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第1話「月に吠える」
脚本・星山博之 絵コンテ・斧谷稔 演出・渡邊哲哉 作画監督・土器手司

クルーA「対地進入角、速度共に良好」
クルーB「各機の対地進入システム、確認」
調査員A「フラット1異常なし」
キース「フラット2異常なし」
調査員B「フラット3異常なし」
調査員C「フラット4異常なし」
調査員D「フラット5異常なし」
調査員E「フラット6異常なし」
ロラン「メーリさんの羊、メーメー羊、メーリさんの羊、かわいいね。どーこでもついてく、メーメー羊、どーこでもついてく、かわいいね…」
キース「フェイスガード、閉じろ」
 「ワンリトル、ツーリトル、スリーリトルムーンレィス。フォーリトル、ファイブリトル、シックスリトルムーンレィス。セブンリトル、エイトリトル、ナインリトルムーンレィス。テンリトルムーンレィスガール…」
フラン「ローンドブリッジフォーリンダウン、フォーリンダウン、フォーリンダウン。ローンドブリッジフォーリンダウン…。鉄棒で架けろ、架けろ、架けろ。鉄棒で…」

アイキャッチ「月に吠える」

フラン「…熱いじゃない、ロラン」
ロラン「面白いんだもの」
フラン「大丈夫でしょ?」
キース「ああ、誰にもわかりはしないさ」
フラン「元気でね、キース、ロラン」
キース「フラン・ドールもな」
 「ロランも無理すんなよ」
ロラン「ありがとう、キース」

ロラン「…」
 「…、うっ、あっ、えっ?」
リリ「さすがでらっしゃいますわ、グエン様」
少女A「わざと逃がしておやりになったのね」
少女B「コヨーテが逃げて行っちゃう」
少女C「あの坊や大丈夫?」
リリ「おやりになることがさすが私達のグエン様でらっしゃる」
少女A「お元気でね、坊や」
少女B「ふふふっ」
ロラン「…」

ロラン「…」
 「…へえーっ」
 「わぁー」
 「メーリさんの羊、あっ」
 「…、ああっ…」
ソシエ「姉さん」
キエル「あの子、溺れてる」
ソシエ「ジェシカー」
キエル「ジェシカ、サムを下流から」
ジェシカ「サーム」
サム「おうよ」
ロラン「…」

ジェシカ「顔色はよくなってるわね」
サム「もう大丈夫でさあ」
キエル「およしなさい」
ソシエ「これを追いかけて溺れたのよね、きっと」
キエル「よそ者が流れてくるなんてめずらしいことじゃないわ」
 「ジェシカ、頼むわね」
ジェシカ「はい、お嬢様」

ロラン「…、はぁーっ」
ジェシカ「食いな」
ロラン「あ、あちっ…」
ジェシカ「このハイム家はね、溺れてなきゃお前みたいなよそ者には出入りできない所なんだよ」
 「ソシエお嬢様、そんなのに関わらないほうがいいですよ」
ロラン「…」
ソシエ「…」
ロラン「うっ、ぐっ…、はあーっ」
 「…めぐんでもらうつもりはありません。お金は少しありますし」
ソシエ「わかってるわ、ロラン・セアック君」
 「高いわよ、うち」
ロラン「なら、働いて返します。調べたんですか?」
ソシエ「あなただってあたし達を見たじゃない」
ロラン「溺れてたからちゃんと見られませんでした」
ソシエ「残念ね」
ロラン「…そうですか?」
ソシエ「…あたし達よりこっちのほうに興味があったんだ?」
ロラン「返してください、僕のですよ」
ソシエ「いやよ」
ロラン「そんなの」
ソシエ「今夜はどうするつもりだったの?」
ロラン「…この町にはハイム鉱山があるから、そこに住み込ませてもらおうと思って」
ソシエ「へー、考えてはいるんだ」
ロラン「ハイム鉱山?あっ、ここハイムさんってうち?」
ソシエ「そ」
 「キャハラン」
ロラン「いくらですか?」
ジェシカ「いいんだよ」

ソシエ「これね、あっ」
ロラン『本当にディアナ様に似ている』
キエル「成人式の為に体を清めていたのに、めちゃめちゃにしてくれたわね」
ロラン「謝ります、あっ、ああーっ」
ソシエ「ふっ、ふふふふっ」
キエル「お父さまに、鉱山で働けるように頼んでおいてあげたわ」
ロラン「ありがとうございます、本当に。川の流れがあんなに強いなんて、僕知らなかったんです。それで溺れてしまって。それを助けてくださってありがとうございます」
ソシエ「すぐにね」
キャハラン「はい」
ソシエ「あなたも行くでしょ?」
ロラン「はい?どこへですか?」
ソシエ「お祭りよ」

村人A「自動車は行けないよ」
キエル「マウンテンサイクルへ」
少年達「マウンテンサイクルへ」
ロラン「あ」
ソシエ「行くわ」
村人B「出発だ」
ソシエ「行くわ」
ロラン「あれ、お姉さんだろ?」
ソシエ「そうよ」
 「あたしは再来年」
サム「お嬢さん達はここまでです。今夜はこれ以上上がっちゃいけません、宵越しの祭りがありますからね」
ロラン「僕だって十五歳ですよ」
サム「よそ者は、おいっ」
ソシエ「ロラン」
サム「お嬢さん」
ソシエ「よそ者はこれ以上登れないのに」
ロラン「…」
 「へえーっ」
ソシエ「見つかったら叩き出されるわよ」
キエル「これからは成人式の宵越しの祭りになります。大人の方々は下山してくださいませ」
ロラン『ホワイトドールってこっちのことなのか?』
村人C「大人は下山だ、下山。前のほうからさっさと降りろよ」
ソシエ「ロラン」
村人D「さあ下山だ」
村人E「下で飲みあかそうぜ」
村人F「若いのはいいよな」
ソシエ「ロランッ」
村人C「タブーを破るのか、こんガキャあ」
ロラン「…」
キエル「パートナーを選びます」
少年A「おい、キエル、俺だぜ」
少年B「キエル、俺だって」
少年C「キエル、俺を選んでくれよ、俺だ俺だ」
少年D「キエルさん、今日は本当にきれいだ」

アイキャッチ 

メシェー「パパの新型、すごい」
 「競争しよ、どのくらい速いかさー」
ラダラム「よーし、見てろよ、新型機の性能を。さーっ」

鉱員A「せーのっ」
鉱員B「暑いから早くすまそうぜ」
鉱山長「ロランどこだ?」
鉱員C「新しい縦穴のエレベーターのとこです」
鉱山長「ん」
鉱員C「いやこっちの話だ」
鉱山長「ロラン、仕事を終えろ」
ロラン「はっ、はい」
鉱山長「ハイムの旦那がお呼びだ」
ロラン「旦那様がですか?」
鉱山長「お前が機械に強いってのが旦那さんの耳に入ったんだよ」
ロラン「…」

ロラン「…」
ソシエ「これがグエン様の最新式の車よ」
ロラン「あの、ロラン・セアックです」
キエル「乗用車だって、スポーツのように走らせたいとおっしゃってたのよ」
ソシエ「すごーい、ここも座席になってる」
キエル「グエン様が作らせたのよ」
ソシエ「うわっ、みんなピカピカ。お姉さま、すごいわよ」
キエル「見たわよ」

ディラン「戦闘機も必要なんでしょうかね?」
グエン「海上での戦闘も考えています」
ディラン「ガリア大陸が攻めてくるってんなら、そうなりましょうな」
グエン「ですから、増産路線は続けます。これで結構です」
ソシエ「…」
グエン「他の領地の山へ進出することも考えてください」
ディラン「承りましたが、本当に戦争は始まるので?」
グエン「噂ですよ。しかしこれを利用して、工業化社会を作りたいというのが私の狙いです」
ディラン「さすが御曹司。御領主の後継ぎながら、時代の産業を興そうとは」
グエン「年寄りが政治と外交をやっていれば、そうするしかないでしょう」
ディラン「ん?」
執事「ロ、ロランの奴が」
ディラン「来ていたのか」
 「ロラン・セアック、君は今日からこっちで運転手の見習いをやってもらう」
ロラン「自家用車のですか?」
ソシエ「よかったわね、ロラン」
ロラン「…」
キエル「お父さま」
ディラン「空いている時間には勉強もして大学へ行け。ラインフォード様の創る新しい時代の担い手になるんだ」
グエン「その髪の毛の色」
ロラン「はい?」
グエン「思い出したんだ。コヨーテに襲われていた少年と、同じ髪の色だって」
ロラン「ああ。ありがとうございました」
グエン「撃ちもらしたので、心配もしたのだがね」
ロラン「おかげさまで、ここのお嬢様方にも助けられて」
ディラン「ははは、縁があるのなら、ますます勉強して御曹司に恩返しをしなければな」
ロラン「はい」
ソシエ「よかったわね、ロラン」
キエル「でも、新時代の学問というのは厳しいのよ」
ロラン「はあ」
キエル「そうでございましょ?グエン様」
グエン「そうだが、ローラは君のお父様の目にかなったんだろ」
ディラン「奴には今年、二年遅れの成人式に参加させますし」
 「な」
ロラン「…お願いできるんですか?」
ソシエ「…あたしと一緒に?」
グエン「外に新型を持ってきている。君の腕を試してみたいな、ローラ・セアック」
キエル「グエン様」

キエル「グエン様、あれでしょ?ミリシャの飛行機部隊」
グエン「ミスター・クンは天才的な飛行機家だ。あの速いほうの機体で部隊を編成させている」
 「アクセルをふかして。そうだ。温度計がセンターに来るまで待って」
 「そうそう、キエルさんはこの夏のお城のパーティーに招待します」
キエル「ボストニア城のですか?」
グエン「勿論です。ご両親には不都合はございませんね?」
ディラン「ええ、ええ、娘の社交界デビューがボストニア城とは誉れであります」

キエル「ふふふ、ふふふっ」
 「グエン様、ロランのこと、ローラって言ってたな」

メシェー「へたー、あれでミリシャだってんだから」
ミハエル「手の空いている奴は飛行船の下へ集合させろ」
メシェー「大佐、いいですよね?」
ミハエル「御曹司の顔を見に行くのか?」
メシェー「父ちゃんの飛行機を買ってくれた人だからね」
ミハエル「バカ言え、私がメシェーの親父さんの飛行機を推薦したんだ。御曹司は金を出しただけだ」
メシェー「へ」
 「パパーっ」

グエン「量産に入っているから数は心配するな。この車も使ってくれ」
ミハエル「ありがとうございます」
グエン「いい腕だった。期待してるよ、ローラ」
ロラン「はい」
メシェー「ばははーい」
 「ロランだろ?」
ソシエ「ロランよ」
ミリシャ兵A「手が足らねーんじゃねえか?」
ミリシャ兵B「ふざけてる暇ねえだろうが」
飛行船クルーA「モーター回せ」
ミリシャ兵C「おい、ぐずぐずするんじゃねえ」
ミリシャ兵D「そっちのブレンチを外せ」
ソシエ「ん?」
メシェー「…」

キエル「すぐすませるわ。ここで待っていてね」
ロラン「はい」
ソシエ「行かないの」
ロラン「どうしてです?」
ソシエ「姉さんのパーティーのアクセサリーの買い物なんか、誰がつきあうもんですか。ここは成金趣味のお店よ」
ロラン「キエルお嬢様は、趣味いいですよ」
ソシエ「ロランはすぐそれだ」
ロラン「ん?」
キース「ちゃんと暮らしてるようじゃないか」
ロラン「キースこそ。パン屋かい?」
キース「ああ。フランもこのノックスで働いてるぜ」
ロラン「フランとも会ってんのか?」
キース「行けよ」
ロラン「僕はヴィシニティのハイム家に勤めている」
キエル「ノックスの街に出稼ぎのお友達?」
ロラン「田舎で、顔を知ってるって程度の人です。よろしいですか?」

ソシエ「作文の宿題はすませたの?」
キエル「勿論。ケイト先生に叱られるのは時間の無駄でしょ」

先生A「ごめんなさいね。私の都合で早く切り上げちゃって」
ソシエ「いいんです。また来週」
先生A「ごきげんよう」
先生B「ミス・キエル・ハイム」

ソシエ「ぶーん」
 「ロラン?いないの?」
 「…」
ロラン「…?」
キース「ばぁ、よく来られたな」
ロラン「ずっとそこにいたのかよ」
ソシエ「あら?友達?」
キース「元気なんだろ?」
ロラン「勿論。キースも、パン屋やってるって?」
ソシエ「何を話してんだろ?」
キース「小麦粉のひんやりした感触ってのはいいぞ。いてっ」
ロラン「…、うまいじゃないか」
キース「な」
ロラン「フラン・ドールは?」
キース「来られるってさ」
 「おう」
ロラン「フラン」
ソシエ「あっ、女の人じゃない」
フラン「…ロラン」
ソシエ「田舎物同士の集まりか」
フラン「…会いたかったよ」
ロラン「僕だってさ」
フラン「キースのパン、おいしいでしょ」
ロラン「うん。フランは新聞社の印刷所で働いてんだって?」
フラン「そうなのよ。インクの匂いがまるで取れないの」
ロラン「…いい匂いじゃないか」
ソシエ「あの女、キスさせるの?」
フラン「でもさ、これで地球でやっていけるって自信ついたよね」
キース「よせよ、そういう話」
フラン「でもさ、新聞社ならリアルタイムでニュースがわかると思ったんだけど、月のニュースって何もないんだよ」
キース「ガリアの大陸が攻めてくるって噂がデマで、月の事じゃないか?」
ロラン「ああ、そうなんだ」
キース「ロラン、あれどうなってる?大丈夫なんだろ?」
ロラン「忙しくって見に行ってないんだ」
フラン「フラットは自分でちゃんと谷に潜ったわ。見つかるわけないじゃない」
ソシエ「何見てんだろ?あの三人」
ロラン「地震でもあれば心配だけどさ」
フラン「車、使えるんでしょ?」
キース「そうだよ、お前近いんだから見てこいよ」
ロラン「えーっ、バカ言うなよ」

キエル「…」
ソシエ「キャハラン」
 「山から持ってきたトラックの修理なんてさ」
 「逆のほうじゃない」

ソシエ「ライト、消したほうがいいんじゃない?」

ロラン「…」
 「…」
ソシエ「…」
 「あっ」
ロラン「ふふふふっ、ふふふふっ…」
ソシエ「…」
ロラン「みんな、地球ってとってもいいところだぞ。早く戻ってこい」
ソシエ「…」
ロラン「地球はとてもいいところだ、みんな、早く戻ってこーい」
ソシエ「…」

次回予告「ヴィシニティが僕の故郷になる日、ミリシャの人々はディアナ・カウンターを見て過剰に反応してしまった。僕もホワイトドールの石像が崩れた時、息をのんでしまった。モビルスーツが現れたからだ。次回、ターンAガンダム『成人式』。風が吹いた」
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