「まさかこんなことに」兵庫自民を一転させた斎藤知事の二つの発言
8日午後3時50分、この日3回目の議員団総会(団総)が始まった。
兵庫県議会で最大会派の自民党に属する34人が、県庁の大会議室に集まっている。
議題は斎藤元彦知事が提出した給料削減案について。賛成の方針でまとまっていたはずだった。ところが、朝の1回目に異論が出た。本会議を挟み、昼休みに開いた2回目でも反対意見が出た。
そうして迎えた、予定外の3回目だった。
斎藤知事の給料カット議案は11日、4回目の継続審査が決まりました。当初賛成する方針だった自民党県議団が態度を一転させました。その背景に何があったのか。舞台裏を追いました。
「ご意見をちょうだいする」
幹部がそう切り出すと、反対論が数人の県議から噴き出た。賛成の声は、多勢に無勢だった。
決をとることにした。賛成するなら○を。しないなら何も書かない。
6日前、幹部はあらかじめ知事に賛成すると伝えていた。1年にわたり決着がつかなかった給料削減案は、6月定例会で可決される公算が大きかった。
「○は15。ないのが19」
状況は一変した。
賛成すべきではないとする県議が団総を終えて出てきた。高揚した様子だった。
「まさか、こんなことになるなんて」
賛成を主張する県議は次のように振り返る。
「雰囲気は向こうにあった。でもわずかの差で勝てるとは思ったのに。その夜は、控えていた酒をがぶがぶ飲んでしまった」
何があったのか――。
亡くなった告発者めぐる発言 火種に
知事が提出した議案は、自らの給料の削減率を50%に引き上げるものだった。行財政改革の一環として元々30%減らしていた。
県の内部告発問題に絡み、告発者の私的情報が漏洩(ろうえい)した。この管理責任を取るというのが理由だ。
元々の給料削減案は2025年6月に提出された。
議会側は慎重だった。問題が「幕引き」になってしまう。告発者の私的情報を県議に漏洩したとして、知事も地方公務員法(守秘義務)違反容疑で刑事告発され、結論が出ていない。そういった理由で、議会は可決か否決かを決めない「継続審査」としてきた。
理由を管理責任に限定すると明記したのも、議会側の求めに知事が応じたものだった。
26年3月、神戸地検は知事を不起訴(嫌疑不十分)とした。
不起訴になってから初めての県議会。それが6月定例会だった。
初日の2日、自民の幹部は知事に賛成の方針を伝えた。
同時に、申し入れをした。県民への説明責任を果たすことや真相解明を続けること、再発防止など5項目を記した。知事からは「しっかり受け止める」との回答があった。
ところが、翌3日の定例記者会見での知事の発言が火種となった。
内部告発問題では、告発文書の「誹謗(ひぼう)中傷性が高い」などとして懲戒処分を受けた告発者が亡くなり、自死とみられる。告発者が処分をどう受け止めていたかに関する記者の質問に、次のように知事は答えた。
「不服あれば申し出ができた。されなかったので、結果としては懲戒処分を受け入れられたということ」
だが、告発者は不服申し立てをしない理由を生前、こう説明していた。「自分は人事課のOBです。後輩たちを訴えることがどんなにつらいことかご理解いただきたい」。申し立ての期限が終わる前に世を去った。
ある自民県議は振り返る。「これはあかんと。亡くなった人のことを推測で語るなんて、全く配慮がない。人の心を逆なでしている」
5日にも団総があり、はっきりと反対を口にする県議が現れた。
「申し入れを守れへんのやったら、何のためだったのか」
「外部通報ではないと考えております」
週末を挟んで8日。1回目、2回目の団総を経て、本会議があった。
立憲民主党の県議でつくるひょうご県民連合の議員が一般質問でたずねた。告発者への県の対応が「適正、適切、適法」とする知事の見解の根拠は何か。
知事が答えた。
「真実相当性が確認できなかったことから、当該文書は公益通報者保護法上保護される3号通報(外部通報)ではないと考えております」
この直後、3回目の団総が開かれた。
「申し入れを打ち消す内容が出た」
「管理責任に終わっちゃうよ。これでええんか」
空気が変わっていた。
削減案に賛成できないと決めた自民は、継続審査に方向転換した。
9日の県議会総務常任委員会では、継続審査とそれ以外の主張の県議が同数となったが、自民の委員長裁決で継続審査とすべきものと決めた。11日の本会議で4回目の継続審査となった。
「個人の意見を組織の意見で押し込めないのが自民のいいところ。でも、議案を通して前に進みたかった」
可決に向けて汗をかいた自民会派の幹部は、振り返った。
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- 西岡研介ノンフィクションライター視点
彼が「兵庫県知事」で居続ける限り「県政の混乱」は延々と続くだろう。県民の一人としても、三十余年の記者人生の中でも、「居住自治体の長」に対し、これほどウンザリした気持ちと、絶望に似た感情を抱くのは初めてだ。どうか、他の都道府県、市町村の皆さんは、この兵庫県の惨状を「他山の石」として欲しい。
2026年6月11日 16:59