海外では一発アウト…なぜ日本人はDVの阿部監督をかばうのか、弁護士指摘「暴力容認は覚せい剤容認に匹敵」
■DVを多数担当、逮捕は"ほぼゼロ" 飛田氏も「逮捕要件が整うほどの状況だったことは間違いない」と話す。また、「暴行を受けた長女だけでなく、それを目撃した次女に対する心理的虐待も問題」と指摘する。「こうした暴力を目撃するのは、自分が暴力を受けるのと同程度だと言われる。自分の持ち物やペットに対する暴力でも心理的ダメージは大きいが、姉妹という自分に極めて近い存在となると、かなり重い心理的虐待になる」。その点からも児童相談所への通報は適切だった、と指摘する。 「今回の警察の対応は、子どもの命を守るという意識が明確化されていて、大きな前進。家庭内のことには介入しないという昔の警察とは全く違う姿になった。有名人の場合、世論からバックラッシュがあると困るから逮捕は控える、といったよくあるバイアスもかからなかった。警察の気概を感じる」と飛田氏は話す。 ■アメリカでは虐待児童を徹底保護 日本では、児童虐待を目撃した場合、一般人にも通告する義務があると児童虐待防止法で定められているのに、ほとんど知られていない。「日本は子どもを守る力が弱い。国は被害者を保護する取り組みを進めているが、その中で、子どもの被害者に特化した部分がない」と飛田氏は指摘する。 アメリカでは、児童が虐待を受けた場合、医療・教育関係者などの専門家に罰則つきの通報義務があり、現行犯的な側面が強ければ、容疑者は即座に拘束される「一発拘束」が原則だという。一方、被害を受けた児童に対しては、子どもの権利を保護する「チルドレンズ・アドボカシー・センター」(CAC)で一元的に対応するシステムが整っている。 虐待を受けた子どもが話しやすいよう、インテリアなども特別に配慮された優しい雰囲気の中で、専門の訓練を受けた司法面接者が子どもに話を聞く。警察と児童相談所の所員らは離れた場所から同時にその話を聞くので、何度も同じことを話さなくてすむよう、子どもの負担を軽くする形になっている。 日本にもようやく、「性犯罪・性暴力被害者ワンストップ支援センター」ができたが、成人と児童では対応の仕方が異なるため、そのためのインフラを整えるべきという意識までには至っていない。 日本の若年層の自殺率は世界でも高い方で、特に近年、小中高生の自殺は過去最高水準で推移している。原因が特定された中では家庭の問題が、学校の問題、健康の問題に次いで高いが、有効な対策が取れているとは言えない。子どもを保護する必要性に対する無関心さが、海外に比べて、日本では際立っているのではないだろうか。 ---------- 柴田 優呼(しばた・ゆうこ) アカデミック・ジャーナリスト コーネル大学Ph. D.。90年代前半まで全国紙記者。以後海外に住み、米国、NZ、豪州で大学教員を務め、コロナ前に帰国。日本記者クラブ会員。香港、台湾、シンガポール、フィリピン、英国などにも居住経験あり。『プロデュースされた〈被爆者〉たち』(岩波書店)、『Producing Hiroshima and Nagasaki』(University of Hawaii Press)、『“ヒロシマ・ナガサキ” 被爆神話を解体する』(作品社)など、学術及びジャーナリスティックな分野で、英語と日本語の著作物を出版。 ----------
アカデミック・ジャーナリスト 柴田 優呼