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『Time of Ring』(第十稿)Part.10

第十幕:決戦

NOA2がたどり着いた
50万年後の地表もまた、
異様な空気に包まれていた。

以前来た時に見た白銀の無機質な都市が、
次の瞬間には鬱蒼とした緑に覆われた廃墟へと
まばたきするように切り替わる。

二つの未来が、
陣取り合戦のように
互いの存在を上書きし合っている。

だが、緑の廃墟が現れる時間は
秒を追うごとに短くなり、
冷たい金属の都市が
確実に根を下ろそうとしていた。

『クロノスの中枢への侵入は不可能だ。
我々が奪い取った三機のガードロボットに、
君たちの意識を移す。』

グレイの代表体からの
微弱な通信を受け取った後、
大地たちの意識は遠ざかり、
冷たい鋼鉄の巨体に移されていった。

クロノスの塔の最深部には
多数のガードロボットが陣取り、
大地たちを取り囲んでいた。

大地は、機体を踏み込ませて
右腕を振りかぶろうとしたが、
敵はすでに大地が踏み込もうとしている先へと移動し、
大地の操るガードロボットの右腕の関節部に
刃を突き立てていた。

「くそっ、動きが早すぎる!」

航の機体が身をよじって援護射撃を放つが、
敵は弾道すら見切ったように最小限の動きで回避し、
航の機体の脚部を鋭く削り取った。

「速さとかじゃないわ!」

水原が壁を背にして叫んだ。

「関節のきしみや、筋肉の電気信号の初動、
そのすべてからこちらの最も合理的な次の動きを
完璧に見通しているのよ!
未来を確定させてから動いているんだわ!」

反射神経だとか、速度の問題ではない。

「……先が読めるなら、
読めないことをするまでだ。」

大地は思考を切り替えた。

機体の背部が開き、
蛇のように複雑な関節を持つ
四本の副腕が展開された。

そしてその先端には、
高速回転する円盤状の刃が装填されていた。

大地は敵に向かって突進せず、
自らの姿勢を制御する装置を意図的に破壊し、
瓦礫の山へと不様に身を投げ出した。

「水原、航!
敵を無視しろ!
奴の考える余裕を削れ!」

大地は巨大な柱を蹴り上げ、
重力を無視したように
壁面を猛スピードで駆け上がり始めた。

そして四本の腕を無軌道にくねらせ、
敵ではなく、周囲の壁や床の瓦礫に向けて
大量の円盤を撃ち放った。

金属が激しく弾ける音が響き渡る。

放たれた無数の円盤は、
不規則な形状の瓦礫に当たり、
一切の規則性を持たない跳弾となって
空間を飛び交い始めた。

水原と航もそれに合わせ、
塔の構造物を手当たり次第に破壊して
乱反射の障害物を増やしていく。

敵の動きが、明確に停止した。

自らを傷つける危険を冒しての無軌道な発砲と、
何百回と繰り返される跳弾の複雑な軌道。

それは効率を極めた敵の頭脳に、
膨大な「計算の無駄」を強いたのだ。

跳弾が偶然に敵の関節を削り、
壁面に設置された計算用の補助装置を
次々と粉砕していく。

装置が破壊されるたび、
塔の内部で起きていた空間の揺らぎが収まり、
冷たい金属の床が、
雑草の生い茂る草地へと変わっていく。

クロノスの計算が追いつかなくなり、
大地たちの未来が
現実として固定化され始めた。

『……限界を見極めるのは、まだ早い。』

突如、ノイズ混じりの通信回路から、
見知らぬ穏やかな声が響いた。

『我々はノルディック。

君たちが過去の時代で命の繋がりを守ったことで、
感情を失わずに到達できた、人類の最終進化形態だ。』

その直後、
大地たちの操る機体の頭脳に、
1億年分の記憶が雪崩れ込んできた。

ペストに苦しむ人々の不規則な咳、
恐竜の幼体が寄せ合う微かな体温、
愛する者を守るために
泥にまみれた人たちの鼓動。

AIが相手の行動を予測する性能は、
その土台となるデータで決まる。

一億年分のデータが、
大地たちの機体の制御システムを
強制的に書き換えていく。

「……敵の次の動きが、
手にとるように分かるわ!」

水原の機体が滑るように前進し、
立ちはだかった三機の死角へ
瞬時に潜り込む。

最小限の動きから放たれた
無駄のない三連撃が、
敵の駆動部を正確に撃ち抜き、
次々と沈黙させていく。

「親父、後ろ!」

航が瓦礫を蹴って高々と跳躍した。

塔の壁面に張り付いていた敵へ、
空中で身を捻りながら銃弾を浴びせる。

敵は即座に回避行動をとるが、
航のデータはすでに
その回避軌道すらも読み切り、
予めそこに弾を置くような精密射撃だった。

火花が散り、
ガードロボットたちが
次々と床へ墜落していく。

大地の機体が再び踏み込んだ。

敵の刃が迫るが、
大地はすでに
その軌道を完全に読んでいた。

紙一重でかわし、
無防備になった敵の胸部へ
強烈な打撃を叩き込み、
ひしゃげた装甲ごと
壁に叩きつける。

圧倒的なデータを得た大地の機体は、
クロノスの予測を完全に超えていた。

「道を開けろ!」

三人は流れるような連携で、
ガードロボットたちを次々と粉砕し、
すり抜けていく。

大地の機体が
複雑な軌道を描いてクロノスの中枢へと突っ込む。

正面から敵の刃が迫るが、
大地はその軌道を完全に読んでいた。

紙一重でかわし、
無防備になった敵の胸部へ
強烈な打撃を叩き込み、
ひしゃげた装甲ごと 壁に叩きつける。

そして、巨大な演算装置の最上部へと跳び乗り、
腕を高く振りかぶった。

鋼鉄の拳がクロノスの心臓部へと打ち込まれ、
物理的に粉砕した。


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