崩れゆくゼレンスキー帝国
しかし、ゼレンスキーおよびその周辺は、決して自分たちへの捜査がおよばないようにするために工作を継続してきた。ゼレンスキーの権力源泉であるウクライナ保安局(SBU)と検察総局が9月6日に発表したところによると、ウクライナ当局は、前述したフリステンコ議員を拘束した(「キーウ・インディペンデント」を参照)。どうやら、ゼレンスキー政権はフリステンコに対して、NABUにおける「ロシアの影響」を証言させて、NABUの捜査自体を否定的に見せかけようとしているのだ。
ゼレンスキーらの「悪だくみ」は着々と進んでいた。しかし、11月4日に欧州委員会から欧州議会、理事会、欧州経済社会委員会および地域委員会への伝達文書 として公表された、ウクライナがEUに加盟するために行っている改革を評価した報告書「Ukraine 2025 Report」のなかで、ウクライナの腐敗防止策について厳しい批判があったため、「悪だくみ」の実行が遅れていたのである。
報告書は、紹介した7月の立法騒ぎについて、「国会は7月に法律を採択し、NABUとSAPOの独立性のための重要な保護措置を解体し、その運営業務を政治的に任命された検事総長の権限下に置いた。これらの改正は、ウクライナの腐敗防止の枠組みを著しく弱めるものであった」、と的確にのべている。
そのうえで、「全体として、こうした動きはウクライナの反腐敗アジェンダへのコミットメントに疑問を投げかけている」と結論づけている。「ウクライナは腐敗防止の枠組みを前進させ、顕著な改革の成果を後退させないようにすべきである」と指摘し、「高レベルの汚職訴訟における手続きの遅延や妨害に対処すべきである。時効とその中断・停止事由は、欧州の基準に沿って見直され、調整されるべきである」という提言まで書かれている。
このため、「悪だくみ」を実行できないままでいたゼレンスキー側に対して、NABU・SAPが先回りして鉄槌を下したのが今回明るみに出た「ミダス」事件というわけだ。しかも、紹介したように、ミンディッチとファイアポイントとの関係から、ゼレンスキー政権が軍備をめぐっても腐敗してきた実態が明らかにされる可能性がある。