「帰れ」「顔見たくない」部活の監督から𠮟責を受けた後、息子は命を絶った…母親が抱く「指導死」への疑問と怒り
新潟工業高柔道部3年の男子生徒が監督の男性教諭から𠮟責(しっせき)され自殺した問題で、生徒の母親(50)が新潟日報社の取材に応じた。生徒は「顔を見たくない」などの暴言を受け、試合を振り返るノートの書き直しも命じられていたという。生徒の死から5日で2年。「頑張っていた息子を、なぜこれほど追い詰めたのか」。疑問と怒りは命日を迎えても消えることはない。 【写真】男子生徒が書き直しを指示された柔道ノート。再提出日に命を絶った 「敗れた者がもう一回勢いを盛り返す」。監督とやりとりする「柔道ノート」には、試合に負けた反省とともに、次の大会への強い決意が書かれていた。母親は丁寧な字を見つめ、「これの何がいけないんでしょうか」と声を詰まらせる。 県教育委員会の第三者委員会は生徒の自殺を「指導死」と認定した。調査報告書によると、生徒は2024年6月2日の県大会で敗れた。その際、助言に従わなかったなどとして監督が大声で叱った。 帰りの車内で生徒は家族に 「部活をやめたい。すごく怒られた」と暗い表情を見せたが、翌日は普通に登校した。「気持ちを切り替え頑張ろうとしていた。ノートも2日夜に書いたのだろう」と母親は推し量る。 しかし、監督の指導は続いた。練習があった4日の𠮟責は特に執拗(しつよう)だった。 複数の関係者や遺族によると、監督は生徒に「帰れ」「あの負け方は何だ」などと発言。生徒は「やらせてください」と懇願し、𠮟責と謝罪が続いた。 監督が怒って教官室に入り、追いかけてきた生徒に大声で突き放すように指導することもあった。さらに他の部員もいる場で生徒に「なんでいるんだ」と言い、生徒が前に出ようとすると「近づくな」「顔を見たくない」と追い打ちをかけたという。 練習後、生徒は着替えながら泣いていた。下校中には部員に自身の写真を撮るよう頼んだという。画像を見た母親は「いつもと全く違う目つきだった。理不尽に怒られ続け、悔しかっただろう」と思いやる。 翌5日、生徒は家を出た後に登校せず、命を絶った。書き直しを指示されたノートの提出日だった。 第三者委はノートについて「監督に気に入られるように書くことを学習する方途に過ぎなかった」と指摘する。母親によると、監督は自身の試合動画や戦争映画を部員に見せ、感想を携帯電話で送るよう求めることもあったという。 「息子は正座して監督への返信を考えていた。部員が監督の顔色をうかがうような指導はおかしい」と母親。「指導死」と認定した第三者委の調査に感謝するが、命は戻らない。監督には「一生かけて償い、二度と教育に携わらないでほしい」と望む。 校長らは監督の部活指導を放任し、生徒が行方不明になった後の初動も遅かった。新潟工業高では16年に別の生徒がいじめを受けて自殺した際も対応に不備があった。母親は「監督だけでなく学校や県教委の問題でもある」と話す。 責任感が強かったという男子生徒。自身と姉を1人で育ててきた母を思い、大学進学から就職志望に切り替えたという。 2年前の6月5日朝、生徒は普段通り登校の支度をしていた。翌日は学校の体育祭。「お弁当は何がいい?」「なんでもいいよ」。それが親子で交わした最後の会話になった。