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モノカキがちょこっとアドバイスします(14)

いやー、やっと春が来ましたね!お外に出ると気持ちがいい!
関東民の僕の家の周りでは桜が見ごろで、車をちょっと走らせるだけでも景色がきれいでいいですね。

先日発売の僕の新刊も、桜咲く春のシーンから始まるので、いい時期に刊行になりました。

皆さまどうぞよろしくお願いします。

ということで、今回は少し前に頂いた作品について、アドバイスなどさせていただこうかなと思います。

今回の作品はこちら!


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『鳥の巣』

今回頂きましたのは、前回に引き続き、質問者さんが初めて書き上げた掌編作品ということだそうですけれども、ワールド全開の作品ですね!
小説を読むだけでなく、書くことにも魅力を感じていただけたのはうれしいなあと思います。ぜひぜひ、今後も書き続けていってほしいと思いますね。

今回は、今後の創作活動のために辛口でアドバイスを!ということですが、いつも通り順を追って、甘口、中辛、辛口という三段階でアドバイスさせていただこうかなと思います。

ではでは行ってみましょうー

■アドバイス~甘口~

さて、よくクセの強いちりちりの髪を「鳥の巣」などと言うことがありますが、今回の主人公は、その鳥の巣を超えて、櫛も通さぬもはや老木のごとき強烈なクセ毛の持ち主。その主人公が「鳥の巣」という名の美容室に行き、クセ毛を解消して軽やかに風に髪をなびかせるまでの顛末、というストーリー。

まず、「とてつもないクセ毛の主人公」という設定が面白く、なんでこの話を発想したのか、この物語を書こうと思ったのか、というところにも興味が湧きますね。お話はやや童話的なアプローチになっていて、日常の中の異世界のような、宮沢賢治の「注文の多い料理店」的な空気感も感じます。あっちは途中からホラーになりますけど。

なんかこう、コンプレックスからの解放、みたいなテーマがあるのか、最後は爽快な主人公の様子が伝わってきて、読後感のいいお話になっていると思いました。

発想力というのは、モノカキにとってとても重要なものですから、今あるものを大事にしてほしいなと思いました。小説は、書けば書くほど型にはまっていくことが多いですし、小説としての構造とか文章表現は読者のためにある程度型にはめることも必要になりますから、物語を生み出す原点になる「発想」というところはすごく大事にしたほうがいいと思うのですね。そこは質問者さんのストロングポイントになりえるので、その感性をぜひ保っていただければと思います。

ただ、その発想を小説に落とし込めるのか、というところは、やはり筆力というものがかかわってきますので、今回、指摘する技術的なポイントなどを踏まえて、筆力を伸ばしていっていただけるといいのかなと思いました。


■アドバイス~中辛~

ここからはちょっと技術的なお話。
今回、初めて書き上げた作品ということですから、細かい部分を置いておいて、以下は小説全般を書くときに考えなければならないこと、という視点でお話しようかなと思います。

(1)要素の活かし方

さて、小説というものは、「プロの小説には意味のない文章は一つもない」、などと言います。つまり、セリフの一つ一つ、描写の一つ一つに何らかの意図があって書かれている、ということですね。さすがに長編になると、この文章削ってもいいんじゃないか、みたいなとこはあるので一つもないってことはないかもしれませんが、それでも、大体の文章には意図があり、伝えたいことがあり、意味があるものになっていることがほとんどです。小説の中に登場するモチーフ、ギミックはストーリーを語る上で重要な機能をそれぞれ持たせてあって、配置されている、語られることに必ず意味があります。

その点、本作においては、2000字弱の中に、けっこう無駄な描写、要素が多かったんじゃないかな、と思いました。無駄な、って言うと言い方あれですが、機能していない要素、ということですね。

例えば、時制を変える必要があっただろうか、というのが一つ。
本作は、三ヵ月前と三ヵ月後という二つの時制が用いられていて、それを冒頭から時制通りに進めていく、という形式で、だいたいその配分が半々になるような構造になっています。
でも、物語の冒頭でいきなり、「鳥の巣」の店の場面から初めて、店主と主人公のやり取りの中で主人公の鳥の巣頭を説明し、回想を挟んで予約までのくだりをさらっと書けばいいんじゃないかな?と思いました。
冒頭と後半で季節を変えなければいけない物語的な理由はないと思いますし、「予約が三か月待ち」というのは「この美容室の店主はただものではない」ということをアピールする意図があったのかなと思いますが、最終的に、この店主が何をしたのかがわからないということもあって、すごい、と持ち上げたことが逆に肩透かしになってしまっているように思います。
冒頭の「三週間前」の部分を回想として短縮すると、同じ内容を1/3とか1/4くらいの長さでさらっと説明できてしまうと思います。その分、主人公が抱える悲しい過去(たぶん、鳥の巣頭のせいでいろいろ苦労したエピソードがあるでしょう)を一つ二つ盛り込めると思いますし、主人公と美容室の店主という二人の登場人物の掛け合いに割く文字数が多くなり、二人の役割がより濃いものになっただろうと思います。
美容室に行くまでの経緯という要素はあっていいと思うんですが、それが全体のボリュームを圧迫すると内容が薄くなってしまうので、前提の説明という機能は、できるかぎり簡潔になるようにしたほうがいいと思います。

また、中盤以降、お店の中にある「ロッキングチェア」が何度も言及されるのですが、このアイテムがあってもなくても物語に大きく影響はなく、ストーリー上も意味のあるギミック(仕掛け)にはなっていないかなと思います。「異様な存在感を放つ」とあるので、ロッキングチェアに何か謎があるのかとか、主人公の鳥の巣頭を解決するツールになるのかと思ったのですが、最後まで読んでも、物語上の必要性が見当たらなかったのですね。

質問者さんの中で、何かの暗喩であったり意味があったりするのかもしれないのですが、残念ながらそれは読者には伝わらず、なんとなく雰囲気を出すための小道具、という程度のものになってしまっていたかなと思います。

後半だけでこの「ロッキングチェア」という単語は7回繰り返され、ロッキングチェアが揺れる、という類似の描写も2回あり、物語に資する機能はないので、字数の使い方としては非常にもったいないと思います。また、本文でも「まさか」と主人公が言っている通り、「美容室にロッキングチェアがあって、客がそこに座る」という状況は一般的にはまずないことですから、ここを謎として、謎解きの機能を持たせておかないと、読者としては、で、このロッキングチェアは結局何だったんだ? という、伏線が回収されていないもやもや感が残って、ストーリーの一番の要素である「鳥の巣」への意識が弱まってしまいます。

また、店名が「鳥の巣」であることも、それを見た主人公が不安になる、という要素でしかなく、その店名である必要性があまりないですし、言及する必要はないんじゃないかなと思いました。ラストで店名が「鳥の巣」である意味が分かって腑に落ちるとか、そういう、物語における「機能」をもっと意識したほうがいいのかなと思います。

ストーリーに関係のない要素は作品を冗長にしてしまうので、できる限り削り落としたほうがよいです。作品が完成したら、一度、要素を自己分析してみて、①ストーリー上、絶対に書かなければいけない(物語を理解してもらうために読者に伝えなければいけない)要素、②謎や伏線、暗喩などの仕掛けになる要素、③必ずしも書かなくてもいい要素、というのを分けてみるといいと思います。③があれば、そこは削るか意味を持たせるか、いずれかの工夫が必要になります。

(2)描写の不足①

今回、物語は主人公の一人称主観として書かれているわけですが、たぶん、三人称一元視点にしてもほとんど文章が変わらないんじゃないかと思いました。一人称視点の一番の魅力というのは、主人公の心の声、内面が地の文で表現できる、ということです。が、今回の作品は、最初から最後まで、大半の文章が行動や状況の説明だけになってしまっているので、小説というよりは、手記とか日記に近いものになっている気がします。

主人公の心の動きを表す心情描写は多少ありますが、主人公の主観で見て世界がどういう風に見えているのかという情景描写がほぼ存在しないために、一人称視点でありながらどこか客観視点のように無感情で、感情の起伏がないように感じます。読者は主人公に感情移入しにくいんじゃないかと思います。

とてつもないクセ毛とともに生きてきた主人公には、クセ毛なりの苦労や悲哀を抱えて生きてきたはずで、その気持ちに読者が共感してはじめて、ラストの解放のシーンにエモさとかバイブスが生まれるわけですね。

特に、今回のように仕掛けのない純文的な作品の場合は、感情を描くことをもっと意識したほうがいいかなと思います。なんか変に大げさにしなくていいんですけど、主人公の気持ちや思いみたいなものがもっと見えてくるといいですし、そういう感情が書けるようになるには、キャラ造形というところも意識する必要があるので、モノカキとしては大事な観点になりますね。

(3)描写の不足②

今回、まるで鳥の巣のような髪の毛、というのが話のメイン軸にあるのですが、冒頭で述べた通り、この発想は独特で面白いと思います。反面、櫛が通らないほどの古木のごときバキバキクセ毛というのは、読者としては現実では見たことがない光景を想像する必要があります。
ですが、主人公がどんなビジュアルをしていて、最終的にどんなビジュアルになったのか、というのが、今作を読んだだけだとどうも想像しにくいというところがあります。

一番の原因は「鳥の巣」と「老木」のイメージが一致しない、重ならない、というところですね。「鳥の巣」と言われると、鳥が小枝を集めて形成したものを想像するのですが、「老木」と言われると、幹が太く縄のようにねじれた大木をイメージします。なので、前者はチリチリのパーマ、後者はものすごくうねるクセ強ヘアーを想像するので、どっちのイメージが近いのかがわからなくなってしまいます。

とくに、ラスト、店主の施術が終わってから結末までのパートは、何が起きているのかがわからず、マジックで鳩を出すが如く鳥が羽ばたいていくというのはどういう状況?と、なかなかラストシーンの映像を想像できないのです。質問者さんの中にあるものが、読み手と共有されていないのだと思います。

なので、読者の人がきちんと状況を想像できるように、説明臭くなりすぎないように説明する、というところで「筆力」が問われる、というわけなのです。すべてを文章で書くと冗長ですし、でも書かないとわからない。間接的なセリフや行間から読者にこの光景を想像させる、というのはかなり難しいことなので、描写力やボキャブラリ、構成力といった書き手としての総合的な力が必要になりますね。

なので、質問者さんのストロングポイントである発想力を活かすために、もっと基礎的な描写力、筆力というものを伸ばす必要があるんじゃないかと思いました。


■アドバイス~辛口~

今回の作品の場合ですと、一番これが問題かな、と思ったのは、「意味が分からない」という点です。なんか元も子もない言い方になってしまうのですが。

質問者さんの中にこのお話のイメージがあって、結末に至るまでにもなにか質問者さんの中には動きやストーリーがあって、結末のシーンにも質問者さんの中のオチがあるんだろう、というのはなんとなくわかるのですが、正直に言うと、オチまで読んでも、この話がどういうお話で、質問者さんが伝えたいこと、オチの意味、というのがどうにも掴めなかったのです。

髪の毛が鳥の巣になっていたのは最後の金色の小鳥が原因で、それが飛び立っていったことによって鳥の巣となっていた主人公の髪の毛が解放されたのかな?ということだと思うのですが、いろいろ想像や解釈はできますけれども、その想像がどれも確信を持てなくてもやもやする、という読後感だったのですね。

鳥の巣から金の卵が生まれる」という友人の言葉にも含みがあるのですが、金の卵というのは最後まで何のことかわからないわけです。友人が美容室のことを知っていた理由もわからない。美容室の店主が何をしたのかもわからず、最後に飛び立っていった金色の小鳥が、実際存在するものなのか、ファンタジーなのか、観念なのか、なんなのかがわからない、という感じで、この物語を楽しむための情報がとにかく足りない、という感じでした。

みなまで書いて、サルでもわかる、みたいな単純さにする必要はないのですが、しっかり読み解けばこの話がどういう話なのかが見えてくるくらいの情報は提示してもいいのかな、と思います。

今回、一番最初の作品ということなので、これはこれで仕方ないというか、質問者さんなりのワールドを活字にしてみる、みたいなことという意味では最初の一歩ですから、これはダメあれはダメみたいなことを言うつもりはもちろんないのですが、質問者さんが小説をたくさん書いていくにあたって、大切にしてほしいな、と思うものがひとつあります。

それが、読者の存在を常に考えることです。

今回の作品は、発想は面白いですし、なんかうまいことやれば不思議な空気感の作品になると思うのですが、そのためには、読者に何かを伝えよう、読者に伝わるように書こう、という意識が書き手に必要だったんじゃないかなと思います。今回、技術的な描写不足というのを指摘しましたが、言葉として情報を提示するという以前に、質問者さんの中で、どれくらいのことを書けば読む人に自分の書きたいものの意図や意味が通じるのか、という感覚がまだできていないのかもしれないな、と思いました。

この、「読者目線」を持たないまま小説を書き続けると、どうしても作品が独りよがりになりがちで、読者を置いていきがちになります。自分では面白いものを書いているつもりなのに、評価が自己評価を越えていかない、ということになって、書くのが苦しくなっていったりするのですね。

なので、常に、客観的な視点をもって自分の作品を読んでみて、この文章で意味が通じるか、この物語のどれくらいの段階でどのくらいの情報が読者に伝わるのか、という技術的な面や、自分が人に物語を通して伝えたいことは何なのか、という精神的な面まで、読者の目線、視点を意識して話を書く、ということを大事にしてもらえると、これからその発想を生かして、面白い小説を書いていけるようになるのではないかなと思いました。



ということでございまして、面白い発想、独特な世界観の一篇をご紹介いたしましたけれども、いかがでしたでしょうか。ここ二作、人生で初めて書いた掌編というのを読ませていただいたのですが、何年か後にまた新しい作品を投稿していただけると、成長の跡なんかもわかって興味深いのではないかなと思います。気が向いたらまたどうぞ。

さて、モノカキTIPSでは質問を随時募集しております。小説に関するご質問、その他答えられる範囲のご質問であればなんでも回答させていただきますので、どしどしお寄せくださいませ。

 「小説読んでみてください!」系のご質問の場合は、以下ご注意くださいませ。

・長編は読めないので、2000字くらいまでの掌編で。
・文章の校閲や校正はしません。
・具体的な修正案やアイデアの要求はご遠慮ください。
・同じ方の連投と思われるものについては取り上げない場合があります。
・【重要】あくまで、僕が自著宣伝目的もあって無料で受け付けているだけなので、他の作家さんにアドバイス依頼をかけるのだけは絶対にご遠慮下さい!

「ちょこっとアドバイス」のルール

ごはんシリーズ第三弾『おいしい季節がやってくる』は、大変ありがたいことに発売即重版もかかり、好評発売中でございます。
ぜひぜひ、前作、前々作ともどもお手に取っていただけると幸いです。













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行成薫(小説家) 小説家。2012年「名も無き世界のエンドロール」で第25回小説すばる新人賞を受賞し、デビュー。仙台出身。ちくちくと小説を書いております。■お仕事のご依頼などこちら→ loudspirits-offer@yahoo.co.jp

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コメント

1
安城つばさ
安城つばさ

はじめまして。これから小説を書く上で、とても参考になるお話でした。どうもありがとうございます☺️

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しがないモノカキです。『名も無き世界のエンドロール』で第25回小説すばるを受賞し、デビュー。自著の裏話、コラム、掌編小説などを随時公開しております。 質問箱→https://peing.net/ja/kaoruyukinari?event=0
モノカキがちょこっとアドバイスします(14)|行成薫(小説家)
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