共同親権でDV被害者の暮らしは? 不安描いた映画「五月の雨」公開
離婚しても夫婦がともに子どもの親権を持つ「共同親権」制度が、4月に始まった。この新たな制度で、家庭内暴力(DV)や虐待の被害者たちの暮らしはどうなっていくのか――。被害の実情や制度への懸念を描いた映画「五月の雨」が先月、公開された。
映画は、ひとり息子を育てる夫婦を描く。キッチンに立つ妻に、仕事帰りの夫が詰め寄る。「どうして洗面所に髪の毛が残っているのか、説明してもらえる?」
謝る妻を、夫はさらに追い込んでいく。
「謝ってほしいとは言ってなくて、なぜなのか、説明してくれって言ってるんだけど」
妻を殴ったり、蹴ったりするわけではない。だが、夕食の献立や外出時の服装など、日常のささいなことで妻を問い詰める夫の威圧的な態度が、妻の心を削っていく。
妻はついに息子を連れて家を飛び出したが、離婚調停の場では直接の暴力を伴わない「静かな暴力」が見過ごされる。「夫婦の問題と親子の問題は別」と父子の面会交流を実施するよう説得され、「面会できるなら大丈夫」と、共同親権も受け入れざるを得ない状況に追い込まれてしまう――。
映画は、元家庭裁判所調査官の立場から「共同親権」の問題点を訴えてきた和光大学の熊上崇教授の呼びかけで製作。DV被害の当事者が台本づくりの段階から密に関わり、被害の実態や、離婚後も続く加害者からの精神的な「支配」の構造を描いた。
ドラマとドキュメンタリーを交えた手法で、ドキュメンタリーパートではDV被害の当事者がインタビューに応じ、制度への不安を語る。
映画は今年3月に「貧困ジャーナリズム特別賞」を受賞。「DVの本質を映画化した」と評価された。
名古屋市では5月16~29日、名古屋市千種区の「ナゴヤキネマ・ノイ」で上映される(19、26日休館)。16日は、冨田玲央監督や主演の安川まりさんらによる舞台あいさつがある。17日以降も、映画のドキュメンタリーパートに出演した岡村晴美弁護士らによるトークイベントが連日開催される。
9日から横浜市の「横浜シネマリン」、30日から大阪市の「第七藝術劇場」でも上映される。
◆離婚後共同親権制度
これまで離婚後は父親か母親のどちらか一方だけが親権を持つ「単独親権」だったが、改正民法が4月1日に施行され、共同親権か単独親権か選べるようになった。
共同親権では、引っ越しや進学先の決定など「子どもに重大な影響を与える事柄」について、父母が話し合って決める。離婚時に親権をめぐって父母の意見が対立した場合は、家庭裁判所が子どもの利益の観点から、共同親権か単独親権かを決める。
虐待やDVのおそれがあり、父母が共同して親権を行使するのが難しいと認められる場合は、必ず単独親権としなければならないとされる。一方、家裁がDVなどを見抜けるのかについては、懸念の声が上がっている。
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- 太田啓子弁護士視点
離婚後共同親権にすべきではない事案に共同親権にしてしまうとどういう悲劇が起き、どのように DV 被害者が苦しむかが、この映画のドラマパートでリアルに描かれている。 改正民法により導入された離婚後共同親権の内容は、未だに正確な理解が広がって
2026年5月8日 19:35