「セシウムボール」と呼ばれる東京電力福島第1原発事故で放出された「高濃度放射性セシウム含有微粒子(CsMP)」の拡散経路を明らかにしたと、筑波大や台湾大などの研究チームが国際学術誌に発表した。放射性物質による汚染は原発の北西側を中心に広がったが、CsMPは福島県内の広い範囲に運ばれていた。東日本大震災から4日後に大量に生成されていたことも判明した。
不明だった拡散の実態
CsMPは、事故で高温の核燃料が床に溶け落ち、溶けたコンクリートの成分がガラス状となって放射性物質を包んだ直径数マイクロメートルの球状の微粒子。水に溶けにくく、吸い込むと肺に沈着し続けることが懸念されているが、拡散の実態はよく分かっていなかった。
チームは、土に含まれるCsMPの数を調べる手法を開発し、事故直後に採取した福島県内100地点の土壌を解析した。その結果、原発の北西側と南西側で多くのCsMPが見つかり、最大で土壌1グラム当たり52個が含まれていた。土壌中の放射能の60%がCsMPによるものだった地点もあった。
さらに放射性プルーム(空気の流れ)のシミュレーションと合わせて拡散過程を調べると、2011年3月15日未明に大量に放出され始めていたことが明らかになった。1立方メートル中に最大4700個のCsMPを含む放射性プルームが、原発を起点に南から南西、さらに北西方向へと時計回りに県内の広い範囲に運ばれていた。東京にも届いていたという。
一方で、翌16日午前0時以降に放出された放射性プルームにCsMPは含まれておらず、水に溶けやすい形態のセシウムが含まれていたとみられる。
今後の対応に「意義大きい」
チームの宇都宮聡・台湾大教授(環境科学)は「CsMPが原発内でいつ生成され、いつ止まったかというプロセスが明らかになった意義は大きい」と話す。より実態に即した除染や、原子力災害対応の指針につなげることが期待されるという。
山崎信哉・筑波大准教授(分析化学)は「放射線量のマップとCsMPの分布が違うことが示された」と語った。
成果は環境科学などの国際学術誌に掲載された。【垂水友里香】
「セシウムボール」とも呼ばれる高濃度放射性セシウム含有微粒子(CsMP)=宇都宮聡・台湾大教授提供
土壌1グラムに含まれる、福島第1原発から放出されたCsMPの個数。円が大きいほど数が多い。円の色が濃いほど、CsMP由来の放射能の割合が高いことを示す=宇都宮聡・台湾大教授提供
福島第1原発から放出された放射性プルーム1立方メートルあたりのCsMPの数の分布。円が大きいほど数が多い=宇都宮聡・台湾大教授提供
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