日米関税の合意文書がついに公表。
政府は、外交交渉の結果として、米国にもいい顔をさせてあげないといけないので絶対に言わないでしょうが、明らかに日本の勝利でした。
なぜ日本の勝利といえるのか、外交にたずさわってきた立場から、あえて説明します。
たってこと。他の国は、トランプ関税を下げる交渉として、自国の関税も下げています。それこそが、「米国の貿易赤字を縮小させる!」というトランプ大統領の主な意図でした。日本は最初から「自国の関税は絶対に下げない」の一点張りで、交渉が経過する中でも一切、譲りませんでした。日本の農業を犠牲にしないことを含め、国内産業を守り切ったと思います。
つぎに、80兆円の投資について。トランプ大統領いわく、「これは俺が投資先も決めるし、自由に使えるお金だ!」と言っています。大事なことは、そう言わせておく、そう思わせておくことです。
合意文書には、具体的な投資融資プロジェクトの選定システムが明記されています。まず、日米が合同で協議委員会を作り、そこで具体的なプロジェクトを作っていくことになります。その協議においては、「戦略的及び法的」な観点を踏まえることが書かれています。投資や融資をすることとなる日本のJBIC(国際協力銀行)やNEXI(日本貿易保険)は、法律上、収支相応であり、また日本に関係のあるプロジェクトにしか投資できないようになっています。つまり、法的な観点を踏まえるということは、日本だけが損をするようなプロジェクトや、日本と関係ないプロジェクトには投融資はしないことが、ここではっきりするわけです。
こうした観点で日米双方の協議のうえで選定したプロジェクトは、米国内においては、ラトニック商務長官をヘッドとする米国投資委員会が議論をして選定をすすめます。その後に、選定された選択肢をトランプ大統領に示します。最終的にどれを米国として進めるかについては、そこで米国大統領が選ぶという流れになります。だから、トランプ大統領には、「俺が好きに選んで決めれるんだ!」と言うのは、最終段階ではもちろんその通りであり、そう言わせておけばよい話なのです。
また、「日米の利益配分が1:9というのは、不平等条約だ!」というご指摘もあります。これについては、例えば米国内に工場を作る場合、彼らは「土地も水も供給します」「エネルギーも提供する」「製品はオフテイク(全量買い取り)」「規制は任せろ!」と、かなり前のめりです。それだけの貢献があるという前提での話ですが、それでも合意文書上は、最初のJBICやNEXIによる融資回収は、50対50で日米が折半することになっています。その後、それでも利益がある場合は、10対90での配分となります。そこは申し上げた通り、あくまで貢献分に応じて、という前提だということです。
ここの部分は、とにかく関税ではこちらが一方的にテイクすることができので、せめて80兆円のところでは、米国がテイクしたように説明できる表現を採用しないといけませんでした。
次に、具体的分野ごとのコミットメントについて。添付の文書を見て頂ければ、かなり上手に日本の意図が入れ込まれているとご理解いただけると思います。
たとえば、「100機のボーイング製航空機の購入」は、日本の航空会社によると、現時点ですでに100機近い購入の計画がありました。特段、何か新たな大規模の購入計画が必要になるわけではありません。コメについては、「ミニマム・アクセス米制度の枠内」なので、輸入総量は何も変わりません。防衛装備品については、「防衛力整備計画に基づく」と入れているため、日本が当初計画しているものの範囲で買いますよ、というだけ。さらには、これから各国に関税をかけると米国が言っている「医薬品及び半導体」については、最恵国待遇まで勝ち取っています。
以上のように、共同声明を読むと、日本がいかに厳しい交渉に勝利したかがよくわかると思います。それでも、メディアや野党の皆さんは、知ってか知らずか、これ見よがしに叩くかもしれません。外交交渉で目指すべきものは、100対0の勝利ではありません。相手国にとっても、国内向け、大統領向けに「勝った」と説明できる余地を残さないと、ハナをもたさないといけません。そういった戦略的な意味で、今回の日米交渉は、石破政権は最大限の勝利を得たと思います。
国内では人気がそこまで持たなかったかもしれませんが、わたしは今回の結果は、外交や防衛に強い石破政権だったからこそなし得たと思っています。もっと与党目線で言わせていただくと、我が国の外交を主導し、知見を蓄積してきた自公政権だったからこそ、世界が苦慮するトランプ大統領下の米国と、こうして相対することができたんだと思っています。
長文、読んで頂き有難うございました。