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【中華スマホ】7年前のHuaweiスマホに、米国最新AIが降ってきた話【米制裁】

引き出しの奥で眠っていたオーパーツ
皆さんはHuaweiというメーカーのスマートフォンはご存知だろうか。昔は日本のキャリアからも発売されていた事がある。
筆者の私はP30 Pro(デュアルSIM対応版・VOG-L29)を、今は亡きエクスパンシスから購入していた。2019年発売のフラグシップモデルだ。
先日、久しぶりにこいつを引っ張り出した。
バッテリーがヘタっているだろうと思いきや、電源を入れたら普通に起動した。しかもヌルサク動く。7年前のスマホがだ。Kirin 980の底力に驚きつつ、なんとなく電源ボタンを長押ししたら突如Geminiが立ち上がった。

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GoogleのAI、Geminiがインストールされている。いつの間にか入っている。自分で入れた覚えはない。Google側のアップデートで、勝手に降ってきたのだ。
2019年のスマホに、2025年のAI。
この時点で、何かがおかしいことに気づいた。
Huaweiと米国制裁の話
知っている人も多いと思うが、Huaweiは2019年5月に米国から制裁を受けた。安全保障上の理由で、Googleを含む米国企業との取引が禁止された。
この制裁の影響で、2019年以降に発売されたHuaweiのスマートフォンにはGoogle Play StoreもGmailもYouTubeも載っていない。Huaweiは独自のHarmonyOSとAppGalleryで生態系を構築する道を選んだ。
しかし、制裁前に購入された端末は別だ。
P30 Proは制裁の直前に発売されたモデルだ。購入時点でGoogleサービスが正規にインストールされており、そのGoogleアカウントは今でも有効。つまり、Googleは制裁後のHuawei端末にはサービスを提供できないが、制裁前に売られた端末のGoogleサービスを無効化することはしていない。
結果、P30 Proは「制裁の隙間を潜り抜けた最後の生存者」になった。
そして今、その生存者に、Googleの最新AIが届いた。

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イランが運用していたF-14
出典:Tasnim News Agency via Wikimedia Commons(CC BY 4.0)
IRIAF F-14A Tomcat(S/N 3-6001)、Fadaian-e Harim-e Velayat IX 軍事演習にて


イランのF-14トムキャット
この状況を一言で表す比喩がある。
イランのF-14だ。
1970年代、イランはアメリカからF-14トムキャットという最新鋭の戦闘機を購入した。しかし1979年のイラン革命で米国と断交。以降、パーツの供給もサポートも完全に止まった。
普通なら飛べなくなる。だがイランは独自に部品を製造し、整備技術を磨き、40年以上にわたってF-14を飛ばし続けてきた。レーダーを国産品に換装し、ミサイルすら自国で開発した。米国が2006年にF-14を全機退役させ、イランへの部品流出を防ぐためにスクラップにした後も、イランのトムキャットは飛び続けた。世界最後のF-14運用国として。
2025年6月と2026年3月、イスラエル空軍がイスファハンの第8戦術戦闘基地を爆撃し、地上のF-14が複数破壊されたと報じられている。40年以上にわたって制裁を潜り抜け、独自の進化を遂げてきたイランのトムキャットは、今まさに最後の時を迎えつつあるのかもしれない。
P30 Proも似たような立場だ。Huaweiは制裁で米国(Google)との関係を断たれた。だがP30 Proは、制裁前に「輸出」された機体として今もGoogleのエコシステムの中にいる。
ただし、決定的な違いがある。
イランのF-14には、アメリカからアップデートは届かない。当然だ。
ところがP30 Proには、Googleから最新のAI(Gemini)が勝手に届いた。
これは、イランのF-14に米軍が「新しいレーダーシステム送っときましたんで、よろしく」と連絡してくるようなものだ。ありえない。だが、デジタルの世界ではそれが起きている。
制裁はハードウェアの流通を止められるが、既に出荷された端末へのソフトウェア配信は止めていない。あるいは、止め忘れている。この非対称性が、P30 Proという奇妙なデバイスを生み出した。
そしてイランのF-14が爆撃で失われつつある今、P30 Proはある意味で本家より長く生き延びる可能性すらある。戦闘機は爆弾で壊せるが、スマホに降ってくるソフトウェアアップデートは爆撃できない。
本物の技術は死なない
7年前のスマホがなぜまだ使えるのか。
P30 ProのKirin 980は、当時の最先端である7nmプロセスで製造されたチップだ。Leicaと共同開発したカメラは、RYYB配列という独自のセンサー設計で、通常のRGGBセンサーより40%多くの光を取り込む。暗所撮影性能は2019年当時、世界一だった。
そして、このカメラが2026年の今でも普通に通用する。
夜景を撮れば、街灯の光が滲まず、暗部のディテールまでしっかり残る。月を撮れば、ペリスコープの5倍光学ズームに加えてソフトウェア処理で最大50倍まで拡大できる。10倍のハイブリッドズームまでなら実用的な画質が維持され、月面のクレーターまで写る。私は今iPhone 15 Proをメインで使っているが、正直に言うと月の撮影はP30 Proの方がうまく撮れる。7年前のスマホに、現行のiPhoneが特定の分野で負けるのだ。
これは「Huaweiが凄かった」という話ではなく、「本物の技術で作られたものは時代を超える」という話だ。RYYBセンサーもペリスコープレンズも、当時Huaweiが莫大な開発費をかけて実現した尖った技術だ。尖った技術は、平均的な性能向上では追い抜けない。
そして驚いたのが充電だ。Ankerの35W USB-C充電器を繋いだら、P30 Proが「超急速充電」モードに入った。これは本来、Huawei純正の40Wアダプタでしか使えなかった機能だ。
7年の間に、サードパーティの充電器がUSB PDのネゴシエーション能力を向上させ、P30 Proの急速充電プロトコルに正しく応答できるようになった。ハードウェアが時代を超えて生き残り、周辺技術の方が追いついてきたのだ。
カメラは今でも散歩のお供として十分に通用するし、充電は最新の充電器の方がむしろ相性がいい。
P30 Proは教えてくれる。本物の技術で作られたデバイスは、7年経っても死なない。制裁すら超えて、新しい技術が勝手に降ってくる。
安物を買って2年で使い捨てるか。本物を買って7年使い続けるか。
引き出しの奥で眠っているあなたの古いデバイスにも、まだ命が残っているかもしれない。一度、電源を入れてみてはどうだろう。
余談:デジタル懐古主義の時代
ここからは完全に余談。
最近、「デジタル懐古主義」とでも呼ぶべき流れを感じている。
つい最近、「picoZ80」というプロジェクトがHackaday(海外の技術系メディア)で話題になった。1976年生まれのZ80 CPUのソケットに差し込める交換基板で、中身はRaspberry Pi Picoの最新チップ。300MHzのARMプロセッサが、3.5MHzのZ80をサイクル単位で完全再現する。制御する側が制御される側の85倍速いという、完全に倒錯した構図だ。
私自身もPS3(2006年発売)向けにホームブリューを開発している。2026年の最先端AI(Claude)に、2006年のゲーム機のためのコードを書かせている。世界最高峰のAIが、18年前のSPUプロセッサのローカルストア(256KB)に収まるコードを心配しているのだ。
こうした「レトロハードをいじる」行為は、一見すると無駄に見えるかもしれない。だが、これは文明の豊かさの証だと思う。
原始時代は全てのリソースが生存に費やされた。産業革命で余暇が生まれた。そしてAI革命で知的労働にも余剰が生まれ、その余剰を「7年前のスマホでGeminiを動かす」「18年前のゲーム機にトゥーンシェーダーを移植する」「50年前のCPUを現代チップで再現する」ことに使えるようになった。
無駄なことができるようになった。それは、豊かになったということだ。

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