京都市左京区の路上で平成19年、京都精華大マンガ学部1年の千葉大作さん=当時(20)=が刺殺された事件は、未解決のまま15日で発生から19年。大学で千葉さんを指導していた漫画家のさそうあきらさん(64)は、事件の概要や千葉さんの人柄を伝える漫画を制作し情報提供を呼びかけてきた。ほかの長期未解決事件で捜査が進展したこともあり、事件解決への期待は高まるが、何より強いのは「千葉君のことを忘れないでほしい」という思いだ。
「笑顔が印象的でね。憎めないんだ」「静かだけど熱いヤツだな」
さそうさんが制作した漫画には、京都精華大の学生や教員が、いつも笑顔で漫画に情熱を傾けた千葉さんとの思い出を語る場面が描かれている。
「神童」や「マエストロ」などの人気作品を手がけ、文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞などの受賞歴があるさそうさんは、18年に創設されたマンガ学部で准教授として指導。約70人の一期生の中に千葉さんがいた。
千葉さんは「『少年ジャンプ』が好きで少年誌に載るような漫画家になることを目指していた」という。学生食堂で一緒に食事し、思いを寄せる女子学生がいることも知っていた。まじめで控えめな性格だったが、「漫画が好きという人一倍強い気持ちは伝わってきた」と振り返る。
これからという人生が突然絶たれたのは19年1月15日夜のこと。進級のための作品発表を翌日に控えていた千葉さんは、大学近くの歩道で殺害された。ニュースで知ったさそうさんの元に、事実を突きつけるかのように大学からメールが届き、対応に追われた。
現場には多くの足跡が残り、目撃証言もあった。すぐに解決するかと思われたが捜査は難航した。「僕らに何ができるのか。学生たちのケアはどうするのか。事件後、頭の中がぐるぐるしていた」。
さそうさんは解決につながればと自ら事件を調べ、発生1年後に漫画を制作した。犯人の特徴や現場の地図、学生らから聞いた千葉さんのエピソードをまとめた漫画は、京都府警などが情報提供を呼びかけるために配布。さそうさんが開設したインターネットサイトでも公開を続けている。
昨年10月には平成11年の名古屋市主婦殺害事件の容疑者が逮捕された。「千葉君の事件も証拠が残っているし、科学の力は進歩している。犯人が別の事件で捕まるなど、どこかに解決の糸口があるのではないか」と期待を抱くさそうさん。一方で「事件の解決は望んでいるが、もう千葉君は帰ってこない。みんなには千葉君のことを忘れずにいてほしい」と願い、今もSNSなどで発信し続けている。(東九龍)
京都精華大生刺殺事件 平成19年1月15日午後7時45分ごろ、京都市左京区岩倉幡枝町の歩道で、千葉大作さん=当時(20)=が男に刃物で胸や腹など十数カ所を刺され、死亡した。当時、男は「ママチャリ」型の自転車に乗り、20~30代(現在30代後半~40代後半)で、身長170~180㌢程度、27~28㌢の靴を履いていたとみられる。京都府警は有力な手掛かりを得られておらず、事件は解決につながる情報提供者に上限300万円を支払う「捜査特別報奨金制度」の対象となっている。