【閲注・オメガバCP注・🎲】日車寛見の巣作りチャレンジ

  • 1二次元好きの匿名さん26/06/03(水) 22:31:12

    日車寛見はΩである

    ヒートの周期が近づき、本能が巣を作りたいという欲求を湧き上がらせているのだが……

    弁護士として、術者として有り余る才能を持ち天才と謳われた日車、彼は


    ――壊滅的に 巣作りが 下手なのであった



    オメガバース設定でΩの日車が🎲で苦手な巣作りにチャレンジするスレ


    ※スレの前提条件・進行ルール※

    ・CPは虎日(この後の前提ダイスで成立済みか片想いかなどの状況が変わる)

    ・ヒートが始まるまでの2週間で毎日(14回)巣作りチャレンジをしていって、期間内に自力で上手な巣を作れたらハッピーエンド

    ・期間内に上手に作れなくてもそれまでの状況に応じて何かしらのオチを付ける

    ・センシティブな状況になりそうな時はwritening使用



    ダイススレ楽しくて鉄がまだアチアチなので立てた見切り発車

    気を抜くと睡眠削るので意識してゆっくりめ進行でエンディングを目指していく


    初期値+経験値+固定値+判定値が100を越えたら巣作り成功


    初期値:dice1d10=8 (8)

  • 2二次元好きの匿名さん26/06/03(水) 22:33:50

    <前提ダイス>

    そもそも何で下手なの?

    dice1d5=2 (2)


    1:純然たる下手(天は巣作りの才能は与えなかった模様) ※巣作り判定-5

    2:圧倒的経験不足(虎杖が遅い遅い初恋。30半ばを越えて巣作り若葉マークというわけだ、笑うか) ※回数を重ねるごとに固定値+5ずつアップ

    3:秘めたる片想いゆえ(巣材不足と精神的不安定のポンコツコンボ) ※両想いになった時に追加固定値+30

    4:そもそも出る幕がない(参加するうえ主体通り越してほぼ一人で作るα虎杖) ※作成時に虎杖在宅判定をして在宅してたら自力完成にならない

    5:Ω自体の初心者だよ(α虎杖に焼かれて抱かれてヒ゛ッチングしちゃった元α) ※元αのスペックが活きるか足を引っ張るか毎回±10判定



    1・2の場合明記されてない虎杖との関係は?

    dice1d3=1 (1)


    1:(両)片想いだよ

    2:両想いだけどまだうなじは噛まれてないよ

    3:番だよ


    ※ヒートなど生活への弊害などもあるので未成年でも番成立などには諸々寛容な感じです

  • 3二次元好きの匿名さん26/06/03(水) 22:42:38

    おいおいおいおい一番美味しい設定が来てしまいましたよォ!!!
    頑張れ日車、素敵な巣を作って虎杖をお招きしようね!

  • 4二次元好きの匿名さん26/06/03(水) 22:54:29

    経験不足が出てしまうタイプの日車かわいいね
    片思いってことは虎杖へのアプローチも並行して行うのかな

  • 5二次元好きの匿名さん26/06/03(水) 22:56:17

    俺得すぎるスレだ・・・ありがとうスレ主
    10まで保守

  • 6二次元好きの匿名さん26/06/03(水) 23:01:32

    遅い初恋両片思い神すぎる

  • 7二次元好きの匿名さん26/06/03(水) 23:02:42

    新スレ虎日だやっほーぃ!!
    スレ画は巣作り下手でもうダメぽ状態の日車かな

  • 8二次元好きの匿名さん26/06/03(水) 23:08:40

    たて乙!
    おいおい最高かこのスレ期待の保守

  • 9二次元好きの匿名さん26/06/03(水) 23:09:30

    すみません判定値ダイスについて書き忘れてました

    片想い:d20
    両想い:d35
    番  :d50

    関係性が変化すると判定ダイスもそれに応じて変化します

  • 10二次元好きの匿名さん26/06/03(水) 23:14:30

    普段は最低限の寝具しか置いていないベッドの前に俺は腕を組んで立ち尽くす

    巣の場所はいつもここに定めている

    柔らかなタオル類や普段使いの衣類、量としては申し分ないはずだ

    日常生活や高専での任務に支障が出るのでヒート抑制剤の処方は推奨されているし服用もするが、

    巣作り欲求のようなプライベートの範疇に収まる本能的行動や欲求については過度な抑制をすると逆に不調をきたすためあまりよろしくないとされている

    だからこそ、俺はこうしてその準備を整えなくてならない状況下に置かれているわけだ、が……

    「……いまいち、勝手がよくわからん」

    巣材で自分を囲い込み、安心できて安全な空間を作る、という理屈は頭に入ってはいるのだが何をどうすれば出来上がるのかのイメージが固まらない

    広げて、敷いて、被って、全身を包み込むようにはできてもただそれだけでしかない

    「……まあ、欠けている要素の一つは、わかりきっているのだが」

    自嘲気味に手の中に握り込んでいた一枚のハンカチを見下ろして溜息をつく


    反転を使うまでもない、と任務後もそのままにしていた手の甲の小さな擦り傷

    もっと自分を大切にしてよ、と言いながら巻かれた優しい色合いのハンカチを俺はいまだ返せずにいた


    ――慣れない自分でもわかる。たった一枚のよすがだけで、心を落ち着かせる巣などできはしないと


    本来、Ωの巣作りというものは想い人や番の匂いに包まれた環境を作ることで精神的安定を図るための行為だ

    いくら巣材に適したものだとしても、自分の持ち物だけを山と積んだところでそれはただの暖かな虚無でしかない

    だが例えそうだとしても、俺にはこれ以外のものを手に入れる当てもなければそもそも手にする資格なんぞないのだ

    だからこれはそう、自分を誤魔化せるようにするための努力でしかないのだろう


    「やるだけやってみるか……」


    1回目の挑戦

    8+dice1d20=14 (14)

  • 11二次元好きの匿名さん26/06/03(水) 23:34:53

    ……

    …………


    「ただ円に積んだだけのバスタオルの山だな」


    崩れなかっただけよしとしよう

    ジャッジマンが非常にもの言いたげな顔で背後に浮かんでいる

    出した覚えはないし領域も展開していないのだが

    俺自身の身長に対してうずくまるにしても狭すぎるので中に入る場合は正座するしかないだろう


    とりあえず入ってみる

    囲んだ円の中にじっと座っている自分の状況、何かを思い出すような……


    ――ああ、そうだこれは


    猫 ホ イ ホ イ


  • 12二次元好きの匿名さん26/06/03(水) 23:38:23

    巣作りが下手で雑過ぎる鳩みたいな巣作ってるの想像しちゃった

  • 13二次元好きの匿名さん26/06/03(水) 23:42:48

    猫ホイホイのなかにちょこんとお座りしている日車可愛すぎるだろ
    そのまま虚無に襲われてごめん寝しちゃいそうだね

  • 14二次元好きの匿名さん26/06/03(水) 23:48:52

    待って…待って…神すぎる…何だこのスレ…
    ハァ~~~~~感謝しかねぇ~~~~~!!!!!
    ありがとうスレ主完結まで見守らせていただく!!!!!

  • 15二次元好きの匿名さん26/06/04(木) 05:38:13

    ド下手くそすぎて自分の式神困惑しとるやん

  • 16二次元好きの匿名さん26/06/04(木) 07:10:44

    翌朝、バスタオルに挟まれた妖怪となって目覚めた俺は少し遅めの時間で高専に足を運んだ
    外の任務が無い時は、高専の事務方の補助に入って法関係の助言などを行っている
    きな臭い案件には関わりたくはないが、虎杖をはじめ生徒の皆が不利益を被らないよう裏で支えることもできるため、こういった仕事に携わるのも致し方ないと割り切ることにしている
    「――ええ、ですから今回の件の場合この資料を……」
    補助監督の面々と顔を突き合わせながら手続きの流れを説明していると、昼時を告げる鐘が鳴った
    「では、一旦昼休みにしましょう。そういえば今日は、卒業生のご実家の農家から移動販売が来ているらしいですよ? 手作りのパンやお弁当の他に野菜とかも安く買えるんだとか」
    そんな話をしながら書類を纏めて会議室はいったん解散となる
    適当に行きがけに買ってきたもので済ますつもりだったが、せっかくならば覗いてみるかと外へと向かう

    ワンボックスの前に設置された小さな販売ブースにはちらほらと少ないながらも人が集まっていた
    卒業生の実家だそうだが、ここに入れるという事は家族ぐるみで呪術師の関係者いうことか
    呪術師と農家の二足の草鞋、これも一種の兼業農家……なのだろうか
    そんなとりとめのない事を考えながら品物が陳列されている一角へと近づいた
    「はーい、次の方お決まりならどうぞー」
    バンダナを巻いて背後の段ボールから弁当の補充を取り出している少年から上がった声があまりにも聞き覚えがあり過ぎて、俺は商品の列から勢いよく視線を上げた
    「……虎杖?」
    声を聞くまではあまりにも違和感なくその場に溶け込んでいた姿に、思わずぽかんとした顔で彼の名を呼ぶ
    「え、あ、日車じゃん! お昼買いに来たん? 弁当もパンもどっちも美味いよどれにする?」
    「ヴっ」
    ぱあ、と効果音がしそうなほどのまばゆい笑顔に目が眩む
    いやそれよりも、なぜ彼がここで店番を? 領域で共有されたり彼自身と話した中での情報では彼の実家は農家ではない
    実家どころか、高専に来る前に最後の肉親である祖父を看取っていたはずだ
    「……君は、どうして販売側に? 確かこちらは卒業生のご実家の方たちだったと聞いているのだが」
    妙な事に巻き込まれ認識を歪められている可能性があるのならば、といざとなればすぐにでもガベルを取り出す心持ちで尋ねれば、ああ、となんてことも無さげに虎杖は笑う

  • 17二次元好きの匿名さん26/06/04(木) 07:13:18

    「いやね、俺がここに買いに来た時こっちのじーちゃんが荷物下ろしてたら腰やっちゃったんよ。座るのはだいじょぶらしいから、わからんとこだけ指示もらって手伝ってんの。報酬はこの特大チキンカツ弁当ほか諸々!」

    「いや~、すまんねぇ~……」

    隣で椅子に座っているご老人が申し訳なさそうに虎杖の言葉に続く

    ……なるほど、彼らしい

    息をするように困った人に手を差し伸べ、何でもない事のように明るく笑い飛ばすその人柄は彼の尊い長所だと思う

    「そうか……ならば、俺も売り上げに貢献しよう。昼食用にこちらの二つと、午後の会議の差し入れにラスクを種類ごと二袋ずつ頂こう」

    「りょーかい、あんがと日車! アスパラサーモンコッペとミックスサンド、ラスクはプレーンとキャラメルとココアで二つずつな! 合計2200円でーす」

    「ではこれで」

    1000円札二枚と500円玉1つをカルトンに乗せ……ようとしてその前に虎杖の手が俺の手ごと代金を直に受け取る

    え、と口にする間もなく手の中の現金が2500円から300円に交換され、虎杖の手によってぎゅっと握り込ませられた

    「はい、おつり300円! 品物けっこうかさばるから落とさんでな」

    「????? え、あ、ハイ……」

    だめだまだ脳がこの状況を処理しきれていない

    反射的に出た上の空の返事をするのがやっとで、俺はもたもたと覚束ない手つきでどうにか落とさずに硬貨を小銭入れにしまった

    ……いや、今、何が起きた!? なぜそうなった???

    直に触れた暖かな手の温度がじわじわと手から全身に広がっていくかのように全身が熱を帯びる

    顔がみっともなく赤くなっていやしないかと深く俯いた俺は、虎杖がどんな表情をしていたかなんて認識できるはずもなく

    「……ありがとう、手伝い頑張ってくれ」

    頭を冷やさなければとよたつきながらその場から離れようとした俺の背中に、少し慌てたような声がかけられた

    「あっ……、日車! ちょっと、ちょっとだけでいいからそこで待ってて! すみませんじゃあこれ1000円から……」

    気持ちとしては居たたまれなさが強かったが虎杖の声を無視などできるはずもなく俺は徐に足を止めて振り返ると虎杖へ小さく頷く

    俺の後ろに並んでいた客の対応を急ぎ気味にこなしながら虎杖は横目で俺がいるのかチラチラと確認している

  • 18二次元好きの匿名さん26/06/04(木) 07:20:23

    何か忘れものでもしていただろうか、財布以外取り出した覚えもないし品物も釣り銭も間違いはなかった筈だが、と考えているとふと彼らのやり取りが目に留まった

    手渡しでも、カルトンに乗せても、虎杖の手はほとんど相手の手に触れることなくごく一般的なレジ対応と何ら変わらない

    だったら余計にさっきのあれは何なんだという疑問が強まるわけだが……

    いくらなんでも要介護と思われてはいないだろうな、とかつてのセルフネグレクト時期を思い返して内心で頭を抱えていると、人の切れ目ができた隙に虎杖は付けていたバンダナをむしり取るように外してしゃがみ込み、それからすぐに俺の所へ小走りに駆け寄ってきた

    「ごめんな、急に呼び止めて待たせちゃって……、あの、さ! これおすそ分け。弁当とかと別で貰ったんだけど、一個食べてみたらすげー美味かったから、日車にも」

    そう言って差し出されたのは何かがつつまれたバンダナで

    受け取って開いてみれば、ふわりと甘い香りが広がり中からは小さい果実が数個顔を覗かせていた

    「これは、スモモ……か? とても……香りが甘い」

    俺が感じているのは、きっと果実だけのものではないのだろう

    胸を締め付けるような、どこまでも甘美で優しい香りは……

    「っ、そ、そう! じーちゃんとこの庭に植えてるらしいんだけど、めっちゃ大量に生ったからって。日車もこんくらいの量なら、悪くせずに食べきれるっしょ? だから」

    ソワソワとしたような虎杖の様子に彼の気遣いが伺えて俺は先ほどまでの疑問などすっかり忘れて胸が暖かくなる

    「ああ、有難く頂こう。わざわざすまなかったな、少し待ってくれ今先程買ったパンの袋に移……」

    「あ、そのままでいーから! えっと、バンダナは予備あるし、ほら桃とかスモモってデリケートだからさ、どっか当たって痛んじゃうかもだし……それごと日車にあげる! じゃあお客さん来たしまたな!」

    「え、あ、虎杖……?」

    俺の返事を待つことなく虎杖は踵を返し足早に販売の手伝いへと戻っていく

    呆然とそれを見送った手の中に残されたのは……


    GET!:虎杖のバンダナ


    巣作り1回目の経験値ダイス

    dice1d10=5 (5)

  • 19二次元好きの匿名さん26/06/04(木) 07:22:25

    (……っ、しゃ……! 渡せた……!)
    戻って早々小さくガッツポーズをする虎杖の横から呆れたような声が聞こえてくる
    「アンタまーだそんなモタモタしてんの? 小学生でももうちょっとガっといくわよ。柚子胡椒チキンのサラダサンドとキャロットラペね」
    「……まあそう言ってやるな、生姜焼き弁当と筑前煮一つ」
    同級生の二人の生暖かい視線に、だってさぁ……と拗ねた顔をしながら注文対応をしていく虎杖に、釘崎がはんっと鼻を鳴らした
    「先が思いやられるわね、いっそ段ボール一箱ぐらい送りつけてやれば? そうでもしないと気づかれもしないんじゃない?」
    「バッ……! そ、そんなんあからさますぎて引かれたらヤじゃん……」
    「相手が相手だけに、送りつけ詐欺と間違われて受け取り拒否もあるぞ。なにせ元弁護士だ、その辺りの知識と結び付けたりしそうじゃないか?」
    伏黒の推察に「あー……やりそう」と二人揃って眉間にしわを寄せる
    やいのやいのと交わされるやり取りに、青春じゃのう、とおじいさんが微笑ましそうに呟いた

  • 20二次元好きの匿名さん26/06/04(木) 07:42:01

    ン゛ワ゛~~~~~甘酸っぱい!二重の意味で甘酸っぱい!
    両片思いのいいところ詰め合わせをこんな早い段階でいただけるんですか
    虎日オメガバスターターキットじゃんありがてぇ
    わざわざ自分が被ってたバンダナで甘い果物を包んで渡すところがよすぎる
    オメガバは香りで思いを交わす物語

  • 21二次元好きの匿名さん26/06/04(木) 08:55:48

    両片思いがスモモの香りという歴史的発見
    ハァーこんないいのを無料で見せていただいてええんですか
    この可愛い2人が?
    もだもだしつつもくっついていく日々を?
    ハァーありがたすぎる…世界明るく色づいちゃったな…

  • 22二次元好きの匿名さん26/06/04(木) 09:08:36

    ☆スモモみたいな恋をした ​────

    好きな人の巣作りに自分のものを渡してアピるアルファいい〜〜

    >>20香りで思いを交わすって平安の恋愛みたいで雅だ…

  • 23二次元好きの匿名さん26/06/04(木) 16:31:49

    オメガバース時空だから周囲が虎日にめちゃめちゃ理解あってやさしいせかい
    15歳高校生×36歳元弁護士成人男性でもここでは合法なんだ!
    むしろもだもだしていることをせっつかれるくらい恋愛至上主義の価値観で
    背中押されまくりなのありがたい

  • 24二次元好きの匿名さん26/06/04(木) 20:39:38

    ……本当に俺がこれを受け取って良かったのだろうかという戸惑いと、それ以上に理性も本能もひっくるめてこの手のうちにある宝物を手放したくないという強い執着が胸の内を駆け巡る

    虎杖はああ言っていたがすぐに食べてしまえば問題ないとスモモを袋に移し替え、果実の移り香と虎杖の甘い香りを含んだバンダナを丁寧に畳むとスーツの内ポケットへと忍ばせた

    我ながら女々しいとは思うけれど、Ωとはもうそういう生き物なのだと思い知る

    「……こんなみっともない姿を、虎杖に見られずに済んで良かった」

    そう呟くと、俺は袋からスモモを一つ取り出した

    ころりとした小ぶりの果実は虎杖の髪色のような柔らかな赤みを帯びている

    軽くこすって気持ち産毛や汚れを落としたそれにかしりと歯を立てれば、たっぷりとした果汁が溢れ出てくる

    ――甘い、それに……

    じゅわ、と口の中に広がる爽やかな甘みと酸味

    瑞々しい甘酸っぱさはどこか虎杖を思い起こさせるような気さえする

    飲み込めば、きゅ、と胸の奥が締め付けられて溜息が零れた


    午後の会議は気を引き締めたつもりでもどこかそぞろで、小休止の時には伊地知からこっそりと「お薬、ちゃんと飲んでますか……?」と心配そうに確認されてしまった

    ヒートの周期が近づくと体調も不安定になりがちでフェロモンの制御も甘くなることがある

    自分では気づけてなかったが、昼の出来事が心身に影響して少々危うげになっていたようだ

    頓服を急いで流し込み開いた窓際で心身を落ち着かせてから会議へ戻る

    俺の体調の変化に気づいていたらしき数人がホッとしたような表情をしていて、申し訳なさと気まずさを誤魔化すように、俺は昼に買った差し入れのラスクを鞄から取り出すことにした


    「……そんな感じで午後を切り抜けたわけだが、果たして今のこの俺のポンコツ巣作りにこの虎杖のバンダナを取り込めるのか? 答えは否、だ」

    ハンカチとバンダナ、大小の正方形に畳まれた大事な大事な二枚を今朝のバスタオルの惨状のようになどできるわけがない

    ならば、俺は今夜どうするべきか……


    dice1d2=1 (1)


    1:虎杖私物は温存して巣作りの練習をする(通常の巣作り判定を行う)

    2:今日はもうこれでいいや、と布団を頭まで被ってバンダナを抱きしめて寝る(ひぐるまんじゅうで就寝。今回分の経験値加算は無くなるが虎杖への気持ちが高まる)

  • 25二次元好きの匿名さん26/06/04(木) 20:48:29

    「やはり、ちゃんと数をこなしていくしかないな。たとえ欺瞞だろうと自分で気持ちを落ち着かせられるくらいの最低限の体裁は保てるようになっておかなければ」

    反復練習は何事においても重要だ

    本能的な後押しを高めるためにバンダナの甘い香り……虎杖の香りををゆっくりと吸い込んで俺は巣材へと向き直った



    2回目の挑戦

    8+5+5+dice1d20=16 (16)


  • 26二次元好きの匿名さん26/06/04(木) 20:48:55

    不慣れなことでもちゃんと練習するの真面目だね

  • 27二次元好きの匿名さん26/06/04(木) 21:05:14

    こんなお堅い人からふっと甘い匂いが香るの倒錯的だなぁ
    吐息や指先からもスモモの残り香がして美味しそうに見えてしまう
    周囲の人が大変だから早く巣作り上達して仲良くとらひぐるまんじゅうしてくれ

  • 28二次元好きの匿名さん26/06/04(木) 21:05:54

    Ωは素を作ったらどうするのか?

    中に篭り想い人や番の匂いにくるまれた状態で心身の安定を図るのが主な行動であり目的だ

    ……ならば、下手に形を作ろうとするより最初からくるまってしまえばいいのでは? と俺は発想の転換をする

    柔らかくふかふかの上掛けはこの季節だと少々暑いかもしれないが、どうせヒートになってしまえばそれくらい誤差だろう


    被るだけでは普通の就寝と大して変わらない

    折りたたんで間に挟まる……? 似たり寄ったりか

    いっそのこと巻き付けるようにすれば安定感も出るか……

    ――ごろん

    ――ごろん


    「……巣ではなく、簀巻きというのではないか、これは」


    ちょっと安心感もあるのが逆に腹立たしい

    さすがに完全な簀巻き状態では目指す形とかけ離れてしまっているが、こんな感じで自分の周囲に重ね合わせ包み込むようにすればいいような気がしてきたな……


    巣作り2回目の経験値ダイス

    dice1d10=7 (7)

  • 29二次元好きの匿名さん26/06/04(木) 21:20:53

    壁尻ロールケーキ!界隈を騒がせた壁尻ロールケーキじゃないか!

  • 30二次元好きの匿名さん26/06/04(木) 21:23:58

    簀巻きになるとなんか安定してて気持ち良いよね
    スモモ入りロールケーキ虎杖専売品1口食べてみたいですね!

    あ、黒閃すか?そっすか……

  • 31二次元好きの匿名さん26/06/04(木) 21:43:47

    桃尻ならぬスモモ尻…?小尻だから…?

  • 32二次元好きの匿名さん26/06/04(木) 21:44:32

    まだ二日目なのにポンコツ巣作りを見守る以上に早くこの二人をくっつけたくて堪らなくなってる
    ダイスくんが日車遅い初恋&両片想いとか気ぶり極まるの引くから……っ!

  • 33二次元好きの匿名さん26/06/05(金) 01:27:26

    遅い遅い初恋、ハンカチ…バンダナ、スモモ…
    も、もう最高すぎて大興奮です感謝
    この虎日を全力で応援しますぞ

  • 34二次元好きの匿名さん26/06/05(金) 03:51:38

    虎杖よ… あんた最近のキャッシュレス化で激減した現金のやり取りをさり気ないタッチで行い客を翻弄するタイプの店員さんやないか…!!!天性の才能か!?
    ウブぐるまには刺激が強いね いいぞいいぞ…

  • 35二次元好きの匿名さん26/06/05(金) 07:16:48

    ちょっと用事で身体があかないので脳内で話を練るために途中のダイスを先に振ります

    説明が一部トンチキなのはオメガバ時空ナイズのちょっとだけ様子がおかしいようなそうでないような個体だから


    遭遇ダイス

    dice1d3=1 (1)


    1:純愛ソムリエ乙骨&式トモリカちゃん

    2:世話焼きの出力が仲人方面な気ぶりのアツヤ

    3:オメガバ時空でも色んな意味で頼りになります家入先生


    迷ったのでアツヤの第二性

    1から順にαβΩ

    dice1d3=1 (1)

    独断と偏見で乙骨はα、家入先生はβ

  • 36二次元好きの匿名さん26/06/05(金) 07:23:47

    周囲につよつよなαが多すぎる…!
    虎日ほぼ成立してるけど早いとこ番になってくれ…!

  • 37二次元好きの匿名さん26/06/05(金) 13:04:30

    保守

  • 38二次元好きの匿名さん26/06/05(金) 15:17:29

    虎日には珍しい純愛ソムリエ
    余計ぴゅあ度が増し増しになるのでは!?
    アツヤのαも美味しいね
    なんかこのスレのダイスどれも神がかってない?俺的にどれもいいダイスのお導きなんだけど

  • 39二次元好きの匿名さん26/06/05(金) 15:39:41

    お前らこれから積極的に魚拓取ってけよ
    俺は今から仕事だから頼むぜ

  • 40二次元好きの匿名さん26/06/05(金) 22:06:20

    保守
    果たして日車は期間内に巣作りを成功させることができるのか

  • 41二次元好きの匿名さん26/06/05(金) 23:51:07

    巣作りも日常パートも可愛すぎる
    まわりのつよつよαたちはつよつよΩの日車をどう思ってるのか気になります!

  • 42二次元好きの匿名さん26/06/06(土) 00:07:59

    意外と事情が知られてそうなんだよなぁ、虎日がカップルにもなれてなかったり
    日車がフェロモン制御できてなかったり
    よわよわΩではないけどよちよちΩだと思われてる可能性はある

  • 43二次元好きの匿名さん26/06/06(土) 00:10:37

    このレスは削除されています

  • 44二次元好きの匿名さん26/06/06(土) 04:11:31

    思っていたより気持ちが良くて、結局簀巻きのまま眠ってしまった
    今日は高専で補講を受ける日だったな、とコーヒーを飲みながら予定表を確認する
    術師としの経歴が短くなった経緯も特殊だった俺は、術師界隈の知識や感覚に乏しい部分がある
    宿儺との戦いに向けての修業期間で身に着けたものもあるが、偏りや非術師として生きた時間の長さによるギャップはそれだけでは補いきれるものではない
    そのため、高専教師陣から必要と思われる内容に関する授業がある日は補講という形で参加することになっていた
    補講対象の授業は2年生の授業の2限目に入っており、前に仕事を入れるには微妙に短すぎるため今日の任務は午後から予定されている
    身支度を整えると、俺は1限目の終わりごろに到着するよう家を出た

    2年の教室前に着くと同時に終業の鐘が鳴る
    突発的な任務などで腰を据えて座学に臨めないことも多い高専の学生たちだが、今日は予定通りに授業を受けているようだった
    授業の開始まで廊下で少し待つか、と思っていた矢先、教室のドアがガラリと開いたかと思うと
    「純愛の気配がするなと思ったら日車さんじゃないですか、お疲れ様です。そういえば今日の2限受けられるんでしたっけ」
    「……ああ、乙骨か。その予定だが……まだその謎の判定を続けているのか」
    2年の乙骨憂太が俺の姿を見てひらりと片手を上げる
    宿儺との戦いの間は事態が切迫していてそんなそぶりはなかったが、状況が落ち着いた今、彼は自称『純愛ソムリエ』などと嘯きながら俺を見かけるとちょっかいをかけてくるようになっていた

    ……というのも

    「ほら、リカちゃん。日車さんが来たよ」
    『あ゛あぁああ』
    乙骨の式神、リカが顕現する
    彼女は何故か――……

    「……だから、何故領域を展開していないのに勝手に出てくるんだ……」
    『ギルティ』

    ジャッジマンに懐いており、顔を合わせれば『女子会』を勝手に始めてしまうのだ

    「ふふ、リカちゃんが楽しそうで僕も嬉しいよ」
    「少しは疑問を持ってくれこの状況に」

  • 45二次元好きの匿名さん26/06/06(土) 04:12:51

    ふよふよと浮きながらリカとジャッジマンは和気あいあいと何かを喋っているのだが、何故か発する言葉は「あ゛ああ」と「ギルティ」だけで構成されている

    どちらも普通に言語を喋れるだろう、というツッコミを入れてはいけない……というか思ってもいけない

    分かってはいたのだが俺はまた頭の中でツッコミを入れてしまう、と


    『ギル……』

    ジャッジマンが振り向く

    一拍置いて誅伏賜死で罪状を読み上げる時のように流暢な言葉を発し始めた


    『日車寛見は昨日想い人から私物を受け取ったにもかかわらず、後生大事に温存したうえ、巣作りの練習では自分の布団でただ簀巻きになっただけに終わった疑いがあr「だからそれはもはや罪状でも何でもなく私生活の曝露だろう!!!」

    「えーっ! そんなことがあったんだ? 大事な私物は上達するまで使うのを我慢して、ってことですか? 純愛も純愛、ぴよぴよのピュアピュアでしょうこれは」


    ガベルを伸ばしてぶん殴ろうとするが、呪力強化をしているにもかかわらず式神連中にはひらりひらりと躱されてしまう

    妙な自我を持ち始めたジャッジマンは、あろうことか俺の虎杖への想いを『女子会』の話の種にしているらしかった

    そしてそれはイコール、話し相手のリカの術者である乙骨にも筒抜けてしまっている訳で

    結果、乙骨はそれを『純愛』だと判定し興味津々に状況の変化を探ってこようとしているのだ


    ……俺のこんな歪んだどうしようもない感情が純愛であってたまるか


    それを乙骨にはさんざ言い含めたにもかかわらず、彼はその判定を覆そうとはしない

    「このこと本当に相手には伝えてないんですか? α心をギュンギュンに擽られて僕なら何回でも失敗していいからって私服の山あげちゃいたくなりますけどねえ」

    「……それは君が君自身の恋人に当てはめて想像しているからだろう。俺のそれとは……異なるものだ」

    ガベルを振り回すのにも疲れて窓に背をもたれかけると、もう何度目か分からない乙骨の言葉への否定を口にする

    『憂太ぁ……』

    いつの間にか戻って来ていたリカがもの言いたげな声色で乙骨に語り掛ける

    そうだね、と肩を竦めながら乙骨は俺の隣で同じように窓枠へと体重を預けた姿勢をとる


  • 46二次元好きの匿名さん26/06/06(土) 04:13:51

    「なら僕からも言いますけど、番やそれに準ずる相手のいないΩ……しかもこんな風にありありとフェロモンの揺らぎを纏ったΩに、何の感情も持っていないのに身につけている私物を渡すなんて破廉恥な振る舞いをするαなんですか? 日車さんの好きな相手って」
    虎杖が悪く言われてしまっているそんな乙骨物言いに思わず勢いよく顔を上げる
    「っ、そんな事は……! ただ、そう……善意なんだ。持っている感情はそういった、彼の優しさに起因するもので……『私物を渡した』のではなく思いやりの結果『渡された物にたまたま私物が含まれてしまった』に過ぎない」
    きっと、それは俺でなくても同じように行われていただろう
    だから、乙骨が期待するような事は何もない。いや……あってはいけないのだ

    「はー……、至近距離で純愛を浴びれるのはいいんですけどね。日車さん、そういう表情を迂闊にαの前に晒したらダメですよ」
    俺の話をちゃんと理解しているのかいないのか、乙骨は頭を抱えてそんな意味不明な事を言い始める
    怪訝な顔をする俺の眉間に乙骨の指が伸び、しわを伸ばすようにぐりぐりと指先を押し込まれた
    「僕が既に相手のいるαだから良かったですけど、そうじゃなきゃ『誘ってる』とみなされてペロッといかれてもおかしくない状態で、こんな簡単に身体にも触れさせて……よくこの歳まで無事でいましたね?」
    何かものすごく馬鹿にされたような気がする上にジャッジマンが乙骨の後ろでもっと言ってやれとばかりに『ギルティ!ギルティ!』と連呼していて、俺は心外だとばかりに乙骨の手を手の甲で押し上げる
    「若い頃はむしろαと間違われたりガードが堅いとさんざ言われてもきたのだが」
    「えっそれ本気です? ……って事はつまり恋を知ったがゆえの綻びかけた花のような儚さと危うさ……? これは純愛指数が相当高いのでは?」
    また血迷った発言をし始めた、と思うと同時に2限の予鈴が鳴った

    「……ああ、もう時間ですね。ジャッジマンは相手の名前は伏せて話してましたけど、相手が誰にせよもうちょっと自分の尺度以外の解釈も考慮した方がいいと思いますよ」
    そう言って自分の席へと戻っていく乙骨に数秒遅れて俺も教室へと入る
    他の尺度など、考慮するまでもないというのに……やけにその言葉と視線が頭にこびりついて離れずにいた
    授業は全く身に入らなかった

  • 47二次元好きの匿名さん26/06/06(土) 04:54:45

    女子会!!!仲良しいいね!!!
    にしても乙骨パイセンに眉間くりくりされてるのドえっっち過ぎる 

  • 48二次元好きの匿名さん26/06/06(土) 06:34:17

    ガードが堅いΩだったらこんな雄性ダダ漏れなαに対してもっと警戒するわけでして…
    呑気に純愛トークしたり顔を触らせたりしないんですよぴよピュアΩ日車さんじゅうろくさい…
    領域から出てこれるようになったジャッジマンが日車のことつぶさに観察してて可愛い、
    式神も夢中になる虎日巣作りチャレンジ

  • 49二次元好きの匿名さん26/06/06(土) 07:07:45

    「純愛の気配」「純愛指数」というパワーワード

  • 50二次元好きの匿名さん26/06/06(土) 07:39:07

    その内日車のフェロモンを嗅いでTasty…!とか言い出しそうだな純愛ソムリエ乙骨
    番うことをまだ知らない無垢なΩの芳香…純愛だね!

  • 51二次元好きの匿名さん26/06/06(土) 13:19:43

    保守

  • 52二次元好きの匿名さん26/06/06(土) 18:04:29

    αの乙骨先輩ド雄全開でドキドキしたぞ

  • 53二次元好きの匿名さん26/06/06(土) 18:52:55

    乙骨の番だれなんだろ
    リカ?真希さん?それとも…

  • 54二次元好きの匿名さん26/06/06(土) 20:21:28

    「……はぁ、疲れたな」

    午後の任務は敵の強さこそ大したことはなかったものの逃げ足に特化した術式を持っていて、ひたすら追い込み漁のようなことをさせられる羽目になった

    罪状に有効な事柄が少ないあるいは適用されない場合の多い、動物的あるいは現象に近いタイプの呪霊への場数を踏むために回されてくる以来の一つだったが、作戦もくそもないほぼごり押しでの解決で果たしてこれでいいのかと疑問に思わなくもないが致し方ない

    今はとにかく早く帰ってシャワーが浴びたい

    乾きかけの汗でべたつく肌の不快さを少しでも軽減するため歩きながらネクタイに指をかけ僅かに緩めた

    少々不作法な行為のためか、すれ違う通行人の中にはこちらにチラチラと視線を向ける者もいる

    さすがに弁護士時代の俺の顔を知っていてのことではないと思うが、さすがに座りが悪いなと手を止め角を曲がると……

    「……っ、と」

    「わわ、スンマセン! ちょっと急いでて……ってあれ、日車?」

    目の前に飛び出しかけて急ブレーキをかけた人影が止まり切れず俺と軽く接触する

    受け止めた視界の先に赤みを帯びた薄茶が飛び込み、直後に至近距離で顔が上げられる

    「――……っ!? いたど……っ」

    思わず飛び上がるようにして距離を取り、早鐘のような心臓を落ち着けようと胸元を強く握り込んだ

    ほんの一瞬、不意打ちのように真正面から絡んだ視線があまりにも眩しくきらめいて見えて視神経が焼き切れたのではないかとすら思える

    顔を見れて声を聞けた嬉しさと同時に、そう感じてしまう後ろめたさが感情を搔き乱してしまう

    「いやそんな背後にキュウリ置かれた猫みたいにならんでも。……ってかこんな時間まで任務だったん?」

    また無理をして、と言わんばかりにむぅと口をとがらせる虎杖の気遣いと無邪気さに罪悪感がむくむくと湧き上がってくる

    俺なんかの心配に彼の貴重な時間を使わせるわけにはいかない

    「……ああ、少々捕獲に手間取ってな。だが無傷できっちり捕えたので被害が広がる事もなくなった。それよりも急いでいるのだろう? 君の方こそ遅くならないよう要件を済ませてくるといい」

    「…………」

    ぶつかった時の言葉を思い出しそう促したのだが、虎杖は何故かこの場から動こうとせず何やら深刻そうな表情で考え込んでいる様子だった

  • 55二次元好きの匿名さん26/06/06(土) 20:22:44

    何やら小さく呟いている様子だったが聞き取れるほどの声量ではなく、かといってこちらへ向けているわけでもない独り言に聞き耳を立てるような不作法をする気もないのでひとまずもう一度だけ名前を呼んでみることにする
    「虎杖? どうし」
    「日車はあと帰るだけなんよな? それなら俺送るよ!」
    パッと顔を上げた虎杖が突然そんなことを言いだしたので俺の脳はその意味を処理しきれずフリーズする
    「っ……!?」
    今の流れでなぜそうなる!? 何か用事で急いでいたのではないのか、と思うのに口が上手く動かない
    気付けば手を引かれていて、たたらを踏みながら俺の口はどうにか用事は、という単語だけを絞り出す
    「いいの! ってかむしろ日車一人で行かせて来たってなったらリカちゃんにメキョられそうだし。メッセだけ送っとくよ」
    開いている方の手で手早くタプタプと画面を操作して、話しぶりからおそらく乙骨へのメッセージを送信した虎杖は俺の手を離さないまま俺の自宅の方向へと足を進めていく
    「待て、待ちなさい、未成年が大の大人を送ってどうする。むしろ逆だろう」
    もしかしたら同行を理由に道中の時間で何かしら相談事でもしようとしたのかもしれない、と思い立ち、それなら俺の方が虎杖を量まで送り届けるべきだろうとそう声をかけたのだが、振り向いた虎杖はまるで困った子供を見るかのような表情で左右に首を振った
    「ほら、そーゆートコ。日車Ωなの自分でも忘れてるのってくらい危機感薄いんだもん。危なっかしくてしょうがないよ」
    「いくらΩだとはいえ、いい年のオッサンな上に今は術師として戦闘能力もついているんだぞ。それなのに家まで送らせたあげく未成年の君に一人で夜道を帰らせろと?」
    手を引く虎杖に逆らうように、脚を踏ん張ってその場に踏みとどまる
    はたから見たら相当滑稽な姿で暫くそうしていたが、不意に虎杖の手から力が抜けた
    「……日車は、俺に送られるのそんなにイヤ?」
    引かれなくなった手はそれでも離されることはなく、縋るようにきゅ、と僅かに力が込められる

    ――そんなわけがない、そんな顔をさせたいわけじゃない、それなのに、どうして俺は

    「っ、嫌なはず、ないだろう……。だが、俺は君の善意に甘え、君への不利益よりも自身の喜びを優先なんて出来ないんだ」
    君を疎んじているわけではないと、それだけは伝えたくて無様な胸の内の片鱗を恥と知りながら曝け出す

  • 56二次元好きの匿名さん26/06/06(土) 20:27:11

    本当なら節度ある大人として毅然と線引きをしなければならないのに、今の俺ではこんな伝え方しかできない

    「……ひぐる、」

    「――だから、折衷案をとろう」

    口に出してしまって腹が括られた気分になったからか、俺はほんの少しの力を込めて、虎杖の手を逆方向……高専の方向へと軽く引いて歩きだす

    「君を寮へ送り届けて、高専の敷地外、一般車両が入れる位置にタクシーを呼んで俺はそれで帰宅する。それなら問題ないだろう」

    今度は虎杖の方がたたらを踏みながら慌てたように一歩遅れて歩き出す

    「え、で、でもそれなら逆が……俺が日車を送って」

    「駄目だ、それだと時間が遅くなりすぎる。嫌ならばこの場でタクシーを2台呼ぶことにするが」

    「そ、それはヤダ! てか日車なんで急にそんな吹っ切れてんの……」

    小走りで俺の隣まで追いかけてきた虎杖に、なぜだろうなと小さく返す

    離すタイミングを見失った手は、結局虎杖の部屋の前に到着するまでそのままで

    本当に大丈夫かと最後の最後まで念を押しながらゆっくりと力を緩める虎杖の手を名残惜しいと思う気持ちに蓋をして、心配ないと首を振る

    「もし乙骨に会ったら俺からも今日のことは謝っておこう。……お休み、虎杖。良い夢を」

    「っ……、そ、それはもう気にせんで……日車も、おやすみ。気ぃつけて帰ってな」

    寮の部屋のドアが閉じるのを見送って俺は踵を返し、寮の扉から外へ出ると


    (あ゛ぁああああぁぁぁぁあああああ!!!!!!)


    叫びたくなる衝動を歯が砕けるぐらいの力で無理やり押し留めて全速力で敷地外へと一直線に走り出す

    そのまま待機していたタクシーに飛び乗り早口で住所を告げるとそのまま頭を抱えて座席に突っ伏した

    喜びと羞恥と自責と言語化出来ない感情が渦を巻いて頭と心を掻き回していて、なんだかもうよく分からないがもうだめだという心情が押し寄せてくるどうにか部屋へと辿り着いた俺は、あんなに浴びたかったシャワーのことも忘れて、ベッドに飛び込むと手あたり次第目についたものをひっつかんでたぐり寄せて外界から覆い隠すように無我夢中で頭からかぶり込んだ


    3回目の挑戦

    ※無意識本能ブースト+10

    8+12+10+10+dice1d20=20 (20)


    巣作り3回目の経験値ダイス

    dice1d10=1 (1)

  • 57二次元好きの匿名さん26/06/06(土) 20:32:38

    無意識本能ブーストすげぇ!
    やっぱ日車って天才なんだな!
    ところで虎杖はどうして急いでたんですかね?
    日車のフェロモン感じて慌てて探していたとか?

  • 58二次元好きの匿名さん26/06/06(土) 20:35:59

    誤字脱字改行ミスとか多くて申し訳ない
    ちょっと時間食ってしまい寝かせる余裕なくて慌て過ぎました
    虎杖視点とか続きとかはちょっと頭を冷やしてからにします
    挑戦ダイスは初回から一貫して出目がいい日車はやはり天才か
    上限が低いからどうにかぽんこつにできてると言っていい

  • 59二次元好きの匿名さん26/06/06(土) 20:39:51

    純愛ソムリエから言い含められてる虎杖!
    やはり乙骨は優秀な雄αだし虎日の関係は筒抜け
    虎杖若きスパダリαに成長してくれ…お前のΩはちょっと…大分…ポンコツだ

    めちゃくちゃテンション上がって挑戦数値ついに60台突入なのに
    混乱しすぎて経験値1なの草

  • 60二次元好きの匿名さん26/06/06(土) 20:46:12

    日車の自宅知ってるの虎杖!?
    日車が自宅で暴走ヒート起こしたら押しかけてくれるのか虎杖!?
    いつかふたりの巣が作られる場所知ってるんだ…夢広がっちゃったな…

  • 61二次元好きの匿名さん26/06/06(土) 21:25:47

    日車の反応がいちいち最高だー!可愛いー!
    全速力は見かけたら「速ぇ!!」ってなるやつですね

  • 62二次元好きの匿名さん26/06/06(土) 21:42:59

    >>55

    日車、「自身の喜び」って言っちゃってるねぇ

    虎杖にバレバレだねぇ(にんまり)

  • 63二次元好きの匿名さん26/06/06(土) 21:52:18

    引き締まった身体してるし脚長いし短距離走者みたいな走り方しそうだ日車
    でも夜見たらちょっと怖いよ

  • 64二次元好きの匿名さん26/06/07(日) 02:25:32

    保守

  • 65二次元好きの匿名さん26/06/07(日) 07:51:17

    保守

  • 66二次元好きの匿名さん26/06/07(日) 10:17:04

    モダモダオメガバースは良いものだ

  • 67二次元好きの匿名さん26/06/07(日) 13:40:48

    ――虎杖と日車の押し問答から時は少し遡る

    「虎杖くん、見てたでしょ」
    「うぉっ!? 乙骨先輩!?」
    昼休み、一人悶々と頭を抱える虎杖の元にひょいと顔を出した乙骨に虎杖は飛び上がって驚いた
    まさか悩みの種本人が目の前に現れるとは思っておらず普段のような切り返しができずにいる虎杖の隣に腰を下ろすと、乙骨がくすりと笑って耳打ちする
    「大丈夫だよ、僕にはもう決まった人がいるの虎杖くんも知ってるでしょ。あれはリカちゃんの女子会がてらちょっと注意を促してただけ」
    「……注意?」
    その割にはなんだか楽しそうにしてなかったかと納得のいかないような表情で虎杖は首を傾げる
    「どうにもね、あんなに危ういのに自覚がてんで無いようでさ。……ヒートってその時だけ急にガッと来るタイプと数日前からじわじわ漏れ出るタイプがいるけど……日車さんは後者なのにその自覚がかなり薄いようなんだよね」
    「えっ……」
    「彼が言うには若い頃はαに間違われたりガードが堅いと言われてきたって話だけど、正直僕の目から見ても今の日車さんはその真逆というか……下手に我の強いαの前になんか出たら抱かれたくてアピールしてるのかって言われても反論できないくらいには、無防備で自身に向けられる視線に自覚がない」
    虎杖の眉間を指さすように乙骨が昼間日車に触れた手の人差し指を立てた
    「眉間なんていう急所の一つ、しかもうなじに近い顔の部位を簡単にαに触れさせるなんてあまりにも迂闊が過ぎるよ。その上ヒート前の気配をうかがわせるようなフェロモンの揺らぎまで纏ってるんだからほんと、僕が相手で良かったよね」
    「……日車、が……」
    バンダナを渡せた日の日車の様子が虎杖の脳内に浮かぶ
    意識して欲しくて支払いのやり取りの時はわざと手に触れて、戸惑いながらも頬を染めて恥じらう姿に……微かに鼻を擽る甘い香りに望みはあるんじゃないかと期待と喜びを噛み締めた
    自分の……αの匂いが付いたバンダナを、言い訳を重ねて押し付ける形にはなったものの受け取ってくれたことも、一歩踏み出せたのだと本当に嬉しかった
    未成年だ守られる子供なのだと繰り返し口にしてはいても、ちゃんと、αとして意識されていると……思ったのに
    もし、何の意識も自覚もなくあんな無防備に、αの期待を……欲を煽る姿を誰にでも見せていたのだと思うと、どうしようもなく胸が痛い、苦しい

  • 68二次元好きの匿名さん26/06/07(日) 13:42:22

    そしてそれ以上に恐ろしかった
    どこの誰とも知れないαに、日車が手を出されるんじゃないかという危険性が
    「一応日車さんには、自分が思っているのとは違う尺度で他人は見てるかもって意識を持つようには伝えたけど、どこまで理解してるだろうね」
    「う……、どうしよめっちゃ心配になって来た……! 日車って午後任務だったよな……何時に戻ってくるんだろ」
    そわそわとし始める虎杖に乙骨はうんうんわかるよと満足げに頷く
    「僕は虎杖くんの純愛を応援しているからね、有用な情報があればまた教えるし、危ないと思ったら手を貸すよ。そして、もしうまく言ったら事の次第を聞かせて欲しいな」
    そう言ってぱたぱたとズボンのほこりを払って乙骨が立ち上がる
    「あ、あんがと……先輩」
    戸惑いと照れくささに頬を掻きながら礼を言うと、虎杖はヨシ!と気合を入れる
    「そうとなったら俺がボディーガードしなきゃな! ほんとに日車は色んな意味で自分大事にしなさ過ぎ!」
    そう宣言した虎杖は、悪い虫を追い払い日車へのアタックを決め込もうと決意を固めた
    そしてその夜、遅い時間に任務報告に来た日車の姿を見かけた乙骨が、最寄り駅に出待ちに行っていた虎杖と入れ違ったことに気づきメッセージを送ったことで慌てて戻ってきた虎杖との出会いがしら衝突に繋がったのだった

    ……ところで、日車の恋心もその相手も虎杖のそれも両方を把握している乙骨であるが、なぜこの両片想いもだもだ状態に決定的な一言を叩きこまないのか?
    それはもちろん乙骨が純愛ソムリエだからである
    ○○さんって××さんのこと好きなんだって! などと言う無粋極まりない事を外野が言うなど、上質なワインの栓を開け放したまま放置し、じっくり煮出した旨味たっぷりのスープを流しにぶちまけるがごとき所業なのだ
    よほど事態がこじれて第三者が真実を告げなければ破局するしかない状況でもなければ、乙骨が互いの片想いを相手へばらすことはない
    ただただ至近距離で、程よくそっと手を差し伸べつつ純粋で甘酸っぱい純愛を浴びる、それこそが乙骨にとって何よりの至福なのだった

    ――つまり、今一番いい空気を吸っているのがこの男なのである

  • 69二次元好きの匿名さん26/06/07(日) 13:58:54

    くっそ良い顔してるな純愛ソムリエ!
    俺も読んでて楽しいよ!

  • 70二次元好きの匿名さん26/06/07(日) 14:04:26

    ありがとう乙骨先輩
    特級がサポートについてる安心感エグい

  • 71二次元好きの匿名さん26/06/07(日) 14:11:31

    乙骨サポート頼もしい〜!!!良い笑顔〜!
    でも他のαをうっかり誘ってしまって大ピンチ!!!っていうのも見たい(強欲)

  • 72二次元好きの匿名さん26/06/07(日) 14:50:24

    特級術師乙骨も唸るラーメン店『虎日』オープン!!
    未熟なαと無防備なΩから引いた純愛スープの極上ラーメンをすする~~~~~!!!!!
    うっひょ~~~~~!!!!!

  • 73二次元好きの匿名さん26/06/07(日) 15:09:09

    これでもかってくらいモダモダした純愛スープの中には
    いい空気が詰まっており 喜びのあまり
    バッドエンドフラグを全部薙ぎ倒してしまいました〜!

  • 74二次元好きの匿名さん26/06/07(日) 19:49:49

    このレスは削除されています

  • 75二次元好きの匿名さん26/06/07(日) 19:53:34

    は、と気が付いたのはもう明け方だった
    べたついて皴になったスーツの不快感に眉を寄せながらもぞもぞと体を起こそうとして……自分をすっぽり覆うように重ね上げられた衣類の山の存在に気づく
    「……これは、俺がやったのか」
    身体を起こし周囲を確認すれば、教材やΩの情報サイトなどで見るような『巣』に近いものが出来上がっていた
    もちろん、αの私物はないし作りもどうにか及第点、といった荒のあるものだが、それでも猫ホイホイや簀巻きなどとは違ってちゃんと巣と呼べる程度には形になっていた
    「手あたり次第そこらの物をかき集めた記憶はあるが……駄目だな、途中経過が全く記憶にない」
    折角これまでで一番まともな出来だったというのに何かが身についたという感覚は一番薄い
    仕方が無いのでこの出来上がりを観察して次回につなげることにした
    「……一応、写真でも記録しておくか。出来は良いとは言えないが、他人の巣よりかは見本としての有用性は高いだろう」
    仕事の記録で使う写真やメモ代わりの画像が並ぶ味気ないファイルの中に自分の巣の画像が混ざるのが何とも奇妙な心持ちになるが、どこか達成感のようなものも感じてそのまま画面を閉じる
    汚れたままで包まってしまったいくつかを脱いだインナーと共に洗濯機に放り込み、ゆっくりとシャワーを浴びた
    今日は午後の任務のほか午前中は補助監督の手伝いがあるが、書類仕事ではなく新たに高専の忌庫にいくつかの呪具や呪物が追加されるため運び込みの作業になるという話だ
    今回納められるものは等級は低いものが多いというから危険度は高くないとは思うが、呪術の世界は何が起きてもおかしくはない
    妙なトラブルがなければいいが……

    「――では、目録のチェックが終わったものから荷台を降ろし、指定した棚へ運び込んで下さい。取り扱いにはくれぐれも気を付けてくださいね」
    伊地知が書類の束を片手にチェック係と運搬係にそれぞれ指示を出す
    刀など見た目で用途が分かりやすいものから、もはやなにが素材なのかすらよく分からないものまで運び込まれた呪具は多岐に渡っていた
    「けっこう量あるっスねー」
    「そちらのかさばる束は俺が持とう」
    「お、助かるっス日車さん。もうちょっとしたら手の空いてる学生たちも手伝いにくるそうなんでほどほどでいいっスよ」

  • 76二次元好きの匿名さん26/06/07(日) 19:55:02

    そんなことを話しながら手分けをして呪具を運んでいると、後者の方から数人こちらへ近づいてくるのが視界の端に映った

    「うーっす、なんか重いのとかでけえの運べって言われてきたんだけど」

    「しゃけ」

    「手伝いきましたー! あ、ほんとだ日車も来てんね!」

    忌庫の位置からはまだ遠くの小さい人影が、俺に気づいてぶんぶんと手を振る

    手伝いに駆り出されてきたのは禪院真希、狗巻棘、それに……虎杖だった


    2年生の二人は伊地知に指示を聞きに行ったのだが、何故か虎杖は真っ直ぐこちらへと駆け寄ってきて俺は思わず後ずさってしまう

    昨日のやり取りやつないだ手の感触、体温の記憶が生々しく甦りぶわりと汗が噴き出すのがわかった

    「日車、お疲れ! 昨日はあの後ちゃんとタクシー呼べた?」

    「あ、ああ……問題ない。君もこちらの手伝いに回されてきたのだな」

    視線を斜め下に落とし、動揺を気取られないよう意図して事務的な口調で返す

    「っていうか立候補? 日車が任務じゃなくこっち手伝ってるって聞いたからさ、じゃあ俺も行こうって。昨日のことも気になってたし」

    「っ……、すまない、余計に心配をかけてしまったな」

    ――だめだ、喜ぶな

    彼はただ善意と気遣いでそう言っているだけで、俺がこんなふしだらな感情を抱えているだなど知らないのだから

    「いーの、気にせんで。そんで運ぶのってコレ?」

    虎杖は忌庫の入り口近くに積まれた呪具の山を指し示す

    チェックが終わったものは入り口近くに運ばれ積み上げられ、そこから中の指定された棚や箱などに安置されていく手順になっている

    「あ、ああ。俺は多少上背があるので棚の上側の物を収納して、下の方は彼女が。その後はさらに高い収納先の物を脚立を使って二人組で作業することになっていたんだが……」

    「あ、じゃあさ先に脚立の作業俺とやろうよ! 新田さんが届かなくて日車が届く範囲って狭いから先に終わりそうだしさ、新田さんが残りやってる間棚の逆の方から脚立作業やれば効率いいっしょ」

    「お、その案いいっスね! そんじゃお願いするっス!」

    外へ荷物を取りに行っていた新田がひょこっと顔を扉から覗かせてラッキーっスと笑う

    うまい断り文句も思いつかず、どこか落ち着かない気持ちのまま虎杖と組んで作業をすることになった

  • 77二次元好きの匿名さん26/06/07(日) 19:56:05

    脚立をはしごの形に開き、収納物に当たらないよう棚に立てかけた
    虎杖にははしごの支えと足元に運んだ荷物の受け渡しの方を担当してもらい、俺は受け取った荷物を棚まで持って上がって収納する側になる
    「俺ラクすぎじゃね?」と最初は渋る虎杖だったが、ふと周囲を見渡した後で「……でもこっちの方がガードしやすいか!」と言って納得したようだった
    何を指しての事なのかはいまいちわからなかったが、こうなったら早く終わらせて少しでも虎杖や学生たちの負担を減らす方が得策だと作業に集中することにする
    「最後、丙1の63。天神鏡」
    受け渡しの時に指先が触れたり、登っている時にやけに視線を感じる気がしたりはしたものの、およそ問題なく作業は終わりを迎える所まで進んだ
    「63、番号ヨシ! これはどんな呪具なん?」
    虎杖は時々ぱっと見で効果が分からなそうな呪具が出てくると興味深そうに聞いてきたり眺め回したりしてきた
    収納作業中に扱いを間違わないように略式の説明と注意点の書いたプリントが配られているので、俺はそれを見ながら虎杖へと返答する
    「一時的に周囲の天候を変化させる効果のある呪具らしい。呪具そのものの殺傷力はほとんどなく、雨や風、日差し、雪や雷などが呪霊の能力に影響したり弱点だったりする場合などに用いたりする、とあるな」
    「へー! なんかアレみたいだな、ポケ〇ンのにほんばれとかあまごいみたいな天候変化わざ。日車やったことある? ポケ○ン」
    「すまない、そういったものは経験がなくてな。案件の中で情報を見たことはあるから……あれはわかる。ピ○チュウ」
    「……ごめん、もっかい言って」
    「? 名前を間違っていたか? ピ〇チュウ、だと思ったんだが」
    虎杖は何故か下唇を噛んで小刻みに震えていて、パーカーの襟元をぎゅっと握りしめていた
    「い、いやあってるよ。あの、名前だけで、もっかい」
    「……ピ○チュウ」
    怪訝に思いながらも言われた通りに返すと、背後からぶふぅー!と吹き出す声が聞こえた
    「っちょ……、虎杖くんやめてほしいっス……! 真面目な顔の日車さんのピ○チュウ連呼は破壊力たっけーっスよ!」
    「……は」
    まさか、虎杖が震えていたのは
    かぁ、っと顔が熱くなるのがわかり、それを隠すように手で覆うと虎杖を睨みつけた

  • 78二次元好きの匿名さん26/06/07(日) 20:00:11

    「虎杖……俺をからかったのか。新田、君も人が悪い……! 止めるならもっと早く」
    「ちょちょちょ違う! 違うって日車! からかったわけじゃなくて……!」
    焦った虎杖が全身で否定するようにぶんぶんと首と両手を思いっきり左右に振って

    ――次の瞬間、カラーン!と床から鋭い音が鳴った

    「え」
    「あ」
    「うっそ」

    虎杖の手からすっ飛んだ呪具が床に叩きつけられ……見るからに「作動しました」と言わんばかりの光が鏡面から発せられる
    そしてその直後、みるみるうちに高専上空の空が真っ黒に曇り、ざわざわと木々を揺らすほどの風が吹き始める
    ぽつ、ぽつ、と地面に大きな染みができたと思ったら、あっという間に大粒の雨が降りだしてくる
    「この効果は……! 新田さん! 日車さん! 呪具を発動させたんですか!?」
    すぐに状況を察したらしき伊地知の声がトラックの方から聞こえてくる
    「すまない! 誤って落下した拍子に作動させてしまったようだ! 停止や解除の方法は……!」
    「伊地知さんごめーーーーん! 俺がすっ飛ばしちゃったんだ日車も新田さんも悪くないよ!」
    俺の声に被さるように虎杖が叫んで呪具を拾って伊地知の元へ走る
    「待て! 虎杖! 迂闊に触ったら何が起きるか……!」
    急いで後を追えば叩きつけるような雨風が一瞬で全身を濡れ鼠にする
    俺たちがトラックにたどり着くまでの間伊地知は周囲の者たちにトラックか忌庫内にとりあえず出ているものを運ぶよう指示しているようだった
    「伊地知さんどうしよ、どうすればいい?」
    「この呪具は必要な部品が損なわれていまして、本来変更する天候の選択や発動停止の操作ができなくなっているんです。呪力を込め直してはいないんですね? それなら小一時間ほどで効果が切れ元の天気に戻るはずです」
    追いついてみれば、慌てたような虎杖に溜息をつきながら伊地知がそう説明していた
    高専内にいる教師陣に連絡するからと一旦話を区切って電話をかける伊地知の横で、そっかぁ~……とへたり込んだ虎杖の横へと歩み寄る
    「虎杖」
    「あっ……! 日車、ごめん……呪具ぶん投げちゃったのもだけど、その前のも、俺ほんとにからかうつもりじゃなくて」
    しゅん、と肩を落とす虎杖の様子は、言い逃れでなく本心からの物なのだと伝わってくる

  • 79二次元好きの匿名さん26/06/07(日) 20:03:36

    「もう気に病むな。俺はもう怒ってはいない……というよりあれは羞恥心によるものの方が大きかっただけで、最初から本気で怒ったわけではなかったからな」
    「日車……! あ、でも恥ずかしい事させちゃったのはそうだからやっぱごめん! 日車からあんなかわいい言葉出てくると思わなかったから、なんか新鮮って言うか、一回じゃもったいなくて、つい何回も……」
    「な……っ、み、妙な言い回しはやめないか……! もうこの話題はやめだ、それより雨が止んだあとの作業の準備を……」
    「ああ、それでしたら今日はもう中止になりましたよ。地面もぬかるんで事故の危険が上がりますし、濡れた状態のままで保管するわけにもいきませんから、作業再開はどちらもしっかり乾いてからになります。天気が戻るまで呪具の水気を拭いて広げて置いて、雨が止んだらトラックと忌庫に結界を張って撤収です」
    ちょうど電話を追えたらしい伊地知がそう告げてくる
    確かにあの短時間で地面は一面水浸しになり、外に出ていた物品もすっかり雨に濡れてしまっている
    この状態で棚にしまい込んでもカビたり呪符が剥がれたりなどろくなことにはならなそうだ
    「申し訳ない、本来の作業予定を変更させることになってしまった」
    「いいえ、日車さんのせいではないですよ。忌庫内の新田さんと連絡して状況は把握しましたから……虎杖くんは反省文と何らかの罰則があるでしょうね」
    「うぐっ、スンマセン……」
    ずんと肩を落とす虎杖に申し訳ない気持ちになるが、今回の作業の責任者である伊地知が状況を確認したうえでの判断ならば致し方ない
    というか俺が伊地知の立場だったとしてもやはりそう判断するしかなく、よくてごり押しで年長者の俺の監督責任だと何割か引き受ける、くらいか……
    と思ってちらりと伊地知の方へ視線を向けるが、首を振って「ダメですよ甘やかさないで下さい」と言わんばかりの視線を返されてしまった

    「中止か……そうなると、午後の任務まで少し時間が空くな。それなら一旦帰宅して着替える時間はありそうだ」
    腕時計を見ながらそう呟くと、横から「えっ」と大声が上がる

    「そんなびしょ濡れで家まで戻ってたら日車風邪ひくって! 寮で服乾かしてってよ、俺着替え貸すし!」

  • 80二次元好きの匿名さん26/06/07(日) 20:10:15

    巣作りチャレンジ判定ががもう半ばSSのおまけみたいになっててなんだこれ
    最初は猫ホイホイの時のような判定してちょっとポンコツリアクションして、の繰り返しのつもりだったんです信じて下さい
    気付いたら妄想が暴走して修正がきかない流れになってしまった

    あとこの先は巣作り判定50越えのイベントシーンに続くので、本編時間経過の意味でも内容完成させる意味でもまだ時間かかります申し訳ない

  • 81二次元好きの匿名さん26/06/07(日) 20:22:52

    ええんやで(ありがとうございます)

  • 82二次元好きの匿名さん26/06/07(日) 20:43:25

    怒涛の供給ありがたいっっ!!!

  • 83二次元好きの匿名さん26/06/07(日) 21:06:03

    うっ2週間じっくりと進展していくところを見たい気持ちも、早よくっついてらぶらぶするところが見たい気持ちも両方あるぅ~!
    これこそがシュレディンガーのもだもだ…最高です…

  • 84二次元好きの匿名さん26/06/07(日) 21:24:25

    むしろ虎日SSガッツリ書いてもらえて嬉しい
    日々の楽しみになってます

  • 85二次元好きの匿名さん26/06/07(日) 21:27:36

    お着替えイベントだ!?自然な流れで虎杖が日車を自室に入れようとしている…?
    今の日車無防備Ωだし他のαに手出されないよう自分の匂いで包んどかないとね

  • 86二次元好きの匿名さん26/06/07(日) 21:48:10

    あまりにもかわいい…!!
    両片思いなふたりにはかわいいアクシデントやラッキースケベイベントが付き物よな
    全身全霊恋する15歳な虎杖の元気な振る舞いがとてもいい
    遅れてきた初恋に振り回されて色々なことが上手くいかない日車もとてもいい
    やはり虎日は最高、六法全書にも書いてある

  • 87二次元好きの匿名さん26/06/07(日) 21:51:44

    このレスは削除されています

  • 88二次元好きの匿名さん26/06/08(月) 04:13:46

    もだもだ虎日なんていくらあってもいいから安心してくれ

  • 89二次元好きの匿名さん26/06/08(月) 10:50:10

    見守り隊

  • 90二次元好きの匿名さん26/06/08(月) 11:38:37

    日車がどう開花していくのかとても楽しみだ

  • 91二次元好きの匿名さん26/06/08(月) 18:15:21

    ほしゅ

  • 92二次元好きの匿名さん26/06/08(月) 22:50:28

    オメガバもだもだ虎日の波動がこころにじわ~っと染み込む…
    このまま二人でゆっくり恋を育むのか、何らかのアクシデントが起こるのか、最高に楽しみです…

  • 93二次元好きの匿名さん26/06/08(月) 23:27:04

    ――何を、言っている?

    思考が完全に停止し、言語として認識しているのに意味を把握できない


    リョウデフクカワカシテッテ?

    オレキガエカスシ?


    駄目だ、わからないいやわかってはいけない

    はやく、早く断らなければその必要はないと……


    「その方がいいと思うぞ。結構広い範囲降ったっぽいし、いくら道通るっつってもスーツに革靴で山降りはねえだろ」

    「しゃけしゃけ」


    二年の二人はトラック側で作業していたらしく、虎杖の後ろからそう言って顔を出した

    そして禪院真希の方は虎杖に、狗巻俺はの方へ近づいてくる

    虎杖は何かしらを耳打ちされ、俺にはスマホの画面が向けられる

    そこには、狗巻宛のメッセージ画面が表示されていたのだが……


    『日車さんに話があるのでこのまま画面見せてあげてください』

    『どうせわかってないんでしょうが、ヒート間近濡れスーツのΩが一人で街中ふらつくのはαからしたらほぼほぼ猥褻物陳列罪ですよ日車さん』

    ピロン

    『念のために真希さんたちに頼んで良かったですよ。経験則ですが純愛もちは大抵トラブルがついて回るんです』

    ピロン

    『あと、本当に風邪でも引かれたら虎杖くんは相当気に病むでしょうねえ』

    ピロン

    『という訳で観念してください』

  • 94二次元好きの匿名さん26/06/08(月) 23:28:12

    「……すじこ」

    「具体的な言葉は分からないが、表情で言わんとしている事は分かる。……手間をかけてすまない」

    「明太子!」

    ぐっと握りこぶしを作って頷く狗巻の様子に優しい子なのだなと小さく頷き返す

    「……虎杖、手間をかけるが君の言葉に甘えることにする。ただの通り雨でなく呪具によるものだから、天候変化が起きた範囲に予想していない影響があるかもしれないからな」

    取ってつけたような理由ではあるが嘘という訳ではない。ただ、これ以上トラブルに彼を巻き込みたくも、余計な心配をかけたくもなかった。

    「……っ! 手間とか、そんなんないから! 日車のこと手助けできるの嬉しいし……、あ、雨、早くやむといいな!」

    わしわしとクロスで乱暴に呪具を拭って伊地知に注意される虎杖は、きっと他者を気遣う気持ちと、俺の心の迷いから来る不審な態度への不安で揺れているのだろう

    過度にならない範囲なら素直に厚意を受け取って、素直に感謝を返せばいい……と理屈ではわかっている。きっと虎杖もそれであればどれほど気が楽だろうか

    俺が、こんな不相応で、ふしだらで、罪深い感情をいつまでも未練たらしく捨てられずにいるせいで


    ――乙骨、やはり君の目は節穴だ

    『純』でも『愛』でもない、これは濁り切って淀んだただの『欲』でしかないのだから

  • 95二次元好きの匿名さん26/06/08(月) 23:30:09

    そうして暫く経ち、徐々に雲が切れて太陽と青空が戻り始める
    拭けるものは一通り拭き終わり、後は自然乾燥を待つだけの状態だ
    「結界術が可能な人たちは残って結界を、後の方たちは各自戻って構いません。くれぐれも風邪を引かないよう着替えやシャワーなど早めに対応してくださいね」
    伊地知の指示で作業はいったん解散となる
    「だって! 日車ほら急ご!」
    「っ、こら、手は……!」
    不意を突かれて思い切り手を握られたまま虎杖に寮の方向へと引っ張られる
    離してくれとはっきり言わなければいけないのに、話さないでほしいという願望が俺の口を鈍らせる
    どうして禪院真希と狗巻は笑顔で手を振っているんだ、止めてくれないのか
    握られた手が、顔が、胸の奥が、どうしようもなく熱い
    ――息が、止まりそうだ

    二日続けて、虎杖と手を繋いだままこのドアの前へと来ることになるなんて、とぼんやりとした頭で思う
    ……本当に、この中に入るのか?
    踏み越えてはいけないラインを越えてしまうのではないか、そんな空恐ろしい感覚に二の足を踏みそうになった俺を部屋の鍵を開け終わった虎杖が振り返る
    「ちょい散らかってっけど、気にせんでな。……日車が来てくれて、俺嬉しいよ」
    なぜ、君はそんなことを言うんだ
    俺はこの場所にとってただの異物でしかないのに
    はやく、と急かすように引き込まれ、背後で小さく扉の閉まる音がする
    境界線を踏み越えて入ったその場所の空気に、思わず眩暈がしそうになった
    「濡れた靴は段ボールの上置いて、とりあえずキッチンペーパー詰めとこ。今着替え準備すっから、それ持ってシャワー室使って。場所分かる?」
    「あ、あ……途中通り過ぎたところにあったのは覚えている。だが、濡れたままでは君こそ風邪を引くだろう」
    ごそごそとクローゼットを確認する虎杖の後ろで身と視線の置き所に困りながらそわそわと落ち着かない気持ちでそう訊ねれば、「ん゙ッ」と妙な声が聞こえて少しだけ虎杖の方へと視線を向けた
    「ごめ、ちょ、むせた……、俺はその間適当に乾いた服着ておくからへーきだし、スーツも早く乾かした方がいいんだから日車は気にせんで行ってきて」
    どさどさ、と大きめの袋の中にタオルと着替えが詰められ、俺に差し出される

  • 96二次元好きの匿名さん26/06/08(月) 23:53:43

    洗剤か柔軟剤か、微かな香料に混じって、虎杖の……αの香りをΩの身体は敏感に感じ取ってしまい、酩酊にも似たくらりとした感覚が脳髄を襲う
    袋の中身をぶちまけてその中に埋もれてしまいたい気持ちをどうにか押さえつけて受け取ると、ふらふらとした足取りで寮の共用シャワー室へと向かった

    濡れたスーツを脱いで、タオルで挟んで水気を吸わせておきながら邪念を振り払うように頭からシャワーを被る
    ……年甲斐もなく若いαの香りに反応して、なんと浅ましいのかこの身体は
    自己嫌悪の溜息ごと押し流すつもりで頭を冷やすように水を浴びたあと、虎杖に見咎められないよう誤魔化すように最後だけ熱い湯を浴びた

    シャワーを出て、袋から着替えを取り出す
    未開封の下着と、Tシャツにパーカー、と、裾を紐で搾るような構造のボトムが入っていた
    虎杖らしい活動的な私服だと思うと同時に、本当に俺が虎杖の服を着るのかという現実が襲い掛かってくる
    だがパンツ一枚で居続けるわけにも濡れたスーツを着直して戻るわけにもいかない
    俺は正気のままでいられるのだろうかと清水の舞台から飛び降りる心持ちでそれに袖を通した

    上背はともかく身体の厚みは虎杖の方が上なのだろう、どことなくゆるっと感じるシャツの上に、おそらく元々ゆとりのある作りの物を選んだのだろうパーカーを羽織ればより一層だぼついた感じのシルエットが出来上がる
    ボトムは丈が足りないを通り越して7分丈くらいの位置で裾が終わっていて、そういうデザインなのだろうかと思うが若い者のファッションの造詣が深くない俺には判断がつかない
    だが、やはりそれ以上に、虎杖の香りに包まれたこの状態は、どうやったって冷静を保てるものではない
    「は、はやくスーツを乾かさせてもらわなければ……、どうにかなってしまう」
    ――熱い、あつい、くらくらする
    のぼせたようにふらついて、身体に熱を篭らせながらもどうにか虎杖の部屋へと戻る
    回らない頭は、ただただスーツを乾かして着替え直さなければとそれしか考えられなくて

    開けたドアの先、虎杖が息を呑んで目を丸くして、こちらを凝視していたことにも気づいていなかった

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