「法令を軽視した経営体質」 ウリ信組、トップ主導で不正を長年隠蔽
在日朝鮮人系の信用組合「ウリ信用組合」(本店・札幌市)で、役員による多額の着服や不正な口座開設が続き、長年にわたって隠蔽(いんぺい)されていたことが明らかになった。ガバナンス不全は、なぜ見過ごされてきたのか。
「旧経営陣の時から法令等を軽視した経営体質、隠蔽体質があった。現経営陣にも踏襲されたことでガバナンス体制の崩壊に至った」
金融庁の処分を受けて12日夜に会見したウリ信組の高橋堅一・副理事長は、指摘された不正についてこう述べた。
会見では、高橋副理事長が弁護士と共に不正の内容などを説明した。不正には役員を含めて16人が関わっていたという。
2013年まで続いた元常務理事の着服では、使われた口座のほとんどが架空名義や借名のもので、私的流用や経営状況が悪い客への資金供与が確認されたという。当時の理事長がこの不正を公表しないことを決め、他の役員も追随するなど組織的に隠蔽していたことを明かした。
高橋副理事長は「外部に公表すると、組合の経営に重大な問題が出るという判断で公表しなかった」と聞いていると説明。背景には、在任期間が通算30年以上になったこの理事長の存在があるとし、「権限が集中したことから牽制(けんせい)機能が働かなかった」と釈明した。
架空名義や借名の口座は1985年ごろから始まった。客の要望に応じて開設したとし、組合が勝手に作ったものは確認されていないと釈明した。
12日に辞任した琴正煥理事長が、こうした不正に対する金融庁の検査を忌避するよう職員へ指示していたという。旧経営陣に対し、刑事・民事での責任追及を検討する。
過去に破綻(はたん)した在日朝鮮人系信組では、在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)への資金流出が確認されたが、ウリ信組は会見で、朝鮮総連への資金は「確認した範囲ではない」とした。
見抜けなかった金融庁 「反省すべき点」
現在ある在日朝鮮人系の信組は七つ。うち4信組は00年前後に破綻した信組を受け継ぐ形で新設され、朝鮮総連幹部を役員に就任させないなど、経営の独立性や透明性を定款で明記。関係者によると、金融庁も毎年、4信組の財務状況などをチェックしていたという。
ウリ信組は、元々あった残りの3信組の一つ。01年に60億円超の公的資金が投入されていたが、金融庁の毎年のチェック対象からは外れていた。
揺らぐ金融行政への信頼
いわき信用組合(福島県いわき市)に続く地域金融機関の不祥事は、金融行政への信頼を揺るがしかねないものだ。長く続いた不正を、検査などで見つけることができなかったからだ。
「検査・監督のなかで発見できなかったことは反省すべき点」。金融庁幹部は12日の会見で語った。ウリ信組は20年以上前にも架空名義や借名預金を受け入れていたことが発覚。当時、金融庁から報告徴求命令を受けたが、一部を報告していなかったという。
「リスクを見つける力が落ちている」。検査部門にいる金融庁の幹部は、現場の弱体化を認める。いわき信組は公的資金を受けていたにもかかわらず、やはり長い間不正を見抜けなかった。
00年代、大手行に不良債権処理を迫った金融庁検査は厳格なことで知られた。だが、危機の時代が去ると、「検査が貸し渋りを助長した」と批判された。金融庁は18年に検査局を廃止した。
検査の中身も変わったとされる。個別金融機関の経営より、国際社会の要請を受けてマネーロンダリング(資金洗浄)対策などに力点が置かれるようになった。
自民党の金融調査会は5月、財務局に「専門検査官」制度を導入することを政府への提言に盛り込んだ。
「検査の実施がここ数年、マネロン関係を除くと少なかったのは事実。検査体制を強化する必要がある」と金融庁幹部は12日の会見で話した。検査体制の早急な立て直しが求められている。
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