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皇室の祀り主は男系男子でなければならない 皇學館大学教授 新田均(「日本の息吹」令和6年2月号より)


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新田均氏

 今年の皇室に関する論点は「安定的な皇位継承を確保するにはどうしたらいいか」になるに違いない。これを考える場合に、まず、大切なのは、目的と手段の関係を明確に意識することだ。目的、「何を、なぜ守るのか」を考えずに、手段、「どうやって守るのか」を考えたり、どれがとりあえず実現しやすいか、簡単に支持を得られるかなどと考えたりしてしまうと、本質的に守らなければならないものを壊してしまうという大きな過ちを犯す可能性が高い。

 それでは、天皇の本質的な役割、立場とは何かといえば、それは皇祖の祭り主であり、日本国家の祭り主であるということだ。これは、皇室についてある程度の関心を持つ者の間では自明のことだが、数ある天皇の役割の中で、何故それが本質なのかを改めて確認しておきたい。

 私は、物事の本質は危機の時や衰退のときに見えてくると考えている。一つの例を挙げれば、それは、建武中興けんむのちゅうこうを行った第96代後醍醐ごだいご天皇が、討幕計画の露見によって、六波羅探題ろくはらたんだい幽閉ゆうへいされた時だ。このとき、鎌倉幕府は、天皇を隠岐おきに島流しにすることにしたが、臣下が君主を島流しにすることは畏れ多いため、後伏見天皇の第一皇子だった量仁かずひと親王を即位させて光厳こうごん天皇とし、この天皇の宣旨せんじによって島流しにすることにした。

 この島流しの前に、幕府は、後醍醐天皇に対して、再び位に就く望みはないのだから出家して法皇になりなさいということで、袈裟けさを着るように勧めた。ところが、後醍醐天皇は、それを拒否して、毎朝、囚われの身でありながら、祭服を着て、天照大神を拝まれた。これについて『太平記』は、天に2つの日はないけれども、国に2人の主がいるようで、幕府は大変困った、と書いている。

 つまり、あらゆる権限や役割を奪われて強制的に退位させられても、皇祖の祭りを手放さなければ天皇なのだというのが、かつては庶民に至るまでの常識だった。この常識は『太平記』が盛んに上演された江戸時代まで続いていたと考えられる。

 この皇祖の祭り主としての皇位に就く資格こそ、皇統の男系に属しているということである。

 皇位継承が皇統に属する男系に限定されているのは、祖先を祀る祭り主の地位は父系・男系で継承される、父系でしか継承できない、というのが古代の観念だったからだ。この原則を表している物語が『古事記』と『日本書記』の両方に記録されている。

 『日本書紀』によれば次のようだ。第10代崇神すじん天皇の時代に災害が続いたので、それをしずめるために占いをした。すると、やまと迹迹ととももひめのみこと大物主おおものぬしのかみが乗り移って、自分を祀れば災害が収まると言った。そのお告げに従って崇神天皇御自身が祭祀を執り行ったが、一向に効き目がなかった。そこでもう一度祈ったところ、崇神天皇の夢に大物主神が現れて、おお田田たたに自分を祀らせるように告げた。それに従って全国に触れを出すと大田田根子が見つかり、大物主神の子孫であることが分かった。そこで大田田根子に祀らせると災害は収まり、五穀が豊かに実った。

 つまり、祭祀が神に通じるためには、祭り主は祭神と父系で結ばれていなければならない。たとえ、天皇が祈っても父系でつながっていなければ祭祀は通じない。だからこそ、皇祖の祭り主は皇統に属する男系の男子でなければならない。ここに万世一系の本質的意味があると、私は考えている。


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