2025年米不足はなぜ起きた? 原因やいつまで続くかを大学教員が解説

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米不足の原因を解説した図解
令和の米騒動? 米不足の原因解説(デザイン:吉澤風香)
愛媛大学大学院農学研究科准教授/椿真一

椿真一
椿真一 ( つばき ・しんいち )
愛媛大学大学院農学研究科准教授
福岡県出身。九州大学大学院生物資源環境科学府 博士課程修了。博士(農学)。主要著作は『農業は農民家族経営が担う-日本の実践とビア・カンペシーナ運動- 』(分担執筆)筑波書房2024年9月、『世界農業市場の変動と転換 』(分担執筆)筑波書房2023年5月、『東北水田農業の新たな展開』(単著)筑波書房 2017年7月など。 椿真一の記事一覧

2024年の夏以降に米の品薄や価格高騰がおき、「令和の米騒動」として世間の注目を集め、その影響は今でも続いています。この記事では、米不足や価格の高騰がなぜ起きたのか、政府はどのような対応をとったのか、いつまで続くのか、愛媛大学農学部農業政策分野の教員がわかりやすく解説します。

1.お米が買えない? 2025年米不足の概要と米価格

2024年の夏以降に米の品薄や価格高騰が起き、「令和の米騒動」として世間の注目を集めました。その影響は今でも続いています。

総務省が公表している「小売物価統計調査」によると、東京都区部の精米小売価格(5kg・包装・消費税込)は、2025年7月にコシヒカリが5036円、コシヒカリ以外の銘柄は平均で4842円となりました。2026年3月時点でも、コシヒカリが5108円、コシヒカリ以外の銘柄が4914円と高止まりしています。

精米小売価格は2024年前半と比べると、2倍以上にはねあがっています。

コシヒカリとコシヒカリ以外の小売価格の推移のグラフ
出典:米の流通状況等について 小売価格(東京都区部)の推移(総務省 小売物価統計)(令和8年3月31日)|農林水産省

「米穀安定供給確保支援機構」が公表している「米の消費動向調査結果」をみると、2026年2月の1人1カ月あたりの精米消費量は4606gで、そのうち家庭内での消費が66.4%(3060g)を占めています。

精米の購入・入手経路では、「スーパーマーケット」が最多で51.6%を占めています。以降、「家族・知人などから無償で入手」13.1%、「インターネットショップ」9.1%、「ドラッグストア」7.8%、「生産者から直接購入」5.5%、「生協」4.3%、「ディスカウントストア」4.2%と続いています(参照:米の消費動向調査結果(令和8年2月分)p.2、3|米穀安定供給確保支援機構)。

米の価格が高騰したことで、多くの家庭で「米が高くて買えない」「購入しても今までと同じ量を食べられない」といった状況が生じました。

では、米の価格高騰や品薄がなぜ起きたのでしょうか。以下ではその要因を解説します。

2.米不足はなぜ起きたのか? 考えられる原因を解説

2024年夏以降の米価高騰と米の品薄は、「単年度需給均衡(その年に収穫した米はその後1年間で消費する)」方式のもとで立てられた、2023年産米の需給計画(見通し)と、実際の需給との乖離(かいり)が発端となっています。

2023年産米の供給量が政府の見通しよりも減る一方で、米の需要が予想を超えて上振れしたことで、2024年6月の民間在庫量(集荷業者や卸業者などの在庫量)が米需給の逼迫(ひっぱく)を示すレベル(180万t以下)にまで低下しました。

この在庫不足を受けて、米の集荷業者や卸業者が在庫確保に奔走しました。その結果、米の集荷競争が激化し、品薄になり、2024年夏以降の価格高騰へとつながったのです。

主食用米の生産は、「単年度需給均衡」という考え方にもとづいて、政府(農林水産省)は予想される需要量をぎりぎりまかなえるような生産量(生産の目安)を生産者・生産者団体に提示し、米の生産量の調整(減反)を生産現場に要請してきました。

また、民間在庫量が大きくなると米価格が下落するため、民間在庫量が多い場合は生産量を需要量よりも少し減らして民間在庫を圧縮させ、米価の維持を図ってきました。そうしなければ米価が下がり、米農家の経営が成り立たなくなるからです(参照:『米・食料品価格高騰と農政転換の課題』p.43)。

こうしたなかで、2023年産米の需給計画(見通し)と、実際の需給が乖離したことが、事の発端となりました。すなわち、供給量が予測を下回る一方で、需要が予測を上回ったのです。

価格形成をもっぱら市場に任せたままで、米余りを少なくするためにタイトな「単年度需給均衡」をおこなった結果、今回のような価格高騰を招くこととなりました。

2023年産米は、2023年7月~2024年6月の需要量を見越して生産されました。政府の見通しでは、2023年7月~2024年6月の需要量は680万tでした。これに対し、政府が生産者に示した2023年産米の生産量の目標(生産の目安)は669万tと、11万t少ないものでした。

生産量が需要量よりも少ないのは、政府が、2023年6月末の民間在庫量は191万~197万tあると予測していたためです(実績は197万tでした)。

この予測にもとづくと、生産量と民間在庫量を合わせた2023年産米の供給量は860万~866万tとなり、需給の差し引きでは180万~186万t余る(民間在庫として残る)計算でした。

しかし、実際の生産量は661万tと、政府の見通しよりも8万t減りました。2023年産米の収穫量は平年並みでしたが、2023年夏の記録的な猛暑による高温の影響で、米粒が白く濁る「白未熟粒」が全国の作付面積の約5割で発生しました。前年(2022年)産米の約2割程度から大きく上昇しています。

これによって、一等米比率が過去最低の60.9%にまで低下しました。精米しても商品にならない割合が増え、それが米供給不足の一因となったのです。前年産は「胴割粒」「生育不良」「虫害」などの発生率はいずれも1割程度だったことから、2023年産は猛暑の影響が大きかったといえます。

一方で、2023年産米の需要量は予測よりも25万t増えて705万tになりました。

需要量が増えた理由は、2021年以降、食料価格全体や小麦製品(パンや麺類)の価格が上昇するなかで、米の小売価格は2020年から下がっており、割安感があったからです(参照:2020年基準 消費者物価指数|総務省)。

また、コロナ禍が収束し、外食産業の需要が回復したことや、インバウンドが増えたことも、米消費を押し上げた一因となりました。

消費者物価指数の推移のグラフ
出典:米の流通状況等について 消費者物価(全国)の推移(総務省 消費者物価指数)(令和8年3月24日)|農林水産省

2024年6月末の民間在庫量は153万tと、米の在庫は残っており、全国民に米が行き渡らないほど不足したわけではありませんでした。民間在庫量は、供給量と需要量の差であり、それぞれの数値は以下のとおりです。

● 供給量:858万t(2023年産米の生産量661万tに、2023年6月末の民間在庫量197万tを加えた量)

● 需要量:705万t

しかし、問題はこの民間在庫量の水準でした。2024年6月末の民間在庫量は、統計を取り始めた1999年以降で過去最少となったのです。6月末の民間在庫量が、新米が出回る10月までの米需要量を下回ると、市場に品薄感が漂い、米価格は上昇する傾向にあります。

具体的には、6月末の民間在庫量が180万tを切ると、米流通に関係する事業者は米需給の逼迫を示すシグナルとみなしてきました(参照:農業・農協問題研究 第86号 2025年3月『令和の米騒動はどう収斂するか』p.2|農業・農協問題研究所)。

2024年6月末の民間在庫量が需給逼迫を示す180万tを大きく下回る153万tとなったことで、米の品薄感につながり、集荷業者や卸業者の米確保の動きが強まりました。米の集荷競争が起こると、必然的に価格はつりあがります。

2024年8月には「南海トラフ地震臨時情報発令」「台風7号」「台風10号」の三つが重なったことで消費者による米の買いだめが発生し、店頭から米が一時的に品薄となりました。その影響で米需給の逼迫感がさらに高まり、集荷競争も激化して、小売価格の上昇に拍車がかかりました。

一方、2024年産米は作況指数101(平年並)で収穫量は679万tと、前年から18万tの増加となりました(作況指数とは、米の収穫量が平年と比べてどの程度かを示す指標のことです)。

2024年産米の需要見通しは674万tであり、2025年6月末の民間在庫量は158万t(生産量679万t+在庫153万t-需要量674万t)になる見込みとなりました(参照:米穀の需給及び価格の安定に関する基本指針(案)p.4、10|農林水産省)。

2025年6月の民間在庫量(予測)は、2024年とほぼ変わらないことから、米の集荷競争が続いたものと考えられます。

2024年産米の相対取引価格(JA全農などの出荷団体が卸売業者に販売する際の価格)は、出来秋の9月に2万2700円(前年同月は1万5291円)を記録しました。その後も価格は上昇し続け、2025年4月には2万7102円(前年同月1万5526円)にまで高まりました。

さらに、需給の逼迫を受けて卸売業者間の直接取引(スポット取引)が増え、スポット取引価格も上昇しました。

こうした相対取引価格やスポット取引価格の上昇に連動して、小売価格も高騰しました。

かつての食糧管理法(1942~1995年)のもとでは、安定して国民に米を供給するために、国が生産・流通・価格を一体的に管理・統制していました。

具体的には、減反によって生産量を調整しつつ、農家から消費者に届くまでのすべての流通ルート(自主流通米ルートと政府米ルート)を国が直接管理していました。

また、米の流通は指定や許可を受けた業者にのみ許されており、集荷・卸・小売業の各段階で、業者は国の指定や許可を受ける必要がありました。

さらに、政府が米を買い入れることで、米の価格を安定化させる機能を果たしており、流通量や価格は国によってコントロールされていたのです。

しかし、食糧管理法が廃止され、食糧法にかわったことで、減反(政府による米の生産量調整)は義務から選択制となり、国による全量管理から民間主導の仕組みに移行しました。流通ルートも多様化し、集荷・卸・小売業者は許可制から登録制、さらに改正食糧法以降は届け出制に変更となり、誰でも米流通に参入できるようになったことで、米流通の全体像が見えにくくなりました。

このような米流通の「不可視化」によって、「誰がどこで米をどれだけ持っているのか把握しづらく、需給調整や不正防止が難しく」なったとされています(参照:SCMの観点から令和のコメ騒動を考える1|NX総合研究所)。

さらに、政府は米の価格を安定化させる政策を放棄し、米の価格形成は市場のメカニズムにゆだねられることになりました。

以上により、食糧管理法のもとでは見られなかった米価の暴騰や大暴落が、たびたび起きるようになりました。

わずかな需給バランスの崩れでも市場価格が急騰するようになったのは、米価格の決定を市場にゆだね、国の役割を需給情報の提供や100万t程度の備蓄米確保にとどめ、米の需給調整を生産者や民間に丸投げしたからです。

つまり、国が米の需給と価格の安定に対する責任を放棄したことが、米不足の根本の原因だと考えられます。

3.これまでの政府の対応と備蓄米の放出

2024年夏以降の米価高騰を受けて、政府は備蓄米の放出という異例の対応に踏み切りました。ここでは、政府備蓄米の仕組みと、今回なぜ大量放出に至ったのか、その経緯と背景を詳しく解説します。

政府備蓄米とは、10年に1度の深刻な不作(作況指数92)や、通常程度の不作(作況指数94)が2年連続で発生した場合でも、国産米で対処できるように、政府が民間に委託した倉庫(全国に約300カ所)で保管している主食用米のことです。

倉庫にある米のほとんどは玄米で保管されていますが、大規模災害への備えとして一部(800t程度)は精米でストックされています。

保管のルールも決まっており、倉庫の内部は年間を通して温度は15度以下、湿度は60~65%に保たれています。

この政府備蓄米が法的に位置付けられたのは1995年です。背景には、1993年の大冷害による記録的な不作で米不足に陥った経験があり、政府は凶作時の供給不足に対応するため、一定量の米を保管するようになりました。

当初は、2年間保管した後に主食用として販売する「回転備蓄」方式を採用していました。

しかし、2011年度からは「棚上げ備蓄」方式に転換しています。「棚上げ備蓄」方式とは、主食用米が不足した際には放出するものの、平常時は5年間保管した後に、(主食用米価格への影響を避けるために)飼料用などの非主食用として販売する方式のことです。

政府備蓄米は、2025年3月末時点で合計約100万t(5年分)程度でした。100万tは、国内の米の年間消費量の約2カ月分に相当する量です。

政府備蓄米の在庫状況
参照:米の流通状況等について 政府備蓄米の在庫状況について(令和7年11月12日)

政府は毎年20万t程度を買い入れ、5年が経過した米(20万t)は飼料用などとして販売するほか、精米ストック分は子ども食堂やフードバンクなどに無償で提供しています。

政府備蓄米の運用
参照:米をめぐる状況について p.63|農林水産省

政府備蓄米を主食用として放出できるのは、大凶作による米不足や災害による緊急事態が起きたときのように、卸売業者や小売業者などの民間在庫量が著しく減少し、需要に追いつかない恐れが高まったときに限られると法律で決められていました。

棚上げ備蓄方式に移行して以降、主食用として備蓄米が実際に活用されたのは、大きな地震後の2回です。

1回目は2011年の東日本大震災が起きた際です。原発事故の影響で民間在庫の一部が売れなくなり、被害を受けた流通業者向けに4万t(2012年)が放出されました。

2回目は2016年の熊本地震のときです。自治体からの供給要請を受け、南阿蘇村と熊本市に合計90tが放出されました(参照:備蓄米Q&A|公明党)。

一方、今回の備蓄米の放出では、2025年3月に21万t、4月に10万tが放出されました(参照:政府備蓄米の買戻し条件付売渡しの入札結果(第3回)の概要について|農林水産省)。

さらに5月以降は50万tを放出する方針も示され、結果的には合計約59万tが放出されました(出典:米の需給に関する参考資料(令和7年12月)p.17|農林水産省)。ここまでの大量放出は、前例のない規模です。

政府は、需要を満たすだけの供給量は確保されており、2024年秋に新米が本格的に出回れば、米の品薄は順次回復し、価格も一定の水準に落ち着くとの見解を示していました。さらに備蓄米の放出については、民間流通が基本の米の需給や価格に影響を与えるおそれがあるため、慎重に考えるべきだ、との考えを示していました(参照:坂本農林水産大臣記者会見概要|農林水産省)。

米の供給量は足りており、また、市場で価格が決まっているものに政府が関与すべきではないとして、政府は当初、備蓄米の放出に否定的だったのです。

しかし、新米が出回ってからも価格の高騰は収まりませんでした。価格高騰が長引く事態を重く見た政府は、2025年1月31日に政府備蓄米の運用について見直しをおこない、米の流通が滞っていると政府が判断した場合は、一時的に政府備蓄米を市場に放出できるようにルールを変更しました。

そして同年2月、政府は21万tの備蓄米を市場に放出する方針を発表したのです。米の流通の円滑化を目的に政府が備蓄米を放出するのは、これが初めてでした。

ではなぜ、当初の方針を転換したのでしょうか。

2024年度産米は、生産量が前年に比べて18万t増加しましたが、JAなどの集荷業者による集荷量は21万t減少しました。これが「消えた21万t」として世間の注目を集めました。

「本来であれば、市場にはもっと多くの米が出回っているはずなのに、出回っていないのは誰かが意図的に流通させていないからではないか」と考えた農林水産省は、米流通に「目詰まり」があるとして、物流対策として集荷業者が集められなかった量と同じ21万tの備蓄米を市場に放出することにしたのです(参照:備蓄米なぜ放出?|NHK ONE)。

当初、備蓄米の放出は競争入札(最も高い価格を提示した業者が落札)でおこなわれ、2025年3月に21万t、4月に10万tが放出されました(参照:政府備蓄米の買戻し条件付売渡しの入札結果(第3回)の概要について|農林水産省

しかし、備蓄米を放出してから小売店や外食業者に届くまでには時間がかかり、また入札方式のために価格が高止まりしたため、小売価格の低下にまでつながりませんでした。

そこで、小泉農水相(当時)が就任した2025年5月以降は、随意契約方式(価格などの条件をふまえて発注者が契約先を任意に決められる仕組み)に切り替えられ、5~7月にかけて毎月10万tずつ放出する方針が示されました。さらに、6月10日には20万tの追加放出を発表し、最大81万tの放出が予定されました。実際の販売分は予定より少なく、政府備蓄米の在庫は32万tになる見込み(2025年11月時点)です。

備蓄米放出の目的は、当初の米の流通の円滑化から、後には米の流通量を増やして高騰が続く米価格の抑止につなげる、消費者対策・物価高騰対策に移ったと言えます。

4.米不足はいつまで続くのか? 今後の対応と筆者の考え

実際に米の需給バランスが回復し、価格が安定するまでには、どの程度の時間がかかるのでしょうか。ここでは、今後の見通しと対応について解説します。

農水省によると、2024年産米の作況指数は全国的には「平年並み」の101で、収穫量は前年比2.7%増の679万tとなりました。しかし、2025年6月末の民間在庫水準は155万tで、前年6月末の153万tから微増にとどまり、政府備蓄米の放出にもかかわらず、需給逼迫の状況は続いていました。

2025年産米の作況指数は「102」で、収穫量は前年比9.9%増の747万tとなりました(出典:作物統計調査 令和7年産⽔陸稲の収穫量|農林水産省)。

2026年3月時点の見通しによると、2025年産米の需要量は691~704万t、2026年6月末の民間在庫量は221~234万tと見込まれており(出典:米の需給見通しについて(令和8年3月)p.3|農林水産省)、米の需給は緩和していくと予想されます。

一般に、民間在庫が200万tを超えると米価は下落する傾向にあるため、今後、米価は下がっていく可能性が高いと考えられます。

ただし生産者にとっては、米価が下がるとしても「令和の米騒動」以前の水準にまで戻ることは受け入れがたいでしょう。

詳細は後述しますが、「令和の米騒動」以前の米価は、米農家の再生産が不可能な水準にまで下がっていたためです。米価の低迷から「米は作っても赤字」でした。

2025年3月には「令和の百姓一揆」が起こり、農家は国に対して「所得保障制度の導入」を強く要望しました(参照:「令和の百姓一揆」 農家が所得補償求め、都心をトラクターでデモ|朝日新聞(デジタル版))。

また、消費者に向けても「安い米の裏にある農家の犠牲を知ってほしい」と強く訴えていたことは、理解しておく必要があるでしょう。

需要量と供給量で米価は決まりますが、現行の「単年度需給均衡」方式では、余裕のない(米余りが少なくなるような)需給計画が立てられており、今後また需給予測と実態が大きく乖離することもあるでしょう。

価格形成を市場に任せたままで、現在のようなタイトな「単年度需給均衡」方式を続ければ、米需給の逼迫や価格高騰が頻発する恐れがあります。その理由としては、次の3点が挙げられます。

1. 長引く低米価によって米農家の採算割れが続き、生産基盤が弱体化している

2. 気候変動によって収穫量が不安定になることが予想される

3. 米の消費量は減少傾向にあるものの、需要が逆転する事態を想定していない

今後は、「単年度需給均衡」から「ゆとりある需給均衡」へと転換し、需要量に対して余裕をもった生産量を確保できる体制に変えていくべきです(参照:【緊急寄稿】「スーパーから米がない」を教訓に 「減田」やめ備蓄柔軟に 横浜国大名誉教授・田代洋一氏|農業協同組合新聞)。

1人あたりの消費量が年々減少していくことを前提に需要見通しが立てられ、供給量が計画されています。しかし、米の需要見通しは次の点で不十分であるため、余裕をもった生産量と在庫量を確保すべきです。

1.計算方法の限界

「1人・1年あたりの消費量×総人口」で需要量を算出しており、インバウンド消費は考慮されていません(参照:米穀の需給及び価格の安定に関する基本指針 p.3|農林水産省)。

2.需要増加の可能性

国際情勢などで輸入穀物価格が上昇すれば、パンや麺類から米へのシフトが進み、米需要が高まる可能性があります。

また、現在は米の価格高騰にばかり目が向きがちですが、コロナ禍で見られた米需要の激減や、今回の米価高騰を受けて生産量が急増するようなことが起きれば、需給が緩和し(米が過剰になり)米価は暴落します。

米が過剰になった際に価格が暴落しないような対策も必要です。そのためには、米の需給や価格形成に関する国の関与を強めることが求められます。

具体的には、政府備蓄米の弾力的運用が一つの解決策になります。米過剰の程度に応じて、適切な量を市場から隔離するための政府買い入れをおこなう仕組みが必要でしょう。

現在の政府備蓄米は不足した際の対応に限定されており、政府備蓄米の量は近年、年間91万tから変化がありませんでした。

米過剰にも対応できるように政府備蓄米の運用ルールを見直し、米価下落を回避するための在庫の積み増しも可能とする弾力的運用に変更すべきです。また、そのための予算確保も求められます。

5.米不足に対して私たちにできる貢献

米不足や価格高騰は、一人ひとりの生活に直結する重要な問題です。ここでは、政府への働きかけと日常生活での実践という二つの観点から、私たちにできる具体的な貢献について解説します。

米を日本でつくり続けるためには、消費者が適正な価格で買い支える必要があります。そのためにも、私たちには政府に米価と米需給の安定のための施策を要求していくことが求められます。

米農家が農業を継続(再生産)できる米価水準でなければ、米の生産は続けられず、後継者も育たなくなるでしょう。

さらに、国内需要を国内生産でまかなう「米の社会的需要」を満たすためには、最劣等地の稲作コストをカバーできるだけの米価が必要です。

では、その米価水準とはどれくらいなのでしょうか。

農林水産省のデータを参考に筆者が試算した結果、精米5kgあたりに最低限必要な小売価格は、おおよそ3000円となります。これは、米農家が再生産可能な水準の手取り(玄米60kgあたり2万917円)を基準に、集荷・卸・小売りのコストや利潤を加味して試算した結果です。

農林水産省によると、玄米60kgあたりの全算入生産費(2023年産)は以下のとおりです。

● 全国平均:1万5948円

● 最も低い地域(北海道):1万2673円

● 最も高い地域(中国地方):2万0917円

最も高い地域の2万917円を基準に小売価格を試算してみましょう。米の小売価格には、生産者の出荷価格に集荷業者や卸業者・小売業者の経費や利潤が含まれています。玄米1kgあたりにおけるそれぞれの流通段階コストは次のとおりです。

● 集荷(地域):28円

● 集荷(都道府県):18.8円

● 卸売り:31.6円

● 小売り:50.2円

これに、卸売りの利益率を仮に2.6%、小売りの利益率3.4%(2022年)として上乗せします(参照:利益率の種類と計算方法、業種別の目安と高めるためのポイントを解説|キヤノンITソリューションズ)。

すると、玄米60kgあたりの小売価格は3万349円となります。玄米を精米すると歩留まりは約90%(54kg)になるため、精米1kgあたり562円、5kgで2810円になります。

これに2022年比で7.7%上昇した企業物価指数(2025年6月・日銀)を加味すると、2810円 × 1.077 ≒ 3026円、すなわち、精米5kgで約3000円が必要な最低価格となります。

この価格水準が最低限保証されないと、米の需要を国内生産で満たすことは難しくなります。

世間では「米が足りない」と叫ばれていますが、一方で米や米飯はいたるところで廃棄されています。飲食店やホテル、旅館では食べ残しの米飯が焼却処分され、コンビニでは大量のおにぎりが廃棄されています。スーパーでも、精米から1カ月強の米は商品棚から撤去され、一部は処分されています。

例えば、ある廃棄物処理業では1日8t、年間2920tもの米飯が運び込まれているといいます。

こうした食品ロスは、事業者だけでなく家庭でも発生しており、多くの米がごみとして捨てられています。

近年、地震や台風、局地的豪雨など大規模な災害が頻発し、地域の食料供給がしばらく途絶えるケースも多く発生しています。そのため、いざというときに備えて家庭内で米を多めに確保・備蓄している人も増えています。

しかし、保存方法を間違えると、米の廃棄につながります。

米の袋には、店頭陳列時に袋がパンクしないよう小さい穴が開いており、米はそこから呼吸しています。そのため、乾燥・湿気・臭い移りなどの影響を受け、徐々に味が劣化していきます。まずは密閉性に優れている保存袋に移し替えることが必要です。

また、高温・多湿な場所での保存は米の劣化につながり、食味や食感を悪化させます。保存温度が20度を越えると、虫(コクゾウムシ、ノシメマダラメイガ)やカビが発生しやすくなります。常温でも徐々に劣化するため、冷暗所での保存が望ましく、特に冷蔵庫の野菜室が最適とされています(参照:お米はどのくらい保存できるのか教えてください。|農林水産省)。

適切な保存を心がけ、米を無駄なくおいしく消費することが大切です。事業者側だけでなく家庭でも、米を含めた食品ロスをできるだけ減らしていくことが求められます。

6.米不足に関してよくある疑問

2023年産米と2024年産米が連続して需給逼迫となったことが、価格高騰の主因です。

民間在庫は一定量確保されており、全国民に行き渡らないほど不足していたわけではありませんでしたが、市場経済では供給量がわずかに減るだけでも価格は急騰しやすく、毎日食べる米ではその傾向が特に強く表れます。

令和の米騒動は、一定の民間在庫量が確保され「米はあるけど高くて買えない」状況であったのに対し、平成の米騒動は、社会的需要を満たすだけの米が絶対的に不足した(米がない)状況でした。

1993年に起きた「平成の米騒動」は、記録的な冷夏と日照不足によって、作況指数が74、米生産量は前年比74.1%という大凶作になり、当時の米需要量(1000万t)に対し、220万tも不足しました。

当時、政府が保有する米の在庫は1993年10月時点で23万tしかなく、日本全体で2.5カ月分しかなかったことになります。そのため政府は外国産米260万tを緊急輸入した経緯があります。

一方、今回の「令和の米騒動」は、社会的需要を満たせないほどではないものの、市場に出回る量は普段よりも少なく、それが米価格の高騰を招きました。

結果として、「米はあるけど高くて買えない」ことが社会問題ととらえられたのです。

完全に減反(政府による米の生産量調整)のせいとは言えませんが、現行の需給均衡の仕組みには改善が必要です。

「令和の米騒動」は減反のせいで起きたのだから、すぐに廃止すべきだとする意見があります。確かに、現在の「単年度需給均衡」は需給の逼迫や価格の高騰が起こりやすいため、需要量に対して余裕をもった生産量を確保する「ゆとりある需給均衡」に転換することが重要です。

しかし、そのために減反を廃止する(=好きなだけ米をつくる)というのは行き過ぎであり、筆者は生産調整の継続は必要だと考えています。

「もし米が余ったら輸出すればいい」と思うかもしれませんが、日本の米生産コストは米国の約3~4倍と高いため、価格競争に勝つのは簡単ではなく、輸出で過剰分を処理するのは困難です。

また、減反を廃止し自由に生産すれば、供給過剰で価格が暴落し、小規模農家の淘汰(とうた)が進みます。全国で販売を目的に水稲を作付けた面積の約半分は、経営規模が5ha未満の農家によるものです。これらの農家が廃業してしまえば、今度は供給不足・価格高騰が再発しかねません。

米の安定供給と価格維持には、減反や政府備蓄の弾力運用、農家への所得補償など、国による需給調整が不可欠です。

7.米の供給や価格が落ち着いた先に考えるべきこと

食料は人間の生命を支えるために必要不可欠な財であり、毎日安定的に供給される必要があります。また、食料の生産は天候に左右されやすく、市場経済のもとでは供給量(生産量)が減ると価格は高騰しやすいという特性をもっています。主食の米ならなおさらです。

しかし、価格が高いからといって、食べることをやめるわけにはいきません。食料が買えなければ飢えにつながります。

さらに、食料は必要以上に消費できない財という特徴があります。1人の人間が食べられる量はほぼ決まっています。価格が下がっても消費量は大きく増えないため、供給過剰になると価格が暴落します。この暴落を放置すれば、生産者は農業を続けられなくなり、生産者が減少し、慢性的な供給不足に陥ります。

つまり、市場経済のもとにおいて、食料は政策的に需給バランスを保ち続ける必要がある財なのです。

日本は食料の多くを輸入に頼っているなかで、米に関してはほぼ100%の自給率を維持しており、食料安全保障の観点で欠かせない作物です。

今回の米不足や価格高騰は、米が国民にとっていかに重要な食料であるかをあらためて示しました。

今後も、米の生産・流通には国が確実に役割を果たすことが求められます。また、私たちはそのことを国に要求していくことが重要です。

(編集協力 スタジオユリグラフ・高橋純)

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