原発の規制側→推進側への人事異動禁じるルール 政府が一部緩和検討
東京電力福島第一原発事故後、原子力の「規制」と「推進」の分離を目的に導入された人事制限のルールについて、政府は一部を緩和する方向で検討に入った。現行ルールでは、原子力規制庁の職員は経済産業省などの推進部署に異動できないが、幹部以外の異動を認める案が浮上している。
複数の政府関係者への取材でわかった。人事の流動性を高め、原子力規制委員会の事務局である規制庁の人材確保につなげる狙いがある。政府内には、来年の通常国会に改正法案を提出する考えもあるが、原発事故の教訓とされた規制当局の独立性が担保されるかなど論点は多く、異動を認める対象の範囲など慎重に議論を進める構えだ。
このルールは「ノーリターン・ルール」と呼ばれ、規制庁の全職員(約1100人)は、経産省と文部科学省、内閣府の原子力の推進業務に関わる部署には異動できない。規制委設置法の付則に明記されている。
原発事故前、規制当局の旧原子力安全・保安院と推進を担う資源エネルギー庁がともに経産相の指揮下にあり、職員は異動で行き来していた。
だが、保安院が安全対策の強化に否定的で、それが事故の遠因になったとの反省もあり、2012年に発足した規制庁ではルールが導入された。当時の民主党政権に加え、野党だった自民・公明両党の提案も踏まえて決まった経緯がある。
ただ、原発事故後、国内では原子力業界への就職を希望する学生が減少。規制庁の職員も約半分が50代以上といい、若い世代も含めた人材確保が急務とされる。他省庁からの異動を増やそうと思っても、ノーリターン・ルールのもとでは、いったん規制庁に来るとその後のキャリアが限定されてしまう。自民党内には「ルールがあることで規制庁に行くのをためらう人もいる」との見方がある。
政府関係者によると、職務権限が大きい課長以上の幹部以外の職員は異動できるようにするといった緩和案が浮上。出身省庁の自由な部署に戻れるようにすることで人材を確保しやすくする。
政府は昨年2月に決めたエネルギー基本計画で「原発依存度を低減する」との記述を削り、原発を最大限活用する方針に転換。今回のルールの見直しも人材確保を安定させ、原発政策の持続性を高める狙いがある。
今年5月には、規制庁の体制などを調べた国際原子力機関(IAEA)がノーリターン・ルールを問題視する報告書を公表。人材の確保を難しくしているとして、「人事の流動性を高められるようにすべきだ」と勧告した。
また、自民党の原子力規制に関する特別委員会(委員長=細野豪志・衆院議員)も今月8日、高市早苗首相に提言を申し入れた。
提言では、規制庁の人材確保は「極めて厳しい状況」だと指摘。「独立性を損なわないことを大前提としつつ、若手職員は原子力に関係する他の行政機関との交流を認めるべきだ」として、ノーリターン・ルールの再検討を求めていた。
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