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【農業協同組合研究会】第1報告 令和の米騒動 生産不足が最大要因 事後調整が課題 日本大学教授 西川邦夫氏

日本大学教授 西川邦夫氏

日本大学教授 西川邦夫氏

農業協同組合研究会は5月23日、東京都内でオンライン参加も含めて研究大会「令和の米騒動の現在地と今後の展望」を開いた。第1報告は日本大学の西川邦夫教授が「令和のコメ騒動とコメ政策-コメ政策の表層と深層」と題して行った。

需要縮小と生産基盤の脆弱化

国内の主食用米需給の長期的な推移をみると現在は年間消費量は700万tだが、1960年代はいちばん多くて1200万tぐらいあった。それからどんどん減っているが、700万tは1904年、日露戦争当時のボリュームということになる。

消費量はどの機関もさらに減少していくと予測しており、JA全中は2050年に430万tとしている。この数字は1880年の消費量だ。その3年前には西南戦争があり、これを近代化の始点だと考えると、今から25年後には日本の米市場のボリュームは江戸時代以前に戻るという状況といえる。つまり、近代化の過程で積み上げてきた米の市場がなくなるということだが、これが日本の稲作にとって目前に迫った危機だ。

米騒動の経過

今回の騒動の要因についてはシンプルに考えたほうがいい。経済学のテキストには市場価格は需要と供給の関係で決まると書かれている。需要に対して供給が足りなかったことが要因だと考えるのが自然だ。

今回は、一年間の需要量に対して5~6%不足したという状況だった。過去には8~9%程度の不足で価格は1.5倍から2倍程度に上昇したという研究もある。

そして価格が乱高下しやすいので国が一定程度、需給調整のために市場に介入するというのは万国共通だ。しかし、日本はこの需給調整については収穫前の生産調整に集中しており、収穫後の流通対策が準備されていなかった。そのため食料安全保障上の切り札である政府備蓄米の放出に至った。

米騒動にいたる米の需給状況を振り返ると、コロナ禍とセットで考える必要がある。日本の生産調整は政府が需要見通しと生産見通しを示し、それに対応して各道府県で生産の目安を出し、生産者はそれに合わせて米を作っていくというかたちになっている。しかし、コロナ禍では外食需要が消失したこともあり、政府の需要見通しに対して生産実績が大幅に下回るという事態が発生した。

生産者は需要実績に対して生産をするわけではなく、需要見通しに対して生産をする。実際、2019年、20年は需要実績が少なく供給過剰になり、民間在庫が200万t以上に積み上がって価格が下落した。

これに基本的には減産で対応した。供給実績をみると2019年は726万tだったが、22年には670万tと50万t削減した。その結果、23年6月末の民間在庫は197万tまで減少した。つまり、その時点で概ね需給は均衡し、その後、相対取引価格は上昇に転じた。

ただ、実はその後も減産が続けられた。23年産の生産見通しは前年より6万t減らした699万tとし、実績にいたってはさらに少ない661万tとなった。これはコロナ禍での過剰のイメージが強く現場でかなり深掘り的な対応がなされたことが要因だろう。

一方、23年の需要は見通し680万tに対して一転して増加し705万tとなった。コロナ禍が明けて需要が戻ってきたことやインバウンドの影響もある。そのため23年産では44万tの需給ギャップが発生した。これはスーパーで販売されている米の1.7か月分。24年8月の南海トラフ地震情報が出た端境期に店頭から米が消えたということはこれで十分説明できる。

そして24年も需要が予想以上に増えて需給ギャップは34万tとなり現在に至るということになっている。需給ギャップの推移を見ておくと、23年産、24年産で78万tの不足が発生した。これに対して政府備蓄米が59万t販売された。そして25年産米は増産され需要量見通しに対して84万t程度の増産となった。ほかにも輸入米が30万t主食用として入って来ている。

これを単純に計算すると不足分78万tに対して追加的供給は174万tで差し引くと供給過剰は96万tとなっている。さらに26年産も実質的に増産が見込まれており、今年の秋には市場に米があふれかえるということになると考えている。

米政策の表層と深層

現在国会で改正食糧法が審議されている。これと水田農業政策の見直しはセットで考える必要がある。

改正食糧法の3本柱は①「生産調整」規定の削除、②民間備蓄制度の創設、③流通実態の把握の強化だ。

一方、水田農業政策の見直しの方向では田と畑を分けずに品目別に交付金を支払うというものである。これまでの水田活用交付金は主食用米から他の作物に転換すれば、それに支払いという仕組みだった。しかし、今回の見直しでは転作は主食用米の作付けとは切り離されるということになる。生産調整規定の削除によって、生産調整が緩やかに廃止される可能性がある。一方で民間備蓄制度が創設されることから、米の需給を全体的にマネジメントする方法は事前の生産調整から事後的な流通対策へと比重が移っていくのではないか。

そのうえでセーフティネットのあり方については、主食用米に対する支援については適正価格の確保と直接支払いの「二段構え」が構想されるのではないかと考えている。

生産性の上昇では単収の向上も重要だ。26年度予算で革新的新品種開発のための予算が前年度の3倍の10億円になったことは評価していい。単収向上を目指す品種改良は日本の農業技術レベルを上げるということであり、将来的に開発途上国の食料問題解決に貢献することになり、一国の米政策以上の意味がある。

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