- 1スレ主26/06/04(木) 02:03:15
- 2二次元好きの匿名さん26/06/04(木) 02:20:41
このレスは削除されています
- 3二次元好きの匿名さん26/06/04(木) 02:32:23
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- 4二次元好きの匿名さん26/06/04(木) 02:34:40【閲覧・CP注意】 「お前の人生はハッピーエンドにはならねぇと思ってた」|あにまん掲示板それでもできうる限りの幸せを与えてやりたいと思ったんだ……※初心者のSSです※安価など有り、ダイスもあり※END分岐やその他の分岐がありますが、一度END分岐が出てても話の展開によってはさらに追加でE…bbs.animanch.com
前々前スレ
【閲覧・CP注意】 「お前の人生はハッピーエンドにはならねぇと思ってた」|あにまん掲示板それでもできうる限りの幸せを与えてやりたいと思ったんだ……※初心者のSSです※安価など有り、ダイスもあり※END分岐やその他の分岐がありますが、一度END分岐が出てても話の展開によってはさらに追加でE…bbs.animanch.com前々スレ
【閲覧・CP注意】 「お前の人生はハッピーエンドにはならねぇと思ってた」 Part3|あにまん掲示板それでもできうる限りの幸せを与えてやりたいと思ったんだ……※初心者のSSです※安価あり※あと1回END分岐があります※ゴア系の描写が出ますbbs.animanch.com前スレ
- 5二次元好きの匿名さん26/06/04(木) 02:36:52
【注意】
この先、日下部さん・日車さん双方にとって非常に辛く、残酷な描写が続き、結末に向けて救いのない描写や、場合によっては強い不快感を覚える展開が含まれます。 - 6二次元好きの匿名さん26/06/04(木) 03:19:23
立ておつ
どんな展開になっていくのか楽しみだ - 7二次元好きの匿名さん26/06/04(木) 05:43:12
スレ立て乙です
日車は自分の為に日下部の立場が悪くなるようなこと受け入れられないよね… - 8二次元好きの匿名さん26/06/04(木) 07:14:52
たておつ保守
日車自身何もしてないのに日下部がどんどん自分に堕ちてきてるみたいで怖いだろうな
そうなれば自分がいるのがいけないって思考になって逃げ出したくもなるだろう - 9二次元好きの匿名さん26/06/04(木) 07:33:32
新スレ待ってた!ありがとうございます!!
- 10二次元好きの匿名さん26/06/04(木) 07:34:38
結末が見たいけど終わってほしくない気持ちもある〜
- 11二次元好きの匿名さん26/06/04(木) 11:37:02
新スレありがとう!
あ〜終わりに近づいているのは寂しいけどハッピーエンドも見届けたい - 12二次元好きの匿名さん26/06/04(木) 14:30:27
この先、日下部さん・日車さん双方にとって非常に辛く、残酷な描写が続き、結末に向けて救いのない描写や、場合によっては強い不快感を覚える展開が含まれます。
こんなに最初から最後まで救いのない注意書きあるかよ…
- 13二次元好きの匿名さん26/06/04(木) 14:57:01
でもダイス神がそう望まれたし…スレ主は啓示に従い文章を綴って…スレ民は見守ることしかできなくて…
せめて日下部が思い描いてしまった最悪のアンハッピーエンドからは逃れられるといいね…
どうして日車は周囲を派手に巻き込む曇らせがこんなに似合ってしまうんです? - 14二次元好きの匿名さん26/06/04(木) 22:58:10
ほしゅ
続きが気になりすぎる - 15二次元好きの匿名さん26/06/04(木) 23:59:42
king〇nuさんの「The hole」聴きながら読むのたまらん
- 16二次元好きの匿名さん26/06/05(金) 00:16:05
MV見てきた
曲とMVの印象が違うなって思った
MVだけ見たら日車視点だなって思ったし歌詞を読んだら日下部かもなって思った
自分的には日車視点寄りかな
MVで言うと女性の役割は日車が守ろうとしていた人間で、男性の役割は今の日下部なんだろうなって
- 17二次元好きの匿名さん26/06/05(金) 00:39:42
スレ主が次のスレ(このスレ)の最初の方で終わるって言ってたけどこの救いのない状態そのままで完結まで持っていくのか…辛い…辛すぎる…しかもまだ地獄がありそうで…
- 18二次元好きの匿名さん26/06/05(金) 06:52:27
救いは…救いはないんですか…
- 19二次元好きの匿名さん26/06/05(金) 08:50:25
- 20二次元好きの匿名さん26/06/05(金) 09:41:41
- 21二次元好きの匿名さん26/06/05(金) 15:47:47
言い方が難しいけど現状を提示されてから過去に何があったか回想する構成にされてるの天才だよな
子供化するのは確定なのにそれがなぜか分からない
記憶に蓋をした方法が分からない
日下部と引き離された理由が分からない
その後の鬱展開の展望が見えない
他にもまだまだあるけど結果を知っているぶん考察が捗る
ニュアンス伝わるかな - 22二次元好きの匿名さん26/06/05(金) 17:04:57
とても分かる
『何が』『どうなって』『こうなった』の『どうなって』しか分かってない状態
『何が』の部分は今語られてるけどどんどん重くなる未来しか見えないし
『どうなって』の部分にもまだ追加展開(重い・暗い)がありそう
それらが最後どんな『こうなった』に辿り着くか楽しみだけど不安だ
- 23二次元好きの匿名さん26/06/05(金) 23:37:29
今更ながらスレ画はどの場面なんだろう再会したとこかな?
- 24二次元好きの匿名さん26/06/06(土) 00:13:36
日車を連れてきて1週間がたった。その日は朝から雨が振っていた。窓を叩く雨音を聞きながら、俺は日車のベッドに伏せて微睡んでいた。一瞬だった。いや、思っているよりも長い時間寝入っていたのかもしれねぇ。雨音に混じって甲高いカラスの声がして、俺は目を開けた。
慣れたようにベッドへ視線を向ける。
日下部「日車?」
布団だけが不自然に窪んでいた。
一瞬にして目が冴える。ベッドの中に日車がいない。
日下部「日車!!!」
立ち上がった拍子に椅子が倒れる。寝室を見渡しリビングに駆けつけ台所に視線を走らせる。
いない。 心臓が嫌な音を立てる。誰?誰が日車を? 見つかった? 日車が?
吐き気に似た動悸に頭が割れそうだ。早く見つけねぇと――はやる思いでリビングを出ると、玄関の前に蹲る人影が見えた。
日下部「――日車!」
細い身体が玄関の壁に手を突いて蹲っていた。靴箱の引き戸が半分開いており、床には靴が散乱していた。
居た……それだけで膝から力が抜けそうになった。なのに、次の瞬間には腹の底がじわりと熱を持った。
日下部「外に出ようとしたのか」
荒くなる息を整えて問うと、日車は振り向いた。振り向いた顔は、悪戯を見咎められて怯える子どものようだった。 - 25二次元好きの匿名さん26/06/06(土) 00:20:48
日車「……すまない」
日車は目を伏せて壁に突いていた手をゆっくり下ろし、指先を頼りなく握りこんだ。
日下部「別にいい、戻るぞ」
なるべく普段通りに言ったつもりだった。だが声は思った以上に硬い。自分でも苛立っているのを自覚した。日車にもそれが伝わったのか、その場から動こうとしなかった。
何か言いたげに唇を開いては閉じる。数度それを繰り返し、やがて観念したように口を開いた。
日車「電話を……探していたんだ」
日下部「電話?」
日車「高専に連絡しようと思った。迎えに……来てもらおうと……」
一瞬、意味が分からなかった。理解した途端、全身の血の気が引く。連れ戻される。日車がいなくなる。その考えだけが嫌に鮮明に頭を埋めた。
日車「……迷惑を掛けているから。これ以上は駄目だと思った」
迷惑? 何言ってんだ。 お前は俺に連れてこられたんだぞ。俺が望んで此処へ連れてきた。迷惑な訳がねぇだろ。玄関に落ちる雨音だけが妙に大きく聞こえた。
日車「探したが、見つからなかった。だから外に出ようと」
日車「……ごめんなさい」
日車は俺を向いている。なのに視線が絡まない。直視するのが怖いのか、視線だけが俺の肩口の向こうを彷徨っていた。
日車「うっ……ごめっ……ごめんなさい……」
息を切らし、しゃくりあげているのに涙が落ちねぇ。そういえばこいつはずっと泣いていない。泣き方を忘れたみてぇに、泣くことが許されねぇみてぇに……。
――何やってんだ、俺は。言わなきゃならねぇことはいくらでもあった。勝手に出て行こうとするなと、俺から離れようとするなと。しかし上手く喉が動かねぇ。
玄関の床に蹲る日車は叱られるのを待つ子供みたいだった。腹の底に宿った熱が少しずつ冷えていく。 - 26二次元好きの匿名さん26/06/06(土) 00:24:41
日下部「……怒ってねぇよ、心配したんだ、外は危ねぇから」
日車「っ……」
日下部「とりあえず戻るぞ」
日車「……しかし……」
日下部「いいから」
強引にならないよう気を付けながら、膝をついてにじり寄ると、日車はびくつくように距離を取った。
日下部「日車」
日車「だめだ……」
俺が近づくたび、日車は僅かに後ろへ下がる。
日車「だめなんだ……これ以上は……」
日下部「日車」
日車「迷惑を掛けている……仕事にも行っていないだろう」
日下部「気にしなくて――」
日車「俺の世話ばかりしている、食事も、着替えも、何もかも……ずっと側にいてくれて……」
日車は自分の腕へ巻かれた呪符を引っ掻いた。
日車「俺は何もしていない、何も返せない、なのに、君の時間だけ奪っている」
日下部「違う、そんなもん気にしてねぇ、俺は――」
日車「俺のせいで……だから……戻らないと……」
違う。そうじゃねぇ、そう言いたかった。だが日車は俺の言葉なんか聞いていなかった。
俯いたまま、自分へ言い聞かせるように呟いている。まただ。こいつはいつだってそうだ。勝手に一人で結論を出す。俺の言葉なんか最初から届いていない。 - 27二次元好きの匿名さん26/06/06(土) 00:36:43
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- 28二次元好きの匿名さん26/06/06(土) 00:38:20
日車「これ以上は駄目だ、十分迷惑を掛けた、だから――」
それ以上聞きたくなかった。
戻る? 本当にそうか? 違うだろ。その先に何を考えている。何を諦めている。嫌な想像ばかりが頭を埋めた。
チカリと白い首元が脳裏を過ぎる。痕は残っていなかった、それでもこいつは――首を――
日下部「日車」
日車「これ以上は……」
日下部「いい加減にしろ」
掴んでいた理性が少しずつ指の間から零れ落ちていく。
これ以上押し問答を続ける気はなかった。日車は俺の声に弾かれたように身を強張らせた。後退ろうとして背中が玄関扉へぶつかり、逃げ場がないことに気付いたのか、顔色が変わった。追い詰められた獣みてぇに俺と玄関を何度も見比べる。
日下部「来い」
日車の表情が揺れた。膝を立て、よろめきながら腕を伸ばす。倒れ込みそうになりながら、それでも懸命にドアノブへと手を伸ばした。
日車「あ……」
指先が届く前に手首を掴んだ。空を切った手が震え、それでも日車は諦めなかった。掴まれたまま身を捩り、なおも指先を伸ばそうとする。その指ごと握り込んだ。
日車「っ……!」
逃げようとする身体を押さえ込むように引き寄せる。日車は必死に抵抗した。なおもドアノブへ手を伸ばそうとする。
日車「やだっ!やめっ、やめてくれ!」
悲鳴に近い声だった。腕を振り、もがき、ばたつかせた足が玄関の床を引っ掻いた。だが、それは片手で簡単に封じることができる。腰に腕を回し、そのまま担ぎ上げた。 - 29二次元好きの匿名さん26/06/06(土) 00:45:51
日車「降ろしてくれ!」
掴まれた服が引かれた。腕が背中を押そうとする。だが力は弱く、俺の身体を揺らすことすらできない。
日車「戻らないと……! 俺は――」
日下部「黙れ」
日車が言葉を止める。それでも抵抗だけは続いた。
浅く乱れた呼吸が背中越しに伝わってくる。玄関を去り、リビングを抜け、寝室に向かう。もがく身体をベッドに下ろし、そのまま押さえ込んだ。日車の怯えがはっきりとした恐怖へ移り変わり、歯がカチカチと鳴った。
日下部「迷惑だと思うなら勝手に消えようとすんな、黙って決めるな」
目だけが大きく見開かれている。涙は出ない。押さえ込まれたまま、日車の口から掠れた声が零れる。
日車「ごめ……うっ…ごめぅなさぃ……ゆるして……」
ろれつの回らない謝罪だけが途切れ途切れに零れる。肩が不自然に上がったまま、短い息だけを繰り返している。吸っているのか、吐いているのかも分からねぇ。俺は舌打ちを飲み込んだ。
違う。こんな顔をさせたかったわけじゃねぇ。怯えさせたかったわけでもない。こんなに手荒に扱うつもりも、傷つける気も……なのに。
日車「ゆるして……いぅこと……ききます……ゆるぃて……」
目の前の日車は、まるで命乞いをしているみてぇだった。
日車「うぅ……くさか……」
日下部「いい……俺が悪かった」
日車「ごめぅ……なさ……」
日下部「謝んな、お前何にも悪くねぇ、俺が全部悪い」
震える瞳は俺を見ていた。しかし、その目は何も映していなかった。分かったのは、こいつが今、まともに俺の声を聞ける状態じゃないこと。そして、そこまで追い詰めたのは俺だということだった。
それでも、手放す気になれなかった。こいつを安心させることすらできねぇくせに。 - 30二次元好きの匿名さん26/06/06(土) 00:55:20
日車は殺人の罪悪感+監禁のトラウマの再演+日下部の時間を奪っている罪悪感がぐちゃぐちゃになってるっぽい?
最初の殺人と監禁のトラウマは日下部にはどうしようもないし、日下部に対する罪悪感の払拭も難しい
詰んでるなぁ - 31二次元好きの匿名さん26/06/06(土) 00:58:51
日車は元々一方的に大事にされるだけだと弱っていくタイプだよね
根っから奉仕型っていうか
退行してても頭良いから誤魔化しも通用しないしこの現状を打破するの無理ゲーでは - 32二次元好きの匿名さん26/06/06(土) 01:02:53
言葉が幼くなって呂律が回らなくなる日車は本当に癖、ここまでごめんなさいが似合う男はいない
待って~~~~~本当に待って…
あの日車が呪詛師ごときに命乞いをするとは思えない…
つまり自分を本当に傷つけることはしないと信じてる、信じてた日下部相手だからこそ
甘えにも似た乞う言葉が出てきたってこと…?
…ハァ~~~~~待て待て… - 33二次元好きの匿名さん26/06/06(土) 01:09:32
上に歯向かうのに他の人を巻き込まなかったこと、独りで日車のために出来るだけのことをしてること、それを全部俺が悪いって言う日下部も違うだろ……悪いのは呪詛師と上層部だよ……
似たもの同士じゃん独りで戦うなよ…… - 34二次元好きの匿名さん26/06/06(土) 05:52:00
うぁ〜!待って… 待ってくれ…
といいながら何回も読み返している…
涙が出ないのがまた…日車…こっちは号泣だよ… - 35二次元好きの匿名さん26/06/06(土) 10:15:15
ゴメン2人の幸せを願ってるはずなのに怯えて拙い謝罪しかできない日車と怯えてさせてしまった自分自身に対する無力感に苛まされてる日下部に悪い笑みが浮かんでしまった
- 36二次元好きの匿名さん26/06/06(土) 17:44:19
あの後、日車はずっと舌っ足らずに「ごめんなさい」と繰り返した。謝って、謝って、謝り続けて。やがて身を守るように布団に潜り込んだ。
下手に手を出せばパニックを起こしそうで、好きなようにさせてやった。だが布団の中からは、時折くぐもった呻き声が聞こえてくる。そのたびに全身が引き裂かれそうだった。
あの日以降、日車は妙に聞き分けが良くなった。
元々従順ではあったが、それとは違う。起きろと言えば起きる。横になれと言えば横になる。食べろと言えば食べる。着替えろと言えば着替える。水を飲めと言えばコップを手に取る。すべてが機械的だった。
横になってろと言えば、起きろと言うまで起き上がらない。
自分から何か言い出すこともなかった。
まるで言いつけを守ろうとしているみてぇだった。違う。そんな風にしたかったわけじゃねぇ。俺が見たかったのはこんな姿じゃなかった。こんなふうに怯えて従う姿じゃねぇ。だが、離れることもできなかった。
目を離した隙に何かするんじゃないか。気付いた時には手遅れになっているんじゃないか。そんな考えばかりが頭に浮かんだ。
寝室の隅にもたれて日車の様子をうかがった。日車が気にしないようスマホを弄る。本を読む。書類を眺める。何をしていても意識だけは日車に向いていた。
呼吸の音が聞こえるか。魘されていないか。寝返りを打ったか。そんなことばかり気にしていた。
日車もまた、俺の存在を気にしているようだった。
時折こちらを見る。目が合うと、すぐに逸らす。びくついて肩を竦めることもあった。
そのたび胸の奥が重くなる。怖がられている。
分かっていた。分かっていて、それでも離すことができなかった。 - 37二次元好きの匿名さん26/06/06(土) 23:31:30
未遂直後とはまた違うヤバ展開だ…!
ふたりともお互いを思ってるのにどうしてここまですれ違う…!
日車の心が壊れたり直ったりを繰り返しすぎて取り返しのつかないことになりそう - 38二次元好きの匿名さん26/06/07(日) 00:26:37
もういいだろ!!その傷つけたくない気持ちとやらはどこからくるんだよ!!早く日車を抱きしめて「お前が好きだから側にいるんだよ」くらい言えよ!!
- 39二次元好きの匿名さん26/06/07(日) 00:32:24
読んでて辛くなってくるし2人には幸せであってほしいんだけどこの想い合ってるのにすれ違ってどうしようもないとこまで堕ちていきそうな雰囲気も大好きでぇ…
- 40二次元好きの匿名さん26/06/07(日) 09:46:50
従順が隷属になってしまった…
痛めつけられることがないだけであの呪詛師と変わらないと日車が思ってたらどうしよう
全然違うのに密室で全ての自由を奪われてることは一緒だから救いがない - 41二次元好きの匿名さん26/06/07(日) 09:48:06
救いを
救いをください… - 42二次元好きの匿名さん26/06/07(日) 17:12:39
- 43二次元好きの匿名さん26/06/07(日) 17:15:31
- 44二次元好きの匿名さん26/06/07(日) 20:50:30
日下部の機嫌を損ねることをしたくなくてビクついてるけど言うことを聞いていれば痛いことはされない文呪詛師よりマシだなとか思われてたら日下部泣いちゃうよ
- 45二次元好きの匿名さん26/06/07(日) 23:03:08
最近、やけにカラスの声が多かった。
最初は無理やり気のせいだと思った。住宅街とはいえ珍しいことじゃねぇ。だが一日に何度も聞こえる。朝も、昼も、夕方も。
カァ、と鳴くたび意識が窓へ向いた。
今日も寝室の隅で日車を眺めていた時だった。カァ。低い鳴き声が聞こえる。そっと腰を上げる。閉め切ったカーテンの隙間から外を覗いた。
電柱の上。一列に並んだ黒い影が見えた。
背中を嫌な汗が伝う。脳裏に見慣れた女の姿が浮かんだ。
日車は布団に包まっている。布団が静かに上下しているのを確認し、俺はひっそりと寝室を出た。扉を閉め、リビングへ移動してスマホを取り出すと、見計らったかのように画面が淡く光った。
着信――冥冥。
出たくねぇ。無視するか、一瞬本気で考える。
だが相手が相手だ。着信を無視したところでどうにかなる女じゃない。それに、おそらくこの女は今まで俺等を見逃し続けてくれていた。
スマホは執拗に震え続け、視線だけで寝室を確認し、観念して、通話ボタンを押した。
冥冥『やぁ』 - 46スレ主26/06/08(月) 04:13:10
- 47二次元好きの匿名さん26/06/08(月) 04:15:00
こんなに仲が良かったのに…?こんなに…?そりゃあスレ主も辛くなるよ
- 48二次元好きの匿名さん26/06/08(月) 05:42:22
同僚から更にもう一歩踏み込んだ距離感のふたり
軽口を叩いてくるしらしくない姿も見せる、何より遠慮なく頼ってくる日車を日下部は知ってたのか
こんなことしてくる日車を日下部が好きにならないわけがないし、逆もまた然りなんだよな
幸せな記憶だ… - 49二次元好きの匿名さん26/06/08(月) 07:41:28
仲が良過ぎるー!!
日車もめっちゃ甘えてる…日下部も相変わらず優しい…お互いがお互いをよく分かってる
そんな至近距離でチョコミントパフェスマイルくらったら惚れてまうやろーッッ!!!あっもう惚れてたか
こういう2人の記憶を声に出してこ!!またパフェ食べに行こうって!あの時だって頼ってくれただろって!そりゃ頼るの重みが違うけどさ〜! - 50二次元好きの匿名さん26/06/08(月) 08:38:38
こんな…こんな陽だまりみたいに穏やかな時間があったのか…
ダメだ涙腺が緩む - 51二次元好きの匿名さん26/06/08(月) 16:47:14
保守
- 52二次元好きの匿名さん26/06/08(月) 23:51:01
またこんな会話できたらいいよね…
- 53二次元好きの匿名さん26/06/09(火) 03:16:51
相変わらずだった。こっちの胃が痛くなるような状況でも声色一つ変わらねぇ。
日下部「何の用だ」
冥冥『つれないなぁ。久しぶりじゃないか』
日下部「用件を言え」
冥冥『あまり急かすもんじゃないよ、想像はついているだろう?』
日下部「……何の話だ」
冥冥『率直に言おう。日車くんのことだ。いつまでそうしているつもりだい?』
全身が強張り思わず寝室の方へ目が走る。
日下部「……何のことだ」
冥冥『惚ける意味があるのかい?』
変に艶めかしい語りだった。逃げ道を与える気は欠片も感じられない。
冥冥『病院から連れ出して、誰にも知らせず匿っている。違うかな?』
どこまで知っている、そう考えて、すぐに馬鹿らしくなった。こんな状況で日車を連れ出した人間なんざ俺一人しかいねぇ。誰にでも分かることだ。
冥冥『安心したまえ。君の家を今すぐ誰かに報告するつもりはない、にしても本当に都合のいいトコがあったねぇ。伊地知くん困り果ててたよ」
それがどうした、伊地知に迷惑を掛けていることくらいとうに理解している。全部承知の上で日車を連れ出した。それよりも引っ掛かったことがある。
日下部「……俺の家を知っているのか?」
冥冥「その家のことならずっと前から知ってたさ、それこそ渋谷事変の前から」
冥冥『元々は君のセーフハウスだったはずだ。本当の自宅は死滅回遊の範囲内にあって、使い物にならなくなって住民票を道場に移した。だから今実際に住んでいる場所は記録に残っておらず誰も知らない、こういうことを見越していたのかい?』
つまり、この女は俺が誰にも言わず隠していた場所を何年も前から把握していたことになる。
それ自体はいい、正直、セーフハウスについては最初から冥冥にはバレる前提で選んでいたし、冥冥の紹介で選んだ場所もある。問題はそこじゃねぇ。 - 54二次元好きの匿名さん26/06/09(火) 10:46:01
こっちの家を選択して正解だったな。自宅ならすぐに上層部の捜査が入ると思っていたからバレてなかったのはそういうことだったんだな
冥冥が来たってことは上層部からの依頼で日車を探せってなったのかな… - 55二次元好きの匿名さん26/06/09(火) 11:46:49
拠点複数持ちの日下部は任務に生きてるって感じがしていいな
誰も知らない隠れ家に大事なものを隠してるんだ
世界から隔離されたふたりって感じだったけど、長くは続かないよね - 56二次元好きの匿名さん26/06/09(火) 20:07:01
シリアスぶった斬って申し訳ないがやっぱ箸休め編の2人の話好きだな何回も読んで癒された
こういう話もまた見てみたいな!
チョコミントパフェのところは脳内で「チョコミント!よりもあ・な・た」で再生されたよあっちゃん - 57二次元好きの匿名さん26/06/10(水) 00:52:12
ほしゅ
- 58二次元好きの匿名さん26/06/10(水) 03:44:06
日下部「なんで今まで黙ってた」
冥冥『君が隠したがったんだろう?無理やり連れ戻したところで意味がないとも思っていたしね」
まるで値踏みでもされている気分だった。脅しているわけでもない。責めているわけでもない。だが俺の行動を肯定しているようにも聞こえねぇ。
この女は信用に足る人間ではある。金に汚いが義理堅い。だからといって見返りもなく善意だけで人を庇ったりする人間ではない。
冥冥『だがそろそろこれからを考えなければいけない、君がどうしたいのか聞きたい』
だから警戒した。
わざわざこの女がここまで踏み込んでくる理由が見えなかった。
冥冥『君はこれからもずっと一人で日車くんを抱え込むつもりかい? それともいいかげん誰かを頼るかい?』
胸糞悪かった。冥冥の言わんとすることが察せたからだ。要するに誰かを頼れと言うのだろう。
嫌だと、本能に近い叫びが沸き上がる。
頼った先で取り上げられたらどうする。上の連中から見れば俺は日車を拐った犯人だ。引き渡せと命じられたら俺には止める権利がない。
隠し続けるのは現実的じゃないことくらい分かっていた。
日車は本調子どころか衰弱から回復しきってすらいない。今では俺に怯えて縮こまってる。一人じゃ限界だ。分かっている。それでも駄目だった。奪われたくなかった、誰にも渡したくなかった。
日下部「……今は無理だ」
誰に向けた言葉だったのか、よく分からなかった。
冥冥「……そうか」
冥冥がため息混じりに呟いた。そのひと言が妙に重かった。
冥冥『日下部君、君は少し視野が狭くなっている』 - 59二次元好きの匿名さん26/06/10(水) 12:46:15
冥冥は自分を頼れって言いたいのかな?
今のままでは日下部も日車も共倒れになってしまうしな - 60二次元好きの匿名さん26/06/10(水) 12:55:40
日下部「……説教なら切るぞ」
冥冥『説教じゃない、純粋に心配しているんだ」
日下部「お前が? ハッ! らしくねぇな」
冥冥『私を何だと思っているんだい? だが君とは長い付き合いだ。何か裏があるんじゃないかと勘ぐってるようだが今回ばかりは打算はない』
冥冥がここまで言うのは珍しい。
利益にもならないことに首を突っ込む人間ではないし、面白半分で他人を振り回す時とも空気が違う。だからこそ警戒した。
だからこそ気味が悪かった。
冥冥『一度顔を合わせて話したい。君の家に行ってもいいか?』
日下部「断る」
冥冥が何を考えているのかは分からない。
だが、この女はもう居場所を知っている。
その気になれば無理やり此処に押し入ることも、俺を外へ引っ張り出している間に日車に接触することだってできる。
冥冥なら日車を手荒に扱うことはないだろう。だが、その先はどうだ。日車が誰の管理下に置かれるのか、俺には分からない。誰かの目に触れた瞬間、俺の手から零れ落ちてしまう気がした。
冥冥『そう言うと思ったよ」
日下部「用があるなら電話で済ませろ」
冥冥『済まないから困っているんだ。君は今、正常な判断ができているかい?』
正常な判断。そんなものとうにできていない。
衰弱している日車を無理やり連れ出した。安心して過ごしてほしかったのに怯えさせた。
日車のために何かしてやりたい。
なら、怯えられている以上、誰かの手を借りるのが一番だ。分かっている。そんなことは最初から分かっている。
それでも誰にも触れさせたくない。誰かの手を借りるという話になるだけで、腹の底が掻き回される。誰かに任せる未来を想像しただけで、日車が遠ざかっていく気がした。
冥冥『……ありえないとは思うが、彼を手籠めにしようとしているんじゃないだろうね』 - 61二次元好きの匿名さん26/06/10(水) 15:40:26
急に肉欲の話が出てきてドキッとしてしまった
元々親しげで、事件のせいでズブズブになってしまったふたりの距離感だけど
そこに性を匂わすものはなかったんだよな
性欲ってとてもポジティブなものだと思う
生きることに密接に関係してて、今のふたりはそこまで意識が回ってない - 62二次元好きの匿名さん26/06/10(水) 18:56:59
日下部からしたら信じられるのは自分だけだよね
こんな状況なら何もかも疑心暗鬼になるよ
でも冥冥が直接会って話さないといけないくらいマズイ状況なのか?だからってそれが本当なのか分からないしな〜
手籠なんて元々頭になさそうだけど冥冥からそんな話されるってことは日下部の日車に対する気持ちも気づいてる? - 63二次元好きの匿名さん26/06/11(木) 01:06:13
冥冥にここまで言わせるって相当だぞ外では今何が起きてるんだろう
- 64二次元好きの匿名さん26/06/11(木) 05:47:49
何を言われたのか、理解できなかった。言葉だけが鼓膜に引っ掛かる。
手籠め、彼を――日車を、誰が――俺が。
遅れて意味が繋がった瞬間、目の前に火花が散った。
日下部「何言ってんだ!!!」
冥冥『だから怒らないでくれと言っているじゃないか』
日下部「確認で済む話か!! ふざけるなよ……」
声が抑えられなかった。冗談でも笑えねぇ。発想自体が不快だった。
歩くこともやっとで、骨の浮いた痩せた身体。血の気のない顔。今にも壊れてしまいそうな相手だ。そんな相手に何を言ってやがる。
冥冥『ふざけてなんかいないさ、だが人間は追い詰められると、自分でも予想しなかったことをする。現に君は病院から彼を連れ出した……傍から見るとおかしいのが分からないか? 高専でもなぜ君が日車君にそこまで執着するのか持ちきりだ』
違う。そんな理由じゃない。あいつを傷つけたいわけじゃなかった――ただ、守りたかった。
『やだっ!やめっ、やめてくれ!』
外へと伸ばす手を握り込んで、もがく身体を抑え込んだ。
『戻らないと……! 俺は――』
此処から逃げ出そうとする声を遮った。無理やりベッドへ引き戻した。逃げないよう覆い被さって。
『ごめ……うっ…ごめぅなさぃ』
怯えさせた。
『ゆるして……いぅこと……ききます……ゆるぃて……』
怖がらせた、何度も謝らせた、命乞いのように…… - 65二次元好きの匿名さん26/06/11(木) 05:48:51
冥冥『もちろん私は、君がそこまで愚かだとは思っていない。しかし、それで問題がなくなるわけでもない』
返事はしなかった。できなかった、の方が正しいかもしれねぇ。
冥冥『今日は無理にとは言わないが、一度顔を合わせたい。できれば三日以内に答えが欲しい』
日下部「……」
冥冥『それじゃあね』
あっさりと、通話は切られた。耳からスマホを離し、真っ黒になった画面に自分の顔が映る。酷ぇ面だった。
日下部「……クソが」
頭を掻きながらスマホをマナーモードにしようとする。指が滑った。もう一度画面を叩く。今度は別の画面が開いた。
日下部「……っ」
スマホをソファへ放り投げる。クッションに当たって跳ねたスマホが床へ落ちた。ガツン、と大きな音が鳴る。反射的に寝室へ目を向けた。
日下部「……日車?」
呼び掛けた後で気付く。さっきから声を荒げていた。冥冥とのやり取りに頭がいっぱいで、余裕が無かった。寝室の扉へ足を向ける。
日下部「うるさかったな……起きてないか……」
扉に手を掛ける。ドアノブを回し、少し押すと途中で何かに引っ掛かった。
日下部「あっ……」
少しだけ開いた隙間から部屋を覗き込む。
日車がいた。床に座り込んだまま、扉にもたれ掛かっている。 - 66二次元好きの匿名さん26/06/11(木) 09:21:08
手篭めにしたわけではないけど日下部がやってることは同じことじゃないのかって考えたのかな
続きが気になってしょうがない - 67二次元好きの匿名さん26/06/11(木) 15:42:59
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- 68二次元好きの匿名さん26/06/12(金) 00:39:32
冥冥はどんな協力をするつもりなんだろう
ここで日車の記憶に関する話が出てくるのか? - 69二次元好きの匿名さん26/06/12(金) 02:57:55
日下部「日車! おい!」
半ばゾッとして声を上げると、日車の体がビクついた。
日下部「悪い、大きい声を出したな……少し押すぞ」
なるべく低く、刺激しないように意識しながら声をかけ、ゆっくり扉へ力を掛ける。押し返していた重みがわずかに動いた。日車に扉をぶつけないよう、慎重に押し開く。
扉の先の日車は両手をついてへたり込んでいた。額が床につきそうなほど頭を下げている。
日下部「……大丈夫か?」
その場にしゃがみ込み、顔を覗き込もうとして思いとどまった。床についた指先が白み、小さく、震えている。
日下部「悪ぃ、俺が怖いよな……触ってもいいか? 床は冷える、ベッドに戻ろう」
日車は首を縦に振らない。ただ、浅い呼吸だけを繰り返している。
手を伸ばしかけて止めた。怯えきっている。勝手にベットから抜け出したとでも思っているのだろうか。そして、あの時のように、無理やりベットに組み伏せられるかもしれないと恐れているのだろうか。手が宙に浮いたまま行き場を失う。
日下部「……分かった、無理強いはしねぇ」
行き場を失った手を下ろす。何をしても強要になる気がした。だが、その場を離れることができなかった。硬い床の上で、半ば蹲るように頭を垂れる日車が痛々しい。何もできねぇくせに、放って置くことすらできなかった。
日車「……っ……ら……った」
日車が何かを呟く。聞き取れない。
日車「う……だっ……た」
聞き取れないが、日車が俯いたまま、言葉を探すみたいに何かを伝えようとしていることだけは分かった。
はぁ、はぁ、と、ひび割れた呼吸が狭い隙間に満ちていく。その必死な様子に、俺の胸の奥が嫌な音を立てて波打った。これ以上、こいつを追いつめたくない。俺のせいで、これ以上――。 - 70二次元好きの匿名さん26/06/12(金) 03:04:03
日下部「日車……無理して喋らなくていい」
遮るように紡いだ俺の声に、日車の身体がまたびくりと跳ねた。俺の足元の、何もない床の一点を見つめたまま、何かに取り憑かれたように懸命に唇を動かす。
日車「……誰から……だった」
掠れた声は、けれど明確な意志を持って、俺と床の間の狭い空間に落とされた。
日下部「……気にしなくていい」
そう返した瞬間、自分でも逃げているのが分かった。日車の必死の問いかけを正面から受け止めるだけの度量が、今の俺にはなかった。
日車「……やめてくれ……」
日車の口から零れ出たのは、明確な拒絶だった。日車の頭がゆっくりと持ち上がり、俺の顔をおずおずと見上げた。
日車「……もう、そういうのは……やめてくれ……」
差し向けられた瞳は日車らしくもなく細められていた。まともに俺を見据えるのが怖いのかもしれない。それでも目を逸らさないのは、こいつなりの抵抗なんだろうか。
日車「分かって、いる……上層部か……高専か……だろう?」
日車は喉を詰まらせながら、必死に言葉を絞り出す。
日車「君を、探している……戻らなければ……もう君を……」
日下部「言っただろ、お前が気にする必要はねぇんだよ」
日車「そうではない!!」
日車が突然、叫ぶように声を荒らげた。すぐに自分の声に驚いたように肩を震わせる。それでも視線だけは逸らさなかった。 - 71二次元好きの匿名さん26/06/12(金) 07:36:14
怪我が治って大分経つのにこんなにも動けないのか日車
立つこともできなければ声も上手く出せない、このままじゃ間違いなく生死にかかわる…
間違いなく精神面と環境が原因なんだけど改善しそうな気配は皆無だし
ここからどうなるの… - 72二次元好きの匿名さん26/06/12(金) 16:06:53
目を細めて日下部を見る日車の必死さよ
例の『君の目すらまともに見れない』とは全く異なる感情なんだろうな
見ることすら恐ろしいけれど目を離したら何が起こるか分からないし逸らしたら気持ちが伝わらないと思ってるんだろうか - 73二次元好きの匿名さん26/06/12(金) 19:55:59
日車「もう、いいんだ……。私は、十分に……君に、もらった、から……。これ以上は、君が……君の、時間が……」
何を言おうとしているのかは分かった。自分のせいで俺の時間を消費させているのが申し訳ないと、日車は言いたいのだろう。目の前の日車の姿に、不甲斐なさと焦燥感ばかりが膨れ上がっていく。すべてが裏目に出て、日車を追い詰めている事実が、重くのしかかってくる。
日車「お願いだ……君は戻ってくれ……私のことは……」
日車は目を閉じて、深く頭を下げた。
日車「捨て置いてくれ……」
見ているだけで吐き気がする。なんでこいつにこんな真似をさせなきゃならねぇんだ。
『傍から見るとおかしいのが分からないか?』冥冥の言葉がリフレインする。胸の奥が、暗い感情で満たされていく。分かっている。こんな状態の日車を閉じ込め、手元に置き続ける俺の行動はおかしい。だが、ここで「分かった」と引き渡せば、こいつは二度と戻ってこない。総監部に利用され、ボロ雑巾のように使い潰されて……分かっている、これは妄想だ。冥冥だって何か考えてくれてんだろう。悪いようにはされねぇのかもしれねぇ。
日下部「……嫌だと言ったら、どうする」
それでも、了承できなかった。頭のどこか冷めた部分が、今の自分の身勝手さを激しくなじっている。俺がやってることはただの自己満足なのかもしれねぇ。日車の望みを叶えてやりたい、その気持ちはある。でもそれが、「捨て置け」なら、どうしても受け入れられねぇ。
日車「…………どうして」
途方に暮れたように呟くと、日車はゆっくりと崩れるように床へ突っ伏した。張り詰めていた糸がぷつりと切れたように、ただ床に身を投げ出す。
日下部「おい、日車……!」
崩れ落ちた身体に心臓が跳ね上がった。怖がられることも、拒まれることも忘れ、気づけば力なく伏した身体を抱き起こしていた。
日車「もう……どうして、いいのか……わからない……」
腕の中の日車は抵抗しなかった。抱きすくめられたまま、ぽつりぽつりと声だけが落ちる。
日車「わからないんだ……どうしたら……君の時間を……君を俺から……解放できる……?」 - 74二次元好きの匿名さん26/06/12(金) 20:39:51
こんな状態でも自分より日下部のことを案じてるのが切ない
- 75二次元好きの匿名さん26/06/12(金) 22:51:43
こんな日車が「日下部と幸せに暮らしていた」「日下部は俺にずっと優しかった」って言うようになるんでしょ
ひろみって呼ばれて普通に返事するようになるんでしょ
どうやったんだよどうすれば期間限定でも幸せになれるんだよ - 76二次元好きの匿名さん26/06/12(金) 23:51:03
もしかして記憶封じる提案をしたのは冥さんなのか…?じゃないとこんな状態の日車が日下部と穏やかに暮らせるわけないって
- 77二次元好きの匿名さん26/06/13(土) 00:08:46
今まで日下部に対して「俺」って言ってた日車が必死に懇願する場面で「私は十分に君にもらったから」「私のことは捨て置いてくれ」って「私」に変わってるのがもう…
糸が切れた後はまた「君を俺から解放できる?」って「俺」に戻ってる
日車の胸中や葛藤がさぁ…ここだけで見て取れるのしんどすぎだろ - 78二次元好きの匿名さん26/06/13(土) 08:21:39
この日車が元に戻るにはどれくらい時間がかかるんだろう、そもそも戻れるか?
日下部に囲われるのは嫌かもしれないけど誰かの介助がないと生きていけないだろ
術師生命も大分危ういぞ
高専には残ってほしいけど現場に出ない後方担当とかになってもらわないと心配で仕方ないって… - 79二次元好きの匿名さん26/06/13(土) 15:49:55
そんなこと考えなくていい。俺の時間だの責任だの、そんなものはどうだっていいだろ。そもそも俺は縛られていない、捕らわれてるのは日車の方だ。お前が元気になれば――駄目だ。そうじゃねぇ――俺は日車をどうしたい?
日下部「日車」
深く、重い息を吐き出した。頭上に手を翳すと、日車は怯えたようにギュッと目を閉じる。
日下部「悪かった……」
このままだと日車を潰してしまう。感情に任せて日車を閉じ込めてても何も進まねぇ。日車を失いたくない。それは日車の意思ではない。
翳した手を目蓋に添えると、日車の目蓋がゆっくりと持ち上がる。
大きな目の、小さな瞳孔。その奥に映っていたのは、ひどく情けない顔をした自分だった。俺は日車の瞳を鏡にして、強引に口元を持ち上げた。
日下部「……少し時間を置いてから、ちゃんと話し合おう。お前の話も、ちゃんと聞く。頭ごなしに否定しねぇ。だから、一回、頭を冷やさせてくれ」
目蓋に添えていた手をゆっくりと離す。
そこにはまだ、俺を見上げる瞳があった。映り込んだ自分の顔は笑顔と言うには強張っていて、もう一度、口元を緩め直す。
日下部「な?」
日車はくしゃりと目尻を下げ、頷いた。 - 80二次元好きの匿名さん26/06/13(土) 22:09:32
あぁ、辛い…辛いよ…
- 81二次元好きの匿名さん26/06/14(日) 00:00:58
夕方の喧騒が耳についた。ベランダに出れば子どもらがはしゃぎながら家路についている。
見える範囲にカラスの姿はない。あの不吉な鳥どもが周囲をうろついていないということは、今のところ冥冥の目はここに向いていないということだろう。
だからどうしたという話だ。
日車をどうするかは何も決まっていない。考えれば考えるほど袋小路に入り込む。結論が出ねぇ。
窓を引いて部屋に戻る。これ以上考えても同じところをぐるぐる回るだけだ。一度頭を冷やすと決めたんだ。これ以上煮詰まっているのはよろしくない。そう自分に言い聞かせ、台所へと向かった。
冷蔵庫を開く。最近の宅配サービスは便利でいい。外へ一歩も出なくても食材が揃う。前日までに注文しなくても、その時の気分で食材が揃う。ここ数日は雑炊だのうどんだの、日車が食いやすそうですぐに作れるものばかりを並べていた。だが、今の俺が求めているのは、そんな手軽さとは真逆のものだった。
冷蔵庫から、昼に届いた魚を取り出す。話し合いをしようと言ったのは俺だ。お前の話を聞くと言ったのも俺だ。なのに、今の俺は、あいつと向き合うその瞬間を少しでも遅らせたくて仕方がなかった。
鱗を引き、内臓を抜く。手間と時間の要る作業を己に課す。包丁を握る手に意識を集中させていれば、あの大きな目の小さな瞳孔も、己の情けない顔も、少しの間だけ忘れられるような気がした。 - 82二次元好きの匿名さん26/06/14(日) 00:19:31
トツ、トツ、と静かに、執拗なほど丁寧に魚に包丁を入れる。己の往生際の悪さに笑ってしまった。
三枚におろした身から腹骨をすき、小骨を骨抜きで一本ずつ引き抜いていく。無心になるには丁度いい単純作業だった。無心になろうとしてる時点で無駄だと分かっているのに、手だけは律儀に動き続ける。
白身に軽く塩を振り、しばらく置く。滲み出た水気を丁寧に拭き取り、熱湯を回しかけた。白く浮いた汚れを冷水で洗い流す。指先に伝わる冷たさが、少しだけ熱を持った頭を冷やしてくれる気がした。
下処理を終え、小鍋に醤油、みりん、酒、そして薄切りにした生姜を入れて火にかける。コトコトと鍋が鳴り始めると、生姜の利いた甘辛い匂いが徐々に台所へ広がっていった。
火加減を調節した、その時だった。背後で微かな足音がした。誰なのか確認するまでもない。振り返ることなく、鍋を見つめたまま口を開く。
日下部「……できたら持っていく、向こうで待ってろ」
背中に視線を感じる。魚を鍋に入れ、落としぶたをした。鍋の中で煮汁が静かに泡立ち始める。コト、コト、と規則正しい音だけが狭い台所に響いていた。だが、日車が動く気配はない。
日車「ここで、見ていても、いいか?」
反射で、寝てろよと言い返そうとして思いとどまる。
これは気遣いなのか、それともただの身勝手か。少し前まで、いや、立つことすら怪しかった男に無理をさせたくない。その気持ちは本当だ。
だが、俺の都合であいつにこうしろと押し付けるのは、頭ごなしに否定しないと言った傍からその意思を無視することになるんじゃねぇのか。
振り返れば、問答無用で寝室へ戻れと言ってしまいそうで、鍋を見つめたまま言った。
日下部「……もう少しかかるから、そこに座ってろ」
日車「……あぁ」
気の抜けたような返事だった。日車はすまない、と小さく呟く。背後で、食卓の椅子を引く控えめな音が響いた。
落としぶたの隙間から湯気が立ち上る。薄切りにした生姜の香りと、醤油の匂いが狭い台所に広がっていく。時間を稼ぐために繰り返した下処理の甲斐あって、煮汁は濁ることなく、美しく澄んだ琥珀色をしていた。
俺は一度も背後を振り返らないまま、煮えていく白身の魚をただじっと見つめ続けていた。
これ以上、引き延ばせる工程はもう残っていない。