第5話 呪胎戴天
呪胎戴天編始まりました。
先に投稿した話は少し納得できなかった為、再投稿しました…!
やっぱ戦闘シーンって書くの難しいですね。
また追記したりするかもしれませんが暖かい目で読んでくれると嬉しいです🙇🏻♀️
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7月になれば梅雨が終わると思ったのにジメジメした空気感と容赦なく振り続ける雨が気分が下がるのを加速させる。低気圧で不調になる人間としては雨は苦手だ。
今回の任務地であるボクら一年生4人と今回の任務担当の補助監督である伊地知さんは集まっていた。
「我々の“窓”が受胎を確認したのが3時間程前。避難誘導9割の時点で現場の判断により施設を閉鎖。
「受刑在院者第二宿舎」。5名の在院者が現在もそこに呪霊と共に取り残されており、受胎が変態を遂げるタイプの場合、特級に相当する呪霊だと思います」
「「「特級…!」」」
ボクと恵と釘崎が伊地知の言葉に反応するが、虎杖は分かってないのかキョトンとした顔になる。
「なぁなぁ俺特級とかイマイチよく分かってないんだけど」
「はぁ……。」
虎杖の場違いなセリフに釘崎はため息を吐く。すると伊地知さんと恵がバカでも分かるような説明を始めた。
「通常兵器が呪霊に有効だと仮定した場合……
4級:木製バットで余裕
3級:拳銃があればまぁ安心
2級(準2級):散弾銃でギリ
1級(準1級):戦車でも心細い
特級:クラスター弾の絨毯爆撃でトントン
って感じでしょうか。」
「やっべぇじゃん……」
「本来呪霊と同等級の術師が任務に当たるんだ今日の場合だと五条先生とかな」
「で、その五条先生は?」
「出張中。そもそも高専でプラプラしてていい人材じゃないんだよ」
虎杖の言葉に答えるように恵が軽く説明する。
五条先生は世界に数人しか居ない特級術師の1人。高専内で遊び回ってる自由人のように見えるけど実際のとことてつもなく多忙らしい。
「この業界は人手不足が常。手に余る任務を請け負うことは多々ありますただ今回は緊急事態で異常事態です」
伊地知さんはそう言いながらボクら4人を見つめる
「『絶対に戦わないこと』。特級と会敵した時の選択肢は「逃げる」か「死ぬ」かです。自分の恐怖には常に従ってください。君たちの任務はあくまで生存者の確認と救出である事を忘れずに」
そう伊地知さんが言い終わるや否や、「あの!」と叫ぶ女性の声が聞こえてくる。
「あの!……正は!息子の正は大丈夫なんでしょうか」
1人の母親が警察に止められながら規制テープ前で叫んでいる。恐らくこの少年院に居る人の母親だろうか。目に涙を浮かべて必死に叫ぶ様子はこちらも心にくる。
苦しそうな顔をした虎杖の前に伊地知さんが立つと施設内に毒物が撒かれたと仮の情報を説明する。
「…伏黒、五条、釘崎。助けるぞ」
「……。」
「そうだね。」
「当然」
虎杖の静かだが力強い言葉にボクは頷く。
初めての1年生4人の任務。呪霊の等級がバカ高い事を除けばそこまで問題は無いはずだ。
「帳を下ろします。お気をつけて」
「闇より出でて闇より黒く、その穢れを禊ぎ祓え」
平坦な伊地知さんの声が背後からかかり、続いて帳を下ろすためのお決まりの呪文により、刑務所周辺に"帳"と呼ばれる結界が張られた。
いつ聞いてもこの呪文、普通に怖い。
伊地知さんの呪文により、じわじわと空が黒く塗られるように上から下へと染まっていく。
そして帳が完全に下りたことで周りは真夜中になったような錯覚を覚える。
初めて帳を見た虎杖は興奮気味に周囲を見渡す。
「夜になってく!」
「帳。今回は住宅地が多いからな。外から俺たちを隠す結界だ」
「無知め。」
「多分また今度授業の一環として教わると思うよ。」
楽しそうに周りを見ている虎杖を見て、みんなの雰囲気もどこか柔らかい気がする。
「!五条のそれ刀?かっこいい!」
「?……あぁ、そうだよ。これも虎杖が前使った屠坐魔と同じ呪具の1つ。神之怒っていうよ。」
虎杖から指摘され、ボクは腰に差してある黒地に金色の模様が描かれた鞘に入った刀の柄をそっと触る。ボクが足を動かす度にゆらゆらと刀の柄頭に着いた手貫緒が揺れる。
「かっこいい……なんか強そう!」
「ははそうかな。」
「無闇に触んなよ。莉音の持ってるその刀、売れば億単位は着くぞ」
「「お、億ぅ!?」」
「…特級呪具だからね。特級呪具は呪具の等級の中で1番上の等級。でもそんな身構える程でもないよ」
恵の脅しのような言葉に虎杖と釘崎は驚いた声を上げてボクの腰に差した刀を見る。
まぁ急にそんなこと言われたらビビるよね。
「あんたそんなのどっから持ってきたのよ。実家?」
「いや違う。これは……大事な人から貰った大切な呪具だよ」
釘崎の疑問に刀を見ながら答える。嘘は言ってない。この呪具はボクにとって本当に大切な物だから。
少年院の扉の前に到着したところで、ドアを開ける前に恵が玉犬・白を呼ぶ。
「“玉犬”。呪いが近づいたら、コイツが教えてくれる」
「おーヨスヨス。頼りにしてっからな」
「莉音。」
「分かってる。ちゃんと視てるよ」
恵の言葉の意味を汲み取って頷く。恐らくボクの目を使って調べて欲しいということだろう。
「行くぞ。」
恵の合図と共にボクら4人は少年院の扉をギィィィ、と鈍い音を立てながら開け、中に入る。すると次の瞬間────
「「「「!!!」」」」
全員が軽く息を飲んだ。少年院の中は現実では有り得ない空間となっており、まず天井というものが存在せず、太さの違う鉄パイプが有象無象に生えており、その生え方も異常だ。
正直横も縦も分からなくなりそうな空間で普通にキモイ。
「?どうなってんだ!?二階建ての寮の中だよなココ」
「おおお落ち着け!メゾネットよ!」
「……違ぇよ。(呪力による生得領域の展開!こんな大きなものは初めて見た…!)」
「……ま、特級ならこれくらいやってくるか。今は閉じ込めてるだけっぽいね」
恵とボクは任務に慣れてるので生得領域だと直ぐに理解する。特級過呪怨霊とまで記されてるからこれくらいやってくるよね。でも完成系の生得領域ならボクらが足を踏み入れた瞬間死ぬ可能性もあったのでそう考えればまだまだ未完成なレベルなのは不幸中の幸いか。
「扉は!?」
恵の声に反応して全員が元来た道を振り返る。
しかしそこの扉はもう鉄パイプに埋め尽くされて無くなっていた。
「ドアが無くなってる!?」
「なんで!?今ここから入ってきたわよね!?」
「踊らないで…落ち着いて大丈夫だよ(多分)。」
どうしよう。あそれ、どうしよう。と言いながら盆踊りのようなものを踊り出した虎杖と釘崎を軽く宥めていると恵が「いけるか?」と玉犬・白に聞いていた。
「白行けるって?」
「あぁ。覚えているらしい」
ボクの問いかけに恵は頷くと、まだ盆踊りをしている虎杖と釘崎の方を見る。
「大丈夫だ。コイツが出入口の匂いを覚えている。」
「「!グッボーイ!」」
「わしゃわしゃわしゃわしゃ」
「ジャーキーよ!ありったけのジャーキーを持ってきて!」
「緊張感!」
出入口が分かった途端、2人の瞳は輝き一斉に玉犬・白をわしゃわしゃと撫で回し、誇らしげに叫ぶ。それを見た恵は呆れたように言い返した。…まず呪霊ってジャーキー食べれるのか?
「やっぱ頼りになるな伏黒は。オマエのおかげで人が助かるし、俺も助けられる」
「……進もう」
虎杖の純粋な笑みと言葉にふい、と顔を背けて歩き始めた恵が少し気になるが、まあ大丈夫だろう。照れ隠しかもしれないし。
────
少し歩くと鉄パイプだらけの空間からコンクリートの壁の部屋?と言ってもいいのか分からないが部屋に辿りつく。
そしてそこには恐らく人間3人分の遺体だろうか。ほとんど原型をとどめておらず、誰が誰だか判別もできない。
「惨い……」
「3人…でいいんだよな」
「多分…。」
「……これ、」
虎杖は唯一顔が分かる下半身がない遺体の作業着に縫われた名前部分を見る。
そこには岡崎正。と書かれてあった。
「この遺体持って帰る。」
「え」
虎杖の言葉に釘崎は声を漏らす
「あの人の子供だ。顔はそんなにやられてない」
「でもっ」
「遺体もなしで「死にました」じゃ納得できねぇだろ」
「虎杖でもそれは……」
確かに虎杖の気持ちも理解はできる。しかしそれは今回の任務内容とは逸れている。ボクが何かを喋る前に恵が軽く制し、虎杖の服をグイッと引っ張って虎杖と遺体を離させる。
「あと2人の生死を確認しなきゃならん。その死体は置いてけ」
「振り返れば来た道がなくなっている。後で戻る余裕は無いだろ」
「「後にしろ」じゃねぇ「置いてけ」っつってんだ。ただでさえ助ける気のない人間を、死体になってまで救う気は俺には無い」
恵の言葉に怒りを覚えた虎杖も恵の制服の胸ぐらを掴み、今にも殴り合いが起きそうな雰囲気に包まれる。
事前の任務情報によると、先程虎杖が助けようとした受刑者は2度の無免許運転で女児を撥ねたらしい。
恵的には2回も過ちを犯してる人間を救う気はない、ということだ。
「お前は大勢の人間を助け、正しい死に導くことに拘ってるな。だが自分が助けた人間が将来人を殺したらどうする」
「じゃあなんで俺は助けたんだよ!!」
「いい加減にしろ!!」
「釘崎、!」
「アンタ達バッカじゃないの!?少しは時と場所をわきま──」
どんどんヒートアップしていく男子二人に対して釘崎が制裁をしようと声を上げた瞬間、何か黒いものが地面に現れ、釘崎はカクンッと体制を崩すとそのまま飲み込まれた。
「釘崎!?」
「馬鹿な!玉犬は……」
恵は玉犬を探すが、さっきまで恵達の傍で大人しく待機していた白の狼は壁に埋め込まれで圧死させられている。
「なんで、?」
なんで気づかなかった?そんな一瞬で行動って……まさか今回狙ってる呪霊とは別に寄ってきた呪霊がいるってことか?
壁にめり込まれた玉犬の確認の為に向かおうと向かう。
「莉音!後ろ!」
「え?────」
切羽詰まった恵の声に反応して振り返ると、ボク目掛けて呪力の塊のようなものがものすごいスピードで飛んできた。
呪力を張ってクッションのようにしようとしても反応が遅れてしまったせいで、呪力の塊のようなものが身体にモロに当たり、そのまま壁まで吹っ飛ばされる。
「っぐぅ…!?」
「「五条!!/莉音!」」
「大丈夫、問題無いよ」
パラパラと破片を落としながら抉れた壁から起き上がると、直ぐに駆け寄ってきた恵の肩を軽く叩いて大丈夫だという意思を伝える。
正直身体中が壁に打ち付けられたのでとても痛いが、今弱みを見せたら2人に迷惑がかかる。我慢するのが得策だろう。
「平気か?どこか折れてたり…」
「してないよ。ボクのこと舐めすぎ」
恵はボクが怪我すると直ぐに過保護ばりに心配してくる。別にそこまで骨は脆くないし、過保護をそろそろ辞めて欲しいとまで思う。
「どーする恵…」
「…虎杖、莉音。逃げるぞ、釘崎を探すのはそれからだ!」
伏黒がそう言った瞬間、虎杖と伏黒の2人のすぐ横で例の特級呪霊が現れた。
(こんな近くに現れたのに、全然気配がしなかっ
た…!)
(動け…動け、動け、動け、動け、動け!!)
圧倒的な力の差に、虎杖も伏黒も指先一本動かせずにいた。
それでも何とか反撃しようと虎杖が腰に差していた屠坐魔を抜いて特級呪霊に向かって振りかざしたものの、その左手は無残にも吹っ飛ばされ、地に落ちた。
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一方、先に1人で影に飲み込まれた釘崎は何も無いし先も見えない真っ暗な空間に立っていた。
「ちょっと…!どこよここ!」
周りを見渡しても辺りは真っ暗。
その時、嫌な気配と共に彼女の目の前には無数の呪霊が浮いていた。
「真っ暗で何も見えな…────(!呪いの気配!!…って、何この数!)」
釘崎もまた危険な状況に陥っていた。