日記(20260524-0602)
五月二十四日(日)ー二十五日(月)
・最近仲良くなった友達と散歩をした。十八時半くらいに集合して、夕食を挟みつつ東口一帯、片平、西公園、そこからもう一度東口、とひたすら歩く。風景をじゃきじゃきと繰り替えながら話すのがかなり楽しい。自分が切り出した話題に相手が同じくらいの熱量で喋ってくれたり、逆に相手の喋っていることに自分が同じ温度感で乗っかれたり、そういうのが嬉しくて家族の話みたいな普段はあまり他人にしない話もしてしまった。
・解散時間を決めていなかったら朝の五時近くになっていた。明るくなってきたし流石に、という感じの別れ際に友達が持たせてくれたバイト先の食パンを食べながら(友達はバイト終わりにそのままで来た)、十分に日の昇った街の高架を辿って帰る。
皮肉じゃなくて本心でかっこいいと思う。かっこいいと思うから俺もガワだけ真似します。
五月二十六日(火)ー六月二日(火)
・五月の最終週と六月の第一週で教育実習に行くはずだった。はずだった、というのは行けそうなのに行けなかったということで、行けそうなのに行けなかったというのは俺に教育実習に行く権利がないことが実習開始二週間前に発覚したということだった。
・五月の第一週、大学から実習校に送られるはずの書類が俺の分だけまだ届いていない、という連絡が実習校(母校でもある)から来る。何のこっちゃ、と教務課に行く。俺に要件を伝えられた職員さんは窓口からかなり遠くのデスクに行き、そこのちょっと偉そうな職員さんと話し合ったりパソコンで何かを確認しているのが見える。かなり待たされ、流石に一旦帰ったほうがいいですかって気持ちになってきたところでちょっと偉そうなほうの職員さんが窓口までやって来る。彼の話を要約すると
①俺は昨年の十月までに出すべき一枚の書類を出していなかった。(←ヤバい)
②そのため昨年末に行われた教育実習のために必須の説明会の案内が送られておらず、自動的に欠席となっている。(←ヤバい)
③説明会を欠席したため、俺は今年度の教育実習の履修を放棄したものと見做されている。(←超ヤバい)
という感じになる。実際にメールボックスを漁ると昨年の七月に①の書類を出してねと告げる未開封のメールが一件。そんなに大事なやつならリマインドしてくれてもいいじゃんね、と思いながら何とかならないか食い下がるが何とかならないらしい。まあ実習は修士課程でも行けるらしいし、そもそも教職に就くつもりは殆どないし、というか実習に行ったところで俺が取れるのは高校公民の免許だけだからどこの県の教採受けるんだよ、という感じで自分を納得させ、まあ免許は別に要らないかという結論に達しながら窓口を後にする。
・その日の帰り道は俺が取るはずだった教員免許のことを考えながら歩いた。教員免許。見たことはないけど医師免許みたいな感じで意外と大きいんだろうか。けどやっぱり運転免許くらいのサイズがいい気がする。職質されたときに出す身分証が教員免許だったらかなりクールだと思う。俺は人並みに警察官が怖いので(権力を国から与えられていて、しかも制服を着てそれを誇示しているから)、職務質問をされたら動画を撮りながら応じることになるだろう。片手で教員免許を差し出しながら、もう片方の手にスマートフォンのカメラを構える自分を想像する。かなり間抜けだ。俺はマルチタスクが苦手な上に間が悪いからきっと上手く教員免許を渡せなかったり上手く動画を撮れなかったりすることになる。側溝に落ちていく教員免許や必要以上にぶれまくる動画内の警察官を思いながら家に帰って眠りにつく。翌日実習校に電話を掛けて担当教員一同に謝り倒した俺は、教員免許の代わりに学校もアルバイトもない二週間を手に入れた。
・何も予定がない二週間が手に入ったらやりたいこと。ひとつしかない。部屋の掃除、これに尽きる。俺の部屋はとても汚い。最後に掃除機をかけたのは二〇二四年の年始とかで、最低限の獣道を残して床の面積の殆どは物とゴミに覆われている。うろ覚えだけど、荒れた部屋に住んでいる大学生を主人公にした円城塔の短編に「部屋に食べ物と水分を持ち込まなければ虫は湧かない」みたいなことが書いてあったのが印象深くて、それを参考に生ゴミの処理と最低限の水回りの衛生に気を遣っていたから社会生活が出来なくなるほど酷いことにはなっていない。けど普通にこんな部屋に住んでいていい訳がないので何とかしなくちゃな、とは思いつつもいざ掃除に手を付ける想像をしたときの途方もなさに動き出すことが出来ないでいたのだった。
・一日目はひたすら収納の整理をした。収納はどこも引っ越してきて以来詰め込まれるままになっていたので滅茶苦茶なことになっている。押入れ(築四〇年近い物件だからクローゼットではなく明確に押入れだ)にひしめくB1の頃のなんとも言えない服とか家電の空き箱とかをろくな分別もせずに全部ごみ袋に突っ込んでいく。大分底の方から中学生の頃に友達とやり取りしていた手紙の束が出てきた。多分実家からそのまま持ってきたのだろう。中身を確認したい衝動に駆られたが、絶対にろくな感情にならないことが分かっていたのでそのまま捨てる。俺はもうそろそろ二十二歳になるのでこういうことを理性でやれます。
・そこから五日間はひたすら床の掃除をしていた。ハウスダストアレルギーがかなり酷く出てしまい、一日掃除をしては一日寝込む、みたいな動き方になる。床に落ちているものを拾い上げ、要らないものは捨てる。必要なものは埃を払って所定の場所に戻す。ある程度スペースが出来たら掃除機とクイックルワイパーの偽物みたいなやつで床を綺麗にする。その繰り返し。アレルギーで頭が熱っぽいところを除けば単調な作業で楽しい。ずっと大音量でlilbesh ramkoを流していた。
・lilbesh ramkoは歌詞だけ見ると生活とか他者とかをあまり好きじゃなさそうな感じがするんだけど、サウンドと歌い方にはなんだかんだでそれらを諦め切れていないニュアンスがある気がする。俺もそう思います🎶と思う。というか俺がそういう感じだからそう聴こえているんだと思う。
・床が綺麗になったら水回りの本格的な掃除になる。掃除、というか清掃って感じだ。こういうのって普通数ヶ月に一回とかのペースでやるものなんだろうけど、具体的にどのタイミングでやればいいのか分からないままここまで来てしまった。よく考えたら普通のひとり暮らしがどのタイミングで掃除機を掛けているのかとかもよく分からない。実家にいたころは週一くらいで自分の部屋の掃除をしていたけど、じゃあ今の自分の暮らしのどこにそれをやる時間を設ければいいのか全然想像できない。分からないよ~って思いながら風呂場の排水トラップにカビキラーを吹きかけていたらスピーカーの曲が i(don’t)know.に切り替わって、流石にやらせかと思った。
分からないよ 何も
考えないで dancing all night long
寝過ごしてきた 君と二人
分からないこの感情の先を探してる
I don't know, I don't know, I don't know,
I don't know, I don't know, I don't know,
I don't know, I don't know, I don't know,
I don't know, I don't know, I don't know.
・掃除を終えた部屋を眺めると余白のなさにびっくりする。生活に必要な最低限の家具しかないから、友達の部屋とかと比べるとかなり床が余っているほうだと思う。けどそこに何か新しい家具を置いてみたり、あるいはそこに誰かが座っていたり、そういう想像がまったく出来ないし、別にそうあって欲しいとも思わない。これまで物とゴミで埋まっていた領域は、それらがなくなったところで本質的には何も変わっていないように感じる。家具の配置が悪いのかなってベッドとデスクの位置を変えてみたけど特に何も変わらなかった。
・ここ一年くらいは研究室の誰かの部屋に集まってお酒を飲む、みたいなことをときどきやっているけど、同じことをこの部屋で出来る気がしない。俺の部屋は俺が一人で最小限の生活をやるためだけに存在していて、これ以上の物や人を受け入れる余裕がない、みたいな直感がある。部屋がそんな感じだと、俺や俺の人生もそんな感じなんだろうなという風に思えてくる。けど実際は逆で、俺がこれ以上の生活の余裕とか親しい他者とかを求めていないから部屋がそういう表情になってしまうのだろう。
・一週間誰とも会話をしていないと思考がこんな方向にまとまってくる。本来は結構他人が好きなほうなのに。けど別に間違ったことを考えているとは思わない (←公開にあたって読み返したけど今もそうです)。
・明日はこの間散歩をした友達と会う。何喋るか全然決めてないけどお互い楽しくなれますようにって思う。


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