙羽にしか出来ねぇよ。」
「そうだな。」
日車がそう言い終わると後は誰も話さず、爺さんと神楽の逢瀬が終わるのを待ったのだった。