皇族数の確保策 天皇陛下「国民の理解得られるものとなること望む」

中田絢子 編集委員・島康彦
【動画】オランダ・ベルギー歴訪を前に、記者会見する天皇陛下=宮内庁提供

 天皇陛下は11日、オランダ、ベルギーへの公式訪問を前に皇居・宮殿で記者会見に臨んだ。10日に衆参両院の正副議長のもとで取りまとめられた皇族数の確保策の議論に触れ、「国民の皆さんの理解が得られるものとなることを望んでおります」と述べた。

 会見で、天皇陛下は議論の受け止めについて問われ、「制度に関わる事項については私から言及することは控えたい」と述べた。その上で、皇室のあり方や活動の基本は「国民と苦楽を共にすること」というかねての考えを示し、「皇族数の確保のあり方についての議論においても国民の皆さんの理解が得られるものとなることを望んでおります」と表明した。

 天皇陛下は直近の記者会見でも皇族数の減少や確保策について問われたが、「制度に関わる事柄について、言及することは控えたい」という趣旨の回答にとどめていた。

宮内庁長官「国民の理解や納得得られるものに」と拝察

 天皇陛下の会見に先立ち、宮内庁の黒田武一郎長官は定例の記者会見で、取りまとめられた皇族数の確保策を天皇陛下や皇后さま、皇嗣の秋篠宮さまに報告したと明かした。黒田長官は、報告した際の天皇陛下の受け止めについては「差し控えたい」とした。ただ、「(陛下は)国民の皆さまの理解や納得を得られるものとなるように願われているのではないかと拝察している」と述べた。

 衆参両院の正副議長は10日、皇族数の確保のため、女性皇族が結婚後も皇族の身分を保つ案と、旧11宮家の男系男子を養子として皇族に迎える案をいずれも「了」とする「立法府の総意」をまとめた。政府は、総意を踏まえて皇室典範改正案などを策定し、今国会での成立をめざす。

皇族数の確保策について 天皇陛下の発言全文

 皇族数の確保策についての天皇陛下の記者会見での発言と、質問は以下の通り。

質問

 国際親善は皇室の重要な役割の一つになっており、昨年は愛子さまが初めての海外公務としてラオスを訪問されました。若い皇族方の活躍が期待される一方、現行制度では皇室の縮小が見込まれ、国会では皇族数確保の議論が進められてきました。次世代の活躍への期待と併せ、皇室の活動と皇族数とのバランスについてのお考え、これまでの議論の受け止めについても聞かせてください。

天皇陛下

 国際親善は皇室の重要な役割の一つであり、外国との相互理解や友好関係を深める上で大切な意義を有していると思っています。昨年愛子がラオスを訪問し、多くの方々と交流の機会を得られたことは本人にとっても大変貴重な経験になったのではないかと思います。愛子を含む若い世代の皇族それぞれが様々な経験を重ねながら、自らの務めについて理解を深めていくことを願っています。

 皇室の活動はこのような国際親善のほかにも、地方への訪問や被災地のお見舞いなどを通して、国民の皆さんに寄り添い、あるいは多くの国民の皆さんと交流することをはじめ、多岐にわたっております。こうした皇室の活動を将来にわたり、安定的に続けていくための皇族数の確保のあり方については、現在議論されているものと承知しています。

 制度に関わる事項については私から言及することは控えたいと思いますが、皇室のあり方や活動の基本は国民の幸福を常に願い、国民と苦楽を共にすることだと考えており、こうした皇族数の確保のあり方についての議論においても国民の皆さんの理解が得られるものとなることを望んでおります。これからも若い世代も含めた皇室の1人ひとりがそれぞれの立場で務めを果たしながら、国民に寄り添い、また国際社会との友好親善にも努めていくことが大切であると考えています。

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この記事を書いた人
中田絢子
東京社会部|宮内庁担当
専門・関心分野
皇室、憲法、平和、政治、運輸
島康彦
社会部|編集委員
専門・関心分野
皇室、こどもの問題、格闘技(プロレス)、演芸(落語、浪曲)
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    原武史
    政治学者
    視点

     昨日発売の『文藝春秋』によれば、2005年の有識者会議の報告書で養子案が一蹴された背景には、旧皇族の「復帰」に賛成しない平成の天皇(現上皇)の意思があった。たとえ保守派が養子案を強く主張しても、天皇自身の強い意思がそれを押し返してきたことになる。  確かに現天皇も「国民の理解が得られるものとなることを望む」と発言しているということは、養子案に懸念をもっているようにも読み取れる。『文藝春秋』もそのように解釈している。しかし2021年の有識者会議の報告書で2005年に一蹴されたはずの養子案が復活してきた一因として、平成から令和への代替わりがあったことは否定できないだろう。  現天皇は平成の天皇に比べて、憲法に抵触しかねない「お気持ち」を表明することには慎重になっているように見える。露骨に本心を表明すれば憲法違反になるし、かと言って何も表明しないままではますます「国民の理解」から遠のく方向に事態が進行してしまう。天皇自身も苦悶しているのではなかろうか。

    2026年6月11日 17:48
  • commentatorHeader
    河西秀哉
    名古屋大学教授=皇室・近現代史
    解説

    ギリギリの範囲で、天皇が自身の見解を述べたものと考えます。 原先生が天皇は「苦悶している」と評価されていますが、私もそのとおりだと思います。自らの発言が、制度設計について影響を与えることは、象徴天皇という立場上、困難です。しかし、この発言を読むと、現状の政治が進めている方向性は、「国民の理解」が未だ得られていないと感じていることが読み取れます。 しかも、「国民と苦楽を共にすること」を強調したのは、男系の血で継続させるような象徴天皇のあり方ではなく、平成以降の天皇・皇族のあり方、具体的に言えば国民に寄り添う自分たちの活動こそ、ふさわしいと考えていることになります。 こう天皇に言わせてしまった政治の責任は大きいと思います。普段からコミュニケーションを取っていれば、こういった発言は出なかったのではないでしょうか。

    2026年6月11日 18:01

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