たとえば数年前に『虎に翼』を批判するはてな匿名ダイアリーでも主張されていたが、同列に論じるべき問題とは思えない。
ポリコレポルノになり始めた『虎に翼』
同性婚についても触れ始めているが、当然同じ俎上に上げて議論すべき近親婚の不当な禁止については触れようともしない。
少なくとも現在の法律において近親関係で不可能なのは婚姻だけで、事実婚に近い関係を公表しても罰則があるわけではない。恋愛や性交は禁じられていない。恋愛や性交が問題になりうるのは近親ではない場合と同じ時だけらしい。
はてな匿名ダイアリーの論調は、実際に同じように求めているというより、同性婚の制度化を足止めするために近親婚を持ちだしているように見える。
近親で婚姻すべき理由が本当にあるのだろうか?
もちろん、それこそ「お気持ち」として、近親ではない場合と同じ権利として結婚という関係をむすびたいという心情まではわかる。特に共感はしないが、そのような心情がありうることは理解できるし否定しない。
前も言ったけど、近親婚がタブーになるの、単純に社会の都合なので、多様性理解を掲げるなら「それもあり」になるのが「正しい」んだよな(割とバグみたいな挙動)
しかし同性婚を新たな制度として必要とする実利的かつ喫緊な動機として、入居の困難の解消や最期の看取り、遺産の処理などがある。
同性婚、法廷で訴え 病気でパートナー失い「男女と同じ権利を」 東京地裁で本人尋問:朝日新聞
さらに親族間でしか認められていない臓器移植が、同性パートナー制度によって認められた事例も出てきた。同性婚が可能になれば、地域による格差や手続きの煩雑さもなくなるだろう。
同性パートナーの腎移植実施 京大病院 「有益な前例」と期待 | 京都大学新聞社/Kyoto University Press
当該患者は京都市在住の女性(年齢非公表)。2019年から同性パートナーと同居し始め、「京都市パートナーシップ宣誓制度」に基づいた宣誓を行っていた。
京大病院は京大と日本移植学会の各倫理委員会に承認を求め、両者から昨年中に承認を得た。京大病院によると、前者ではパートナーのドナーとなる表明が自由意志に基づくことや、宣誓制度で発行された証明書などの物的証拠を重視して審議した。後者では京大病院での検討過程が適切であったかを審議したという。
一方で、同じように婚姻が認められない近親関係だが、上記の社会生活におけるさまざまな困難には相対的に直面しないはずだ。結婚するまでもなく家族だから。
それゆえ逆に同性婚の代替として養子縁組がおこなわれることもあるくらいだ。
同性パートナーの相続と養子縁組 その効力と注意点 | 相続会議
同性カップル間での相続のために、「養子縁組」を考える人も少なくありません。私もケースによってはお勧めることがあります。
養子縁組をして法律上の親子になることで、法律上は規定のない同性カップル間に法律関係が成立し、さまざまなことが可能になるのが養子縁組の「メリット」です。
養子側が先に亡くなる「逆縁」もありえます。その場合、養親のほか実父母も相続人となり、遺言がない場合は、養親と実親とで遺産分割協議をする必要があります。父母が存命の場合の、万一に備えたシミュレーションも大切です。
ちなみに現民法は、養親子の関係にあったものは、離縁をして親族関係を終了した後でも婚姻することができないと規定しています(民法736条)。遠い将来、日本にもしも同性婚の制度ができた時、養親子関係にあったことはリスクとなる、と考え、「自分(たち)は養子縁組をしない」と言う人もいます。
もちろん上記記事でも指摘されているように、養子縁組では対等な関係にならなかったりして、結婚とは異なる困難もある。
だが、それを逆にいえば歳のはなれた親や兄弟との恋愛も対等な関係によるものになりづらいことになる。つまり双生児や現時点の日本でも認められているいとこでもないかぎり、近親婚があやうくなる理由のひとつになりかねない。
ちなみに韓国では、いとこどころか、はとこですら結婚ができないという厳しさだったという。さすがに外国でむすばれた関係までとりけすのは違憲だという判決が2022年に出たという。
韓国、近親婚禁止範囲縮小の動きが論争に…気になる海外事例は | Joongang Ilbo | 中央日報
22年10月、憲法裁判所は8親等以内の婚姻を禁じた民法809条第1項は合憲と決定したが、8親等以内の婚姻を無効と定めている第2項は憲法不合致を宣告した。8親等以内の結婚禁止は正しいが、すでに成立している結婚をなかったことにするのはやりすぎだということだ。しかし当時も裁判官4人は8親等以内の婚姻を禁じたこと自体も憲法に合わないという少数意見を出した。
くらべると、現在の日本で近親婚を法制化したいという運動がもりあがらないのは、当事者においても喫緊の課題が少ないためではないかと想像するのだが、どうなのだろうか?