グラウンドからダヒョンのアナウンスが聞こえる。
あなたはリノの顔を見、リノもあなたの顔を見る。
打ち合わせ通り、リノがあなたの手を取り、あなたもリノの手を取る。
ファン達や他のアイドルが歓声をあげる音や、拍手をする音などが聞こえる。
2人は深呼吸し、グラウンドへと足を踏み出した。
コツコツと赤いヒールを鳴らし、あなたが登場する。
隣であなたの手を繋ぐリノも全身ブラックだというのに、靴だけは煌々と輝くレッドのヒールだ。
リノへの歓声は飛ぶが、あなたの正体がわからないようで会場が少しどよめく。
あなたは氷のような表情を崩さず、時折ステッキを床に打ちつけては品定めするように冷めた目で周りを見渡す。
舞台の真ん中に到着し、あなたが退屈そうにステッキを前手に持つ。
あなたの手を離したリノはまるで従者のようにあなたの一歩後ろに立ち、ツンとした表情をする。
会場の照明が一度暗転した。
混乱により、アイドルとファンがざわつく。
次の瞬間、音楽と共にフツフツと灯りがつき始める。
ショーが始まる。
あなたが曲に合わせて手を振り、道化のようにさまざまな方向に大げさにお辞儀をする。
リノは動かない。
ステッキを回しながら、あなたは時折退屈そうにあくびをする仕草をする。
あなたがステッキを放り投げ、リノと再び手を繋ぐ。紳士のようなリノに縋り、あなたは高らかに笑い声をあげる。
少し下品な、悪魔のような笑い方だ。
あなたがリノを引き連れ、ステージを闊歩する。
ここがどこだかわからないという風に肩をすくめ、時折リノの方をチラリと見る。
あなたはリノの胸元に手を這わせ、ハア…と濃厚なため息を吐いて天を仰ぐ。
リノはあなたの腰をグッと抱き、脱力したあなたが倒れないようにする。
あなたがリノの太ももを撫で、髪を撫でる。
リノがあなたの仮面を取ろうとし、あなたがそれをひらりとかわす。
会場からはファンや他のアイドル達が叫ぶ声が聞こえる。
あなたがリノから逃げようとするもリノに手を引かれ、再び腕の中へと戻る。
クルクルと回るあなたのスカートがひらりとめくれ、時折燃えるようなレッドが覗く。
あなたとリノが声を合わせ、シャウトする。
悪魔のような声だった。あなたは高らかに笑い、リノと向き合ってステップを踏む。
赤のヒール二足が跳ねる。
まるで2人だけの舞踏会だった。
あなたがリノの顔を覗き込み、驚いたように口を覆う。
リノはそんなあなたの仮面を取ろうとするが、またうまい具合に交わされてしまう。
リノがあなたの腰に手を這わせ、あなたは媚びるようにリノの首を撫でる。
2人がキスできるほどの近さになった時、きゃあっ!!とヨジャドルの方から黄色い声が上がる。
少女漫画を見てるような感覚なのだ。
あなたがリノの腕の中に入り、抱きしめられるような形になる。赤のヒールがギラリと光る。
2人は口角だけをあげてお互いを蔑むように笑い、そしてまた離れる。
ダンスは激しさを増していく。ステップが増え、一糸乱れぬパフォーマンスが続く。
見惚れる者。仮面の下の正体を話し合う者。
リノを讃える者。パフォーマンスに声も出ない者。
反応は三者三様だ。あなた達もまたのめり込み、ステージを楽しんでいる。
そしてついに…。
仮面が宙を舞う。
観客の声量が一際大きいものになった。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!