三菱電機がレアアース不要のCO2還元モデルを構築
三菱電機株式会社は、東京科学大学(Science Tokyo)と共同で、二酸化炭素(CO2)を資源として再利用するケミカルルーピング方式の還元反応モデルを構築した。この新モデルは、従来必要とされていたレアアース(希土類)などの重要鉱物を使用せずに、反応速度を従来比で1.8倍に高速化することに成功したものである。
脱炭素の実装フェーズにおけるCCU技術の重要性
2026年現在、日本政府が掲げる「2050年カーボンニュートラル」の実現に向け、産業界ではCO2を排出削減するだけでなく、回収して資源として再利用するCCU(Carbon dioxide Capture and Utilization:二酸化炭素の回収・利用)技術への期待が急速に高まっている。特に2026年度からは排出量取引制度が本格始動するなど、企業には具体的な脱炭素の実績が求められるフェーズに移行している。
こうした中、三菱電機はサステナビリティ経営を事業の柱に据え、2026年6月には海水からCO2を回収する技術を発表するなど、カーボンリサイクル分野への投資を加速させている。業界全体でも、東芝がP2C(Power to Chemicals:電力を活用した化学品合成)技術を推進し、IHIがメタネーション(二酸化炭素からメタンを合成する技術)の実用化を急ぐなど、競合各社による技術開発競争が激化している。
従来のCO2還元技術においては、反応を促進するためにレアアースなどの高価な重要鉱物を添加する必要があり、これがコスト増大や資源調達における地政学リスクを招いていた。今回の三菱電機と東京科学大学による成果は、こうした資源制約を克服し、経済合理性の高い脱炭素ソリューションを提供することを目指したものである。
レアアース不要のケミカルルーピング方式を確立
今回構築されたモデルが採用するケミカルルーピング方式とは、酸素キャリア(酸素を運ぶための媒体となる物質)を介して、CO2を一酸化炭素(CO)に変換する還元反応と、酸化反応を別々に繰り返し行う手法である。この方式では、酸素キャリア粒子に含まれる鉄などの金属がCO2と接触した際、酸素を取り込むことでCO2をCOへと還元する仕組みとなっている。
研究グループは、反応金属そのものではなく、金属を支える担体(触媒となる金属を固定し、反応を支える土台となる物質)の役割に着目した。東京科学大学が保有する材料科学の知見を活用し、イオンと電子の両方を運べる性質を持つ鉄置換チタン酸カルシウム(CTFO)を担体として適用した。これにより、レアアースを添加することなく高い反応性を維持することに成功した。
この新モデルを用いた実験では、反応温度800℃において、CO2還元反応速度を従来比で1.8倍に向上させる成果を得た。これは、CTFO内部の酸素空孔と電子の移動、さらに鉄の酸化反応が界面で協調的に作用することで、CO2の解離と還元が促進された結果であると分析されている。
装置の小型化と2029年度以降の社会実装へ
反応速度の高速化は、単位時間あたりのCO2処理能力の増加に直結するため、将来的な装置の小型化や設備コストの低減に大きく寄与する。レアアースを使用しないことで、資源価格の変動に左右されない安定したサプライチェーンの構築が可能となり、CCUシステムの社会実装を妨げていたコスト面での課題解決が期待される。
三菱電機と東京科学大学は、今後も実証試験を通じて反応器や酸素キャリア粒子の改良を継続する方針である。生成された一酸化炭素は、メタノールなどの化学品や合成燃料の原料として活用できるため、広範な産業分野でのカーボンリサイクルに貢献する可能性がある。
両者は2029年度以降の社会実装を目指しており、高効率なCCUシステムの構築を通じて持続可能なカーボンサイクルの実現を推進する。今回の成果は、資源制約を考慮した次世代の酸素キャリア設計における重要な指針となり、日本の脱炭素技術の競争力を高める一助となるだろう。
出典:三菱電機株式会社プレスリリース(PR TIMES)
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