ブラックの衣装を脱ぎ捨て、燃えるようなレッドのドレスになる。
あなたとリノは全身を使い、舞台の端から端までくるくると舞う。
リノの腕の中であなたはどこか危険な笑みを浮かべ、時折高笑いをする。
リノがあなたの細い手をガッシリと掴み、腰に手を這わせる。
あなたもしな抱かれるようにしてリノにもたれては、時折糸が切れた操り人形のようにダラリと後ろに体重をかける。
会場の歓声があなたに対してのものに変わる。
あなたが視線を振りまくたびに歓声が上がり、中にはあなたの名前を呼ぶ者もいた。
あなたとリノは歓声を一身に背負い、楽しそうにパフォーマンスする。
あなたとリノが手を繋ぎ、あちらこちらに手を振る。ファンサービスだった。
あなたは女の子に対してはニコニコ手を振り、男の子に対しては興味なさそうに舌を出したりそっぽむいたりする。
リノはといえばあくまでどちらに対しても紳士的に手を振り、あなたをエスコートする。
スタッフがステッキを投げ込み、あなたが見事にそれをキャッチする。
高らかに笑いながらステッキで2回床を叩いてから、あなたとリノは再びシャウトする。
次の瞬間、今日一番の歓声が上がる。
曲が一番盛り上がる部分だ。
2人は向き合い、ステップを踏む。
あなたの動きに合わせ、リノが下がり、リノの動きに合わせ、あなたが下がる。
たくさんの歓声の中、
気持ちよく踊っていたその時だった。
リノが後ろに転びそうになる。
慣れないピンヒールで踊ったつけがここにきたのだ。咄嗟にあなたがリノの右腕を引き、自分の方へと抱き寄せる。
リノの腰を抱き、距離がグッと近くなる。
ヨジャドルからはきゃーっ!と黄色い声があがり、ナムジャドルも雄叫びのような声を上げる。
リノは動揺したのか目が泳ぐ。
観客にも聞こえないような小さな声で、あなたはリノに喋りかける。
あなたはリノに対して恭しく頭を下げ、リノの手のひらにキスを落とした。
もちろん、そう見える風にしているだけで口で盛大にリップ音を出し、唇自体はリノの手のひらに触れていない。
それでもあなたは痺れるほどにかっこよくて、周りからはまた大きな歓声が上がる。
2人は再びステップを再開し、楽しそうに踊り始める。
曲がローテンポになり始め、あなたとリノはステップをやめる。
リノがあなたの方に手を差し出し、あなたがその上にそっと自分の手をのせる。
ランウェイを歩いているかのように堂々とステージを闊歩しながら、2人は中央へと戻っていく。
中央に着く。
一瞬お互いの顔を見た後、2人は観客を見回し、大きく手を振ったり大袈裟にお辞儀をする。
そして最後の歌詞を2人で一緒に歌う。
歌い終えると胸元に手を当て、2人は綺麗にお辞儀した。
曲が終わるとともに、割れんばかりの歓声と拍手が飛ぶ。あなたは顔をあげ、びっくりしたように周りを見回す。
まさかこんなに大きな歓声を貰えると思ってなかった。
なんとなくリノの方を見た。
リノの言葉を聞いた途端、脳天が熱くなる。
あなたは目を見開き、「あっ…」と言ってポロポロ涙を流した。
緊張の糸が切れたからだった。
…正直、すごく不安だった。
今日踊れないかと思ったし、色んな人に申し訳なかった。
だけどリノが一緒に踊ってくれて、隣でパフォーマンスしてくれた。即席と思えないくらいに立派なのを。
もう一度挨拶をし、2人は手を取り合って舞台から降りる。
駆け寄ってきたStray Kidsにもみくちゃにされたのは言うまでもなかった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。