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7 レベルアップと謎の人影

 朝起きるとコンビニの天井が見えた。昨日一日のことを思い出す。そう、僕は異世界に転生したのだ。なんだかお腹が重いなと思ったら、スクール水着の魔法少女ゲルニカの片足が僕のおなかの上に乗っていた。


「寝相が悪いやつだな」


 彼女の足をどかして立ち上がる。ゲルニカは仰向けでまだいびきをかいている。床に寝たせいで体が痛い。ベッドを作る必要があるな。


「おはよう店員ちゃん」


「おはようございます、イクマさん」


 店員はレジのところにちゃんと立っていた。長い髪で切れ長の目の美人である。コンビニの制服をきちんと着ている。コンビニのガラスの外には砂浜があり、その向こうには美しい海が広がっている。


 ペットボトルのミネラルウォーターを購入してそれを飲む。心なしかとても体が軽いみたいに感じる。僕はそのことを店員に言った。


「なんだかすごく体が軽いような気がするんだ」


「それはイクマさんがレベルアップしたからです」


 彼女は当たり前のことみたいに言う。


「レベルアップ?」


「昨日大量のゴブリンを倒して経験値を獲得し、レベルが上がりました」


「まるでゲームみたいだね」


「イクマさんの身体能力は昨日よりも高くなりました」


 ゲームでレベルアップと言えば、力とかスピードとかの身体能力が上がって、攻撃力が強くなったり、防御力があがったり、HPやMPがあがる。


 僕は自分の身体能力がどう変化したのか確かめるべく、コンビニの外に出た。身体能力が昨日よりも上がっているというなら、例えばジャンプしたらどうなるんだろう?


 僕は砂浜でジャンプしてみた。驚いたことに、軽くコンビニの屋根より高くまで体が上昇した。


「うおおおおおお!」


 空中でバランスを崩し、頭から真っ逆さまに砂に落ちる。頭が砂にめり込んで倒立で直立の状態になったが、すぐに起き上がって頭を振る。


「すごい跳躍力だ! オリンピックに出たら金メダル間違いなしだぞ!」


 僕は店内に戻って店員に尋ねる。


「ねえ、僕がレベルアップしたってことは、もしかしてゲルニカもレベル上がったの?」


 RPGでは、戦闘によって獲得した経験値は、仲間全員に与えられる。もしそのシステムがこの世界でも適用されるのなら、ゲルニカも同じようにレベルアップしたことになる。


「はい、ゲルニカさんもレベルアップしてます」


 僕はコンビニの床で大の字になっていびきをかいているゲルニカのほっぺをツンツンした。


「おい起きろゲルニカ」


「うーん、むにゃむにゃ、もう食べられないだわさ」


「寝ぼけてる場合じゃない。さっさと起きて魔法を撃つんだ。昨日やった火炎魔法だ」


 僕は手を引いて彼女を店の外に連れ出した。店内で火炎魔法を出したら、火事になってしまうからだ。


「ほら、海に向かって撃ってみろ。あとでフライドチキンおごってやるから」


「まだねむいだわさ」


 ぶつくさと言いながらも、ゲルニカは眠い目をこすり、片手を海の方に向けて唱えた。


「ファイア」


 すると、野球ボールほどの火の玉が出現し、海に向かって飛んだ。海面に落ちると、そこが爆発して水柱が立った。


「おお! これならモンスターとの戦闘に役に立つぞ!」


「ほえええええ! あちき、覚醒しただわさ!」


 僕の身体能力と共にゲルニカも魔力が強化された。これならゴブリンよりも強いモンスターが現れても十分戦える。この島にはどんな奴が潜んでいるかわからないのだ。


「あれ?」


 ゲルニカが森の方を見て首を傾げた。


「どうしたゲルニカ?」


「さっき、あそこに誰かいただわさ。木の陰からこっちを見ていただわさ」


「だってここは無人島のはずだぞ。ゴブリンか何かのモンスターじゃないのか?」


「確かに人間だっただわさ」


 彼女は森の方に走っていった。僕も後を追う。しかし、その場所には誰もいなかった。


「どっかに行ってしまっただわさ」


「や、たばこの吸い殻があるぞ。しかもセブンスターだ!」


 僕は、落ちていた煙草の吸殻をつまみ上げて言った。この島に人間は僕と店員とゲルニカしかいないと思っていたが、他にも誰かがいるらしい。


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