〈そうしているうちに彼女は、無常ということは、神がみさえも免れることのできない、世の定めであることにおのずから気づいた。ブッダのもとに戻った彼女は出家を申し出て許され、修行に専心し、のちに、ついに解脱して聖者となった。
バシャムはこの物語を紹介し、そこにあらわれるブッダの教化の仕方と、つぎつぎに病人をいやし、死者をよみがえらせる奇跡を行ったイエスの教化とのあいだに対照的な相違のあることを強調している。
ブッダは常に、静かにものごとの本質を指し示して見せた。そして神変や奇跡を行うわけでもなく、人びとがみずから真理に気づくのを待った。〉
また、つづく部分では、ブッダの教えのポイントである「八正道」について端的に紹介されています。
〈彼は四つの真理を教えた。苦・苦の原因・苦の消滅・苦の消滅にいたる道、の四つである。ブッダのいう苦とは、生まれること・老いること・病・そして死の四苦であり、また、憎らしい者に会う苦悩・愛する者と別れる苦悩・欲しいものが手に入らない苦悩・要するに身心の要素はすべて苦悩である、ということ(四苦とあわせて八苦という)であった。
人間の苦にはさまざまなものがある。戦争・暴力・盗難・恋愛の悩み・家庭問題などなど。ブッダは、しかし、そのようなさまざまな現象としての苦よりも、本質としての苦に主要な関心をもっていた。少壮のなかにも老いと病はある、生まれることのなかにすでに死がある、とブッダは教える。なぜなら、身心としての人間の存在そのものが苦であるから。〉